こんにちは、札幌パルコ店のトリヅカです。
トリヅカのマニアックドラム、いつもご覧いただきありがとうございます。今回はアメリカのドラムメーカー、ロジャースについてご紹介いたします。
私自身これまでほぼ触れる機会がなかったブランドですが、今回ご縁があり複数台をお取り扱いさせていただくことができました。なかなかない機会かと思いましたので、今回まとめましてご紹介させていただきます。
一度消滅したブランドであり、現在では当社でお取り扱いが難しいブランドのため、情報の収集にやや苦心した今回でありましたが、至らない点等ありましたらご教示いただけましたら幸いです。
それでは、どうぞお付き合いくださいませ。
Rogersとは

ROGERS(ロジャース)の打楽器メーカーとしての歴史は古く、1849年にドラムヘッドのメーカーとして創業したのがはじまりとされています。もちろんその時代は本皮のドラムヘッドであったと思われます。
そのころ日本は江戸時代、幕末を迎えるころですので、大変に歴史の古いメーカーであることがお分かりいただけるかと思います。
その後ドラム本体の製造にも乗り出すわけですが、1960年代にホリデイシリーズや、ダイナソニック、パワートーンスネアドラムの発表によりロジャースの名声が一気に広まりました。

同時代にはロジャースのハードウェアの革新性、堅牢製にも評価が高まり、スイヴォマティックシリーズと名付けられたハイハット、スネアスタンド、タムホルダー等が多くのドラマーに愛用されました。
生涯ラディックのドラムを愛用したことで知られるレッド・ツェッペリンのジョンボーナムも、タムホルダーはこのスイヴォマチック・タムホルダーを使用していたそうです。
このように多くの革新的な楽器を生み出し、世界中のドラマーに愛されたロジャースですが、残念ながら1980年代にはメーカーとしての動きを停止してしまいました。
近年ではブランド名は復活していますが、現時点では当社でのお取り扱いが難しい状況となっております。
そのため今回は、ロジャースの華々しい時代を飾ったスネアドラムをご紹介したいと思います。
スネアドラム紹介
ダイナソニック スネアドラム

ダイナソニックとは、1960年代初めころにデビューした当時ロジャースの最上級機種です。
ウッドシェルと今回ごご紹介する金属シェルのラインナップでした。
ダイナソニックといえば特徴的なのがこのスナッピー。
「フローティングスネアレールシステム」等と名付けられています。

スナッピーはこのフレームに固定されています。
ストレイナーがこのフレームを引っ張ることで、スナッピーを裏ヘッドに当てる構造となっています。

そして、このフレームにはスナッピーの張りの強さを調節する機構が備わっています。
下の画像中央下あたり、すこし大き目のマイナスネジを回すことでスナッピーの固定部が前後し、スナッピーの張りの強弱を調節することができます。

この方式の利点を考えてみました。
現在一般的な内面当たりのスナッピーでは、スナッピーの反応を高めるためにはストレイナーの調節ノブなどでスナッピーを強く張ることになります。(下:現行の一般的な内面当たりスネアドラム)
強く張ることでスナッピーの反応は早くなりますが、同時にスナッピーが裏ヘッドに当たる力も強まり、結果としてスナッピーが裏ヘッドをミュートしてしまうような作用が起こると考えられます。

しかしこのダイナソニックのスナッピー固定方式ならば、スナッピーを強く張ったとしても裏ヘッドの鳴りを妨げない事が考えられます。
また、弱く張ったスナッピーを繊細に反応させるといった、現在のストレイナー方式では難しい調節も可能であると考えられます。

このような構造の為、スネアサイドのエッジにはスネアベッドがまったくありません。

※スネアベッドとは、現代一般的な内面あたりスナッピーの反応を向上させるため、スネアサイド側(裏側)のエッジのスナッピーの周囲のエッジがえぐってある箇所のことです。

まさに当時のロジャースのドラム作りの粋を集めたかのような機構が、このダイナソニックの特徴です。
クロームメッキのブラスシェルはふくよかさと華やかさを併せ持ち、そこにこのスナッピー方式による大変繊細で立ち上がりの早いスナッピーサウンドが加わった、唯一無二と言っても良いサウンドのスネアドラムです。
フレームのメカメカしい外観や考え抜かれたであろう構造にはドラム機材好きとしてたいへんワクワクしてしまいますが、残念ながらこの方式が後年普及することはありませんでした。
理由については今となっては想像する事しかできませんが、当時としては構造が先進的すぎたことや、調整がやや複雑だったことが原因なのでしょうか…。
いずれにしても、ドラム機材の歴史を彩った貴重な楽器であることにはかわりありません。
POWERTONE ブラスシェルスネアドラム
パワートーンとは、1960年代からラインナップされていたロジャースのスネアドラムのシリーズです。

先述のダイナソニックが10テンションで特殊なスナッピーを装備しているのに対し、このパワートーンは8テンションで内面当たりスナッピーが使用されています

パワートーンもダイナソニックと同様ウッドシェルとブラスシェル、さらにスティールシェルのものもラインナップされていたようです。
ダイナソニックと同仕様のシェルですが、形状の仕様は違うようで、似て非なるもの、と言って良いでしょう。

特徴的なのは上下のエッジ付近にあしらわれた2本のビードです。
ビードというのは金属シェルの真円度や強度を保つために、シェルを一周する凹み(または凸)状の加工の事です。
ラディックのLM400等のメタルスネアドラムにはシェル中央部に凸状のビードがありますが、ロジャースは上下のエッジの近くに2本の凹状のビードがあり、外観上のアクセントにもなっています。
ロジャースがエッジ付近にビードを配置したというのは、チューニングの際やショット時にも強度を保つという狙いがあるのかもしれません。このような点からもロジャースの先進性を垣間見ることができるように思います。
サウンドはオープンななかにもまろやかな鳴りを持っており、現代の音楽でも古さを感じさせない使いやすいスネアドラムであると感じました。

POWERTONE ウッドシェル
そしておしまいには、同じくパワートーンのウッドシェルです。

シェル内面は塗装してあり、木目などから木材を判断する事ができないのですが、先人たちの研究によるとメイプルだといわれています。
仕上げはカバリングです。当時流行したスパークル(ラメ)系のラインナップが何種類かあったようです。

シェル内部のラベルにはオハイオ州クリーヴランドの表記があります。
ロジャースの工場は、1950年代前半にニュージャージーからクリーヴランドへ移転し、1966年にデイトンというところに移転したそうですので、こちらはその間の製造と推定されます。

60年近く前の製造でありながらシェルは良い状態を保っており、パーツ類も全く問題なく使用できます。このことからも当時の製造技術の高さを感じとることが出来ます。
往年の名盤などを彩ってきたパワートーン。ウッドシェルならではの太いサウンドはたいへん魅力的です。もちろんただ古いだけでなく、現代の音楽でも問題なく使用できるように思いました。

叩いてみました
3台のメンテナンスを終えましたので叩いてみました。今回も興味深く楽しく叩かせていただきました!
おしまいに
ドラム機材の発展の歴史に大きな1ページを刻んだロジャース、今回も貴重な楽器をご紹介することができ、大変嬉しく思います。
古い年代の楽器を知ることで新しい楽器の良さも再確認することができると感じました。
また機会がありましたらいろいろな楽器をご紹介していきたいと思います。

この記事を書いた人
札幌パルコ店 鳥塚

テレビで見たドラムに心を奪われてドラムを始め、バンド活動に明け暮れていたある日、何気なく訪れた楽器店で目にしたプロドラマーのドラムイベント(ドラムクリニック)に感銘を受け、楽器店員を志す。現在は札幌パルコ店勤務の傍ら、演奏活動も行う。
これまでに、米国のZildjianや大阪の旧SAKAEといった国内外のドラム/シンバル工場を訪問。長い演奏歴とスタッフ歴で培ったマニアックな知識は、島村楽器随一。
そして今では、世界中のドラマーの定番となったPROTECTIONracketのスネア&ダブルフットペダルケース「TZ3016」「TZ3015」の発案者。
偉大なドラマーを輩出し続ける北海道・札幌で、ドラムコーナーの灯を絶やさぬよう奮闘中。
MyDRUMS内で「トリヅカのマニアックドラム」を連載中!


