トップ割れ+ブレーシング破損作業紹介

みなさまこんにちは。

日々東京のリペア工房には様々なリペアや改造が持ち込まれますが今回は前回の依頼紹介でもご紹介したトップ割れの作業紹介をしたいと思います。

そもそもボディが割れてしまう主な要因としてはいくつかあります。

①適正な乾燥状態の木材が保管環境によってさらに乾燥し、割れる

②乾燥が不十分な木材が理想の乾燥状態に戻り、割れる。

③外的な力が加わり割れる。楽器をぶつける、落としてしまうなど。

今回持ち込まれたボディ割れのリペアの要因は③の外的要因によって割れてしまったものになります。

楽器はこちら。ご存知指1本で演奏できる夢の楽器ヤイリギターの一五一会。

寄ってみましょう。

トップの割れと交差するブレーシングも剥がれていました。しかもこのまま固定しても隙間が大きく残ってしまう状態に。どうやら割れと同時に一部木材が欠損してしまった場です。

本来軽度な剥がれであればリペア個所をきれいにし接着剤を流し込み固定すれば解決となるのですが今回はそうはいかないようです。

お客様のご要望を伺いせっかく知人の方に譲っていただいた楽器なので是非リペアをお願いしますと依頼受けましたので今回はバック側から箱型ボディを解体しようと決めました。

そうすることで一部欠損しているブレーシングの交換や割れ部の補強もより強固にできますので今後の長期使用も安心してできる。それでは早速作業開始です。

とにかくまずはボディを開けないことには始まりませんのでバック側を外していきます。

幸いボディの接着にはオーソドックスな接着剤(木工用ボンドに近いもの)でしたので接着個所を十分に温めへらなどを利用して少しずつはがしていきます。木材に影響が出ないよに慎重に進めつつひとまず作業完了です。

外から確認した個所を念入りにチェック。欠損し、へらがすんなり入る程剥がれています。

このままではいけませんのでブレーシングと外していきます。バック板をはがした時と同じ要領で温めながらへらで外していきます。

もちろん交換に必要なブレーシングは出来合いのものがありませんので画像奥のスプルースの角材から切り出していきます。

工房では楽器を一から製作できるような大型の設備がありますので今回は木材の切り出しと荒加工まで機械で行いました。

ピッタリですね。でもこれではまだ完成とは言えません。ここからさらに手作業で加工していきます。

完成です!次はボディに接着していきます。

接着剤が乾くまで一晩待ちましょう。

トップ板とブレーシングの間に隙間もなくサイズもピッタリですね。ちなみに画像右側に薄っすら2本線があるのが割れている部分です。次はここを補強していきましょう。

今回補強に使用するのは和紙です。

紙で大丈夫?!なんて思ったそこのあなた!ご安心ください。紙漉きの手法で作られた和紙は細かな繊維が複雑に絡み合ってできているので丈夫でしかもアコースティック系の楽器で一番懸念される音質への影響も最小限に抑えることができる優れものなんです。

ちなみに補強に使う材料はほかにもいろいろありますがそれはまたの機会にご紹介できればと思います。

それぞれ補強が必要な個所に合わせて和紙を切り出し、接着剤を染み込ませ貼り付けます。

一晩置いて接着剤が硬化しました。

さあ作業も後半戦に突入!ボディの復元へと取り掛かりましょう。

きれいに剥がしたとは言え接着剤が残っていますね。これでは接着しても剥がれてしまうリスクがありますのできれいにしていきましょう。

ここでも登場ノミです。本当に万能ですね。最後はやすり掛けを行い整えます。この作業はふたになるバック面にも同様の作業を行いま。

これでようやく接着の準備が完了です。クランプでしっかり固定し接着します。

一晩おいたものがこちら。しっかり元に戻りました。最終工程の塗装に入るべく作業を進めて行きましょう!

刃物などを使ってはみ出たボンドを取り除き、全体に細かく傷をつけて塗装準備OK!

バックとサイドの接着ケ所には剥がした際の影響や面接着の際にはみ出た接着剤を除去する関係で部分的ではありますが色のかすれる部分や、つや消し感がなくなってしまう個所がありましたので元々吹かれている塗料と同じものを使用して色とつや感を合わせていきます。

いい感じに仕上がりました。

最後に弦交換、調整をして完成。

割れと欠損していたブレーシングも元通りに。

如何でしたか?

塗装に関しては最小限にとどめているためトップ面側の傷跡などはそのままとなっておりますが、ここからさらにきれいにすることももちろん可能です。

今回のようなボディの割れや剥がれに伴う木部の欠損などのリペアは意外に多く、ユーザーさん自身も本当に治せるのだろうかと心配しながら持ち込まれる方もたくさんいらっしゃいます。

ご安心くださいギターリペア工房ではどんな状態でもお客様のニーズに合わせてベストなご案内ができます。

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この記事を書いたスタッフ

浅草橋ギター&リペア店長谷川

「最近なんだか弾きづらい」「自分だけのオリジナルにしたい」などなど、エレキ、アコースティック問わず、改造なんでも長谷川にお任せください!!

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