2009年に発売されたJUNO-Diは、簡単に操作ができ気軽に持ち運びできることから、バンドのキーボーディストを中心に広まり、入門者、初心者のスタンダード・シンセサイザーとなりました。
その JUNO-Di が生産完了となり、後継機種 JUNO-DS が発売されました。
6年ぶりに生まれ変わるエントリーシンセJUNO。メーカーWEBサイトをみると一見、そこまで変わっていないような進化に見えますが、実際はどうなのか、徹底的に比較してみようと思います。
ライブで特に使う ピアノ / エレピ / オルガン 音色が強化
音色数はJUNO-Diが1338、JUNO-DSは1344となっていて、JUNO-Diのプリセットが1000音色程度引き継いでいますので、入れ替わったのが200程度になります。あまり変化ないように見えますが、JUNO-DSにはバンドで使う音色を中心に新しいウェーブフォーム(波形)を大幅に搭載されていて、メーカーWEBサイトには掲載されていませんが、実際には波形メモリーは倍の128MBが搭載されています。
よく使うモード、機能が分かりやすく配置し操作性がアップ
JUNO-Diにも搭載されている機能ですが、もっと操作しやすいよう改良されています。
例えばスプリット。鍵盤を分割してそれぞれに音色を割り当てる機能ですが、JUNO-Diでは、音色画面しか表示されませんでした。
JUNO-DSでは音色画面のほか各パートの音量、エフェクト状況が一画面で表示されるようになっています。
また、KEY TOUCH ボタンがパネルに設置され鍵盤を弾いたときのタッチ感を簡単に調節することができます。3段階から選ぶ、あるいは鍵盤を弾く強弱にかかわらず特定の強さのみ(例えば弱く弾いた時でも常に強く)にすることもできます。
些細な変更ですが、こういったユーザーからの意見を元に改良されるのは実際に使ってみなければ分からない部分でもあるので、とても重要なアップデートといえます。
即座に音色や音量などを調整できるコントローラー
JUNO-DS には4つのツマミが搭載しています。JUNO-Diには6つのツマミがありましたが、パラメーターはすべて固定でした。
JUNO-DSの4つのツマミは右のSELECTボタンを切り替えることで 4 × 3 パラメーターをコントロールすることができます。とくに自分がコントロールしたい任意のパラメーターを4つまで当てはめられるのは便利です。
また、4つのスライダーが新たに搭載されています。例えばライブでレイヤーサウンドを演奏した時に音量バランス悪いと感じでも、JUNO-Diでは調節しづらい点がありました。このスライダーが搭載されたことにより各音色の音量を即座に調整することができます。
最大16個の音色を組み合わせて演奏できるパフォーマンスモード
JUNO-DSは、最大16パートの音色を重ねること(レイヤー)や、キーボードに割り振ること(スプリット)ができます。JUNO-Diでは、パソコンに接続して専用のソフトを使う必要がありましたが、本体から操作できるようになったことで、強化されたパッチ・エディット機能や簡易サンプラー機能とあわせて、よりオリジナリティーある音色を作成することができるようになっています。
また、よくある要望の一つにスプリットした際に片方のパート(LOWER)のみオクターブ上げたい、あるいは下げたいといった操作も、パートごとに一覧で見ることができるので簡単に調整することがすることができます。
細かくパラメーターを調整できるパッチ・エディット機能
JUNO-Diは初心者の使い勝手を考慮し、本体からのエディットは制限されていて、たとえ音色を作ろうと思っても、プリセットを少しいじるといったことしか出来ませんでした。JUNO-DSではその制限が解除されています。
エフェクターも1つのみ(デュアルの時は2つ)という制限も解除されていて、1~3のエフェクトを直列で接続して使用できるようになっています。
また、コントロール部分も強化していますので、各パートに対してどのコントローラーを当てはめるのか設定することができます。
例えば、一般的な音作りでピアノ + ストリングスをレイヤーすることがありますが、その際、ピアノのみサスティンペダルを有効にするといったことができるようになります。
録音した音を取り込んで演奏できる簡易サンプラー機能
JUNO-DS には、サンプル・インポートという簡易サンプラー機能が搭載しています。正確にいえば、本体で録音できるわけではなくオーディオファイルを読み込んで再生するサンプル・プレイヤーになりますが、JUNOシリーズ初、鍵盤に割り当てて演奏できるようになっています。
サンプラーは難しいイメージがあったり、素材を用意するのが大変だったりして、なかなか使用者が少ないのですが、使ってみるととても便利です。
例えば…
サンプラー用途
- ドラムやパーカッションなど楽器音を取り込んで内蔵音源をさらに増やす
- DTMで制作した素材(ループなど)を内蔵音源と一緒に使う
- ドアを開閉する音や風鈴の音、足音などの効果音(SE)を曲のエッセンスとして使う
など、これ以外にもたくさんの用途で使われていて、使い道は無限にあるといえます。
JUNO-DS はあくまでサンプラー機能の一部が搭載されているだけなので、可能なことはある程度となりますが、それでもバリエーションを増やすことができます。
今回は、上記で挙げた 1 を実際に行ってみたいと思います。
サンプリングするのは鉄琴です。
用意したものはこちらと、収録したデータをUSBメモリーに移すためのパソコンです。
- 録音レベルが微調整できるPCMレコーダー「R-05」
- 収録する楽器(今回は鉄琴)
- JUNO-DSに移すとき使用する専用USBメモリー
コチラは最新モデル
これらを使って録音(サンプリング)するのですが、なるべく雑音の少ないところで収録するのをおすすめします。
次に、録音したものをJUNO-DSでフォーマットした専用USBメモリーに移し、JUNO-DS の本体に挿し、音を読み込みます。
その際、(音階がある楽器ならば)収音したキーにあわせてセットするだけで、自動的にすべての鍵盤に音階が割り振られますので、単音収音するだけの手軽さです。
今回はほとんど編集しておりませんが、サンプリングした音は細かく編集できるようになっています。
これで完成です。どんな音になったかというと…
まずは、内蔵音でサンプリングした音に近いサウンドを選びましたのでそちらをお聞きください。
似たようなJUNO-DS内蔵音色
サンプリングした音
サンプラー用途 2,3 の効果音やループ素材、ライブ同期として素材を再生するには、サンプル・インポート機能ではなく、オーディオ・プレーヤーという機能で行います。
使い方は先ほどとほとんど同じで、素材をUSBメモリーで取り込んだ後、[AUDIO]ボタンから再生したいソングリストを選択することでパッドにその音が割り当てられます。
USB オーディオ・インターフェイス機能
JUNO-Di は、MIDI機能のみでしたが、オーディオ・インターフェイスとしても使えるようになっています。
また、 FAシリーズ に搭載されたDAWコントロールモードが移植されていますので、DTMソフトと一緒に使う方にとって便利になっています。
DAWコントロールモードは、MIDIキーボードとして使えるのはもちろん、CubaseやLogicPro など各種DAWソフトウエアに適正化されたマッピングで、再生/停止のコントロールやツマミやスライダーを割り当てることができます。
オーディオ・インターフェイスは、JUNO-DSの音をDAWに録音したり、リアパネルにあるマイク入力端子からの音声をDAWに録音したりすることができます。ボコーダー機能で加工した音も録音することができますので、ボコーダーやケロケロボイスにしたトラックを簡単に制作できます。
さらに強化されたボコーダー機能
JUNO-Di でも搭載していたボーカル専用のリバーブとボコーダーですが、JUNO-DS はさらに強化されています。
JUNO-DS のボコーダーはシンセのエフェクトとは別系統になっていますので、気にすることなく使用することができます。
また、オートピッチ機能が新たに備わっています。これは音程を補正する機能で、極端にすると音程が階段状になり、人工的なケロケロした声にすることもできます。
ボコーダー、オートチューンとは:
https://info.shimamura.co.jp/digital/special/2013/09/9321
サスティンペダル以外にエクスプレッションペダルも接続できる2フットペダル
JUNO-Di にはフットペダル入力端子が1つのみだったのですが、2つに増えています。
これはもっとも多かった要望のひとつで、キーボーディストが必ず使うダンパーペダル(ホールドペダル)と、もう一つ、(例えばボリュームを調整するエクスプレッションペダルなど)足でコントロールしたい機能を設定することができます。
JUNO-DSで使用可能なエクスプレッションペダル
JUNO-DSで使用可能なダンパーペダル(ホールドペダル)
また、エクスプレッション・ペダルを挿せるペダルコントロール端子は、エフェクターの掛け具合などさまざまなパラメーターを割り当てることもできます。
よく使われるのは音色チェンジ。演奏している最中に手で音色を切り替えられないとき、素早く足で切り替えることができます。
※ 切り替えなどはフットスイッチをご使用ください。
JUNO-DSで使用可能なフットスイッチ
JD-Xi に搭載されているパターンシーケンサー機能
パターンシーケンサーは、任意で決めた短い小節を繰り返しながら鍵盤の演奏やツマミの操作を録音して即興楽曲制作を楽しめるパフォーマンス用の作曲ツールになります。
JD-Xiのようにステップシーケンサーはありませんが、8小節分の入力が可能になっていてより多く入力できるようになっています。最大で8トラックあり、音色を切り替えたり重ねながらループ・パフォーマンスを演奏することができます。
パフォーマンスではなくても、リズムマシンのように簡易的にドラムを入力しておくことや、演奏している音色とは別にアルペジオを足して楽曲に彩りを加えることもできます。
好きなEXPシリーズから音色を追加可能
JUNO-DS には、音色を追加/交換できるウェーブ・エクスパンション・スロットと呼ばれる書き換え可能な波形メモリーを搭載しています。初期設定ではEXP06がプリインストールしていますが、こちらをローランドWEBサイト Roland Axial からお気に入りの音色をダウンロードして差し替えることができます。
JUNO-Diの音色データ互換
JUNO-Di で、作成した音色データは JUNO-DS でも使うことができます。JUNO-Diを借りていた、あるいは学校に常備されていたのを使用していた方は、そのまま切り替えることができます。
JUNO-Di ユーティリティ画面からバックアップを選び、ユーザー・データをUSBメモリーに保存。
それをJUNO-DSのユーティリティからJUNO-Di用のリストアを行うことで音色を移行できます。
JUNO-DS 新機能 まとめ
JUNO-Diより新たに加わった機能、強化された箇所をまとめてみます。
- バンドで特に使う ピアノ / エレピ / オルガン 音色が強化
- よく使うモード、機能が分かりやすく配置し操作性がアップ
- 即座に音色や音量などを調整できるコントローラー
- 最大16個の音色を組み合わせて演奏できるパフォーマンスモード
- 細かくパラメーターを調整できるパッチ・エディット機能
- 録音した音を取り込んで演奏できる簡易サンプラー機能
- USB オーディオ・インターフェイス機能
- さらに強化されたボコーダー機能
- サスティンペダル以外にエクスプレッションペダルも接続できる2フットペダル
- JD-Xi に搭載されているパターンシーケンサー機能の一部をピックアップ
- 好きなEXPシリーズから音色を追加可能
- JUNO-Diの音色データ互換
JUNO-DSとJUNO-Diを比較してみて、より多くの機能を追加しているのが細かく見ると分かります。とくに音色の強化やレイヤー数、ライブで直感的に操作できるようになった点は、従来のJUNOシリーズのユーザー意見を取り入れた形といえます。
ただ、試して気づいた点としては、手軽さがウリの一つであったJUNO-Dシリーズですが、どちらかというとJUNO-Gシリーズ近い内容になっています。ユーザーにとって機能が増えることは、さまざまなパフォーマンスを披露できるメリットがある一方で、(入門者にとって)使いにくくなってしまうというデメリットがあります。
しかし、JUNO-DSは、従来のJUNO-Diの機能を使うことにおいてはほとんど同じ操作方法で使うことができるよう工夫されていて、いかにそのデメリットを抑えているかがわかります。
機能が増えつつも可能な限り使いやすさを追求したシンセ、それがJUNO-DSという印象です。
JUNO-DS 61 単体価格
(税込) ¥83,600 (税抜 ¥76,000)
JANコード:4957054507367
JUNO-DS 61 セット価格
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