リペアマン遠藤の仙台リペアブログ~その16~フレットバリ取りの巻!
皆さまこんにちは!
ギターリペアマンの遠藤です!
4月です。仙台は桜も咲きましたね~
すっかり暖かくなりリペアブースでは早くも扇風機を回してます(作業してると暑くなるので…)
さて今回は冬~春にかけて問い合わせが多い症例を紹介していきます。皆さまお悩みのようです。
かく言う私もそうなのですが、たまにはいつもと違うギター弾くか~とケースから出して弾くと何やら左手に違和感が…
ギター「チクチク」
私「痛ぇ…」
えー、結論から言うとフレットのバリが出てました。
そもそもフレットのバリって何ぞ?という感じですが実物だとちょっと分かりずらいので簡単な図を作ってみました。
作った私も困惑する程にセンスの欠片も無いイラストですが…
指板とフレットですがフレットのオレンジ色のところが指板サイドから出ちゃってるんですよね…
これがいわゆるフレットの「バリ」です。
でも「フレットが出てる」と言うよりは「指板が縮んでいる」と言った方が正確です。木が痩せるとも言いますが。
ここからは知識ですが、木材は湿気の多い時は水分を含み膨張し、乾燥時には水分を放って収縮します。
乾燥によって指板は収縮しますが、フレットの方は乾燥ではほとんど収縮しないです。
収縮率の違いによってバリは発生するわけです。
日本は夏は高温・多湿、冬は低温・乾燥と楽器にとってかなりハードな気候ですので、いくらシーズニングした木材を使ってるとは言え出るものは出るのです…
でも夏になったら木材が膨張してバリ戻るんじゃない?と考えそうなものですが私の経験上、夏を越えてもずーっとチクチクしたままだったので戻りきらないようです。
イラストでも分かると思いますが鋭い金属が飛び出てるのと同じなので、そのまま弾くと痛いですし(手の平にモロに傷ができます)場合によっては出血します!
出てしまったバリは削りましょう!
というわけで普段私がどのようにバリ取りをしているのかを紹介しましょう~
お客様のギターで写真だと分かりずらいですが、先程のイラストのような状態になっています。
実際に触るとかなりバリが出てます。
まずは作業の準備です。
私はネックが外せるものは極力外してから作業しますが、今回はアコースティックギターなのでボディを傷つけないようにガードしてから作業に入ります。
あと指板サイドにもマスキングテープを貼ってます。
まず最初に使うのはコイツ。
鉄鋼ヤスリの平細目ですね。
私はこのヤスリか一緒に写ってる目立てヤスリからスタートすることが多いです。場合によりけりですが。
ここで先程のイラストを召喚しましょう。
ここから想像するに実際に削るべき面は2つありますね。
「真横」と「斜め」。
フレットの足(タング)とフレットの丸いところ(クラウン)の部分です。この2つの面を削ります。
ヤスリをしっかりと手の中で固定しぶれないように削っていきます。
この写真ではクラウンを削りたいので斜めにヤスリ当ててます。当たり前なのですがこの時角度を崩してはいけません。集中です…
そしてタングの部分です。ここは垂直を崩さないように当てて削ります。
こうして見るとけっこうバリって出てるものですね(汗)
そして鉄鋼ヤスリの平油目です。
細目で出来た傷を更に細かくする…といった感じなので当て方は一緒なので割愛します。
次の作業に移る前にイラストを使います。
バリが削れたので今はこのような状態です。
もうこれでいいじゃん!と思いがちですが触るとまだちょっと痛いんですよね…特にフレットの端とか角とか。削れたところが鋭角になってるので。
それを痛くないようにちょっと丸めたいわけです。
作業的にはフレットの角を若干丸めて(オレンジの丸印)その延長線上も丸め込むという感じです(灰色の部分)
けっこう良い価格帯のギターは最初からこのような丸め込み処理がされてますよね。それと同じような感じです。
私が使うのはコレ。
精密ヤスリです。
なるべく指板は削らないように私が秘密の加工をしてます。
サクッと丸め込みました。
あとは仕上げの作業なので、フレットサイドをサンドペーパーを当てて傷を細かくしつつさらに丸めます。そして最後にバフでピカッと仕上げます。
ゴムパッドにサンドペーパーを巻いてわしゃーっと当てています(笑)
実際に当たってるのはサイドだけです。#600~#1000ぐらいまで番手を順に上げていきます。
最後はドリルバフでフレット・指板サイドを仕上げます。
(危ないので作業中の写真は撮ってません)
というわけでピカピカに仕上がりました。ふぅ…
フレットの引っ掛かりが無くなって気持ちいいです!
これでまた快適に弾けますね!
そしてバリが出たギターというのは指板が乾燥し痩せやすいということなので、最後に乾燥から守る為に指板オイルも塗って保湿してあげましょう。オイルは弦交換の度に塗るのが理想的ですね。
(写真順が逆になってますが弦を張る前に塗りました)
といった感じでフレットのバリ取りを紹介しました。けっこう色々やってますでしょう…?
私的には完全に「フレット端の再仕上げ」という気持ちで作業しています。
今回の例はローズウッド指板のツヤ有塗装でのバリ取りでしたが、これがメイプル指板だとフレットサイドを削る時には相当に気を遣う作業となり方法も変わります。
またローズウッド指板でも艶消し塗装だと工程が変わってきますし、指板サイドの塗装が色無しか色有りかによっても、バインディングの有り無しでも…
本当にケースバイケースです。
ギター工場出身者である私がその楽器に合った方法をしっかりと見極めて作業しますのでご安心下さい。
ぜひお気軽にご相談下さい!
以上、リペアマン遠藤でした!
またお会いしましょう~
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宮城県出身。長野県でギター製造に携わった後2017年から島村楽器仙台イービーンズ店の店頭リペアマンとなり、現在の仙台ロフト店に至ります。仙台のリペアは遠藤にお任せ下さい!