期間限定開催!ドラマーのためのドラム大展示会「DRUMS SHOW」

おかえりスリンガーランド。アメリカンドラムの伝統と、憧れの「あの音」を求めて~ヴィンテージスネア探訪記~

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おかえりスリンガーランド。アメリカンドラムの伝統と、憧れの「あの音」を求めて~ヴィンテージスネア探訪記~

記事中に掲載されている価格・税表記および仕様等は予告なく変更することがあります。

こんにちは。札幌パルコ店の鳥塚です。

先日限定復刻生産された「Radiokingスネアドラム」が話題沸騰中のSlingerland(スリンガーランド)社。

20年ほど前は国内へも輸入されており、当店でも多くのお客様に手にして頂きました。アメリカのドラムづくりの伝統を現代に伝える、素晴らしい楽器であったと記憶しています。
しかし、いつのころからか国内への輸入も途絶え、メーカーとしての新しい情報も少なくなっておりましたところでのこの度の復刻生産の情報は、大変うれしく思います。

今回、そして次回と2回にわたり、Slingerland社の歴史と、新旧のスネアドラムをご紹介いたします。

Slingerlandとは

ドラムの歴史は、アメリカを中心とした世界的な大衆音楽の発展と密接に関連があります。20世紀初頭に発展したジャズにおいてドラムセットが一般的なものとなると、多くのドラムメーカーが本格的にドラム製造にのりだします。

ラディック、グレッチ、ロジャースなど、現代でも続いているブランドの多くがこの時代に発展を遂げましたが、今回ご紹介するスリンガーランドもドラムの歴史を語るのに欠かせないブランドです。

当店保管の1990年代末ころのSlingerland国内カタログ

米国Slingerland社は1927年、バンジョーの製造を行っていたメーカーがドラムの製造に乗り出したのがはじめと言われています。
ドラムの製造に関してはラディックやグレッチよりやや後発となりますが、1930年代後半頃に発表されたラジオキング・スネアドラムがその名声を一気に高めます。

当時のスーパースタードラマー、ジーンクルーパとエンドース契約を結んだのも同時期です。これによりスリンガーランドは大きく発展していき、1960年代にはアメリカを代表するドラムメーカーとまで言われるほどの発展を遂げました。

上画像・ジーンクルーパ・サウンドキングと名付けられたシリーズのスネアドラムと推定されます

その後、1980年代にはジェフポーカロがラジオキングスネアドラムも愛用していた、との説もあり、アメリカを代表するドラムメーカーとして知られる存在でありました。

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その後のSlingeraland~現代まで

その後もドラムメーカーとして製造は続けていましたが、2000年代に入ると日本国内への定期的な輸入も途絶え、メーカーとしての情報も少なくなってしまいました。この間は経営の母体が変わるなどの出来事があったようです。

2025年にSlingerland、ラジオキングの復刻が発表されました。
SlingerlandがDWの傘下にあることは報じられていましたが、新規でのドラムの製造の情報が無い状態が続いていたため、Radiokingの復刻は大きな驚きと喜びを感じたニュースでした。

歴史に名を遺すドラムメーカーの復活、と言っても過言ではない出来事であり、これは大きな驚きと喜びを感じております。
さて、今回はSlingerlandの歴史をふりかえるべく、古い年代のスネアドラムをご紹介していきます。

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1970’s「Buddy Rich スネアドラム」

こちらは1970年代はじめころからラインナップされていた、当時の大スタードラマーの名を冠したシリーズ
当時のカタログには「バディリッチ・スネアドラム」として華々しく紹介されています。

このストレイナーは「ズーマティックストレイナー」という名称だそうです。
丸みを帯びたデザインで、古い年代の外国車を連想してしまいますが、おそらく音楽だけでなく社会全般が華やかな時代だったことを思い起こさせます。
そして上端が丸められていないストレートフープ。スリンガーランドの象徴でもあるこのフープはスティックチョッパーフープとも呼ばれます。

ホワイトパール系のカバリングが施されたウッドシェルですが内面が塗装されており、材質やプライ数が判別できません。比較的薄めのシェルにレインフォースメントが装着されています。

スリンガーランドに限らない事ですが、古い年代のドラムカタログには木材の材質やプライ数が表記されていないことが普通で、なかには同じモデルでも違う材質を使用していた、というような事もあったようです。
おおらかな時代だったということでしょうか、、、。

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1970’s「Buddy Rich スネアドラム クローム」

こちらもさきほどの同時代にラインナップされていたバディリッチスネアドラムのバリエーションです。
金属シェルに見えますがウッドシェルに金属板を巻いた仕様です。
フープやストレイナーの仕様は同じで、当時の最先端、最上級のモデルであったことが推測できます。

シェル内面を見てみると、5プライくらいの合板シェルであることが確認できます。
内面は木目からメイプルと推測されますが、それ以外は濃い色、薄い色の木材が重ねられており、今でいう「コンポジットシェル」であると推定されます。
先にご紹介したホワイトパール系のスネアドラムと同シリーズであるにもかかわらずシェル構成がまったく違うところは興味深いところです。

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ブラスシェル スネアドラム

こちらは当時の名ドラマーの名がシリーズ名になっている「ジーンクルーパ・サウンドキングスネアドラム」と推測されます。ブラスシェルにクロームメッキが施されています。
このタイプは1970年代から80年代前半くらいまでラインナップされており、おもにストレイナー違い(スナッピーの固定方法)でいくつかのバリエーションがあったことが確認できます。

こちらも当時の最上級「ズーマティックストレイナー」装備。
フープは上端が内側に丸められており、当所カタログには「リムショットフープ」と表記があります。なるほど程よい高さでオープンリムショットが容易であると感じました。

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実際に叩いてみました

今回ご用意することが出来たスネアドラム3台を軽く叩いてみました。
1台目のパールホワイト系は4”という浅さによるレスポンスの良さと広がり感もあるサウンド
2台目のクローム仕上げは金属のカバリングとやや厚めのシェルによるタイトめなサウンド、
3台目のブラスは金属胴ながらふくよかでな鳴りが印象的でした。

おしまいに

今回はこちらの3台をご紹介いたしました。名器といわれ今回復刻生産も果たしたRadiokingの古い年代の新旧比較はかなわなかったものの、
今回の3台も当時のスリンガーランドを代表する機種であり、このように3台も揃ってご紹介できたことを嬉しく思います。

4~50年ほど前の楽器ですが、充分現代に通用するサウンドを奏でてくれました。改めて当時の技術の高さを感じました。
さて次回は復活を遂げたスリンガーランドのスネアドラムをチェックしてみたいと思います!

札幌パルコ店 鳥塚

テレビで見たドラムに心を奪われてドラムを始め、バンド活動に明け暮れていたある日、何気なく訪れた楽器店で目にしたプロドラマーのドラムイベント(ドラムクリニック)に感銘を受け、楽器店員を志す。現在は札幌パルコ店勤務の傍ら、演奏活動も行う。

これまでに、米国のZildjianや大阪の旧SAKAEといった国内外のドラム/シンバル工場を訪問。長い演奏歴とスタッフ歴で培ったマニアックな知識は、島村楽器随一。

そして今では、世界中のドラマーの定番となったPROTECTIONracketのスネア&ダブルフットペダルケース「TZ3016」「TZ3015」の発案者。

偉大なドラマーを輩出し続ける北海道・札幌で、ドラムコーナーの灯を絶やさぬよう奮闘中。
MyDRUMS内で「トリヅカのマニアックドラム」を連載中!

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