リペア日誌~木材について~
こんにちは。緊急事態宣言が解除されましたが、皆様どうお過ごしですか?
第2波第3波がすでに起きているとされている地域もあるので、感染予防と周囲の迷惑になる行動をしない様に気を付けようと思います。
自粛期間中に...
私は改めて楽器に関する事をたくさん勉強しました。
勉強した全ての事は書ききれないので、今回は木材に関して簡単にまとめてシェアしていこうと思います。
楽器選びの参考になれば幸いです。
楽器や交換パーツ選びの条件の一つ!
皆様は新しく楽器を選ぶときにどんなことを条件に入れますか?
メーカー?見た目?ピックアップ?
人それぞれの好みによって条件はバラバラだと思います。
店頭で接客販売を行っていた時、私は使用木材選びも重要視してご案内していました。
搭載されているハードパーツの種類や木材自体の個性によって全く違う音色になる事もあるので、あくまでも音色の傾向と捉えて頂ければと思います。
ローズウッド
⓵ブラジリアン・ローズウッド
⓶ホンジュラス・ローズウッド
⓷インディアン・ローズウッド
⓵はハカランダとも呼ばれますが、乱伐によって輸出規制が掛かっているので有名ですね。
もし現在流通するものがあれば、ごく一部のメーカーや製作者が規制前から保有しているもので、
基本的にはヴィンテージでしか存在せず、非常に高価な物と考えて良いと思います。
元々特定に地域にしか生息しないため、非常に希少な木材なのですが、
ハカランダは「パワーのある重厚な音に加え、中低音~高音域もバランスよく、倍音成分も豊富」という具合に、楽器としては最高に良い木材と言えるでしょう。
一度ハカランダが使用されている楽器の演奏を聴いたことがありますが、ポーンと一音鳴らしただけで心地よくなる音色でした。
⓶はハカランダに負けない音色を持つとして、ハカランダの次に良く使用される木材になりました。
ギターマニアの方の中には、ハカランダより好きだ!という方も多い様です。
ですが、今ではこちらも入手困難な木材になってしまっており、現在流通する事はほとんどありません。
⓷は現在制作されている楽器で「ローズウッド」と記載されていればこれだろうという種類です。
音色を数値化した場合でもハカランダに似ており、重厚で中低音がしっかりしていながらも煌びやかで優れた高音の伸びを持つバランスの良い音色で、高級機種にも多く使用されています。
こちらも「良い物」は少なくなってきているようです。
ローズウッドの見た目はこちら↓
スーッと綺麗で真っすぐな木目をしています。
主に指板材やアコースティックギターのサイド&バック材に使用されています。
マホガニー
⓵ホンジュラス・マホガニー
⓶アフリカン・マホガニー
⓷フィリピン・マホガニー
ギター材としては古くから⓵が使用されてきましたが、こちらも規制がかかり、現在は⓶の使用率の方が高くなっています。
豊かな中低音を持ちますが、高音域がさほど強くないので、角の立っていない丸みのある音という印象になります。
私個人的にはもこもこしたまろやかな音という印象です。
マホガニーの見た目はこちら↓
(塗装はされていますが)独特な赤褐色で、優しく感じる見た目です。
特徴としては、スッと伸びている木目の中にブツブツと点々が存在しており、木目の色もローズウッド程ハッキリとしていません。
メイプル
⓵ヨーロピアン・メイプル
⓶ソフト・メイプル
⓷ハード・メイプル
⓸クィーンズ・メイプル
⓵はシカモア・メイプルとも呼ばれ、古くからヴァイオリンの木材として多く使用されてきました。
木目が美しい状態の物があり、昔はその木目を生かして工芸品として希少価値のあるメイプル一枚でできたギターもあるそうです。
音色はレスポンスは良いものの、高音が控えめで落ち着いた音質を持ちます。
⓶はネック材に使用されることは少なく、サイド&バック材としての使用が多いです。
(代表的には、Taylor 614ce)
堅く歯切れの良い音抜けの良い音になる事が特徴です。
⓷はサイド&バックはもちろん、ネック材としても使用されます。
強度が高く、堅く重いのですが、他のメイプルと比べるとより高音が強く、クッキリとした音になります。
(産地は非公開ですが、Gibsonのアコギのネックはハードメイプルの使用率が高いようです。)
⓸は私は改めて勉強して知った木材でした。
オーストラリアが主要産地で、オーストラリア産のギターに使用しているようです。
メイプルという名が付いていますが実はミカン科で、所謂メイプルではない(メイプルはカエデ科)との事。
メイプルよりはマホガニーに似た性質を持っていて、低中高域とバランスが取れた爽やかで明るい音質を持ちます。
かなり使いやすい音と評価され、最近は人気が出ているとの事です。
メイプルは産地ではなく、木目の種類や美しさで金額が大きく変わります。
・フレイム・メイプル⇒トラ模様
・キルト・メイプル⇒波紋模様
・カーリー・メイプル⇒波紋模様
・バーズアイ・メイプル⇒玉粒状の鳥の眼のような模様
例として挙げさせていただきましたが、他にも種類や木目の状態によっても名称が異なります。
アッシュ
⓵ホワイトアッシュ
⓶ライトアッシュ
⓵はアタックとレスポンスに優れ、メリハリのある音色が特徴で、繊維が詰まりずっしりと重たい木材ですが、重ければ重いほど低音域が豊かになります。
⓶はホワイトアッシュが比較的温暖な地域で育ち、成長が早いので密度が低くなります。
軽量になる分低音域は出にくくなりますが、抜けの良い音質が人気の一つです。
見た目はこちら↓
木材を炙って木目の色が濃くさせ、より見た目のメリハリがある物も存在します。
アルダー
「枯れた抜けの良いトーン」と評価されることが多いですが、特定の癖は特になく、バランスよく響く木材です。
アッシュとマホガニーの中間とも考えられています。
見た目はこちら↓
クッキリとした木目は無く、比較的真っすぐな木目が続きます。
ご自宅にある家具に使用されていたりもするかもしれません。
バスウッド
安価に仕入れが可能なため、廉価版のギターに採用されることが多いです。
木材自体の癖が無いので、「ピックアップの特性をそのまま反映してくれる」という特性があり、
ハイエンド系のバック材として採用しているメーカーもあります。
見た目はこちら↓
正直、見た目にも特徴がありませんね。まさに「木」です。
今回は
思いのほかものすごく長くなってしまいました...
今回はよく耳にする木材にフォーカスしてみました。
他にもたくさんの木材があるのですが、それはまた次の機会にさせて頂きます。
長くなりましたが、最後までご覧頂き有難う御座いました!
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