弦楽器リペア便り Vol.7 簡単音質カスタマイズ~ 肩当て編 ~
こんにちは!
弦楽器リペア便りも早いもので7回目の更新になりました。
いつもこのページをご覧いただきありがとうございます。また、今まで当店へ足を運んでくださった方々も本当にありがとうございます! 暑い日が続いておりますが、皆様お元気でいらっしゃいますでしょうか。
私はイタリアではエアコンのない部屋に住んでいたため、夏が来るたびエアコン初期装備の日本の住まいに大満足しています。
ところで、皆様は今どのような曲を弾いていらっしゃいますか?
生き生きと軽快な曲、しっとりと優雅な曲、激しく情熱的な曲、深い悲しみを表現した曲など。私もまだまだ知らない曲が多く勉強中ですが、もし今練習している曲に合った音色が楽器から出てきたら、もっと演奏に気持ちか入るような気が…してきませんか??
弦楽器は交換・変更できるパーツも多いため(以前 弦楽器リペア便り Vol.4 テールコードをかえてみよう ♪ でご紹介していますが、こちらのテールコードもその一つです)、ご自身でパーツ・アクセサリーを取り替えていただくことで、音や使用感の変化を楽しむことができるかもしれません。
そこで今回は、使う方は毎度付け外しをする、肩当てのバリエーションをご紹介いたします。
肩当ての違い
肩当てはそれなりの重みがあり、取り付けることで楽器の振動に影響を与えるため、とても音質に影響しやすい部分です。
やはり演奏時にしっかり楽器を固定できること(=楽器が滑り落ちたりする危険がないこと)が最優先だとは思いますが、音質・使用感・耐久性等、品質にこだわって比べてみると、新しい発見があると思いますよ。
KUN (クン)
世界的に評価の高いカナダの肩当てメーカーです。当店の肩当てラインナップはこのメーカー製の物が一番多いです。
↑写真は下からオリジナル、スーパー、コラプシブル、ブラボーです。
↑各肩当ての脚部分はこのようになっています。
種類 | 素材 | サイズ | 販売価格(税込) |
---|---|---|---|
オリジナル | プラスチック | Vn4/4用 | ¥4,752 |
スーパー | プラスチック | Vn4/4用 | ¥5,616 |
コラプシブル | プラスチック | Vn4/4用 | ¥5,184 |
ブラボー | メイプル | Vn4/4用 | ¥10,368 |
KUN オリジナル Vn4/4用
創業当時からのスタンダードモデルです。肩当てに迷ったらこれ!…というオーソドックスな肩当てです。
KUN スーパー Vn4/4用
↑上がオリジナル、下がスーパーです。細かい刻みで長さの微調整ができます。
↑左がスーパー、右がオリジナルです。左のスーパーは、脚部分の付け根の角度を若干変えることができます。
上記の理由から、肩によりフィットさせることができます。肩当てがどうしても自分の肩に合わないと感じる方は一度お試しいただくと良いと思います。
KUN コラプシブル Vn4/4用
形状はオリジナルモデルがベースになっています。脚部分がコラプシブル(Collapsible)の名前通り、折り畳み可能になっているので、ケースへの収納がしやすくなっています。肩当てのしまい方に毎度悩んでいらっしゃる方は是非一度お試しください!
KUN ブラボー Vn4/4用
フレイムメープルの積層材を使用した、見た目にも美しい肩当てです。強い強度と適度な柔軟性で、柔らかい音色が期待できます。
Mach One(マッハワン) アッシュ・メイプル
ヴァイオリンメーカーであるPeter MACH氏が設計・製作した肩当てです。
上からアッシュ、メイプルです。
素材 | サイズ | 販売価格(税込) |
---|---|---|
アッシュ | Vn4/4用 | ¥9,504 |
メイプル | Vn4/4用 | ¥8,467 |
明るく力強い音色を引き出したい方に。足ゴムはKUNのものと比較すると柔らかめで、楽器によくフィットします。素材はアッシュとメイプルの2種類の木材があります。形状はKUNに比べて薄く、硬い感じになっています。楽器からの振動が肩に伝わりやすい肩当てですが、カーブが肩に合わないと使いづらいので、ご購入前に試奏されることをお勧めします。
Pedi(ペディ) エレガンテ
素材 | サイズ | 販売価格(税込) |
---|---|---|
カーボン・チタン | Vn4/4用 | ¥13,824 |
カーボンの本体にチタン製の脚部金具を使用しています。軽量で、肩に当たった感じがソフトです。音抜けも良く、楽器の響きはMACH ONEの次か同じくらい良いように感じました。この肩当ての脚部分は、KUN SUPERのように角度を若干変えることができます。また、足ゴムは今までご紹介した肩当の中で一番硬めの印象でしたので、一度楽器に取り付けてみて、しっかりフィットするか確認していただくと良いと思います。
弾き比べてみました
あくまでも私の主観的な感想に過ぎませんが、ご参考までに・・・
KUNシリーズ
肩当ての位置や足幅の調整にもよると思いますが、KUNのシリーズでは低音側の弦を鳴らしたときに音がより響いている(楽器がよく振動している)ように感じました。KUNのシリーズは多少の違いはあっても低音がよく鳴っていると思います。全体的にこの傾向があったのですが、唯一Bravoだけは良く鳴る他に音に適度にふわっとした柔らかさが加わる感じで、わざとがしがし弾いてみても耳障りな音が出にくいように感じました。他に違いはといえば、SUPERが、自分の肩に合わせて若干動くので、フィット感のようなものは他のKUNシリーズのものよりありました。
Mach One
より広範囲の弦で、響きが大きくなった気がします。楽器の出力が少し上がった!という感じです。ただ残念なことに、私にはこの肩当ての硬さが合いませんでした。頑張って納得がいくまで足部の高さを調節しなかったせいもありますが、バイオリンをしっかり固定するのに若干力が要りました。
Pedi
こちらも全体的に音の響きが大きくなったように感じました。柔らかなスポンジがついているので肩へのフィット感もありました。ただ、楽器に装着する側の足部のゴムの形が若干特殊なので、しっかり楽器に固定できるかお確かめいただくことをお勧めいたします。
おわりに
いかがでしたか?肩当ての位置・弾き方によっても音は変わってきますので、 肩宛を選ぶときは、①楽器にしっかり固定できるか ②肩に無理なくフィットするか(使用感は良いか) ③求める音質に近いか、の3点をしっかり見ていただくと良いと思います。基本的に、硬い素材の肩当ては楽器の音をはっきりした響きに、柔らかい素材は音も優しく柔らかく響く傾向がありますので、こちらでご紹介した中ではMach OneやPediの方がクリアーにはっきりした響きを引き出しやすいと言えます。もちろん、KUNシリーズの柔らかい響きや使用感が気に入られる方も多いので、お買替え前にお試しいただくと良いですよ。このページでご紹介した肩当ては、グランフロント大阪店でご試奏いただけますので、ご興味ございましたらお気軽にお問合せ下さい♪
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クレモナ国際バイオリン制作学校卒業後、島村楽器に入社し修理を担当。弦楽器を楽しむ皆様を技術面からサポートいたします!何でもお気軽にご相談ください!