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こんにちは耳コピ歴40年のサカウエです。最近ではDAWのオーディオ・トラックに直接原曲を貼り付けたり、波形編集ソフトを使って耳コピする方もいると思いますが、今回は「耳コピ」に特化したソフト・アプリを一挙ご紹介いたします。では最初に耳コピソフトにあると便利な機能をまとめておきましょう。
※本記事で紹介している情報は、記事公開時点(2016年5月)の情報です。
あると便利な機能チェック
1)リピート、巻き戻し、各種再生機能
耳コピでは同じ箇所を何度も繰り返して聴くことになります。したがってすぐ目的のポイントに戻って再生できる環境が必須でしょう。ソフトによっては、特定のキーを押している時だけ再生、離すと任意の場所に戻るといったものもあります。「ここはサビ」「ここからギターソロ」ということがわかるようにマーカーを打ち、聞きたいマーカーから再生する、マーカー間をループする・・といった方法もあります。
1)EQ(イコライザー)
ベースだったら低域、といったようにある周波数帯域を削ったり、強調したりすることでぐっと聞き取りやすくなる場合があります。EQをソフト側でできるのは何かと便利です。楽器別に聴きやすくするためのEQ設定がプリセットされているアプリもあります。
2)タイムストレッチ/エクスパンド
速弾きフレーズの耳コピに必須なのがこれ。タイムストレッチ/エクスパンド機能が搭載されていれば、音程を変えずに再生スピードを可変することができます。精度や音質にはソフト間で差があります。
3)トランスポーズ機能。チューニング
トランスポーズ機能は移調楽器の耳コピに便利な。チューニングも微調整できるので、音程が微妙に高かったり低かったりする昔のアナログ音源などにも重宝します(絶対音感持ってる方は気持ち悪いかもしれませんが・・)。
4)ボーカルキャンセル、その他
ボーカルキャンセル機能は主として中央に定位する音を除去する機能です(センターキャンセルとも)。特定の定位範囲を操作できるソフトも有ります。右チャンネルにギター、左チャンネルにドラム、といった極端なミキシングの音源や、オーケストラのような楽器のアンサンブルでは特に効果を発揮するでしょう。
これらのポイントを踏まえつつ以降の耳コピソフトをチェックしてみましょう。なお波形編集・DAWソフトは今回は対象外としました。
※表記のバージョン、対応OS等は本記事公開時の情報ですので、リンク先で最新版をチェックしてください。
耳コピ パソコンソフト
Transcribe!
◎1ライセンス$39、Windows XP/Vista/7/8/10, Mac OS 10.3.4 - 10.14 、Linux/x86/GTK
https://www.seventhstring.com/xscribe/overview.html
「自動検出には頼りたくない、自分の耳でしっかりコピーしたい!」という方にオススメなのがこの「Transcribe!」です。あのパット・メセニー大先生も推薦しておりましたが、ミュージシャン視線の使い勝手が特徴の耳コピソフトです。1ライセンス$39ですが、30日間無料試用期間がありますのでダウンロードして試すことができます。
Transcribe!は非常に多機能で、EQ設定は耳コピしたい楽器にあわせてプリセットが用意されています。たとえばベースだったら下図の様に高域成分がバッサリ切られています。もちろん細かい設定が可能です。
速弾きフレーズのコピーに最適なスピードコントロール設定。タイムストレッチ/エクスパンド可能なので音程を変えずに再生スピードを可変することができます。音質の変化も少なくこれにはビックリ!下記ページではコルトレーンの「GiantSteps」のソロの低速サンプルが聞けますが、これはかなりの性能ということができるでしょう。
http://www.seventhstring.com/xscribe/giantsteps.html
移調楽器用にトランスポーズ、ファインチューニング機能も搭載。
なんと、スペクトル分析で推定音程を表示してくれます。
チュートリアル動画(メセニー先生を耳コピーしてますね)英語ですが機能は問題なく理解できると思います。
ジャズの速弾きフレーズや複雑なハーモニーを耳コピしたいという場合には非常に重宝する優れたソフトであると思います。まずはダウンロードして試して気に入ったら購入するのがよいでしょう。
1ライセンス$39で下記より購入できます
http://www.seventhstring.com/xscribe/buy.html
個人的にはコレが一番すごいと思いました。
wavetone
◎フリーソフト、Windows 8/7/Vista/XP
「あっきー」氏による耳コピー採譜支援ソフトです。 Wave、MP3などの音声ファイルを解析し、音をピアノロール風に表示します。
主な機能
- 再生速度と音程の変更
- 特定の音域を強調、カットできるグラフィックイコライザ
- 指定した区間のリピート再生
- LRの差分によるボーカルカット
- 音声スペクトラム解析は
- ピッチ解析
- テンポの自動検出
- コード検出
ピアノロール上でマウスによって内部の音源を発音させることができますので、絶対音感がない人が楽器が手元になくとも採譜などが行えます。巻き戻し等、各種ショートカットキー対応で再生速度も変更できます。ジャズなどの複雑な和声やリズムになるとさすがに解析機能は参考という感じになってしまいますが、とりあえず無料なので試してみてはいかがでしょう。
http://ackiesound.ifdef.jp/download.html#wt
BandProducer 5
◎Windows8/7/Vista/XP用
体験版 http://cmusic.kawai.jp/download/demobp.htm
カワイから発売されている「BandProducer 5」は、CDやMP3、携帯プレーヤーなどの音楽データからコード進行を検出したり、耳コピのためにテンポやピッチを自由にコントロールしたり、ボーカルをキャンセルしたり、帯域の強調やカットをしたりすることができます。
さらに、コード進行とリズムパターンを組み合わせたり、MIDIやオーディオを組み合わせて本格的な音楽制作をしたり、リードシートなどのコード譜を編集することができます。コード自動検出機能もあり、バンド活動をされている方にはぴったりかも知れません。
まずは体験版で試してみてください。
販売価格
(税込) ¥20,900 (税抜 ¥19,000)JANコード:4962864221655
耳コピ スマホアプリ
パソコンのソフトにも使い勝手が劣らない凄いスマホアプリがリリースされておりますのでいくつかご紹介します。
mimiCopy - 耳コピ専用プレーヤー
◎iOS、¥600-
そのまんまのネーミングですが、速度変化による音色変化が最も少ないiOSアプリだと思います。
使い勝手もよく「-5」「-10」というクイック巻き戻しボタンで5秒前、10秒前に瞬時にジャンプ(秒数は任意に設定可能)、A-B間リピートも使いやすいです。
主な機能
- 音程を変えずに再生スピードを変えられるタイムストレッチ機能を搭載(25~200%)。
- ピッチシフト機能によりキーを変えて再生もできます。(±1オクターブ)(※1)
- 波形表示により、素早く再生させたい箇所にジャンプしたり、ループさせたい箇所を設定できます。
- ループは3箇所まで設定し切り換えて利用できます。
- 数秒だけ戻って再生するクイック巻き戻し機能搭載。
- iPodライブラリの曲もインポート可能(※2)
- WiFi経由やiTunes経由のUSB転送(ファイル共有)などによるファイルインポート機能も搭載。
- バックグラウンド再生対応。他のアプリの裏でも再生できます。
- iOSの自動ロック回避オプションによりスリープせず再生可能です。
- 再生速度、ピッチ、ループ範囲は曲ごとに保存されます。
- メモ機能搭載。コピーしながらメモを記録できます。
- プレイリスト的に使えるフォルダープレイ機能。
- 左右のチャンネルのボリュームを独立してコントロールしたり、左右入れ替えたり、左右をまとめて片方から出力させたり、といった柔軟な出力ルーティングが可能です。
- iPhone/iPod touch/iPad 対応のユニバーサルアプリですのでお持ちの複数機種でご利用いただけます。
- 一部機能はプロ版として搭載しています。プロ版は無料ユーザー登録で利用できるようになります。
AnyTune - スローダウン音楽BPM
◎iOS、無償版あり
「お気に入りのトラックでテンポをスローダウンしたり、ピッチを調整、ループを繰り返し、マーク設定、コメントを共有して、Anytuneを使用して再生、記述、楽曲を練習できます」という説明からも分かる通り、コンセプトは練習に重きをおいたアプリのようです。速度変化による音質変化も比較的少なく、ループしながら徐々にテンポアップする機能など確かに練習向きかも知れません。
Audipo
◎iOS、Android、無償版、アプリ内課金あり
ミュージックライブラリー内の楽曲を読み込み、再生速度変更(0.5倍〜2.0倍)マーキング、マーキング間のリピート再生といった基本性能を備えたアプリです。曲を時間軸で分けて表示するので長い曲や、同じ箇所を何度も繰り返して聴く場合に重宝します。
三角形の部分がマーカー
有償版で下記機能が付加されます
- 音程設定 (速度設定画面で左にスワイプすると出現します)
- プレイリストの再生・編集
- ファイルへのエクスポート
- 曲名・アルバム・アーティストの検索
- 広告除去
PlaySections
◎iOS
PlaySectionsは読み込んだオーディオファイルを自由に区切って再生できるアプリ。楽曲を再生しながらAメロ・サビなどのセクションが切り替わるタイミングでマークを挿入し、各セクションに区切ることができます。作成されたセクションリストから好きなセクションを選んで自由に部分再生できるようになります。
ループ再生、テンポ・再生速度変更、音程・ピッチ変更、ボーカルキャンセル、7バンド・イコライザーなどの便利な機能も搭載。耳コピ、楽器の演奏、ボーカル、ダンスの練習などにも使えるアプリとなっています。
主な機能
- ミュージックライブラリからの取り込み
- 音声波形スクロール
- セクションタイトル編集
- 曲名、アルバム名、アーティスト名編集
- ループ再生 (セクション単位, 全体)
- 再生速度変更 (-50% to +200%)
- ピッチ・音程変更 (-12 to +12)
- 7バンド EQ (-24dB to +12dB)
- FX (ボーカルキャンセル)
- Share Extension, Open-inを使った外部アプリからの読み込み
- リモコン操作
- 低遅延再生 (Audio Unit support)
- バックグラウンド再生
- 主要なオーディオファイルに対応 (AAC, MP3, WAV, AIFF...)
(*) DRMによって保護されたファイルの再生には対応していません
Chord Tracker
◎iOS、無償
IOSデバイス内のオーディオファイルを自動解析し、コード譜を簡単表示してくれるのがYAMAHAのiOSアプリ「Chord Tracker」なかなかの優れものです。フレーズのコピーではなくコード進行に特化しているのが特徴です。
詳細は下記記事でどうぞ。
コード進行を読み取り、自動で楽譜作成する電子ピアノ YAMAHA CSP シリーズ発表
iTunes、QuickTime Player
これまで紹介したツールと比較するとiTunes(無料)や QuickTime Player(無料版)で耳コピするのは、即応性の問題でなかなかキツイかもしれません。しかし、スタート・ストップをパソコンの「スペースキー」でおこなったり、マウスポインタを下図の位置に持っていき、マウス・ホイールをコロコロ操作することで早戻しや早送りができますので、これで多少は耳コピツールとして使えるようになるかもしれません。
なおiTunesにはEQ機能も付いているので活用してみてはいかがでしょう?
イコライザを表示
イコライザのスイッチをONにします
色々なタイプのイコライザが選べます。ここでは「Bass Booster」という低音を強調するプリセットを選択してみます。
耳コピにはオーディオ・インターフェースやヘッドホンが必須
ヘッドホン
スピーカーやスマホの音でも耳コピはできますが、ヘッドホンを使えばさらに耳コピしやすくなります。ヘッドホンの選び方のポイントは以下になると思います。
- 長時間身につけていても疲れにくいもの
- 音楽ジャンル、楽器に合ったもの
ぜひこちらの記事も参考にしていただき、皆さんにピッタリのヘッドホンをお選び下さい。
オーディオ・インターフェース
パソコンやiOSなどのデバイスにはオーディオ・インターフェースも必須といえます。どんなに高価なヘッドホンを使ってもパソコン直刺しでは良音質は望めません。1万弱のUSBやlightning端子に対応したオーディオ・インターフェースでもあると無いのでは大違い。下記の記事等を参考にどうぞ!
初心者向け【今さら聞けない用語シリーズ】初めてのオーディオ・インターフェース選び
【最後に】
ということで、耳コピを支援してくれる便利アプリを紹介してきましたが、個人的には耳コピは「波形編集ソフト」またはDAWを使ってやることが多いです。最近はタイムストレッチ機能もかなり高度になってきているので、どんなに速いフレージングでもほぼ聞き取ることができます(個人差あり)。ただやはり一番難しいのはハーモニーの耳コピで、ジャズ系の密集した和音や、近代クラシック的な重ね方などには苦労させられます。なおこれは最終手段(笑)ですがYoutubeなどで「isolated」と検索すると、マルチトラックから抜き出したと思われる楽器別のテイクが聴ける場合があります(視聴は自己責任で)。特に昔のロックの名曲など、ドラムだけ、ギターだけ・・といったテイクがゴロゴロしているのでまさにお宝ですね。