楽器(ギター、ベース)におけるネジの話⑤
皆さまこんにちは。
約2年間かけて連載していたネジのお話。ついに最終回です。
これまで種類や規格のお話をしてきましたが、最後はトラブル事例やリペアに関する内容です。
トラブル事例 錆び
ネジの多くが鉄製ですので、宿命とも言えるトラブルですね。
「使い込まれた雰囲気がカッコイイ」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、後述する「折れ」、「頭ナメ」などの原因ともなりますので、機能面で申し上げると、錆びて良い事はありません。
また、ネジのサビがブリッジサドルなどパーツ本体部分に移ってしまう恐れもありますので、「もしかしてこのネジ錆びてる?」と感じたらすぐに交換する事をおすすめします。ネジだけなら替えが効く場合が多いですが、パーツ本体は交換したくても同じ物がもうこの世に存在しない事が多々あります。
トラブル事例 頭ナメ
ネジ頭が潰れてしまって、回す事が困難な状態になるトラブルです。
錆に起因したケースもありますが、
・サイズの合っていない工具を使用した
・ネジ頭に対して工具を斜めに傾いた状態で使用した
・動きがかたいネジを無理矢理力で回そうとした
など、人為的な要因で起こる事も多いです。普段リペアをしていると、お客様ご自身では気付いていないけど、実はなめてしまっているという事も良くあります。(サドルのイモネジや、ベースピックアップのマウントネジなどで起こりやすいかなと思います。)
トラブル事例 折れ
錆びてもろくなったネジが折れてしまう事はもちろん、新品のネジでも下穴の加工が不十分だと折れてしまうケースはあります。
昔、「購入したペグをご自身で交換しようとしたら付属のネジが折れた」という話を年に数回ほど耳にした時期がありました。これはネジの不良ではなくて、十中八九、新しいペグのネジの方が太いのに元の下穴にそのままねじこんでしまった事が原因と思います。(折れたというよりも動きがかたい状態で回してねじきれてしまった)
ネジのトラブルに対するリペア方法
錆びた、なめた、折れたなど普通の方法では回せなくなってしまったネジは、どうするか。
潤滑剤を塗布する、専用工具でつまんで回す、溝を切ってマイナスドライバーで回す、あえてサイズの違う工具を使って噛むポイントを作り回す・・・
と、まずは何とか回す工夫をして外す事を試みます。
ビスナメブログでご紹介している、逆ネジを利用してトラブったネジを取り外す専用キットも市販されていますが、ギターの場合は細いネジが多いので、なかなか難しいが多いです。
それでもどうにも回らない場合は、ビスナメ、折れブログでもご紹介しているように、「ネジを削り取る」「周囲を削り広げて取り出す」など荒っぽい方法になっていきます。
パーツを再度取り付けて隠れる場合は、問題ありませんが、ここまでくると、残念ながら周囲へのダメージ無しで作業する事は困難です。色々な手法がありますので、上記はあくまで一例ですが、プロのリペアスタッフでも綺麗に取り外せない場合があるのが現実です。
詰まるところ
「錆びはじめたら交換する」「手ごたえが固い場合は無理に回さない」「適正な工具を使用する」
といったネジトラブルを起こさないという事が大切ですね。
それでも、ネジのトラブルが発生してしまったら、ご相談下さい。
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石川県金沢市出身 2013年中途入社。生粋のA型で、「大人なリペアマン」がモットーのギターリペア工房の真面目担当。