バンド練習や個人練習でスタジオでドラムを演奏するドラマーさんに是非持っていただきたいマイスネアドラム。
ドラマーのみなさんがマイスネアを選ぶ際にお役に立ちたいと考え、スネアドラムの選び方、違いを3回にわたりご紹介するシリーズ企画。
第一回の「サイズによる違い」も、皆様たくさんアクセスありがとうございます!
今回はその2回目、スネアドラム選びで最も重要だと考えられる「材質の違い」をご紹介します。
材質の違いとは?
ドラムの音色を司る要素は多数ありますが、そのなかでもやはりドラムのシェル(胴)の部分の材質は、サウンドをもっとも大きく左右します。
その材質は大きく分けて木材(ウッド)と、金属(メタル)に分かれます。

スネアドラムを選ぶときにはまず、ご自身のイメージする音色がウッドかメタルのどちらに近いか見極めましょう。
音源や動画、ライブで聴いた音色、スタジオで借りたスネア…音色のイメージは皆さんそれぞれかと思いますが、そのイメージに近い音色は木材か金属か、この2択が決まると選びやすくなります。

さらに、ウッド、メタルにも様々な材質があります。それぞれの材質の性質がサウンドを大きく左右します。
今回は代表的なウッド(木材)/メタル(金属)のスネアドラムの例をご紹介いたします。
ウッド(木材)シェル
木材ならではのあたたかみ、丸さや太さがあります。
目指すサウンド特性に近い材質を選んでいくと音色を決めやすいでしょう。以下に今回試すことが出来た代表的な木材をご紹介します。
メイプル

紅葉が美しいカエデの仲間で、カナダ国旗のデザインや、シロップがとれる樹木としても知られており、ドラム関連ではスティックでも使われています。
比較的軟質な木材の為加工しやすく、木目も美しいためドラムでは最もポピュラーな材質です。
20世紀にドラム製造産業が興った北米大陸において、質の高いメイプル材が入手しやすかったという背景もあるようですが、この明るくはっきりとした音色は、最も「ドラムらしい」音色と言って良いでしょう。
バーチ

ドラムシェルの材質としてはメイプルに次いでポピュラーな材質である「バーチ」材。日本名は「カバ」。
「ヤマハ/YD9000・レコーディングカスタム」「TAMA/グランスター」等ドラム史に残る名器に用いられ、愛されてきました。
一般的にはメイプルより中低域が豊かな音色とされますが、メーカーやシリーズにより音色は様々なため、「中低域」にこだわらずに選んでいくのが良いでしょう。
過去の国内ブランドでは、「北海道産バーチ使用」の記載があったものもありました(現在ではその表記は見当たらないようですね…)
オーク

こちらもスティックではお馴染みのオーク(樫)材。スティックでは、感触が硬く、重量は比較的重め。曇ったような暗めの音色で愛用されていますが、ドラムシェルの材質においても硬め、かつ中低域が特に豊かな音色で人気があります。
材の画像はスティックですが、メイプルよりもやや白っぽく、特徴的な木目があります。
ローズウッド

ギターやベースの指板、マリンバの音板でもおなじみですが、打楽器ではクラベスやフラメンコカスタネット等でも用いられています。
ローズウッド製クラベスの澄んだ深みのある響きの音色になじみがある方も多いでしょう。
ドラムにおいては豊かな音量と、他の材にはない深みのあるサウンドが多くの人を魅了してきました。
比較的硬めの木材のためドラムシェルに成型するには高い技術が求められ、さらに現在では国際的に保護されている貴重な木材のため、最近ではラインナップ自体少なくなっていました。
しかし昨年には(2024年)TAMAの50周年を記念して復刻生産され、たいへんご好評をいただきました。(すでに生産完了、店舗在庫限りです)
ウォルナット

実が食用にされるクルミの仲間の樹木。ギターやベースではよく用いられるそうですが、ドラムに用いられることは比較的珍しい材です。
硬質な木材ではありますが、豊かな中低域が感じられ、幅広い音作りが可能であると感じました。
叩いてみました・ご参考まで
メイプル→バーチ→オーク→ローズウッド→ウォルナット→メイプル+バーチハイブリッドの順に7台試しております。
金属(メタル)その他
今回用意することができました金属その他の材のスネアドラムをご紹介いたします。
なお金属は表面仕上げで色や質感が異なります。材質が違っても表面仕上げ(メッキ)が同じだと見た目が同じ、ということもありますので、シェル画像は参考までとどめて置いて頂けますと幸いです。
スティール

金属スネアドラムの材として最も幅広く用いられているのがスティール(鉄)。比較的安価な金属で加工も容易なため低価格帯のスネアドラムにも多く用いられています。
荒々しく豊かな倍音をもち、ストレートに鳴り響くサウンドのためロック中心に愛用されています。金属スネアドラムの代名詞的なサウンドと言って過言ではないでしょう。
(画像はブラックニッケルメッキのため、黒っぽい見た目になっています)
ブラス

ブラス(真鍮・黄銅)は金管楽器やお鍋、やかんにも使われる比較的柔らかめの金属です。
良く振動する性質を持つため管楽器に使われていますが、スネアドラムの材質としても古くから愛用されてきました。
高いピッチにした際はきらびやかで華やかな、低いピッチではしっとりとした太いサウンドを楽しむことが出来ます。
もともとの素材の色は金管楽器にみられるような金色ですが、スネアドラムの場合はクロームメッキ(銀色)やブラックニッケルメッキ(黒鉄色)を施す場合が多くあります。
メッキというのは金属でのコーティングであるため、ルックスが変わるのはもちろんですが、メッキの素材によるサウンドの違いがあるのも金属スネアドラム選びの面白いところです。
アルミ

こちらもドラムシェルの材質としては古くから愛用されてきたアルミ。1円硬貨にみられるように軽く、大変柔らかい金属です。そのためサウンドも金属スネアとしては柔らかめであり、耳に痛くなく、キレの良いサウンドが楽しめます。
アルミシェルもメッキを施したモデルも多く、その場合はメッキの効果でサウンドをより引き締めまとめるような効果が得られます。
ブロンズ

後述の「銅」にスズ(錫)などを混ぜた合金であるブロンズ(青銅)。
銅像の材質はこのブロンズですが、お寺や教会の鐘、さらには我々ドラマーにもなじみ深いシンバルもその多くが銅とスズの合金を使用しており、楽器にも適した金属であると言えるでしょう。
お寺の鐘の響きからイメージできるように、他の金属とは一線を画す重厚で深みのあるサウンドを持ち、ウッドシェルのような中低音からメタルシェルらしい高音域まで幅広い音域を奏でます。
カッパー(コパー)

こちらも古くから楽器の素材として多用されてきたコパー(カッパー・銅)。10円硬貨の素材として身近な存在ですが、打楽器ではティンパニーの素材として使用されており、スネアドラムのシェル材質としても古くから愛用されてきました。
コパーシェルのスネアドラムは、各メーカーのアイテム数は決して多くありませんが、コンッ!と深く響くような存在感のあるサウンドが多くのドラマーの憧れにもなっています。
カーボン

さてここからはウッド、メタル以外のシェルをご紹介。今回試すことが出来たこちらはカーボンシェル。
自動車や自転車、スポーツ用品などにも使用される軽量で強靭なカーボンファイバーは、鋭くカラっと乾いたキレの良いサウンドが特徴です。カーボン単体のもの、メイプル材と貼り合わせたものが製品化されています。
アクリル

透明な見た目で人気のあるアクリル素材。ドラムシェルの材としては古くから愛用されてきた素材です。画像のような透明の他に、赤、青、緑やオレンジ色、グレーがかった色など、さまざまな色のものが存在します。見た目の派手さとは裏腹にさえ感じる、太く丸みのあるサウンドが特徴です。
叩いてみました・ご参考まで
スティール→ブラス(クロームメッキ)→ブラス(ブラックニッケルメッキ)→アルミ→ブロンズ→コパー→カーボン
ハイブリッド素材

2種以上の材を組み合わせたハイブリッド(複合)材が用いられることもあります。
ハイブリッド(複合)シェルはおもにはウッドを2種類以上組み合わせる場合がほとんどですが、ウッドと金属、ウッドと樹脂を組み合わせるものも少ないですが存在しました。
今回ご紹介したなかではウッド編の動画で
- メイプル+バーチのハイブリッド(コンポジット)シェル
- 明るくキレの良いメイプル+バーチのアタック感
- オーク+フェノリックシート(画像)
- オークの低音+フェノールシート(合成樹脂のシート)の硬いアタック感
を試しています。ハイブリッド構造の場合、組み合わせた素材同士の特徴がプラスされたサウンドであると言ってよいと思います。
画像のシェル断面では、ウッド(オーク)で挟まれた黒いフェノールシートがご覧いただけます。(シェル内面はブラックの塗装です)
おしまいに

今回はスネアドラムの材質の違いをいくつかご紹介しました。みなさんのイメージに近いサウンドの材質はありましたでしょうか?
もちろん、同じ材質でもサイズやパーツの仕様の違いによりサウンドが大きく異なります。その点がドラム選びの難しくて楽しいところですが、迷った場合は是非お近くの島村楽器MyDrumsショップへご相談ください!
今回の記事が、みなさんの理想のスネアドラムを選ぶ参考になれば嬉しく思います。
さて次回はスネアドラムの選び方Part3にして一区切りの最終回「カスタマイズ編」を近日upいたします!
この記事を書いた人
札幌パルコ店 鳥塚

ドラマーさんのお悩み解決のため毎日元気に営業中!