バネが大事!フレンジコード交換【アップライトピアノ修理】
こんにちは!ピアノのしくみが大好きな松井です。
今回はアップライトピアノの重要なパーツ「フレンジコード」の修理と、その役割についてご紹介します。
アップライトピアノのアクション
こちらはアップライトピアノの外装を開けて、中が見えるようにした状態です。真ん中の機構部分をアクションと呼びます。【Q.ピアノの「アクション」とは何ですか?】
この状態で各部品の様々な調整を行います。
たくさんのパーツによって構成されているのがわかりますね!
さらにアクションを上からのぞいてみると、今回修理するパーツ「フレンジコード」が見えます。画面中央に糸のようなパーツが引っかかっているのがわかりますか?
「フレンジコード」の役割
「フレンジコード(バットスプリングコード)」という名前を聞いたことがありますか?実はアップライトピアノにとって、とても重要なパーツのひとつなんです。
アップライトピアノアクションの3つの「バネ」
アップライトピアノのアクションを本体から取外してみます。
このように、アップライトピアノのアクションには3つのバネ(スプリング)が使われており、それぞれダンパースプリング(左上)、バットスプリング(中上)、ジャックスプリング(下)と呼ばれています。
アップライトピアノは弦が垂直方向に張られている為、ハンマーを前後に動かし弦を叩くことで音を出しています。グランドピアノとは異なり、重力を利用してハンマーを初期位置(鍵盤が押される前の位置)へ戻すことができないので、これらのバネの力を利用してハンマーの位置を戻し、次の音を出す準備をしています。
もしバネが無かったらハンマーが戻って来ないため、鍵盤を押しても音が出ない・・・なんてことになってしまうかもしれませんね。
フレンジコード
前からは見えない、アクションの内側についています。
フレンジコードはバットスプリングと互いに作用することで、『ハンマーが弦を叩いた後にハンマーを元の位置に戻す』という重要な役割の一端を担っています。
フレンジコードが切れてしまった場合、バットスプリングが上手く作用せず、『連打ができない・連打しにくい』といった現象が発生します。
このピアノは、もともと白かったコードが経年変化により茶色く変色しています。この変色が進むとフレンジコードのしなやかさがなくなり、最終的には切れてしまいますので交換します。
フレンジコード交換修理
古いパーツを取り除く
まずはハンマーを取外し、付いているコードを全て取り除きます。
接着剤やパーツが残らないようにするのがキレイなパーツ交換のポイントです。
きれいに取り除けました!
ついでに周りのパーツのホコリや汚れもお掃除しておきます。
新しいパーツを接着する
取り除けたら、いよいよ新しいフレンジコードを接着。
88本(鍵盤の数)同じ長さに切りそろえたコードを、丁寧に貼り付けていきます。
出ているコードの長さがバラバラだったり、ねじれて貼り付けられていると、鍵盤のタッチや耐久性に影響がでてきます。
ここは技術者のセンスと腕の見せどころ・・・!
修理完了!
88鍵分、無事に交換できました!
これでしばらく切れる心配なく、しっかりバネの役割を支えられます。
他のパーツも修理し、アクションを本体に取り付けてみます!
見た目もキレイになり、機能も十分に発揮できるようになりました。この後、整調、調律を行い、中古ピアノとして皆様のもとへ・・・!
早速店頭へ
調整も完了し、店頭に並びました。一度役目を終えたピアノですが、これからセカンドライフが始まります。演奏者の良いパートナーとなりますように!
皆様の古いピアノも、眠っていた魅力がまた発揮されるかもしれません。普段見えないパーツもしっかりメンテナンスすることで、長く使用できるのもアコースティックピアノの良いところですね!
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工房での修理や調整を主に担当しています。アコースティックピアノの面白さ、豊かさを共有できる調律師を目指して、ピアノと向き合っています。