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【徹底検証】今話題のスリットドラム。新製品 BEATROOT を人気の HAPI ドラムと比べてみた!

石橋が書いた記事

みなさんこんにちは!!イオンモール札幌平岡店ドラム担当の石橋です。

今回のドラムブログ【徹底検証 】シリーズは魅惑のパーカッション、スピリチュアルな雰囲気満載の「スリットドラム」を紹介します!!

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(画像左:HAPI Original、画像右:BEATROOT Steel Tongue Drum)

スリットドラムとは

スリットドラムは中が空洞になっている鉄製の打楽器で、上部にスリットが設けられており、そこを叩く事で全体が共鳴しながら音が出る仕組みになっています。スリットが舌(Tongue)に似ていることから「トング(Tongue)ドラム」とも呼ばれています。

床またはひざの上に置いて、素手やマレットを用いて演奏するこのスリットドラムは深く澄みきったサウンドが最大の魅力ですが、「誰でも簡単に楽しめる」という自由な楽器として、コアなプレーヤー以外からもとても人気があります。

まさに魅惑のパーカッション、スリットドラムですが、少しだけその前身とも言える楽器、「ハングドラム」について触れる必要があります。

スリットドラムのルーツ:ハングドラムとは

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凹面を叩いて演奏するスチールパンとは逆の凸面を「手」で叩いて演奏するハングドラムは2000年頃、スイスで発明された打楽器で発売後にその魅惑的なサウンドが話題となりました。しかし、このハングドラム、なかなか安定的な生産体制を築くことができず、すぐに幻の楽器となりました。「決まった奏法」などなく、誰でもどこでも楽しめるその演奏スタイルは世界中でファンを作り、現在も様々な派生製品が作られています。

ハングドラムの演奏をひとつ聴いてみましょう。

www.youtube.com

こんなスゴい演奏動画をみてしまうと「どっぷりハマってしまう」か「難しそうなので諦めてしまう」かどっちかですね~。

そこでHAPIドラム、そしてBEATROOTの「スチール・トング・ドラム」登場!それぞれ「スリット」を設ける事で演奏しやすくなり、誰でも気軽に楽しめるようになりました。

敢えて言わせてください、「安心して下さい、(スリットが)空いてますよ!!」

まずはHAPIドラムの紹介

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HAPI Drumは、2008年に北米のハピトーンズ社が開発したスリットドラムの一種。音階がペンタトニックスケールに基づき配列されているので、好きな順番で叩くだけで、メロディーを奏でているように聞こえます。また、いくつかの音を適当に組み合わせるだけでコード(和音)も簡単に出すことができる、まさに誰もが楽しめる「直感的」な楽器です。

ラインナップ

Original

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メーカー希望小売価格:(税抜)¥53,000 (税込 ¥58,300)

販売価格:(税抜)¥47,700 (税込 ¥52,470)

サイズは直径約30㎝ × 高さ約21㎝、重量は4.2㎏のOriginal モデル。たっぷりとした筐体から奏でられる倍音成分豊かな深みのあるサウンドが特徴です。国内では D と E のメジャー・マイナー・アケボノ・ピグミースケールがあります。またメジャー・マイナースケールでは3色のカラーラインナップがあります。

www.youtube.com

各スケールの構成音です。

Mini

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メーカー希望小売価格:(税抜)¥35,000 (税込 ¥38,500)

販売価格:(税抜)¥31,500 (税込 ¥34,650)

直径約 20cm、重量 1.6㎏の小ぶりなHAPI Drum Miniです。Mini は従来のHAPI Drumの深く包み込むような音色に対し、明瞭感のある滑らかな音がします。チューニングもCメジャー、Dメジャーの他に日本の音階をベースにしたアケボノ、アフリカ・ルワンダの音楽に由来するピグミーチューニングの2種類があります。どちらも民族音楽的要素の強いエキゾチックなスケールですが、基音はDですので様々な楽器とのアンサンブルが可能です。またHAPIの2台使いもオススメです!!

www.youtube.com

サイズ比較

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HAPI Original(画像右)とMini(画像左)を並べてみました。

スペック

Original
  • 1スケール 8音板(D Major/Minor、E Major/Minor、D Akebono/Pygmy、E Akebono/Pygmy
  • カラー AQUA TEEL、INDIGO BLUE、DEEP PURPLE(全3色)
  • 寸法 直径30cm×高さ21m
  • 重量 4.2kg
  • 付属品 専用ソフトケース・マレット
Mini
  • 1スケール 8音板(C Major、D Major、D Akebono、D Pygmy)
  • カラー COPPER(1色のみの展開)
  • 寸法 直径20cm×高さ14㎝
  • 重量 1.6kg
  • 付属品 専用ソフトケース・マレット

特徴

Original

深く包み込むような「癒し系」サウンドはいつまでも演奏していたい気持ちにさせてくれます。HAPIドラムが音楽療法やリラクゼーションの現場でも実際に使われている事実も頷けますね!独自のキー配列は打楽器的な演奏アプローチにも向いており、適当に叩くだけでも斬新なメロディラインが続々と生み出されます(笑)ハングドラムに比べてコンパクトとは言えどそれなりのサイズではありますが、HAPIドラムなら外に持って出かけたい、、これからの季節、そんな気持ちにさせてくれる楽器です。

Mini

サイズダウンした事で高音域帯が強調されますが、キンキンした印象はありません。HAPIドラム特有の包み込むような優しいサウンドはそのままで、指での演奏もコツさえつかめば大きい音量で鳴ってくれます。何よりも出前のカツ丼の器位のサイズというのが愛くるしく、持った時にもしっくりきますね!!小さなお子様にもオススメです。

パーツの紹介

こだわりのチューニング

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スリットの根元の溝の長さを調整する事で正確な音程を作っています。ストロボチューナーを使用して精密に手作業で行っているそうです。職人の技術を感じます!!

ゴム脚

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底面からみた画像です。

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幾何学的なサウンドホールの周りに丸いゴム脚が3つ付いています。置いて演奏する時、サウンドホールから出る音がこもらない為のものですが、滑り止めとしての効果もあります。

表面加工・ロゴ

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細かい粒子を吹き付けたような塗装は美しい発色をより際立たせています。このすこしざらついた表面は演奏する時に横滑りを防ぐ効果があります。

中央にはHAPIのロゴを冠したプレートが付いておりますが、実はここを手の平全体で叩くと、ギターで言うところのハーモニクスのようなサウンドが出ますので演奏時のアクセントとして効果的です!!

付属品

マレット (Original)

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マレット(Mini)

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Original・Mini 共に付属のマレットは柔らかめなゴムのタイプを採用しています。マレット使用時はHAPIの深みのある優しいサウンドを引き出す為にも、この位のソフトなタイプで力を使わずに演奏するのがオススメです。

専用ケース (Original)

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専用ケース(Mini)

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やや厚みのあるクッションが入ったソフトケースは保管にも最適ですが、肩からかけられる仕様は思わず外に連れ出したくなりますね!!

今回ご紹介しましたOrijinal・Mini以外では、11のスリットを設ける事で10種類以上のスケールを有した「UFO」モデルや、厚みを5cm薄く、重さを0.9kg軽くした「スリム」モデルもラインナップされています。

詳しくはメーカーサイトHAPI Drum -HOSCO-をご覧下さい。

おまたせしました、BeatRoot (ビートルート) 登場!

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2014年、フランスで設立したACSE社が立ち上げたブランド。ハングドラムインスパイヤされ、スチール・トング・ドラム(Steel Tongue Drum) を製作しました。

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スチール・トング・ドラムはスケール毎に出せる音が決まっており、叩けば誰でも簡単に音が出せます。またこれらの楽器は1台1台人の手で調律して完成させています。

ラインナップ

アコースティック

マイクなし、生音のみで勝負するアコースティックバージョンです。

メーカー希望小売価格:(税抜)¥60,000(税込 ¥66,000)

販売価格:(税抜)¥51,000(税込 ¥56,100)

発売:2016年5月25日(水)

エレクトリック

ピエゾマイクを内蔵しており、アンプにつないでステージでの演奏、またはバンドとの競演もできます。エフェクト機器と接続し多彩な表現をすることも可能です。

メーカー希望小売価格:(税抜)¥65,000(税込 ¥71,500)

販売価格:(税抜)¥55,250(税込 ¥60,775)

発売:2016年5月25日(水)

スペック

  • スケール:アケボノ・マイナー・メジャー・ペンタトニック
  • 1スケールあたり、8音板
  • カラー:ホワイト・ブラック
  • 寸法 直径30cm×15cm
  • 重量 5kg
  • 付属品 専用バックパック・マレット

2タイプ(アコースティック/エレクトリック)・2カラー(ホワイト/ブラック)・4音階(アケボノ/マイナー/メジャー/ペンタトニック)、合計16種類の豪華ラインアップです。

ホワイト

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ブラック

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スケール

アケボノ 日本の伝統音楽由来の音階/即興演奏向き/汎用性が高いスケール。ハングドラム愛好家に人気がある音階で、音楽療法の演奏時に使われることも多い。
マイナー 3種類のコードを組み合わせたオリジナルのコード。
メジャー 自然なあたたかみと明るさを持ったスケール。幅広いジャンルに対応可能。
ペンタトニック ギター、鍵盤楽器との相性抜群なスケール。

特徴

"Made in France" というだけで心躍ってしまいますが、まずはモノトーンの配色にエスプリを感じさせるロゴデザインが目を引きます。サウンドに関してはしっかりとしたアタック、十分なサスティーン、明瞭な音程感が特徴で、倍音成分に関してはHAPIと比較すると若干スッキリとしていますが、適度に感じられバランスが良い印象です。

また、エレクトリック仕様のタイプはBEATROOTの持つクリアなトーンを最大限に活かすピエゾマイクが搭載されており、アンプと接続する事でレコーディングやライブでも活躍してくれそうです。

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YAMAHA エレアコ用アンプ、THR5Aにつないだ時の印象を少し。5種類のアンプシュミレーション(CONDENSER、DYNAMIC、TUBE、NYLON、EG CLN)を試してみましたが、いずれもBEATROOTの持つ癖の無いクリアなトーンが楽しめました。エフェクトのりも良く、特に空間系エフェクトとの相性は抜群でした。

さらにLOOPERなどを使ったソロパフォーマンスの映像を見てみましょう。

www.youtube.com

パーツ紹介

スリット

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スリット部分の先は丸くなっており、手でやさしく包み込んでいるような印象が無機質なデザインに温かみを与えています。

こちらもこだわりのチューニング

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スリットを内側から撮影した画像です。HAPIドラムがスリットの溝の部分で最終調整するのに対し、BEATROOTは金属に印を付けることで調整しているようです。「外観は変えない、音も妥協しない」という強烈なポリシーを感じます。

ゴム脚

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底面には小ぶりな3つのゴム脚が装着されています。音抜けと滑り防止目的ですが洗練されたデザインの一部となっており、正に機能美とも言える仕様です。

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「BEATROOT」「MADE IN FRANCE」「G C D E G A B D(スケール音名表記)」がサウンドホールの周りに彫ってあります。近未来的でもあり超古代的でもある不思議な雰囲気ですね。

おしゃれな質感

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側面のロゴ部分を良く見るとカーボン調の素材が貼られており白と黒のコントラストに高級感を与えています。また、上面・底面の2つのパーツを真ん中でつないで作られている為、つなぎ目部分をカバーする目的と同時に倍音コントロールの役割も果たしていると思われます。

ジャック(エレクトリックのみ)

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エレキギター/ベース等と同様の規格のものを使用していますので、何かと便利ですね!BEATROOTと好相性なこだわりシールドを選ぶのも楽しくなりそうです!!

内側には丁寧に取り付けられたピエゾマイクを搭載。電池不要のパッシブタイプで、クリアな生音をイメージどおりにアンプで増幅できるところも◎!!

付属品

マレット

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こちらも若干柔らかめなゴムのマレットを採用しています。指での演奏に比べてまろやかなサウンドになる印象です。カラーに赤を持ってくるところが流石です!!

バックパック

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なんとリュック!!楽器運搬の際に手が空くのはありがたい事ですね。

BEATROOTを知らない方は中に何が入っているか全く見当が付かない事と思います。

BEATROOTオフィシャルサイト

BEATROOTの動画リンク

www.youtube.com

最後に:キー配列の比較

そんなHAPIとBEATROOT、実は音の配列が全く違います。ドレミファをメモしてみたので見てみてください。(音程の横の数字はオクターブです)

HAPI

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上の画像はOriginal(Eマイナー)におけるノート・レイアウト(音の配置順)です。

このレイアウト(特許出願中)には実は理由があるんです。低音の横に適切な高音を配置させることで、豊かな倍音を生み出します。一つのスリットを叩いた時にさらに和音を付け加える効果を生み出し、それぞれの音をより複雑な、音楽的な音にする効果があります。

BeatRoot

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こちらはGマイナースケールです。キー配列は下から低音順に8つの音板が並んでいます。メロディラインを意識したフレーズを演奏する時は、この並びが有利かと思います。見た目もすっきりしていますね!!

 

検証後記

今回、HAPIドラムとBEATROOTの2機種を検証し改めて感じた事、それは「やっはりもっともっと多くの人にこのパーカッションについて知ってもらいたい!」という想いです。

ハングドラムに興味はあっても稀少かつ高価な事もあり気軽に始められない、と思っている方も多いはず。またハングドラムをご存知でない方、さらには楽器経験の無い方でも楽しみながら「癒される」という素晴らしい体験が出来るスリットドラムは多くの可能性を秘めており、今後最も注目すべき楽器のひとつだと思います。

価格帯も3万~6万円台位とサイズによって異なりますが、今後はさらにお求め安いタイプも出てくる事でスリットドラム人口が増えればいいな、と楽しみにしてます。

 

こちらの記事もどうぞ:パーカッションの紹介記事

 

この記事を書いた人

イオンモール札幌平岡店 ドラム担当 石橋

こんにちは、ドラムバイヤー兼ドラムコーナー担当の石橋トラストです。初心者~プロの方までドラムを楽しんで頂けるよう全力でサポートいたします!当店はTRUST CUSTOM DRUMSの国内ディーラーショップでもあります。Twitter(@trust_drums)もありますので是非チェックしてみて下さい!!

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