こんにちはサカウエです。今回は昨年11月にリリースされたマルチトラック・オーディオ楽曲でセッションを楽しむことができる音楽教育用iOSアプリ「Session Tracks」をご紹介します。
マルチトラック音源でセッションができる!
「Session Tracks」はMusic Stem Works社が開発した、iPhone / iPadで使えるセッションアプリです。通常、iTunes Storeなどで購入できる楽曲ファイルは2チャンネル(L&R)のステレオファイルですが、このSession Tracksで再生できる楽曲は、ベース、ギター、ドラム、キーボードなどの楽器別に全10のマルチトラックのオーディオ・データとなっているのが特長です。
まずはこの動画をご覧いただくと概要が理解できるでしょう。
いかがですか?すでにDAWを使って音楽制作している方には見慣れた光景かもしれませんが、最大10の楽器別トラックを iPhone / iPad で自由にコントロールすることができるのですね。
このアプリの特徴は、それぞれのトラックごとにPAN(定位)、ボリューム、ON / OFFが設定可能なので、自分の好みのバランスやパート構成でマイナスワン演奏を楽しむことができるという点。楽曲によってはドラムはキック、ハイハット、スネア、タムといった具合にさらに細かく別れています。
演奏しているのはニューヨーク&日本の凄腕ミュージシャン!
現在用意されているライブラリーは、「FUNK」、「BLUES」、そしてクラシックの名曲などが用意されています(クラシックは打ち込み物のようですね)。演奏しているプレイヤーは、本場NYや日本の名だたるスタジオ・ミュージシャンの方々!
Ralph Rolle氏(CHICのドラマー、Session Tracksの各種トラックのプロデューサー)の解説ビデオ(字幕あり)
アプリ本体は無料で、楽曲ライブラリーはアプリ内課金で入手できる仕組み。上図のヘッドホンアイコンをクリックすると、サンプルを試すことができるようになっていますが、とりあえずサンプルだけでも結構遊べるようになっていますよ。
なお音楽データは、圧縮・暗号化されており、本アプリ内のみで再生でき、ユーザーはデジタルデータに直接アクセスする事はできない仕様となっています。
曲の情報を表示させると、楽曲の紹介、プレイヤーのクレジットやコード進行を確認することができます。
実際に試してみましたが、演奏は確かにゴキゲン!自分の演奏したいパートをミュートして演奏すれば本当に一緒にセッションしてる感じがしてきます。ピッチシフトやテンポチェンジには対応してはいないものの(10トラックを同時に変更するのはさすがに最新のiPhoneのCPUでもスペック的に無理のようです)バランスやパンを自由に設定できるのはマルチトラックならでは醍醐味ですね。
A /B 間のループ再生にも対応
同じ箇所を繰り返し再生できるので、これは練習にはもってこいですね。
オーディオ・インターフェイスは使えるか?
Session Tracksの基本的な使い方は、iPhone / iPad の出力をスピーカー等に繋いで再生しながら、ギターやドラムでセッションに参加することになると思います。
しかし、自宅や屋外でヘッドホンを使ってさらに良い音で練習したい!という場合はモバイル・オーディオ・インターフェイスを使用したいところですね。ただし、iPhone7(plus)のLightning端子経由で使用する場合、現在のバージョンでは一部の外部オーディオ・インターフェイス使用時にダイレクトモニタリングが非対応(※)。IK Multimediaの「iRig HD2」で試したところ、楽曲のプレイバックは問題ありませんが、入力したギターの音を聞くことはできませんでした。このあたりは将来的に AudioBus 対応も検討中とのことですので、今後のバージョンアップに期待したいですね。
※iPhone7付属の「Lightning - 3.5mmヘッドフォンジャック・アダプタ」を使用してiRig2でも試しましたが結果は同じでした。
YAMAHA AG03で使ってみた
とはいえここで諦めるわけにはいきません!iPhone7からLightning経由(※)でオケを聞きながら「ヘッドホンを使ってセッションする方法はないか?」ということで、今度はウェブキャスティングに便利な機能を備えた音楽・音声用3チャンネルミキサーYAMAHA「AG03」で試してみることにしました。結論から言うとこれは大成功!AG03のインプットに入れたギターやキーボードと、Session Tracksの出力をバッチリミキシングすることができました。
iOSデバイスとAG03を接続するためには「Apple iPad Camera Connection Kit」または「Lightning to USB Camera Adapter」 、AG03に電源を供給するには別途USBモバイルバッテリー(またはバスパワー電源)が必要となりますが、もちろんAG03-MIKU(Mikuミキサー)でも使えます! もし将来的にAudioBus対応が実現したら、iRigを接続するだけでAmplitubeで作り込んだギター音色とSession Tracksのサウンドをミックスして演奏を楽しむことができるようになるかもしれないので、これは期待大ですね。
※「Lightning - 3.5mmヘッドフォンジャック・アダプタ」経由だと音が劣化するという報告もあるようです。
クリエータ向き楽曲販売サービスも用意
開発元の Music Stem Works 社代表 大久保博志氏 にお話を伺ったところ、Session Tracksは、音楽愛好家、歌唱家及び楽器演奏者、音楽を学ぶ人、音楽指導者やスクール関係の方を想定ユーザーとしたアプリですが、他にも現在様々なジャンルのプロジェクトが進行中とのこと。教則的なコンテンツから、アカペラコーラスやアニソンなど、順次リリース予定とのことで、早ければ2017年3月中旬にも新タイトルがお目見えするかも?・・ということです。
さらに同社はマルチトラックの形式で音楽を制作、販売したいというクリエータに向けのライブラリー化サービスも検討中とのこと。複数トラックで再生する価値がある音声データであれば、音楽に限定しないということなので、自分の曲やコンテンツを販売してみたいという方はぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
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というわけでマルチトラック・オーディオ楽曲でセッションを楽しめるiOSアプリ「Session Tracks」いかがでしたでしょうか?個人的にはビンテージ楽曲(Queen、Zeppelin、Crimsonとか)のオリジナル・マルチトラックや、シークレット・トラック入りスペシャルバージョン・・なんてものがあると嬉しいです。(同一性保持権等の権利関係の処理で障壁は高いと思いますが・・・)いずれにせよ今後の進化が非常に楽しみなアプリです。それでは~
Session Tracksの主な機能
- マルチトラック音源ストア
- 楽曲リスト(カタログ)より、アプリ内課金方式で販売
- 購入済み曲一覧表
- マルチトラック音源再生ソフト
- 最大10トラックの再生 (Music Stem Works LLCストアにて販売する音源のみ)
- 各トラックのミュート(消音)及びソロ機能(特定トラックのみ再生)
- トラック毎のボリューム、パンポット(音像定位)
- 巻き戻し、リピート再生、リピートポイントの設定機能曲開始前カウント、曲中のクリック音(楽曲によっては無し)
※音楽データは、圧縮・暗号化されており、本アプリ内のみで再生でき、ユーザーはデジタルデータに直接アクセスする事はできません。
Session Tracks
Session Tracks - Music Stem Works LLC
Music Stem Works社ニュースリリース
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