
ペダル選びを楽しもう!!

ドラムセットの中心に文字通りどん!と構えるバスドラム。
低音でリズムの根幹を提示する、ドラムセットのなかで最も重要なパーツであると言っても良いでしょう。
そのバスドラムを演奏するのが、これからご紹介するドラムペダルです。手の動きのままにドラムやシンバルを鳴らすスティックと違い、バスドラムペダルは、
- フットボードを踏む
- チェーン等で回転運動に変換する
- ビーターが動き。バスドラムヘッドをヒットする
- スプリングでビーターが戻る
という、言葉にするとずいぶんといろいろな段階を踏んでいます。何気なく踏んでいるのが申し訳ない気分になってきました…。

楽器なのに単体では音が出せず、メカメカしい外観はなにかの機械の様でもあります。そして、華々しいステージでも、客席から見えないところで黙々と踏まれて仕事をしています。
地味な存在のようではありますが、ビギナードラマーさんが最初に手に入れるドラム機材であることも多いでしょう。
さて、そんなドラムペダルを、より身近に感じていただき、よりよいペダル選びができるように、これから何回かに渡って代表的な機種を検証していきます。
そして、第一回目にはNAMMショー2016で発表され、5月の発売を控えている新Eliminator「Red Line」シリーズも登場します。
ドラムペダルとは

ドラムペダル黎明期のデザインを引き継ぐ、Ludwigのスピードキング(現在生産完了)
ドラムペダルの歴史は、そのままドラムセットの歴史と言ってもよいでしょう。
時は1800年代終わり頃から1900年代はじめごろ。大太鼓、小太鼓、シンバルを一人づつ演奏していたものを、一人で演奏できるようにしたものがドラムセットの成り立ちです。
初期のドラムペダルは、足で踏む板の先にマレットがくくりつけられたようなもので、スプリングは無く、ビーターは足で戻す構造だったと言われています。のちに、ハイハット(スタンド)が発明され、そのことによりドラムセットとジャズの歴史が大きく進化していきました。
ジャズ、ブルースからロックンロールが生まれ、音楽がより大衆化、大音量化するとともに、ドラムセットも大型化し、ドラムペダルもより高性能化して現在にいたります。
ペダル検証について

これから何回かにわたってお届けするペダル検証記事。
日本国内で入手可能なモデルを順次掲載していきます。
検証は、実際にバスドラム(22″、ミュート入り、フロントヘッドにホール有り)で試奏し、音と踏み心地、動きをチェック。また、各部の調節機能を実際に動かして、使い勝手の良さもチェックしました。
比較表の見方
上記のように、現在入手して検証することが出来たペダル全ての「平均点」と感じられたポイントを各項目の表の真ん中「0」としました。

出来るだけ主観が入らないように心がけましたが、身体で使うものですので、みなさんの体格や演奏スタイルによって感じ方は大きく違うこともあると思います。
この記事をお読みになり、気になったペダルは、ぜひお近くの店舗でお試しいただき、納得の1台を選んでいただきたいと考えています。
Pearl パールについて

1946年創業。
日本国内のみならず世界でも広く愛用されているドラムメーカーです。
ファイバー樹脂およびグラスファイバーをシェル素材として採用したドラムセットは、パールの名を世界に知らしめるきっかけとなりました。
また、オールメイプルシェルのドラムセットを日本で初めて発売したほか、角型パイプのドラムラックや、フリーフローティングシステムなどドラム、ハードウェア両方に於いて革新的な製品作りが世界中のドラマーに支持されています。
Eliminator P-2100C


発売後10年以上もベストセラーを続けた、Eliminator P-2000CをアップデートしたのがこのEliminator2 P-2100C。
多彩な調節機能と安定感はそのままに、“NiNjA”ベアリング”や“コントロール・コアビーター”、“クリックロック・スプリングテンション”などの機能を搭載。
チェーンを受けている「カム」の形状を変更できる「インターチェンジャブル・カム・システム」、フットボードのカカト取り付け位置が前後する「パワーシフター」がこのペダルの多彩な調節機能の目玉ですが、標準的な「黒カム」「パワーシフター・ノーマル」で試してみました。

- 安定感ある動き、パール独特の傾斜がなだらかなフットボード等、標準的といっても良いモデル。
- Eliminator特有の踏みごたえがある。踏み込んだときにぐっとタメが効くような印象。
- 音量も大きく、ダイナミクスもつけやすいため音量の大小問わず違和感無く演奏できる。
- 比較的軽さを感じるビーターでコントロール性に優れている。このままでも音量は十分出せるが、より太い低音とバランスの良いアタックを求める場合は「B-200QB・クオードビーター」に付け替えることもおすすめ。
- さまざまな調節機能で、上達による奏法の変化にも対応できる。ロック、POP系中心に、初心者の方の初めてのペダルとしても、上級者の様々な奏法にも応えるおすすめモデル。
Eliminator「RED LINE」P-2050シリーズ
こちらがNAMM2016で発表されたパールの新製品です。

シングルペダル
- 型名:P-2050C
- メーカー希望小売価格:(税抜き)¥26,000 (¥28,600(税込))
- 販売価格:(税抜き)¥20,800 (¥22,880(税込))
- 専用キャリングケース付属
- 2016年5月上旬 発売
ツインペダル
- 型名:P-2052C
- メーカー希望小売価格:(税抜き)¥63,000 (¥69,300(税込))
- 販売価格:(税抜き)¥50,400 (¥55,440(税込))
- 専用キャリングケース付属
- 2016年5月上旬 発売
定評ある「インターチェンジャブル・カム・システム」「パワーシフター」「NiNjA”ベアリング」「クリックロック・スプリングテンション」といった機構は「Eliminator」シリーズを踏襲していますが、随所に新機構が織り込まれています。
各部の説明
発売前ということで少し詳しくご紹介いたしましょう。(なお、記事作成時にはツインペダルを使用いたしました)

一見すると、「Eliminator」シリーズのデザインそのままのように見えます。しかし良く見てみると、
- フットボード
- カム
- ビーター
- ビーターホルダー
に違いがあります。
フットボードは、形状、長さ、滑り止めラバーの位置変更機構(アジャスタブル・トラクション・プレート)は同じです。中心にデザインされた赤い線が、このモデルの愛称「Red Line」の象徴です。
ビーターホルダー

ビーターを差し込む部分は「Demon」シリーズ同様の「窓」が設けられ、ビーターシャフトの位置確認ラインを見ながらビーターの長さを調整することが出来ます。
クリックロック・スプリングテンション

「DEMON DRIVE」「Eliminator2」に採用されている「クリックロック・スプリングテンション」を搭載。演奏時のスプリングの緩みを防止。
インターチェンジャブル・カム
従来のEliminator同様、赤白黒青の4種類のカムが付属しています。各カムの色は半透明に変更されています。
ブラック

標準仕様の真円カム。ストレートでコントロールしやすい動き。
ホワイト(半透明)

ブラックよりも径の大きい真円カム。より滑らかで安定感のあるアクション。1打に重きを置くようなプレイに。
ブルー

円形のカムながら、回転軸を中心からずらした偏芯カム。徐々にビータースピードが上がり、速さ、軽さを感じられる動き。
レッド

赤カムは、極端な偏芯カム形状。急速にビーター速度がアップし、転がり落ちるかのような動き。ベルトドライブにもマッチ。(ベルトドライブのモデルは別途発売されるようです。)
なおP-2000C用として別売りされている黄色、紫色カムも装着できました。カムの取り付け部の形状が変更されており、P-2050C付属のカムをP-2000C、P-2100Cへ取り付けることはできません。
ビーター

プラスティックとフェルトを2面ずつ、計4面使えるビーターは内部に防振ゴムを装備した「コントロールコア・ビーター」。重量もほど良く、アタックと低音をバランスよく引き出せます。
P-2100との比較
ここまで見ると、P-2000、2100のマイナーチェンジ版のように感じますが、本当にそうでしょうか。チェーンの長さ、カムの直径、フットボードの長さは同じようです。ですが、目を凝らして見てみると…

写真上、奥が2050、手前が2100

チェーンの傾きや、フットボードのカカトのヒンジ位置の前後の位置関係が微妙に違います。特にフットボードの取り付け位置はミリ単位と言ってもよい違いです。果たしてこの違いがどのような効果をもたらすのでしょうか。
驚きのバージョンアップ!
各部のチェックを終え、実際に踏んでみました。(標準的な「黒カム」「パワーシフター・ノーマル」)

- 従来のEliminatorよりも、スピーディさを大幅に増した戻りに驚き!。ビーターの遠心力を感じることが出来、まさに足に吸い付いてくるようなアクション。
- 適度な踏みごたえのある感覚は従来のP-2000C、P-2100Cとほぼ同じに感じるが、戻りのスピーディさにより軽さを感じる。
- フットボードの傾きは、従来のパールのペダルに比べて若干傾斜が付いているが、ごく一般的な傾斜。他ブランドのペダルからスイッチする場合でも違和感無し。
- アタックと低音のバランスが程よく、かなり太い低音が出ていると同時に、はっきり聴き取りやすいアタックも聴き取れる。音の粒が揃えやすく、明瞭で迫力あるサウンド。
- 多彩な調節機能がアピールポイント。
その一方で、各部の目盛り等により標準的な位置に戻すことも容易。そのため、ペダルいじりに不慣れな方でも安心。 - サウンド、アクションともに、従来モデルよりもさらにロック的な志向を感じるモデル。初心者さん上級者さん問わず、新たなスタンダードとなりうるモデルとしておすすめ。
ペダル徹底検証 Part1 おわりに
ペダルの徹底検証Part1はいかがでしたでしょうか。
お店でも人気のある定番モデルを改めてじっくり踏み比べてみる等、個人的にも大変興味深い体験でした。
また、話題の発売前の新製品をご紹介する事ができました。大変魅力的なペダルですので、ぜひこのモデルも選択肢に加えて頂けたらと思います。
さて、ペダル徹底検証はまだまだ続きます。次回をお楽しみに!



- 記事中に表示価格・販売価格が掲載されている場合、その価格は記事更新時点のものとなります。
- 閲覧時点で内容・価格が異なる場合、または販売が終了している製品が含まれる場合がございます。予めご了承ください。
この記事を書いた人
札幌パルコ店 ドラム担当 鳥塚
ドラマーさんのお悩み解決のため毎日元気に営業中!
ドラム情報アカウント、@tomtom_toriduka の中の人、愛用ペダルはDW-5000AHです。


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