ポストハードコアの最先端を走る、ロブ・ロルフ さんのライブギアに迫る

みなさんこんにちは!最近何かと登場の機会が多い開発のイシイです。今回のドラムブログでは特別なイベントのレポートをします。
たった二人のドラム職人の手で全てのドラム作り上げるカスタム・メーカー、TRUST/TRUTH について紹介させていただきましたが、今回はTRUTHアーティストであり、イギリスのポストハードコア・バンド、エンターシカリのドラマーである、ロブ・ロルフさん (Rob Rolfeさん、以降Robさん) の来日コンサートでの様子をレポートさせていただきます。
TRUST CUSTOM DRUMS についてはこちら
エンターシカリ (Enter Shikari)

イギリスはハートフォードシャー州 出身のポスト・ハードコア・バンド。ハードコア、メタル、ダブステップ、ドラムンベース、レイヴ、ヒップホップなどを融合させた、誰にもマネのできないそのスタイルは「エレクトロニコア」とも呼ばれています。
1999年からHybrid、2003年ギタリスト Rory Clewlow さんの加入とともに ENTER SHIKARI として活動、2015年には4枚目のフルアルバム「Mindsweep」をリリースしました。
一番左がRobさんです。普段からTRUTHのドラムを愛用しており、今回のジャパンツアーで「 TRUST のドラムを使いたい」といった要望をいただきサポートさせていただきました。
いざライブ会場へ

日本には単独公演を含み既に5回は来日しているエンターシカリ。今、世界のメタルシーンで注目され始めている日本が誇るメタルコアバンド、Crossfaith との親交が深く、この度 Crossfaith 主催するツアー、Across The Future 2016 に参加しました。

さっそくTRUSTキットに迫る

ブビンガシェルのドラムセット。Elmer Green Sparkle というフィニッシュが照明に映えます。
サイズ:
- バスドラ 22×18インチ
- タム 10×8インチ
- フロアタム 16×14インチ
- メインスネア(メイプル) 13×7
- サイドスネア(メイプル) 10×6インチ
ヘッド
- スネア エヴァンズ・ハイブリッドコーテッド
- サイドスネア レモアンバサダー
- タム・フロアタムヘッド クリアエンペラー(top)、クリアアンバサダー(bottom)
- バスドラヘッド パワーストローク3

今や希少材となり始めてきているブビンガ材。とても硬い材質のシェルに、音が引き締まる効果があるダイキャストフープを装着しています。「非常にソリッドで音程感がハッキリと出る」スペックを生かし、ドラムテックのSteve Muncasterさんがとても引き締まったマイクのりのよさそうなサウンドにまとめ上げていました。各タムとスネアにはRTOM RG-4 のドラムミュートが貼ってあります。
左奥に見えるのが、RolandのサンプリングパッドSPD-SX。ここにエンターシカリの秘密がたくさん隠されている気がしてなりません。バスドラとスネアにトリガー用のセンサーが設置されているのもポイントです。
椅子の高さは太ももがちょうど地面と水平になるくらいの高さ。それでもドラムスローンのパイプがかなり出ていますので、Robさんがいかに大きな人なのか、分かると思います。
シンバル
セイビアン・シンバルのエンドーサーのRobさん、AAXとHHXシリーズが比較的多いセットアップでした。サイズは小型キットに合わせて、全体的に薄め、ライブのきらびやかなサウンドを意識してか、ブリリアント仕上げのものが多かったです。クラッシュはAAXの17と19の奇数インチ。穴空きはHHXのEvolution、右側のクローズドハイハットは10インチ(推測)、ライドは少し右端にセットしていました。重ねシンバルはチャイナにスプラッシュと思われるものを逆に載せてあります。
スネア

メインのスネアです。ENTER SHIKARIのライブサウンドを決定づけるスーパータイトなバックビートを出していました。御覧のとおりTRUTHのロゴ。こちらのスネアだけは持ち込んでいました。
スネアスペック:
- 13×7 インチ、10plyシェル
- ダイキャストフープ
- ゴールドパーツ (チューブラグ)
- 打面ヘッド:エヴァンズ社 ハイブリッド・コーテッド
- 裏ヘッド:チェックし損ねました。。すいません!
13インチで歯切れのいい音を出しながら、7インチの胴で低域も稼いでいます。やや厚めのシェルをダイキャストフープでつつみ、こちらも引き締まったパワー感あふれるサウンドが特徴のスペックです。
ただ、一番特徴的なのはドラムヘッドです。エヴァンズの「ハイブリッド・コーテッド」。2種類の高強度ファイバーを編み込み、優れたレスポンスと耐久性を両立するハイブリット・ヘッド。マーチングにも対応する究極の耐久性と強烈なアタックが特徴で、世界中にハードヒッター注目されつつあるヘッドです。
サウンドはまさに「スーパータイト」!様々なデジタルサウンドやメタリックなリフが交互に飛び交うバンドサウンドの中で、ピシッを音が抜けてバンドをグイグイ前に引っ張っていく、とても意思の入ったサウンドでした。

こちらはメインスネアに何かあった時にはすぐに交換できるよう、ステージ脇で待機していた13×6のTRUSTスネア。ライブでは Powerstrike3 に交換しました。

こちらは10インチのサイドスネア。
- メイプルシェル
- ビーバーテイルラグ(クローム)
- トリプルフランジフープ
- Trick製ストレーナー
ENTER SHIKARIのエレクトロニックサウンドとの相性が抜群で、Robさんが好んで使用しているサイズです。Robさんの来日に合わせて、米TRUTHのドラムビルダー Tim Gibsonさんが急遽間に合わせてくれた、現時点で世界に1台だけの逸品です。

TRUST標準装備のTRICKストレーナー。自分の中心に来るようにセットしていました。ツインペダルはTAMAのスピードコブラ。とてもコンパクトにセットされているのが印象的です。ビーターの左右角度が微妙に違うのもポイントです。スプリングテンションを確認する時間が取れませんでした。反省。。。

ライブリハーサル中のRobさん。初回のリハにも関わらず短時間で2曲、ポイントだけを抑えてあっという間に終了させるENTER SHIKARI。。世界中を回っている百戦錬磨のスタッフとバンドの実力がこんなところにも表れていました。左に立っているのはドラムテックとしてだけではなく、全体の機材のテック係としてステージを駆けまくっていたSteve Muncasterさんです。自身もバンドで活動しているそうです。
いざ エンターシカリ のライブ

ライブ直前の様子。
4バンドが演奏する Across The Future、時間の都合で40分間のコンパクトなセットでしたが、その40分を生かし切り、その中で燃え尽きてやると言わんばかりの力のこもったライブでした。ジャパンツアー初日にかけるメンバーの集中力を感じさせる素晴らしいパフォーマンスでした。
エンターシカリはエレクトロニックのサウンドとギターを中心としたハードコア/メタルのブレンド具合が特徴ですが、ヴォーカリストであり、デジタルパート担当のラウ・レイノルズさんがシンセ等に陣取って弾きまくる姿はあまり見られません。つまりバッキングトラックとバンドが同期してプレーすることも少なくはないはずですが(推測ですが)、タイミングなどをコントロールしていると見られる、 Robさんのまったく狂いのない演奏が繰り広げられます。
テンポやリズム、そして曲調が変わる中、様々なリズムを繰り出すRobさんのプレー、あっという間の40分間でした。
(ライブ写真は諸事情につき掲載していません。申し訳ありません。)
Rob さんに聞いてみました

アメリカのカスタムメーカーである、TRUTH を知ったきっかけは何でしょうか
実は TRUTH との関係は9年以上も続いています。最初はTRUTHのヨーロッパ担当の人からドラムを使ってみないか、といったアプローチがありました。それ以来気に入って愛用しており、今は3つのセット (2台はイギリス、1台はアメリカに保管) を所有しています。
TRUTH/TRUST の気に入っている点について教えてください
まずサウンドクオリティ、そして仕上げの美しさです。TRUTH/TRUSTの Tim と Geoff は困った時に連絡するとすぐに対応してくれます。TRUTH/TRUSTのドラムを使うことのもうひとつの喜び、それは「人」の部分と言えます。
ハイブリッドコーテッドのサウンドがとにかく印象的なのですが、マーチングの経験があるのでしょうか?
マーチングのバックグラウンドはないです。依然アメリカでツアー中に誰かに勧められたので試してみたところ、そのタイトなサウンドを気に入りそれ以来使っているんです。値段ははりますが、通常のヘッドの2~3枚分は軽くもつので、結局同じことかもしれません。抜群の耐久性も気に入っています。
普段は 20インチのバスドラを使っているようですが、なぜ小さな口径のドラムを使うのでしょうか
これも実は当時のTRUTHヨーロッパ担当の人から勧められました。音が作りやすい点と、音程の高低差を付けやすい点が ENTER SHIKARI の音楽にもマッチするからです。通常つかっているバスドラは20インチ口径ですが、深さも20インチあります。パンチのある音を出しながらも、低音域は深さでかせいでいます。
10インチのタムと16インチのタムをセットしているのも同じ理由です。実は高いタムから低いタムまで順番にタカトコトコドコ、、と連打するのはあまり好きではありません。プレーの中でもっと極端に音程差を出したプレーをするのが好きです。
最後に20インチのバスドラだと、低い位置にタムをセットできる点も気に入っています。
Robさん、丁寧に答えてくださり、ありがとうございます!
最後に

この度初めてお会いしたRobさんをはじめとするメンバーのみなさん、そしてスタッフの皆さんに共通したことですが、何気ない会話の中からも、地に足の着き、丁寧に人と接する人柄の良さが伝わってきました。とても人気上昇中の世界を飛び回っているバンドとは思えない程でした。
このたび Crossfaith さんの呼びかけでイギリス、アメリカ、そして日本から集まった3つのバンド達、イベント期間中の各バンドのツイッターなどを読んでも、みなさんの仲の良さを感じ取った方も多かったと思います。楽器を作るときも、音楽を作るときも、人柄、そして人のつながりの大切さを感じたコンサートでした。
次回の「こだわりの逸品」、今度こそスネアレビューをやります。
今回Robさんがツアーで使用したドラムセットは TRUST CUSTOM DRUMS の国内ディーラーショップ、札幌平岡店に展示します。カスタムドラムに興味がある方、お気軽にご相談ください。

~ エンターシカリ情報 ~
