穴あきシンバル の先駆け、O-Zone (オーゾーン) の登場!

こんにちは。熊本パルコ店ドラム担当、坂田です!
前回とても好評だった「穴あきシンバル検証:Zildjian編」「穴あきシンバル検証:Paiste編」、いよいよPart.3です!
今となっては「穴あきシンバル」は本当によくみかけるようになりました。しかし、最初に実験を重ね、このトラッシーサウンドの原型を作ったメーカーがありました。今回はそのエフェクトシンバルの先端を走るメーカー、セイビアンのO-Zoneシリーズに迫ります。
おさらい:穴の空いたシンバル
最近こんな形のシンバル、見かけませんか?

数年前まで「エフェクトシンバル」と言えば、チャイナシンバルやスプラッシュシンバルを思い浮かべたのではないでしょうか?ところが近年、サイズや形状が多様化したエフェクトシンバルが各メーカーから出てきました。
その中でも最近よく見かけるのがこちらの「穴あきシンバル」です。「よく見かけるけど、実際どんな音がするの?」という方も結構多いハズ。ということで、前回に続きこの「穴あきシンバル」に迫っていきます~!
普通のシンバルとの比較
クラッシュシンバルと形が似ているこの穴あきシンバル、実際にどんな違いがあるのでしょか?見た目だけではわかりづらいと思いますので、実際に音を比べてみたいと思います。まずはこちら、ザ・スタンダードクラッシュといえばこちら、ジルジャンのミディアムクラッシュの音を聞いてみましょう。
A Zildjian Medium Crash 16

次にチャイナシンバルも聴いてみましょう。
A Zildjian CHINA HIGH 18

一言で表すとクラッシュシンバルは ”シャーン” で、チャイナシンバルは “パシャーン” 。それぞれ全然音が違う音がしますよね?「クラッシュだと普通変わり映えしないけど、チャイナだと存在感がありすぎる」、、穴あきシンバルはそんな要望に応え、この微妙な中間を攻めるオイシイ~シンバルなんです。
今回の基準
先ほど聴いた A Zildjian Medium Crash 16のピッチ、音量、サスティーン、レスポンスの「0」とします。

穴あきシンバル特集では、「チャイナ感」という項目を増やしました。「チャイナ感」とは少しひずんだ、”シュワ~” とした感じの音のことを言います。最近では「トラッシーな音」とも言いますね。この「チャイナ感」が高いシンバルほどチャイナシンバルに近い、ということになります。
ブランド紹介:セイビアン (Sabian)

セイビアンの創設者、Robert Zildjian氏は、ジルジャンシンバルの Avedis Zildjian3世 の息子としてボストンで生まれました。1979年にAvedis氏 が亡くなり、ジルジャンの正統な後継者である兄のArmandと訴訟問題に発展するほど対立し、Robertはジルジャンを去ります。調停により Kジルジャン・シリーズ を製造していたカナダの工場を手に入れ、1981年にカナダのニューブランズウィック州で セイビアン社 を設立しました。彼の子供達の名前であるSally、Billy、Andyの最初の2文字をとり「SABIAN」と命名されました。
使う素材はジルジャンと同じで、銅80%、スズ20%、そして微量の銀を含むものが殆どで、まさにジルジャンのライバルメーカーとして世界で非常に人気のシンバルです。様々なドラマーのアーティスト・モデルや、革新的な新しいシンバルが多くラインナップされていることが特徴です。
O-Zone (オーゾーン) シリーズ
その名の通り、大きなOゾーンホールを全面に配置したエフェクト・クラッシュ・シンバルの名称で。いわゆる「穴あきシンバル」を初めて世の中に発表したのもセイビアンです。現在はHHX、AAX、HH、B8 PROシリーズの4種類にラインナップされています。ブライトでレスポンスの良いノイジーなエフェクトサウンドが特徴のシンバル。全シリーズThinウェイトで統一され、非常に軽いシリーズです。

前回紹介しました、パイステとの大きな違いは、Oゾーンホールがインチの違いによって穴のサイズが変わらない事です。
それでは検証スタートです!どうぞ!
①B8 PRO O-ZONE 18インチ

まずはシリーズ唯一のシートブロンズを使用したB8 PROの18インチ。
何故かこのB8 PROだけ穴が16個(16インチは12個)という仕様で、穴が多すぎてロゴの位置も非常に狭苦しくなっています(笑) Oゾーンホールのおかげで相当な軽さのこちら、実際に音を聞いてみてください。

シートシンバル独特のピッチの高いキレのある響きですね。前回のパイステに似たかなりノイジーで低音が抜け落ちたようなサウンド。
叩いた瞬間に来るグシャっとしたクラッシュ音とカラッとした乾いたサスティーンがたまりません!穴があることによって倍音も複雑に出ていますので他のキャストシンバル等に混ぜても案外キレイに馴染んでくれるのもこのシンバルの凄さです。
価格も安いのでとりあえずセットしてみても必ず役に立つことでしょう。実際に使ってみると良さを実感できると思います!
なお、今回は紹介していませんが、B8 PROには16インチもあります。
②AAX O-ZONE 16 インチ

こちらはモダン×ブライトで見た目がとても華やかなAAXの16インチ。ここからはOゾーンホールの数も半分に減ります。16インチは6個で割とクラッシュ色が強そうなイメージです。きめの細かく浅いレイジングで不要な倍音をカットしてあるAAXシリーズですが、はたしてこの倍音だらけになるであろう、穴あきシンバルはどうなるのでしょうか。

B8よりもこちらのほうがしっかりとクラッシュシンバルの面影を残しています。
シンバル自体はB8に比べるとさらに薄くなっている為、叩けば瞬時に鳴ってくれる鋭いレスポンスを持っています!叩いた後はすぐに音は減衰して無くなります。穴の数が少ないせいか分かりませんが、割と落ち着いたサウンドで普通にクラッシュとして使っても問題なさそうです。イスタンブールなどハンマリングがしっかりと施してある薄いシンバルに似ていますね。
③AAX O-ZONE 18 インチ

おなじくAAXの18インチ。こちらは穴が8個になり、16インチよりもややエッジ側にOゾーンホールが配置されています。個人的にはこのサイズと穴の数が一番見た目のバランスが良いように感じます。低音成分が多めのエッジに穴を開けることによってどのような効果がもたらされるのでしょうか?

こちらは16インチに比べてかなり印象が変わり、一気にトラッシーなエフェクトシンバルになっていますね!穴がエッジに近い分、最後に残りやすい低音のぼーん、となる残響がなくスッキリとした印象。刺さるような高音もなくガンガン叩いても耳障りではありません。叩いていて非常に気持ちの良い1枚。オススメです!
④HHX O-ZONE 16 インチ

ここからはハンマリングが美しいHHXシリーズ。AAXに比べると全体的に平たくなっています。カップも低くなり、おおきなハンマリングがシンバル全体にまんべんなく散りばめられています。画像は18インチのもので、穴が8個ですが、実際は6個です。

この薄いシンバル独特のトラッシーな音はたまりませんね!HHXシリーズの良さを存分に発揮している穴あきシンバルといった感じです!チャイナ感、というよりはどちらかというとトラッシュシンバルに近いです。ハンマリングによってさらに複雑で深いサウンドになっています!
普通にどんなジャンルに組み込ませても面白いとは思いますが、ここまでトラッシーですと、ジャズなんかでも使えそうですし、エスニックパーカッションのお伴としても活躍できるのではないでしょうか?
⑤HHX O-ZONE 18 インチ

注:こちらの画像は16インチのものです
最後はHHXの18インチ!Oゾーンホールの位置は写真のものよりもエッジについていると思われます。AAXの18インチと同じですね。
それでは最後の1枚。聞いてみましょう!

こちらはAAXのOゾーンに比較的音色は近いのかな?という感じです。AAXのほうがどちらかというとスッキリしていますので、もう少し暴れる感じがいい、という人にはこちらがオススメ。瞬間的な爆発力はこのシンバルが最強です。
16インチのOゾーンシンバルとは近いようで毛色が全く違うシンバルですので、合わせて使ってみるのも面白いと思います!
検証後記

今回のO-ZONE シリーズはいかがだったでしょうか?
個人的には今までやってきた穴あきシンバル検証で一番バラエティに富んでいて面白かったと思います!昔から実験的なシンバルを数多く発表してきたセイビアン、エフェクトサウンドは特に素晴らしいです!
各社、狙った音というのはもちろんあるのですが、「シリーズやインチによってここまで音色の変わるシンバル」はO-Zoneシリーズ 以外になかったのではないでしょうか?穴の位置や数をサイズ毎、シリーズ毎に変えることによって、その金属やサイズに合った一番良い音色を選んでいった結果こうなったんだと思います。
ただ、こうも魅力的なシンバルが多いと全部集めたくなってしまうのが、O-Zoneシンバルの困ったところですね (笑)

ここまで3メーカーの検証をやってきましたが、まだまだ穴あきシンバルやっていきたいと思います!次回をお楽しみに~!

この記事を書いた人
熊本パルコ店 ドラム担当 坂田

吹奏楽、マーチング等のコンサートパーカッションからラテンパーカッション、ドラムセットのチューニングや奏法、ルーディメンツなど、打楽器に関する事はは全てお任せ下さい!ドラマーの皆様を全力でサポートします!
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