みなさんは自宅録音用のボーカルマイクを選ぶときに、どんなマイクが思い浮かびますか?
誰でも一度は考える定番マイク、それがNEUMANN ( ノイマン )のU 87 Aiです。これまでに2度のマイナーチェンジがありましたが、最初に発売されたのは1967年。以降レコーディングマイクの代名詞として定着しています。
左:U 87 i/ 右:U 87 Ai
現在はU 87 Aiとなっていて、買えるものなら買いたいマイクですが、お値段が高いマイクとしても有名。なかなか手が出ませんよね。そこでNEUMANNのラインナップでなんとか買えそうなモデルを探していると、TLM 102、そしてTLM 103という製品を見つけることができます。
左:TLM 102 / 右:TLM 103
特にTLM 103は「現代版U 87」とされているので、かなり気になっている人も多いでしょう。それぞれのモデルのスペック比較をしながら、自宅録音に向いているマイクかどうかを検証していきたいと思います。
4機種比較を比較してみた
U 87 i(絶版) | U 87 Ai(現行) | TLM 102 | TLM 103 | |
音響動作原理 | 圧力傾斜型トランスデューサー | 圧力傾斜型トランスデューサー | 圧力傾斜型トランスデューサー | 圧力傾斜型トランスデューサー |
指向性 | 単一指向性、全指向性、双指向性 | 単一指向性、全指向性、双指向性 | 単一指向性 | 単一指向性 |
周波数帯域 | 40 Hz〜16 kHz | 20Hz〜20kHz | 20Hz〜20kHz | 20Hz〜20kHz |
感度 | 8mV | 28mV/Pa ± 1 dB (単一指向性) | 11mV/Pa | 23mV/Pa (= –32.5 dBV ± 1 dB) |
等価ノイズレベル | 18dB | 12dB-A(単一指向性) | 12dB-A | 7dB-A |
最大耐音圧 | 122dB | 117dB(単一指向性) | 144dB | 138dB |
重量 | 約500g | 約500g | 約210g | 約450g |
外径 | 56mm | 56mm | 52mm | 60mm |
長さ | 200mm | 200mm | 116mm | 132mm |
まず、TLM 102 / TLM 103では指向性切替の機能が省略されており、単一指向性のみとなっています。双指向性はレコーディングの現場でもほとんど使いませんし、全指向性が有効なのは部屋の響きが良い場所で録音する時。従って、自宅で使用する場合は単一指向性だけあれば問題ないと言うことができます。
U 87 Aiにある指向性切替スイッチ(TLM 102 / TLM 103には非搭載)
指向性切替機構はかなりのコストがかかるでしょうから、切替機能を削除したことで低価格化を実現しているのかもしれません。自宅など、スタジオ以外でしか使わない人向けに設計されていることがわかりますね。
続いては周波数特性。絶版のU 87 iというマイクはU 87 Aiと同じようで異なるマイクで、今でもよく使われています。周波数特性を見てみると現行3機種よりも狭い特性になっているのがわかります。オーディオ機器の高性能化という時代の流れに適応していったように見受けられます。
それぞれの周波数特性。上からU 87 i / U 87 Ai / TLM 102 / TLM 103
どのマイクも高域がブーストされた特性をもつのですが、そのカーブはそれぞれ異なっており、マイクのキャラクターに直結しているようです。TLM 102はブーストされている帯域が最も高域よりで、かつ特徴的なカーブをしています。ちょうどボーカルにイコライザーをかける時のカーブに近いものを感じます。つまり、TLM 102はボーカル用途に絞ったマイクであると感じました。
一方でTLM 103は4機種のなかで最も低い帯域からブーストされているのが特徴です。どの用途で使ってもクリアな音質が得られると思います。
続いては感度。簡単に言えばマイクから出てくる音がどのくらいの音量なのかというスペックですが、小さいと音量不足が発生します。特に自宅録音の場合はマイクを接続するプリアンプの性能が不足することが多いため、もともと音量が大きいハイゲインのマイクのほうが使いやすいのです。
TLM 103はハイゲイン・マイクなので扱いやすい(サスペンションは別売)
TLM 102も決してゲインが低い訳ではないのですが、TLM 103がU 87 Aiに迫るハイゲイン・マイクであることがわかります。これはマイクプリアンプであまりゲインを上げなくて済むことを意味しますので、結果、マイクプリアンプのノイズが少ない音として録音することができます。
同時に耐音圧という、どのくらいの大音量に耐えられるのかという数値を見てみると、TLM 102が最も高い数値になっています。次いでTLM 103が138dBとなっています。プロのエンジニアであれば歪みにくいセッティングができますが、そこまでのスキルを持っていないことがほとんどですよね。TLM 102 / TLM 103は誰が使っても歪みにくいのです。
TLM 102は随一の高耐入力仕様で歪みにくい
結果、ノイズが少ない、ハイゲイン、歪みにくいということで、誰が使ってもノイズが少なく歪んでいない、そこそこ良い音で録音できそうだということが見えてきました。
これらのスペックは、TLM 102 / TLM 103で採用されているトランスレス回路という構造で実現されています。マイクの音を増幅する回路にトランスというパーツがあるかどうかが違いなのですが、トランスレスによって低ノイズ化などのメリットを獲得していて、結果的には現代の音楽制作にマッチした仕様を実現しています。
トランスというパーツが無いトランスレス回路は小型化にも貢献
最近はトランスレス仕様の機器が増えてきたのですが、現代の制作スタイルにマッチしているからというのが理由なのかもしれません。
TLM 102 / TLM 103どちらがおすすめ?
総合的にまとめてみると、TLM 103 はTLM 102の純粋な上位機種として考えることができます。TLM 102 の方が優れている点は「耐音圧」と「サイズ」の2点に絞られます。この2点を優先したいと思う場合はTLM 102を選ぶべきですが、それ以外の場合はTLM 103を選んでおくほうが間違いないように思います。
周波数特性はやや異なりますが、TLM 103の方がなだらかな特性であり、扱いやすいと思います。音質という意味ではどちらのマイクもNEUMANNの音がしています。安価なマイクとは異なる密度ある音は初めて聞く人は驚くでしょう。
TLM 103とサスペンション(別売)、ラージダイヤフラムとしてはコンパクトなTLM 103
もちろん価格という点を見落としてはいけません。
TLM 102はNEUMANN品質を持ちながら目を疑うような価格に抑えられているマイクで、TLM 103との間にはかなりの価格差がありますから、多少の性能差は当たり前とも言えます。TLM 103を購入する予算が準備できるならTLM 103、そうでなければTLM 102を購入すると良いでしょう。
販売価格
TLM 102
¥90,900(税込)
JANコード:4006087086261
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TLM 102 BK
¥90,900(税込)
JANコード:4006087086278
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TLM 102 Studio Set(ショックマウント付き)
¥104,000(税込)
JANコード:4006087086568
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TLM 102 BK Studio Set(ショックマウント付き)
¥104,000(税込)
JANコード:4006087086575
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TLM 103 LEUを購入するとNEUMANN デザイン傘がついてくる(※)
現在数量限定で、対象となるTLM 103(TLM 103 LEU)を購入すると非売品のNEUMANNデザイン傘がついてくるキャンペーンが開催中です。NEUMANNのノベルティーは音楽に携わる方なら誰でも欲しいのではないでしょうか。傘もおまけというには勿体ないくらいしっかりとしたもので、色々な用途に使えそうです。
キャンペーン対象製品
TLM 103 LEU
¥157,300(税込)
JANコード:4582505170052
※ご注意:キャンペーン対象となるTLM 103(TLM 103 LEU)は、通常のTLM 103とは製品型名が異なります。ご購入の前にキャンペーン対象製品の「TLM 103 LEU」かどうか必ず販売店舗にご確認ください
販売価格
TLM 103(キャンペーン対象外)
¥168,300(税込)
JANコード:4006087084304
TLM 103 mt BK(キャンペーン対象外)
¥168,300(税込)
JANコード:4006087084311
TLM 103 studio set(ショックマウント付き)(キャンペーン対象外)
¥191,400(税込)
JANコード:4006087085455
TLM 103 mt studio set(ショックマウント付き)(キャンペーン対象外)
¥191,400(税込)
JANコード:4006087085448
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