【録れコン2019】リプロダクションレポート 鎌田岳彦氏 コメント

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グランプリおめでとうございます。

実は今回、審査会での評価通り、音楽的世界観が画一していて、とても完成度の高い作品だったのでリプロダクションでのイメージが、なかなか決まらなかった。

ただ、よくよく聞いてみると、ドラムやベースなどの音楽的土台は、まだまだ補強出来るかな!ボーカル・ギター以外のアレンジが、見えづらいかな…と。まずは、オリジナルデータを確認してからと言う事に。

何故だか、データが届くのに、いつもより時間が掛っていました。オリジナルのデータが幾つか無くなっていてパニクっていた模様。これは、我々プロの世界でも、稀にあるのですが、データの一部が欠損してしまったり、データが壊れたり、HDがクラッシュしたりと、かなり「ゾッ」とする経験をしました。データを保存する度に、必ず立ち上げの確認・バックアップは、早い段階で複数とるようになっています。

話が脱線しましたが、何とかデータを揃えてもらい(一部は録り直し)7月某日、皆で検証。想像よりも、トラックの数は少なく、ザックリバランスをとっても、なかなかあの感じにはならない!ボーカル・コーラスパートも、ピッチやタイミング等の補正前でしたしね。バックトラックの検証で、ベースの打ち込みパートの存在感が薄く、本人たちの希望もあって、生のEBassに差し替えるプランで意見がまとまり、リプロダクション当日までに、プリミックスとボーカル・コーラスパートの補正をしておく段取りで、打ち合わせ終了。

8月24日、リプロダクション当日。レポート通りEBassの録音は、順調に進行、ミックスに移行。事前にある程度楽器類とボーカル・コーラスの修正をしてきてあるので、録音ホヤホヤのベースとのバランスを取り直す。低音楽器、特にベースやドラムなどは、楽曲の骨格・土台になるので、基本的なバランスの構造を作り直しになるが、特に問題なく進行。コーラスパートの音程修正を数カ所直し、基本的なバランスが完成。各楽器類やアレンジが見えてきた。

イントロ・エンディング・間奏部分は、かなりクールなアレンジだったので、それの効果を踏襲して、より効果的に処理。実は、何カ所か違う処理を、プリミックスで試したが、効果がある程オリジナルの雰囲気とは違うイメージに。また、ギミックが多いと、ちょっと”クドク”なったので、最低限に。ボーカルのメインテイクが若干違うので、オリジナルとは少し違ったミックスとなりました。

最後に、前段でも書きましたが、データの管理は非常に大切。デモ制作→スタジオで録音→ミックスのスタジオ→バックアップと作業場所(スタジオ)が変わるたびに、データの整理バックアップが必要になります。昔はHDも大変高価で容量も小さく他のメディアも少なくて、多くはバックアップデータをCDR(しかも650MB)に複数枚焼いていました。その当時はスピードも数倍(2~4倍速)でしか焼けないため、データ量が大きいと、バックアップに半日(録音後、徹夜作業で)掛かっていたのを思い返されます。
現在は大容量のHDやUSBメモリー。しかも高速でデータ移行できる時代です。せっかく録ったデータが行方不明になることは、膨大な時間も新鮮なアイディアも全て『水の泡』になるのでね。いい教訓になったかな(苦笑)

お疲れ様でした!

レコーディングエンジニア 鎌田 岳彦


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