ドイツの男2女2の4人組ニューウェーブバンド" Propaganda "(プロパガンダ)は、一般的にはシンセポップ、ニューウェーブにカテゴライズされるようですが、自分は勝手にプログレだと思っております。
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1985年にZTTレーベルより発表されたアルバム「A SECRET WISH」は、Propagandaのデビュー作。当時はとにかく「音が凄い」と(一部で)評判になりました。シンセを中心とした最先端のサウンド、おどろおどろしい雰囲気の中にかいま見えるポップセンス、クラシック的素養の溢れる楽曲・・・今聞いてもしびれます・・
トレヴァー・ホーン(元バグルス、イエス、アート・オブ・ノイズ)、デヴィッド・シルヴィアン、ポリスのスチュアート・コープランド(Dr)やイエスのスティーヴ・ハウ(Gt)らがちらっと「参加」しています。
"Duel"
" Duel "(track4)、" p:Machinery "(track6)は日本車のCMや、TV番組でも使われていましたので、ご存じの方もいらっしゃると思います。なお"Duel"ではスチュアート・コープランドのドラムフレーズをサンプリングし、素片として再構築しているということですが、スネアの音はめちゃくちゃ良いですね。
" p:Machinery " 1:15~のブラス・フレーズのところがCMで使われておりました・・・ライブはもちろん「当て振り」です
さて本アルバムでフィーチャーされているのが「PPG Wave 2.3」(ピーピージー・ウェイヴ・ツーポイントスリー)というシンセです。PPG(Palm Productions GmbH)はWolfgang Palm氏が創立した、「WALDORF」(ウォルドルフ)の前身ともいえる企業(GmbH=有限会社)です。
この「PPG Wave」は同氏が開発した、世界初のデジタル方式のウェーブテーブル・シンセサイザー。
私は数回ほど触った程度しかないのですが、オシレーターはウェーブテーブル(サンプリング波形のこと)方式、VCF(フィルター)とVCA(アンプ)はアナログ・・というハイブリッド・サウンドが特徴です(8音ポリフォニック)。
「Wave 2.2」は2,000種類のウェーブフォーム(8ビット)のオシレーターを搭載、「Wave 2.3」から12ビット、MIDI対応、マルチティンバーになりました。1985年の国内価格ですが、Wave2.2は198万円、2.3は250万円・・車の値段です。
PPGのサンプリング・レコーディング・システム「WAVE TERM」(348万)と組み合わせることで、Fairlight CMI(フェアライトCMI=1200万円)っぽいことができたと言われております・・・シンセで音楽やるのは金かかったんですね・・まあ昔の話ですが・・
※フェアライトCMI:サンプラー&ワークステーションの元祖、「ジャン」というオケヒットで有名
プラグインソフト
「PPG WAVE」をエミュレーションしたプラグインでは、waldorf社の「WALDORF PPG Wave 3.V」が発売されております。1985年当時600万円くらいのシステムが、現在ではパソコン込みで100分の1の値段で買えるわけですね。
INTEGRA-7で打ち込み
今回はRolandの音源モジュール「INTEGRA-7」を使用してアルバム1曲目の「Dream within A Dream」をサクッと打ち込んでみました(耳コピ&制作時間30分)
こちら原曲
【パート構成】
- ドラム
- シェーカー
- コンガ
- ベース
- ギター
- マリンバ
- トランペット
- シンセストリングス1 (Hi)
- シンセストリングス2 (Mid)
- アルペジオのシーケンスパートは面倒なので省略
「Dream within A Dream」はエドガー・アラン・ポーの詩を引用したポエトリーリーディング。
All that we see or seem Is but a dream within a dream.
「この世は夢のまた夢・・」みたいな詩の通り、耽美的で神秘的な楽曲です・・・インセプション思い出しました。
この曲は8分間ベースはずーっと「C」で、和声部はFsus4、F#(b5)、F#(#5)、Fm、EbM7、Dm7、Dsus4といった変なコードが使われていますが、非常にスリリングな展開で惹きこまれますね。
同じ音をルート保持するこうした手法をベダル・ポイント(※)と呼びますが、オープニングがいきなりこの曲というのは「ポップバンド」としてはかなりの冒険ではなかったかと思います。トランペットはサンプラーではなく生(by Allen L. Kirkendale)
コードは2種類のシンセパッドで演奏されていると思われますが、非常に重厚なハーモニーを奏でております。今回はオクターブレイヤーされたキラキラ系のシンセ・ストリングスを高音部に、中域にはモワっとしたパッド系サウンドを配置してみました。
ところで本作ではやはりFairlight CMIは使用されていたのでしょうか?・・・クレジットには無いのですが・・諸説あるのでどなたかご教示いただければ幸いです。
※バロック音楽等で行われる「通奏低音」は、低音の旋律に伴奏をつける演奏形態のこと。ペダル・ポイントとは違います。