新しいシンバル “S” シリーズ、満を持して登場!

こんにちは、熊本店の坂田です!
待っていました!今年、2016年NAMM SHOWにて発表されたジルジャンの新シンバル、 ” S シリーズ ” が国内でようやく発売となりました。
「新商品」、「ブリリアント加工の美しいシンバル」となると気になるのは「音」ですよね? このSシリーズについて、何回かに分けて徹底検証を行っていきたいと思います。
Sシリーズとは

Sシリーズは、B12合金(銅88%+錫12%)という金属で作られているシートシンバルです。以前廃盤となった「zht」シリーズと同じ金属を使用しており、実質的な後継機種と言えます。
主な特徴はこちら。
- ブリリアント仕上げ — キラキラと光る美しい仕上げ。音のヌケが良く、全体的に明るい。
- 両面のレイジング(音構) 加工 — 音色を最適な状態に調整。厚すぎず、薄すぎない適度なウェイト感。
- 広範囲にわたるハンマリングで調整 — 高域〜低域までバランスの良いレスポンスとロングサスティーンが特徴。
実はこのSシリーズ、新たな技術の開発も含めて根本から取り組み、製品化までに何年もの月日を費やしています。薄めのラインナップが多く、より現代の流行に合わせて進化しています。あらゆるシチュエーションに応えるべく、36種類というかなり豊富なラインナップが用意されています。
表面仕上げ
ハンマリングやレイジングに関しては、以前のモデルとは随分変わっているように見えます。

裏の仕上げ具合
機種によっても異なりますが、基本的にはご覧のとおりレイジングは裏側に深く間隔も大きめに掘ってあります。またハンマリングは zht と比べるとかなり多く、広範囲に及んでいます。zht シリーズとは比べ物にならないほど美しく神々しいブリリアント仕上げとなり、ルックスも申し分なしです。
今回の検証方法と基準設定
前回同様、使用楽器は以下のとおりです。
基準シンバル | A Zildjian MediumCrash16 |
---|---|
販売価格 | (税込 ¥29,700) |
使用マイク | SHURE SM-58LCE×2本 |
使用スティック | リーガルチップ R208-JP(ジェフ・ポーカロモデル) |


マイクもスタジオなどでは超定番のSHURE SM-58で録ります。


Medium Crash 16の音色やピッチ等、それぞれの特徴をフラットに「0」とします。(以下図参照)

この音を基準に、「+」「-」でそれぞれの音など確認していきます。
【おさらい】ジルジャン (Zildjian) とは

シンバルの生みの親であり、約400年の歴史を持つ定番中の定番。1623年にトルコ、イスタンブールでジルジャン社を創業。現在はアメリカのボストンに生産工場があるシンバルメーカー。現在に至るまでその金属の製法は一子相伝で、ジルジャン家のみしか受け継がれていません。キャストシンバルは全て同じ金属で、加工やウエイトの違いのみで音色の変化を変えるという、こだわりのあるシンバルです。
では、前置きが長くなりましたが、検証に入っていきます!
Sシリーズ 検証スタート!!
①『S THIN CRASH 16』

まずはシンクラッシュから。ウエイトは持った感じかなり軽いです。 ブリリアント加工が美しいSシリーズですが、実際に見た実物はもう少し黄色っぽく見えます。ハンマリングは上からだとあまり良くわかりませんが、裏側にはしっかりと叩かれた跡が。カップは少し大きくぽっこりと丸くなっています。 軽いタッチにも鋭く反応する明るいクラッシュシンバル、ということですが、実際に聞いてみましょう。

いままでのジルジャンには無いクリアでキラキラとしたサウンドですね!シートシンバルの代表的なモデル、パイステの 2002 シリーズのような、透き通ったサウンドとはまた少し違って、ほんの少しだけノイジーと言いますか、耳に残るざらついた感じがとても心地良いですね。
いままでシートシンバルにありがちな、鉄板を叩くような金属音は一切ありません!サスティーンは短めなので、このシンバルで刻んだりしても面白そうです。
②『S THIN CRASH 17』

17インチのシンクラッシュ。こちらは少しだけカップが横に平たくなったような印象を受けます。基本的には16インチと同じような加工がされています。それでは聞いてみましょう。

16インチのような鋭いアタックと立ち上がりの速さはありませんが、低音成分が増えて音に深みが出ています。シンバルが薄いからでしょうか、1インチ大きくなっただけでピッチが結構下がりました。音が減衰していく時にキラキラとした余韻が残るのがとても良いです!ハードなロックやポップまで幅広く使えるのでは無いでしょうか。
③『S THIN CRASH 18』

やはり、通常のシンバルに比べて、サイズとともに、カップが平たく大きくなっていく感じでしょうか。この後登場する、ロッククラッシュと比べて少し深めでより多くのレイジングが施されています。聞いてみましょう。

18インチになって少しだけ立ち上がりが遅くなりました。薄い分、うねりを帯びて音が波を打つような鳴り方になっています。そこまで力いっぱい叩かなくても音量がしっかりと稼げるので、さほど強く叩かない方にもオススメです!
④『S ROCK CRASH 18』

やっときました、ロッククラッシュ。
そろそろシンクラッシュの音ばかりで疲れてきたかも知れませんが、こちらも聞いてみて下さい!こちらのシンバルは少しレイジングもハンマリングも浅め、ハンマリングは少し細かくなっています。ハンマリングのパターンなども表から見ても結構変わっています。

ウエイトの割にはピッチは少し低め、しかし明るいところはシンクラッシュに比べるとしっかりと出ています。ウェイトが Medium Heavy とそこそこ厚めなので、しっかりと振りぬくパワーがあれば、それに応えるあふれんばかりの音量と非常になが~いサスティーンがあります!ハンマリングが細かくなった分、シンクラッシュに比べ、音がストレートで伸びのあります。その名の通り、ロックに最適なモデルです!
⑤『S THIN CRASH 20』

シンクラッシュ最大サイズ、20インチです!

カップ形状が現物は少しだけ円錐型になりました。最近流行りの大口径シンバル、どのような音がするのでしょうか。

この徹底検証で個人的に一番好きだったシンバルがコレ!
サイズの割にはサクサクとした乾いた音がする、という印象です。鳴りすぎるわけでも無く、サスティーンも邪魔にならない、そんな1枚。ピッチも落ち着いていて、使い所を選ばないんじゃないか、という感じのシンバルです。
流石に立ち上がりは遅いですが、このレベルなら全然気になりません。「中身が詰まった赤身を食べて贅沢な気持ちになれる」そういうシンバルだと思いました。オススメです!
⑥『S ROCK CRASH 20』

最後の1枚!これもまた20インチのロッククラッシュ。
薄いライドのような重さですが、こちらもカップが少し円錐型になっています。恐らく、テーパー部のアール等も、シンクラッシュと同じように見えます。聞いてください!

すみません、録音の音を聴いてみて気が付いたのですが、きちんと鳴らせていませんね・・・次はしっかり鳴らします!
肝心の音ですが、思ったより倍音豊かで複雑な音です。太い塊がそのままずーっと鳴り続けるようなロングサスティーン。ライド代わりとしてプレイしても面白いと思います。こちらもウエイトの割にはダークで暖かいサウンドです。
ドラムセットで叩いてみた

各シリーズでまとめてドラムセットで演奏してみました。少しだけシンバルの音量を大きめにしてありますので、バランスが悪いと感じるかも知れませんが、聴いてみてください。
シンクラッシュのセット
- ハイハット:S シリーズ MASTERSOUND HIHATS 14
- クラッシュ:S シリーズ THIN CRASH 16
- クラッシュ:S シリーズ THIN CRASH 17
- クラッシュ:S シリーズ THIN CRASH 18
- クラッシュ:S シリーズ THIN CRASH 20
- ライド:なし
- エフェクト:S シリーズ SPLASH 8
セットで叩いてみて、あらためて気が付いたのは、「各サイズのシンバルの音程がキレイに分かれている」ことです。華やかでとてもキラキラとしているのですが、減衰がとても自然でドラムセットにも自然に馴染みます。
また、「同機種のシンバルでも個体差が少なくピッチや音色がかなり近い」というのもシートシンバルの強みですね。キャストシンバルには無い、独特の透き通った音も魅力的です!
ロッククラッシュのセット
- ハイハット:S シリーズ ROCK HIHATS 14
- クラッシュ:S シリーズ ROCK CRASH 18
- クラッシュ:S シリーズ ROCK CRASH 20
- ライド:S シリーズ ROCK RIDE 20
- エフェクト:S シリーズ TRASH SPLASH 8
- エフェクト:S シリーズ CHINA 18
こちらは「ロングサスティーンと他の楽器に負けない力強さ」を持ったシンバルです。
「ピッチが明るくサスティーンが長い」という、シートシンバルの良い所を最大限に活かせた組み合わせじゃないでしょうか。ハイハットのチック音もよりハッキリ聴こえ、引き締まったサウンドになっています。Sシリーズらしさ、が最もよく出ているのはこちらの方かなと思いました。
しかし、どちら?と聞かれるとかなり悩んでしまいますね・・・どちらも良いです!
おまけ:他のシンバルとの聴き比べ
ここでひとつ、パイステのシートシンバルと比較をしてみたいと思います。
『PST7 Crash 16』

パイステ PST7 クラッシュ 16インチ
メーカー希望小売価格:(税抜)¥15,600 (税込 ¥16,848)
販売価格:(税抜)¥12,500 (税込 ¥13,500)
PST7 シリーズは 2002シリーズ に由来する CuSn8ブロンズ を使用している、コストパフォーマンスモデルです。
まっすぐでクリア、そして低音もしっかりと出るシンバルですね。2002シリーズの片鱗が見えてきたのは自分だけでしょうか。
こちらはSシリーズと比較してハンマリングが少ないため、サスティーンは長いですが、ボウやエッジ叩いた時の倍音が控えめです。とても「さっぱりとしたサウンド」といった感じです。しかし、Sシリーズ同様、この価格でここまでの音がするのは驚きです。
「深みがある倍音成分が欲しい時はSシリーズ」を、「よりすっきりしたサウンドを望む時はPST7」を、という感じですね!
Sシリーズ クラッシュシンバル編 検証後記
ここでひとつ告白します!
私、「シートシンバル」というとある定まった印象があり、新商品ながらそこまで過度な期待はしていなかったんです。ところが、実際に叩いてみると、すさまじい音じゃないですか!正直驚きました。このSシリーズは、今までのジルジャンにはあまりない、突き抜けるような明るい音がするとても本当に良いシンバルだと思います。記事を書いていても楽しかったです。
特にこのSシリーズはマイク乗りが良い!今までいい音で録れるように録音時はマイクの位置などを何度か変えたりしてチェックしていたのですが、今回はサクッと終ってしまったことも付け加えておきます (笑)

ジャンルにもよるところはあると思いますが、「明るくてヌケの良いシンバル」を探しているのであれば、このSシリーズを選択するのも全然アリです!財布に優しい価格設定ですので、ちょい足しやスペア等のサブ的なシンバルとしても気軽に手を出せるのではないでしょうか。
百聞は一見に如かず、ですのでとにかく一度音を聞いてみる事を強くお勧めするシンバルです!
次回はエフェクト、そして刻み系のシンバルもレビューしますので、お楽しみに~!
この記事を書いた人
熊本パルコ店 ドラム担当 坂田

吹奏楽、マーチング等のコンサートパーカッションからラテンパーカッション、ドラムセットのチューニングや奏法、ルーディメンツなど、打楽器に関する事はは全てお任せ下さい!ドラマーの皆様を全力でサポートします!
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