リペアマン遠藤の仙台リペアブログ~その62~タルボ改造①フロイドローズ取付の巻!
みなさまこんにちは!
リペアマン遠藤です!
今回のブログは何にしようか考えましたが、
2021年上半期、けっこう大変だったな~というリペアがあったので紹介していきたいと思います!
本題に入る前にまずはタイトルの2つのワードの説明から入りましょう。
◎フロイドローズとは…
ギターのブリッジの一種です。フロイドローズの本家はFloyd Rose社のFRTシリーズです。
ブリッジの種類としてはロック式トレモロに分類されます。
基本的にロック式のナットと組みわせる事で、大きな音程可変幅の激しいアーミング奏法をやってもチューニングの安定性を保つのが特徴のブリッジです。
メーカーによってバリエーションがあり、Floyd Rose社以外のものはライセンス製品と呼ばれています。
ライセンス製品はGOTOHのGE1996T やSchallerのS.FRT-Ⅱ等があります。
メーカーごとに寸法が若干異なるので一部を除き基本的に互換性がありません。ブリッジの載せ替えは注意が必要です。
フロイドローズはブリッジ自体がかなり大きいのでボディのザグリもそれなりに深く大きく掘る事になります。
◎タルボとは…
GLAYのギタリストHISASHI氏が好きな方にはお馴染みの金属ボディのギターです。
詳細は楽器メーカーのTokaiから出ているTALBOというモデルで、ボディの素材はアルミニウム合金となっております。ネックや指板は木材です。
中でもHISASHI氏の使用モデルのArmored TALBOはブリッジがフロイドローズでサスティナーやレーザーガン搭載の遊び心溢れるギターです。
下の写真は今回の私のリペアによってArmored TALBO化したタルボになります。
しかしタルボは加工性が悪い金属ボディが仇となり、ギター自体の調整は大丈夫ですが金属ボディ加工を含むような改造ではお断りするリペアショップが多いようです。
今回のようにフロイドローズを取り付ける場合、通常の木材製のギターであればトリマーのような切削機械でザグリを掘りますが金属ボディではそうもいきません。
私も以前実験的に金属対応の刃を装着したトリマーで金属ボディの加工したら無理だったので、やはり機械加工は鉄工所にあるような大型旋盤みたいな設備が無いと厳しいと痛感しました…
ちなみに木材へのトリマー使用例はこんな感じです。→リペアマン遠藤の仙台リペアブログ~その58~PUザグリ加工の巻!
さて今回のタルボ改造には大きな工程が3つあります。
・フロイドローズ取付
・バッテリーボックス取付
・配線改造(PU交換、サスティナー取付、スイッチシステム構築)
Armored TALBO化計画ですね。お客様から頂いた資料を元に改造を進めていきます。
なかなかクセのある作業でしたのでブログでは分けて紹介していきたいと思います。
それでは作業に入っていきましょう!
弦等外していますがこちらがお持ち込み頂いた初期状態です。通常のタルボの姿です。
ブリッジはwilkinsonの2点支持シンクロトレモロ、ナットはブラックタスクです。
すでにレーザーガンが仕込まれており9V電池はピックガードの中、ミニスイッチが電源のon-off、赤いボタンを押している間ピュルルルピュルルル鳴ります。
PU周りにLEDが仕込まれており電源が同じなのでレーザーガンと連動して光る仕組みでした。
まずはピックガードを外しましょう。
タルボの中身を見た事がある方は少ないと思われますがこのようになっています。
レーザーガンのスピーカーがリアPUの裏の位置に仕込んでありPUでその音を拾うのです。
なのでアンプからその音を出す時はセレクターはリアにする必要があります。
さらに外すとこうなります。
まるで抜け殻のようです。ボディは鋳型による鋳造でしょうか。
中身はウレタンフォームが詰まっていました。
このおかげでPUレイアウトの変更は容易そうです。
肝心の作業方法ですが、機械が使えないので…
鉄鋼ヤスリを片手に手作業でひたすら地道に削り続けました。
アームアップも出来るようにアップリセスと呼ばれるタイプのザグリを施したので削る量も多かったです。
30分も作業すれば腕はパンパン、
腱鞘炎になって作業をストップしていた期間もありなかなか思うように進みませんでした。
そんなこんなで終わりの見えない作業に絶望しながらも最終的にザグリが完成しました。
数か月かかりました…
元々のwilkinsonブリッジと今回取り付けるフロイドローズのアンカーは取り付け位置が全く違うので、一旦埋めてから新規で開け直します。
元のアンカー穴は金属パテで埋めて整形、位置を卦がいてボール盤で穴を開けます。
この穴開けもなかなか大変でボール盤が壊れなくてよかったです…
アンカースタッドが打ち込まれました。
ブリッジを取り付け仮弦を張り動作チェックしていきます。
今回取り付けたブリッジはFloyd Rose FRTではなくSchaller S.FRT-Ⅱです。HISASHI氏本人と同仕様ですね。
ヘッド側のロックナットとテンションピンもこのように取り付けました。
通常はブリッジ付属のテンションバーを使うのですが、テンションピンはArmored TALBOならではの仕様と言えます。
チューニングとフローティング調整、それからグワングワンとアーミングしても安定感抜群。バッチリです。
ひとまず最大の難所だったフロイドローズ取付が終わりました。
作業はまだまだ続きますが、長くなりますのでこの辺りで一旦終わりにします…
次回もお楽しみに!
以上、リペアマン遠藤でした!
またお会いしましょう~
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宮城県出身。長野県でギター製造に携わった後2017年から島村楽器仙台イービーンズ店の店頭リペアマンとなり、現在の仙台ロフト店に至ります。仙台のリペアは遠藤にお任せ下さい!