2022年夏休みの自由研究~ラッカーのクリーニング~
こんにちは!杉浦です!
毎年恒例(?)の自由研究です!
過去の自由研究はこちら☟☟☟
2020年 前編・後編・2021年
ラッカーの話が少なかった
さて。
ラッカーとは管楽器の表面塗装の一種です。
メッキ塗装は過去に何度も取り上げてきました。
でも、ラッカーのお話しは少なかったんです。
というのも、ラッカーをキレイにする修理って
ほとんど行わないんです!
ですので、今日はラッカーの大切さを
実験を通してご紹介します!
ラッカーの概要
ラッカーとは管体表面を覆う、樹脂の塗装です。
メッキは金属の塗装ですので
ラッカーとメッキは、素材の違いになります。
※表面がシルバーの楽器が、全て銀メッキとは限りません。
別素材の場合もあります。
同じく、ゴールドの楽器がラッカーとは限りません。
塗装に黒ずみ・くすみ・錆等が発生すると
外観が大きく損なわれます。
すると、メッキ楽器は「黒ずみを磨いて欲しい」
ラッカー楽器は「錆を落としてほしい」
というご要望をよく受けます。
しかし、残念ながら基本的に
メッキのみで可能な作業となります。
なんで!?と思いますよね。
では、実験と称して確認してみましょう!
ラッカー楽器を磨く実験開始!
用意する物
・どうにでもなっていいラッカー楽器
・磨き剤
廃棄楽器のサックスベルをゲット!
まだピカピカなので、意図的に変色させます。
疑似手汗・水分残りとして、塩水を吹きかけ
放置すること僅か2週間。
ここまでサビサビに変化しました!
水分が蒸発した跡として、水アカも発生してます。
(実物は写真の数倍よく見えます)
それでは磨いてみよう!
実験:ラッカーポリッシュで磨く
管楽器用のラッカーポリッシュで磨きます。
実験結果:ほぼ変化なし
見た目はほぼ変わりません!
よーーく見ると、水アカは薄くなりましたが
1番目立つ錆に変化はありません。
錆がキレイにならない理由
なぜキレイにならないのか。
答えは簡単。
「ポリッシュが錆に対応していないから」です。
ラッカーは樹脂の為、とてもやわらかいです。
いくら研磨する粒子が細かくても
やわらかい樹脂には傷が入るので
ラッカーポリッシュに研磨剤は入っていません。
ですので、残念ながら錆は落とせず
軽い水アカ・ホコリを拭き取るまでとなります。
実験その②:シルバーポリッシュで磨く
ラッカーポリッシュがダメなら
トランペットのお友達から借りた
シルバーポリッシュを使うのです…!(小声)
悪魔のささやきが聞こえたので
シルバーポリッシュで磨いてみました。
実験結果その②:傷 が 入 り 、 剥 が れ る
変化がないように見えますか?
近寄ってみましょう。
これは、ポリッシュの研磨剤による傷です。
紙やすりで窓ガラスを擦った時と同じ状態です。
(実物は写真の数倍よく見えます)
更には、ラッカーが剥がれて
地金が見えている場所もあります。
ラッカー剥がれが分かりやすい事例☟☟☟
見えない支配者、ラッカー
つまり、シルバーポリッシュは
ラッカーには強すぎる(合わない)ということです。
錆が落ちたように見える…?
シルバーポリッシュで磨いた後は
一部分の錆が落ち、キレイになったように見えます。
しかし、これはラッカーが剥がれたから磨けただけ。
錆はラッカーと地金の間に発生してるので
錆が落ちる=ラッカーが剥がれているということです。
強すぎる研磨剤で、ラッカーが剥がれた場所は
アンラッカー状態ですので、今後もれなく変色します。
一度キレイになったとしても
塗装が無いので変色しやすいんです。
アンラッカーについてはこちら☟☟☟
こんなこともあるのか~サックスのソケット交換
分かったこと:ラッカーの錆は落ちない
ラッカーの錆は落とせず、キレイにしたいはずなのに
正しくお手入れしないと逆効果になりました。
では、錆びついたラッカー楽器は
どうしたらキレイに出来るでしょうか。
答えは、ラッカーの再塗装しかありません。
ラッカーは剥がしたくないのが本音…
錆をキレイにする為には、ラッカーを剥がし
錆を直接削り落とすしかありません。
しかし、こちらでお伝えした通り
ラッカーは、音色や吹奏感を決める重要な要素です。
剥がしたり、リラッカー(再塗装)すると
全く別人のような音に変化してしまいます。
音色よりも、とにかく見た目優先です!
修理後、どんな音色になっても受け入れるわ!
楽器がもう1本買える程の修理代だとしても
どうしてもこの楽器をキレイにしたい!
という方なら、良いかもしれません。
でも、デメリット(音色や金額・楽器への負担等)
が大きいと、現実的ではありませんよね。
ですので、特別な事情が無い限り
リペアマンはオススメしません。
(年間数千件の修理で、数年に1本の事例です)
総括:錆びてからでは手遅れ、正しい予防が必要
今回の実験で
①お手入れが行き届かないと、短期間で錆びる
②錆が出ると落とすのは難しい
③ラッカーを剥がす修理はデメリットが大きい
ということが分かりました。
ですので、大事なのは
錆をどうにかするのでは無く
出来る前に正しく予防することです。
多忙・練習量が多いと、お手入れが不足しがちです。
しかし、今からでも遅くありませんので
正しい道具で、こまめなお手入れを習慣づけしましょう!
以上、2022年自由研究でした!
※変色の落ち具合を見る為の、廃棄楽器を使った実験です。
ご自身の楽器でのお試しは、絶対におやめ下さい。
感染症予防にご協力ください
感染症予防の取り組みとして
調整にお預けいただく際は
以下項目のご協力をお願いします。
付属品の持ち帰り
修理に必要ない付属品(楽譜・チューナー等)は
基本的に、全てお持ち帰り頂いております。
詳しくは、受付スタッフにお尋ね下さい。
外観チェック
受付時、表面の拭き上げをお願いをする場合があります。
洗浄が可能です
金管楽器・金属製管体の楽器は、洗浄が可能です。
洗浄をご希望の場合は、受付スタッフにお伝え下さい。
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中高6年間をトランペットとコルネットの二刀流で部活漬けの毎日を過ごしてきました!全国の皆様からのご依頼、心よりお待ちしております!