10cc の I’m not in love(アイム・ノット・イン・ラブ)のコーラスをボーカロイドで再現してみた

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こんにちはサカウエです。皆さんは10cc(テン・シー・シー)というバンドの「I'm not in love(アイム・ノット・イン・ラブ)」という名曲をご存知でしょうか?

これは1975年の大ヒット曲ですが、最近CM等のBGMでも使われています。おそらくほとんどの方が一度くらいは耳にしたことがあると思います。

今回はなんと、この名曲のコーラスを「195人のボカロ・コーラス」で再現してみました〜

読むのが面倒!という方はコチラの再現動画だけでも見ていただけると幸いです~

「マルチトラック・ヴォイス」によるコーラスの秘密

さて、この名曲バラードの特徴はなんといってもバックで聞こえるコーラスの洪水。これは「マルチトラック・ヴォイス」という、アナログテープのループを活用した、非常に長い時間と労力をかけて生み出されたサウンドなんですね。

なお1975年当時はレコーディング・スタジオのマルチレコーダー(MTR)は16トラック、もちろんサンプラーなどはまだ存在していません。

「I’m not in love(アイム・ノット・イン・ラブ)」のコーラスの製作過程

  • 3人のユニゾンで「アー」という歌声(たとえばラ)をMTRに録音。これを16トラック全てにオーバーダブ〜これで48人分の「ラ」の音が完成。
  • 曲で使う音の数(13音階)分これを繰り返します(合計624人分のコーラスパートが完成!)・・この作業だけで3週間かかったらしいです。
  • 別のオープンリール・レコーダーに48人で歌っている「アー」を1音階ずつダビング(写真はイメージです)

STUDER_A820_Master_2_Track_Recorderwikipedia

  • テープをハサミで切り、スプライシング・テープで貼り付けて輪の状態にする(3.6m)
  • 上記を繰り返し、この曲のコーラスで必要な13音程の13本のループ・テープを作成
  • 13本のアナログ・テープ・ループを順次再生し、MTRにそれぞれ7分程度ダビング(MTRは合計13トラック使用)

、、となんとも気の遠くなる作業ですが、しかしこれはまだ準備段階。ここからがまたすごい。

  • MTRの13トラックをミキサー卓に立ち上げる。すると各フェーダーは13の音程(たとえばA,A#,B,C,C#,D,D#,E,F,F#,G,G#・・)のボリュームをコントロールすることができる。

つまりミキサー卓がアナログ・サンプラー的な「楽器」になるというわけです。

  • 16トラックMTRの残り3トラック中、1トラックに曲のガイドリズムと仮歌を入れ、それを聞きながら、4人がかりで各フェーダーを上げ下げしてコーラスパートを別の2トラックに録音(この時点で空きトラックゼロ)
  • コーラスパートが完成したら、13トラック分のコーラス素材は全部「消去」。代わりに他の楽器や、ボーカル等を録音・・・ミキシングして完成

以上です・・お疲れ様でした。いやーまったくすごい発想ですね~

※チェロっぽいサウンドは、コーラスパートのテープの回転数を落として再生したとのこと。

10ccのI'm not in loveをボカロで再現(できるのか?)

さて非常に前置きが長くなりましたが、ひょっとしてコレ、ボーカロイドでやれないか?と思い挑戦してみることにしました。無謀かもしれませんが・・・昔からやってみたかったんですよコレ。

ということで、原曲と同じくまずは素材作り。

VOCALOID Editor for CubaseをインストールしたCubase7で「あ~」と歌うだけのボカロ・トラックを作成します。

01_normal_oh

続いて別のトラック(出力はボカロ)にこれをコピー

02_co_py

03_2track

このままだと、全く同じデータが二重に鳴るだけで、まったく厚みがでません。

コピー先トラックを「VOCALOIDエディター」で開きます。

04_openvoedit

本物の人間がダビングした場合は、音程やタイミング、ビブラート等が前のテイクとすべて異なるわけです。それを表現するために、いろいろなパラメーターを編集する必要が

ありますが、とても面倒くさいですね。

job プラグインの「ZOLA_unison」を使う

そんな時重宝するのがjob プラグインの「ZOLA_unison」

これを使うと一瞬にして自然なユニゾン・パートを作ることができます。

job プラグインの「ZOLA_unison」を選択、

05_jobplugin

いろいろなタイプありますが、ここでは「ユニゾン」を選択、実行します。

07_unisonselect

すると、音程が適度に変化したデータが出来上がります。

このプラグインは実行するたびに異なったデータを作成してくれますので、何度でも気に入った感じになるようにやり直しが可能です。

08_zola_unison

ここで、1人の状態と、ZOLA_unisonで作成した2人分のサウンドを聴き比べてみましょう。

ソロ状態

ZOLA_unisonでダブリングしたもの

厚みが増しましたね。

さて、以上の作業を繰り返します。原曲では1音に付き48人分録音したということなのですが、さすがに48トラックボカロを立ち上げる根気もなかったので、ここでは15人で勘弁してもらいます。

ボカロライブラリーはZOLA Projectの「YUU」「KYO」「WILL」に4回ずつ(計12)、そしてがくっぽいどに3回、合計15トラック。

09_vst

これで15人分の「あ~」が完成。

10_tracks

ボカロ15人のユニゾンはこんなサウンドです。

15音分の「あ〜」のオーディオ・ファイルを作成

さて続いてコピペで15音階分のトラックを作成(ここでは念のため、G2からA3までのすべての半音階15音分を作成しました)

24keys

オーディオエクスポートでオーディオファイルに書き出します。

audio_out

これで15音階分の「あ~」のWAVファイル(44.1KHz、24bit)が完成しました。

filez

サンプラーKONTAKTに読み込む

1975年当時はここからが大変だったのですが、今は便利なソフトウエア・サンプラーがあるのでそれ使うことにします。

Native Instrumentsのプラグインバンドル「KOMPLETE9」に収録されているサンプラー「KONTAKT5」でファイルを読み込み、各音程の「あ~」のループも設定します。

今は楽ですね~。

G2からA3までの15音に各ファイルをはめ込むわけです。これで15鍵マルチサンプリング!

screenshot_95

これでボカロ・マルチトラック・ヴォイスのプラグイン・インストが完成!!

PCM系のシンセサイザーはだいたいこんな感じで、サンプリングした音を鍵盤上に並べて音を作っております。ただしピアノなどの生楽器は同じ音程でも叩く強弱によって音色が変わります。したがって実際には一つの鍵盤に2〜6程度のサンプル・ファイルを重ね、鍵盤を弾くタッチで音色が変化するようにプログラムされているわけです。

今回「アイム・ノット・イン・ラブ」をまるまる1曲再現しようと思ったのですが、おそらく1週間以上はかかりそうなので、イントロ~Aメロ部分だけの再現でお許しいただきたく存じます。

バックはローズ・エレピ、バスドラ(原曲ではMini moog)とギターのみ。そこにバッキング・コーラスパート(KONTAKT)を打ち込んでみました。プラグインの詳細は動画の中でも紹介しています。

ではお聞きください。原曲の624人分には及びませんが約195人分のボーカロイド・コーラスです。

おーっ、意外と良い感じになったのではないでしょうか〜ぜひいつの日か自分の声でチャレンジしてみたいと思います・・

というわけで原曲の素晴らしさには程遠い出来で申し訳ありません。

1975年に「アナログ人海戦術」ともいうべき手法で伝説のサウンドを生み出した10CCのアイデアとクリエイティビティには本当に頭が下がります。そういえばビリー・ジョエルの「素顔のままで」でも同様の手法が使われていますので、興味ある方はせひそちらも聴いてみてください。

それではまた〜

生声で再現している人たちがいらっしゃいました・・愛を感じますね~


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