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【ドラム ビギナーズ倶楽部】 シンバル選び に役に立つポイント、まずはココをおさえよう! (第7回)

イシイが書いた記事

シンバル選びを楽しもう!

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みなさんこんにちは!開発のイシイです。

シンバルって色々ありますよね?マンホール並み大きいものからポケットに入るような小さなもの、キラキラしたものから遺跡のような渋いもの、グニャっと曲がったものから最近は穴が開いたものまで。。。ビギナーズ倶楽部、スネア編に続き、今回はシンバルについてさらに掘り下げていきたいと思います。ドラム初心者のみなさん、必見です!

 

さて、シンバルについては一度、第二回でドラムセットの中での役割について紹介させていただきましたね。

今回はシンバルのスペックがどのように音の影響するのかさらに踏み込んでいきます。この順番で紹介していきまーす。

  • パーツの紹介
  • スペックの違い 1:大きさ
  • スペックの違い 2:厚み / 重さ
  • スペックの違い 3:加工(レイジング / ハンマリング)
  • スペックの違い 4:形 (カップ / テーパー)
  • 製造方法

パーツの紹介

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主な奏法

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クラッシュサウンド

シンバルを斜め上から勢いをつけて叩きます。"シャーン" というインパクトのある音がします。アクセントとして曲の中の変わり目や最初や最後に叩くことが多いです。 (あまり上からシンバルのボウ部分を面で当てるように叩くとシンバルが割れやすくなるので、注意です)

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ライドサウンド

ボウエリア、といってカップ(中心)のふもとからエッジ(端)の部分までの広いエリアを叩きます。"チーン" という比較的長めの透明感のある音がします。

ボウエリアは叩く場所によって音がかなり変わります。

  • カップ近くは高音域が強く、短い音
  • エッジに行くにつれて低音が混ざり、余韻が長い音

他の楽器に溶け込みやすい音のため、ライドシンバルで拍子を刻む時や、細かいタッチが必要な時に叩くことが多いです。

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カップサウンド

こちらもライドシンバルで叩くことが多い奏法です。スティックのショルダー部分(先に向けて細くなっていく部分)、またはチップ(先端)をカップに当てます。"キン"、とか"カン"といった短く目立つ音がするため、アクセントに使うことが多いです。

スペックの違い 1:大きさ

シンバルは大きさ(口径) によって音が変わります。参考としてサイズが違う一般的なクラッシュシンバルの音を聴いてみましょう。

16インチのクラッシュ

18インチのクラッシュ

ピッチ(音程) が違うのが分かりましたか?あとサスティーン(余韻) の長さも違いますね。この2枚は厚さは同じですが、サイズが2インチ (約5cm) 違います。また18インチの方がかすかに "ウワーン" という低音の鳴りも聴こえますね。

通常ドラムセットに2枚セットする時は16インチと18インチを並べることが多いです。このように"シャーン"、"ショーン"、と2枚の音程差が綺麗につくものを選ぶといいですね。

スペックの違い 2:厚み / 重さ

シンバルは同じ大きさでも厚みと重さ(ウェイト) が違うだけで音が変わります。

シン・クラッシュ (薄い)

メディアムシン・クラッシュ (標準)

ロック・クラッシュ (厚め)

ここでもピッチがどんどん上がっていくのが分かりましたでしょうか?またこの動画ではわかりずらいと思いますが、形状、サイズが同じシンバルの中では「厚い/重いシンバルの方が音も大きく」なります。

「ロッククラッシュ」と言われるシンバルは他の楽器に負けないように音が大きく、ピッチが高いんですね。

ここで一度まとめます

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こうして見てみると、少しスッキリしますよね!

ここでひとつ注意です。「シンバルの厚み/重み」については各メーカーで表現が違います。あるメーカーで「ヘヴィー」と言っているものが他のメーカーでは「ミディアム」に相当する重さだったりします。

スペックの違い 3:加工(レイジング/ハンマリング)

ここで聞き慣れない言葉を二つ。

  • レイジング -- 表面にある「音溝」のこと
  • ハンマリング -- ハンマーで打った痕のこと

写真で見てみましょう。

レイジング

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この細かい溝のことを「レイジング」と言います。レイジングが細かい、または深いシンバルは音の響き方(倍音)が豊かになります。

レイジング少なめ

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ほぼレイジングがないシンバルです。よーく見ると入っていますね。レイジングが少ない、またはレイジングがないと音はストレートになります。またアタック音も強くなり、ライドなどはスティックが当たる音も聴き取りやすくなります。

ちなみにこちらは「ブリリアントフィニッシュ」と言って、表面にキラキラするコーティングを施してあります。見た目がハデになるだけではなく、音も高域が協調されたきらびやかな音になります。

ハンマリング

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ちょっとデコボコしていますよね?この凹凸加工を「ハンマリング」と言い、機械、または人の手でハンマーを使って一つ一つ叩いた痕です。ハンマリングを施すことによりまた音の響きが豊かになります。均等に打ってある凹凸の場合、音は明るく、ヌケがよくなります。

ハンマリングのバリエーション

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このようにランダムに打ってある凹凸の場合、倍音が複雑、全体的に深みのあるダークな音になります。

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こちらはさらにランダムに打ってあります。ここまでゴツゴツしていると、「人の手が入っているなー」と興奮してしまうのは、私だけでしょうか。。なお、ハンマーの種類、と打つ場所を変えることによって音を調整するその技術は、各メーカーの腕の見せ所です。

加工は表だけ?

いえ、加工は色々な種類があります。

例えば「表だけレイジング」、「カップとボウの途中までレイジングなし」、「表だけブリリアント仕上げ」、「カップだけハンドハンマリング」、「レイジングなし、磨き上げ一切なし」など、見ているだけで楽しくなってくるような豊富なバリエーションがあります。

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シンバルを生かすのも殺すのも、レイジングの付け方、そしてハンマリングを打ち方次第なんですね。近くにあるシンバル、表と裏をもう一度見てみたくなりますよね?

スペックの違い 4:形(プロファイル、カップ)

次はシンバルの形とカップ部分の形についてです。

プロファイル

シンバル全体の形を「プロファイル」と呼びます。特にシンバルによってカーブのかかり方が違います。

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ややカーブが多め(左)、やや平ら(フラット) (右)

写真だけだと少し違いが分かりかもしれませんが、この形で音がこのよう変わります。

  • カーブがついている -- 音程が高い、音が明るい、サスティーン(音の伸び) が長い
  • フラットに近い -- 音程が低い、音が渋い (ダーク)、サスティーン(音の伸び) が短い

カップ

真ん中のポコっとしている部分、これを「カップ」と呼び、形によって主に高音の出方が変わります。

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こうして見てみると大きさ、高さと違うものですね。

  • カップが大きい -- 高音域が出る、倍音が豊か、音量が出る
  • カップが小さい -- 高音域が抑えめ、音はストレート、音量が小さめ

ただしカップについては大きさだけではなく、厚み、高さも影響するので一概には言い切れない部分もあります。ライドシンバルをプレーする時はカップ部分を叩くこともあるので、自分が好きな音を探してみると楽しいと思います。是非色々と叩いてみて確かめてみてくださいね。

スペックの違い 5:製造方法(シート・キャスト)

シンバルは主に銅と錫(スズ)でできています。この金属の割合と、成型方法を変えることでシンバルは大きく分けて2種類に分類することができます。

  • シートシンバル -- 音が均一でストレート、お手頃価格もモデルが多い、機械で作る工程が多い、錫の量が多い(20%前後)
  • キャストシンバル -- 音にバリエーションが出やすい、倍音が豊か、人の手が関わる工程が多い(鋳造)、錫の量が少ない(12%以下)

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シートシンバル:パイステ PST7シリーズ

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キャストシンバル:Aジルジャン

最後に:なぜシンバルにこだわるのか?

ずばり、それは「1枚変えるだけでドラムセットの音が変わる」からです。

シンバルって音の余韻が長いので、違いが結構分かるんですよねー。練習スタジオやライブハウスにあるシンバルはまず「割れないこと」が大切なんです。だから厚みのある、シンバルを使うことが多いんです。でも分厚いシンバルはメタルにはちょうどよくても、もう少し軽いタッチの曲には合わないこともあるんですね。

是非1枚、一番多く叩くクラッシュシンバルを変えてみることをおすすめします!それだけでも曲の雰囲気がガラっと変ったり、自分もいい演奏ができたりしますよー。

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さて、今回は一見全部同じ形に見えるシンバルでもほんのちょっとした大きさや厚みだけでも音が変わることが分かってきたと思います。こうしてシンバルの見方が分かってくると、叩く前からどんな音がするのか、少し予想してみたりして、楽しくなってきますよね!

次回のビギナーズ倶楽部ではハイハットの代表的なモデルを紹介していきたいと思います。それでは!

 

この記事を書いた人:

開発のイシイ

朝から夜までドラムのことばかり考えている商品担当の人。でも実はかなりのアメフト (NFL) 好き。最近子供とウクレレを始めました。好きなドラマーはニール・パート。