自宅DTM環境がスタジオレベルの音になる
NEUMANN KH 80 DSPとスピーカーキャリブレーション
コンデンサーマイクの代名詞としても名高いドイツのマイクメーカーNEUMANN(ノイマン)。1928年に創業した老舗のマイクブランドですが、2010年頃よりモニタースピーカー等のスタジオモニター機器もリリースしています。本記事ではモニター機器の中でも特に話題になっている「KH 80 DSP」を紹介します。
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スタジオ用のスピーカーと思われがちですが、実際はスタジオほど環境の良くない自宅のような環境に適したスピーカーでもあるのです。その理由も含め、自宅環境をターゲットとして「KH 80 DSP」の良さを紹介していきます。
4インチウーハーながら驚きの低音再生能力
自宅用モニタースピーカーはウーハー(低音用スピーカー)が5インチのモデル、または一回り小さくなって3インチウーハーのモデルが多く、低音の再生能力を考慮すると5インチを選ばざるをえないというのが実情でした。3インチ、4インチでは低音再生能力が不足するため、制作に必要な低音を確保するためには5インチのウーハーが必要だったのです。
「KH 80 DSP」を再生してみて最初に驚くのはその低音再生能力でしょう。「KH 80 DSP」のウーハーは4インチなのですが、想像できないようなしっかりとした低音が飛び出してきます。スペック上の周波数特性(再生できる音の範囲)は53Hz〜21kHzとなっており、この53Hzから再生可能というのは5インチのウーハーに迫る再生能力なのです。これまで自宅で仕事をするなら5インチは必須だと考えていましたが、この考えは完全に覆されました。
この低音を支えるのは綿密な計算に裏付けられた設計と独自の技術です。例えば低音再生を支える要素のひとつにバスレフポートがあります。バスレフポートはスピーカーキャビネット内部、つまりユニット裏側に出た音を調整して表側へ排出するための穴のことですが、NEUMANN独自のパイプ共振減衰を考慮した高性能バスレフポートが採用されています。また、ユニット本体にはロングスロー・バス・ドライバーという技術が採用されています。マイクの開発で培われた経験を背景とした緻密な計算、設計が「KH 80 DSP」のサウンドを支えているのです。
自宅環境でも使いやすい仕様と機能
ウーハーのサイズが4インチであることは先述の通りですが、4インチゆえに本体サイズもコンパクト。345 x 277 x 243mm(H x W x D)というサイズになっており、自宅の部屋のように余裕のない環境でも高い設置自由度を誇ります。重さも4.1kgと、スピーカーとしては扱いやすい重さです。大型のスピーカーを自宅に導入すると設置だけでもかなり大変ですが、コンパクトな「KH 80 DSP」は気軽に導入できるスピーカーと言えるでしょう。
別の製品として「KH 750 DSP」というスピーカーがあり、これはサブウーファーと呼ばれる低域専用のスピーカーです。EDM等の音楽を多く作る方は検討してみても良いですが、サイズと重さは確認の上導入する必要があります。
接続端子は背面にありTRSコンボジャックとなっていますので、XLRキャノンまたはTRSフォンケーブルでの接続が可能です。ブラケット用のネジ穴も空いていますので、オプションのブラケットを使用して壁や天井に設置することも可能です。スペースに限りがある場合は検討してみても良いでしょう。
さらに背面には「ACOUSTIC CONTROL」というスイッチがあり、置く場所にあわせて特性を変更することが可能です。「FREE STANDING」「SMALL DESK」「MEDIUM DESK」「LARGE DESK」の4つから選ぶことができ、それぞれ置き場所にあわせた音になっています。設置してみて音の具合が良いものを選ぶと良いでしょう。
最後に、ネットの存在を挙げておきましょう。「KH 80 DSP」はウーハーとツイーターそれぞれのユニットに鉄製のネットがつけられています。スピーカーというのは意外にも移動が多い機材で、移動においてユニットを傷つける可能性は低くありません。ネットでの音質変化を気にする方もいると思いますが、ネットによる音の劣化を感じることは全くありません。むしろスピーカーを長く使える安心感を与えてくれます。
プロフェッショナルレベルで使える音を実現しながら自宅などの環境でも気軽に使うことができることは「KH 80 DSP」の特徴ということができるでしょう。
部屋にあわせて調整 〜キャリブレーション機能〜
「KH 80 DSP」のモデル名にも含まれる通り、内部にDSP(Digital Signal Processor)を搭載していることが特徴です。DSPは様々な信号処理を行うことができるコンピューターのようなもので、「KH 80 DSP」では専用のイコライザーのようなプログラムが搭載されています。前項の「ACOUSTIC CONTROL」等の調整に活用されていますが、それ以上にDSPを活用した機能が搭載されているのです。この機能を使用することで「KH 80 DSP」のポテンシャルが開放されると言っても過言ではないでしょう。
「キャリブレーション」という機能で、使用するためには「KH 80 DSP」専用の計測用マイク「MA 1」という製品が必要です。「KH 80 DSP」と「MA 1」がセットになった「Monitor Alignment Kit 2(モニター・アライメント・キット2)」という製品もあり、「KH 80 DSP」を買うなら「Monitor Alignment Kit 2」がお勧めです。
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パソコンと「KH 80 DSP」をLANケーブルで接続し、スピーカーから出た音を「MA 1」を通して計測。出た音とマイクに入った音の差をもとに自動計算し、搭載されたDSPで調整済の音を出力するという仕組みです。
スピーカーから出た音は部屋の材質や形によって大きくなる、小さくなるなど、もともとの音とは違う音になって聞く人の耳に届いています。つまりスピーカーのポテンシャルが発揮されない状態になっているのですが、キャリブレーション機能によってこれらの問題が補正され、本来の音に近い状態を作り出すことができるのです。「Monitor Alignment Kit 2」で実現できる「スピーカーではなく空間から音が出ているような感覚」は体験するだけでも価値があります。
音楽が完成し、一般的な再生機器で作った音楽を聞いてみると、作っていた時に聞いていたイメージと異なっていることがよくあります。モニター環境にブレがあると顕著になる問題ですが、モニター環境をグレードアップすることで、完成後の音のズレが少なくなってきます。
モニタースピーカーはいわば精度の高いものさしのようなものです。100円で購入できる定規と業務用の高精度な定規の差は説明するまでも無いでしょう。高精度の定規のような環境は、過去、スタジオという良い部屋ありきのものでした。しかしテクノロジーが進んだ現在、高品質のスピーカーとキャリブレーションによって自宅でも実現可能になりました。
「KH 80 DSP」、そして「MA 1」を使って、プロのレコーディングスタジオの音を自宅に取り入れてみてはいかがでしょうか。
販売価格
KH 80 DSP
¥84,700(税込)(1本の価格です)
JANコード:4044155207583
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MA 1
¥46,200(税込)
JANコード:4044155256277