※日本オーディオ協会推奨ハイレゾ・ロゴマーク(同協会ニュースリリースより転載)
はじめに
「ハイレゾ・オーディオ(またはハイレゾ音源)」「ハイレゾ対応」といった言葉を良く耳にしますが、この「ハイレゾ」というのは「ハイレゾリューション=High(高) Resolution(解像度)」の略で「高解像度」を意味します。「音」の場合は、デジタル化する際の解像度のことで、音の解像度が高ければ高いほど「高品質な音(注1)」ということになります。
映像の場合は、解像度が高くなればなるほど「美しい画像」になるわけですね。家電店の液晶テレビコーナーで、4k(ヨンケー)とか8k(ハチケー)といった表示を見ることがありますが、これはテレビの解像度が横4000ピクセル(注2)ですよという意味です。ちなみに4Kはフルハイビジョンの4倍の画素数となります。
- 注1)高品位、高音質の基準は記録した情報の再現性が高かどうか測定は可能ですが、最終的な「よい音」の判断は個人の感じ方や好みに依存すると言われています。
- 注2)kはキロ(1000)ピクセルは色情報の最小単位、多ければ多いほど精細な表示が可能となります。
「ハイレゾ・オーディオ」とは?
ハイレゾ・オーディオが高品位であるということはなんとなくご理解いただけたかと思いますが、では何と比べて高品位なのでしょうか?それを説明する前に「デジタル化された音」についておさらいしておきましょう。
CD、DVDなどのデジタル化された音楽(または音)データは、みな標本化と量子化(ここで覚える必要はありません)といったプロセスを経てデジタル化されています。サンプラーという楽器やDAWなども0と1という数値に音を置き換えてデジタルデータとして記憶するわけですね(代表的なのがPCMという方式)
デジタル化のイメージ
アナログ信号を・・・
デジタル化
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ここでどれだけの細かさでデジタル化するのか?の単位が「レゾリューション=解像度」と考えてください。たとえばCDの場合は「44.1kHz、16bit」という単位でデジタル化されているのですが、この数字が大きくなればなるほど高解像度となります。
レゾリューションのイメージです(グラフ横軸の細かさがHz、縦軸がbitとお考えください)
1)オリジナルの音声信号
2)低レゾリューション
3)高レゾリューション
ハイレゾ音源の定義はこれまでけっこう曖昧だったのですが、JEITA(一般社団法人 電子情報技術産業協会)が、昨年その基準を発表いたしました。
これによればハイレゾ・オーディオは「CD スペックを超えるデジタルオーディオであることが望ましい」ということで、まとめたのが以下となります。
というわけで従来のCD、DVD、DATと等と比べて高品位な音楽等を楽しむことができるのがハイレゾ・オーディオということになります。なお「96kHz/24bit」の場合はCDの約3.2倍、「192kHz/24bit」になると約6.5倍の情報量を含むことになります。ただしその分データ・サイズも大きくなります。
近年、スタジオ・レコーディングでは「96kHz、24bit」で録音するケースも増えているようですが、ならばそのままの解像度で聞きたいと思う方も多くなっているのではないでしょうか?そんな背景もあって、ここ数年でインターネット経由でハイレゾ・オーディオ(音源)を購入できる音楽配信サイトも増えてきました。
さまざまなアーティストの過去の名盤リマスターや、最新のレコーディング機器で録音された最新作等をハイレゾで楽しむことができるようになったのはありがたいことですね。
音声ファイル・フォーマットについて
最近はWAV、MP3、AAC、最近ではMQAなどのほか、FLAC(フラック / Free Lossless Audio Codec)というファイル形式で楽曲が販売されるケースも多くなってきました。それではここでこれらのファイルの違いについてまとめてみましょう。
photo by wikipedia
詳しい原理等は割愛いたしますが、「非圧縮」のデジタル音声データが「リニアPCM」と呼ばれる「WAV(ワブ)」や「AIFF(エーアイエフエフ)」で、これが一番高品位となります。iTunesで購入できるAAC(Advanced Audio Coding)やお馴染みのMP3、WMAは「圧縮」ファイルなので、WAVと比較すると音質的には負けますが、データサイズが小さくて済むという利点があります。
なおこの圧縮グループのなかには可逆圧縮と不可逆圧縮という種類があります。たとえばオリジナルの音声ファイルを圧縮した場合、色々切り捨ててしまってもう元には戻せないのが不可逆圧縮(AAC、MP3、WMAなど)です。
しかしFLACというのはオリジナルの音声を圧縮してデータサイズを小さくできる上に、なぜかまたもとに戻すことができるという可逆圧縮方式ファイルなのです。
しかもオープンソースでライセンス料金が発生しないということで、近頃は音楽配信サイトでもFLAC形式のファイルが採用されているケースも増えてきました。可逆圧縮方式は他にもアップル社のALAC(Apple Lossless Audio Codec)などがあります。※iPhoneなどでALACファイルを再生しても、ダウンコンバートされ非ハイレゾになります。

MQA(Master Quality Authenticated)
メリディアン・オーディオ社が開発。e-onkyo musicでダウンロード配信されているフォーマット。独自の「折りたたみ」技術によりハイレゾ音源をCD並のサイズにロスレス圧縮を行う。昨今注目のコーディング技術。
DSDとは?
ハイレゾ・ブーム?の昨今、DSD形式のハイレゾ・オーディオというものが注目されています(日本オーディオ協会によってDSDもハイレゾとして扱われています)
DSDというのは「Direct Stream Digital」の略で、CD-DAやDVDビデオのPCM方式(16bit44.1kHzなど)ではなく、ΔΣ変調(デルタシグマへんちょう)とよばれる原理でデジタル化する方式のことです。DSDは高サンプリング周波数、低ビットが特徴で、たとえばCDの64倍の「2.8224MHz(=2822.4kHz)、1bit」という、サンプリング周波数が非常に大きな単位(※)でデジタル化されています(5.6448MHz、1bitなどもあります)
PCM方式と比較すると低ノイズ、瞬発力の高さ、データ量の軽減等々の特徴があり、PCMに代わる今後の主流となるといわれているようです。
※PCMの場合、音の大小を記録するビットレイトは24bit、96bitなどですが、DSDの場合は1bit(0か1か?)しかありません。DSDでは音の大小を空気振動の粗密として考え記録します。その際、時間辺りの0(ない)か1(ある)の数を膨大に持つこと(=高いサンプリング周波数)で空気振動の粗密を記録できる・・・というイメージです。
photo by wikipedia
この原理を採用しているものには「SACD」がありますが、最近はこのDSDに対応したレコーダーやインターフェース(DAC)などが多く発売されています。
※DSDにはDSDIFF、DSFなど様々なファイルフォーマットがありますがそれぞれに互換性はありません。
注)「1bitオーディオ=DSD」という認識の方もいらっしゃると思いますが、実際にはΔΣ(デルタシグマ)変調だけが1bitオーディオというわけではないとのことです。
ハイレゾ・オーディオを楽しむには何が必要?
さてそれではハイレゾ・オーディオを楽しむためには何が必要なのでしょうか?ざっと以下の様なものになるかと思います。
- パソコン(ブロードバンド・ネット環境必須)
- ハイレゾ対応再生ソフト(※)
- ハイレゾ対応再生機器(DAC、オーディオ・インターフェース、ポータブルプレーヤーなど)
※)ハイレゾ対応ポータブルプレーヤの場合は、再生機能が本体に備わっているので再生ソフトは別途必要ないかと思います。なおリスニングスタイルに応じて
- ハイレゾ対応イヤホン、ヘッドホン
- アンプ・スピーカー等
が必要になってくると思います。
パソコンにイヤホンを接続して再生ソフトで再生することもできますが、これではハイレゾの意味がありません(PCのノイズや、再生の時点でハイレゾではなくなっているのです)これは超高画質の映像作品をブラウン管(古!)の白黒テレビで見ているようなものですね。そこで上記のような専用機器が必要になってくるのです。
1)ポータブルプレーヤーでどこでもお手軽再生
2)USB-DACまたはオーディオ・インターフェース
DACというのは「digital to analog converter」の略でデジタル信号からアナログ信号に変換する(D/A変換)機器のことです。
広義にはUSB DACもオーディオ・インターフェースの一種ですが、DACはD/A変換=すなわち出力のみのリスニング向けオーディオ・インターフェース。D/A変換だけでなくギターやボーカルなどのアナログ信号をデジタルに変換してパソコンに取り込む機能(A/D変換)=すなわち入出力機能を持っている「音楽制作向けオーディオ・インターフェース」が一般的には「オーディオ・インターフェース」と呼ばれているようです。ややこしくてすみません。
USB-DACとオーディオ・インターフェースの違いをまとめてみます。
- オーディオ・インターフェース:音楽制作向き:入出力対応(AD/DA)
- USB DAC:ハイレゾに特化したリスニング向き:出力のみ(D/A)

※アンプが内蔵されていないスピーカーを使用する場合は別途アンプが必要となります。
最近は192kHz、24bit対応といったオーディオ・インターフェースも多いので、オーディオ・インターフェースでハイレゾ・オーディオを楽しむことはできます。DSDに対応している音楽制作用オーディオ・インターフェースはまだ少数のようです。DSD音源リスニング・オンリーであればRoland のMobile UAのようなUSB DAC、等がおすすめです。
ハイレゾ再生ソフト
パソコンでハイレゾ・オーディオを再生するためにはハイレゾ対応ソフトが必要です。たとえば無料の iTunes はDSDやFLACは非対応です(2015/2現在)Windows対応「foobar2000」等のフリーウエアや、Windows Media Player 12の場合は、特定のコーデックをインストールしたり、各種設定もかなり複雑なので今回はあえて取り上げませんでした。どうしても無料が良いという方はGoogle検索で色々と出てくるので、自己責任でよろしくお願い申し上げます。
foobar2000

というわけで、ここではKorgのAudio Gate3ご紹介いたします。
「AudioGate3」はダウンロード後にDS-DACシリーズ、MRシリーズ本体を接続してライセンス認証を行うことにより、正規版として使用することができます。同シリーズのユーザーでない場合は、機能制限付きのライト版を無償で使用可能です。

【ライト版の制限事項】
- DSD再生は44.1kHzまたは48kHzのPCMへの変換再生になります。
- 出力サンプリング周波数は44.1kHz、48kHzのみ
- 編集機能:分割、統合、チャンネルリンク不可
- エクスポート不可
- リアルタイム変換処理:低負荷のみ対応
- デイスク作成
正規版のAudioGateは、MP3やAAC、44.1/48kHz ~96/192kHz のWAV、FLAC、DSDという幅広いファイル・フォーマットに対応しています。また量子化ビット数やサンプリング周波数の違いのみならず、異なるファイル・フォーマットとの混在したプレイリストによる再生も可能となっています。
http://www.korg.com/jp/products/audio/audiogate3/index.php
ライセンス購入はこちら
2015/6/18 追記:ティアック株式会社が、DSD 11.2MHz/PCM 384kHz 32bit対応の 波形編集ソフトウェア『TASCAM Hi-Res Editor』 Windows版をTASCAM(タスカム)ブランドで無料配信を開始しています。
ハイレゾファイル編集が可能なソフトウェア TASCAM Hi-Res Editor 無料ダウンロード
Audirvana Plus
Mac専用でしたが最近Windows版もリリースされた定番ハイレゾ対応オーディオ再生ソフトです。
体験版のダウンロードは下記より
https://audirvana.com/
おまけ:ハイレゾ・オーディオを購入できるサイト紹介
ototoy : http://ototoy.jp/top/

e-onkyo music : http://www.e-onkyo.com/music/

mora : http://mora.jp/index_hires

Victor studio HD-Music : http://hd-music.info/

販売されているハイレゾ・オーディオがご自分の機材、環境で正常に再生できるかどうかは必ず各サイトでご確認ください。
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そんなわけでハイレゾについて色々とご紹介してきましたが、そもそも「ハイレゾってほんとうに音が良いの?」「ちゃんと聴き分けることができるの?」といったご意見もあると思います。あと世の中には単にビットレートとアップサンプリングしたいわゆる「偽レゾ(ニセレゾ)」と呼ばれる音源もあるようで話はややこしくなるのですが、上記で紹介した配信サイトには無料ハイレゾ・サンプルをダウンロードできるところもありますので、実際にご自分の耳で確かめていただきたいと思います。それでは~
【関連記事】【今さら聞けない用語シリーズ】初めてのオーディオ・インターフェース選び
以下のものはハイレゾではありません。
※DAT/DVD などのフォーマットで使用されている 48kHz/16bit も「非ハイレゾ」となっています(44.1~48kHz/16bitはCDスペックと定義)