シンバル選びを楽しもう!
みなさんこんにちは!開発のイシイです。
ビギナーズ倶楽部、前回の 「ハイハットとは」 の後半に入りたいと思います。今回からは、ドラムセットの中で活躍する、色々な役割のシンバルについて紹介していきます。今回はビートの中で最も多く叩くことが多いシンバル、「ハイハット・シンバル」について2回に分けて紹介してきました。
前回のお話
さて、前回はスタンダードサイズ、14インチに絞って代表的モデルについて紹介してきました。今回はサイズ違い、特殊加工など少し変わった、面白いハイハットを紹介していきます。
その前に。。
おさらい1:ハイハットとは
2枚のシンバルを重ね合わせて、ペダルを使い足で間隔を調整する楽器です。重ね合わせたシンバルを手で叩いたり、足で踏むことで音を出します。
ハイハットのルーツは1920~30年代に遡るようです。当時の打楽器奏者が一人でいくつものリズム楽器を操ることができるように、と発明されたペダル式の楽器が始まりです。当時は「踏む」だけの楽器で、地面から7-8cmくらいの高さまでしか伸びていませんでした。「low-sock」、「low-bot」または「low-hat」と呼ばれていました。ちなみ “sock” は “靴下” という意味です。なるほど~
おさらい2 : サイズ/重さ
ここでシンバルの特徴について二つだけおさらいしておきましょう。
ハイハットシンバルは14インチがスタンダードですが、中には10インチの小さなものから17インチの大きなものまであります。またハイハットシンバルはクラッシュシンバルやスプラッシュシンバルより厚めに作られています。
なお、ボトムシンバルの方が厚く重いことが多いです。トップの方が薄いと、よりコントロールがしやすくなり、踏んだ時の音もハッキリし「収まりがいい音」になります。また上下違う音が重なり合って鳴ることでより豊かなサウンドにもなります。
おさらい3 : シンバルは大きく分けて2種類
製造方法によって2種類のシンバルがあります。
- シートシンバル:音が均一でストレート、お手頃価格もモデルが多い、機械で作る工程が多い、錫の量が多い(20%前後)
- キャストシンバル:音にバリエーションが出やすい、倍音が豊か、人の手が関わる工程が多い(鋳造)、錫の量が少ない(12%以下)
お待たせしました。それではさっそく紹介します!
独特なサウンド:下が波打っているハイハット
中にはボトムシンバルのエッジ部分が、ウネウネと波打っているハイハットもあります。クローズして叩いた時に隙間から空気とともに音が抜けてくる(もれてくる) 印象を受ける、独特のサウンドです。同じシリーズ、同じサイズのハイハットと比べると「カサカサ」、としたドライで明るい音になります。
ジルジャン S シリーズ マスターサウンド・ハイハット 14インチ
コストパフォーマンスモデルのジルジャンSシリーズ。とにかく明るくてストレートな音が特徴のシリーズです。ヌケの良いサウンドはもちろん、クリアで明るいチック音(踏んだ時の音)が特徴です。
- メーカー希望小売価格 (税抜) ¥43,000 (税込) ¥47,300 (ペア)
- 販売価格 (税抜) ¥36,600 (税込) ¥40,260(ペア)
- シートシンバル (明るくてストレート)
抜けてくる音から聴こえてくる成分が多いためでしょうか、同じシリーズの14インチと比較すると、やや明るいような印象を受けますね。
パイステ 2002 シリーズ Sound Edge 14 インチ
1971年のシリーズ発表から ジョン・ボーナム をはじめとする伝説的なロックドラマー達に愛用されてきたモデル。クリアかつストレートな音の伝達と独特の音ヌケが魅力です。
- メーカー希望小売価格 (税抜) ¥54,000 (税込) ¥59,400 (ペア)
- 販売価格 (税抜) ¥43,400 (税込) ¥47,740 (ペア)
- シートシンバル (明るくてストレート)
70年代から活躍しているイギリスの伝説的なハードロックバンド、Deep Purple の Ian Paice さんの見事なハイハットワークでした。今のドラマーがなかなか持ち合わせていない「スイング感」を持っている素晴らしいドラマーによる、円熟味溢れるプレーでした!ちなみに Paice さんはサウンドエッジの中でも、後ほど紹介する、15インチのハイハットを愛用しています。(14インチ以外のハイハットの違いについては下記にて説明致します。)
キレのいい、小回りのきくサウンド:小型ハイハット
スネアと同様、ハイハットの標準は14インチです。ただ、よりキレのよい音を求めて小型のハイハット (13, 12, 10インチ) を使うドラマーもいます。いくつか聴いてみましょう。
ジルジャン S シリーズ マスターサウンド・ハイハット 13インチ
同じくボトムハイハットが波状にハンマリングされているモデル。Sシリーズ特有のクリアなサウンドが14インチよりやや歯切れよく、高めの音程で出せます。
- メーカー希望小売価格 (税抜) ¥43,000 (税込) ¥47,300 (ペア)
- 販売価格 (税抜) ¥36,600 (税込) ¥40,260 (ペア)
- シートシンバル (明るくてストレート)
先ほど聴いたSシリーズの14インチと比べたら、ピッチが高いのが分かるかと思います。
13インチのハイハットは Alexandros の 庄村聡泰さん(ジルジャン) や、Jojo Mayer さん(セイビアン) が愛用しています。Sシリーズではありませんが、13インチハイハットを使った演奏を聴いてみましょう。
Alexandros の 庄村聡泰さんでした。意識して聴いてみると、通常のハイハットより少しだけピッチが高めな気がしませんか?早い曲でビートの裏に入れたりするようなプレーの時は歯切れがいいシンバルを使うと効果的ですね。庄村さんのシンバルは穴あきやチャイナを多数使っており、「出たらすぐに消える、メリハリのあるシンバルサウンド」に気を使っていることがうかがわれます。
ジルジャン スペシャルレコーディングハイハット 12インチ
ジルジャンのレコーディングに特化したハイハット。コントロールしやすく、とてもタイトなサウンドが特徴です。チックサウンド(踏んだ時の音)もとてもクリアです。
- キャストシンバル (倍音豊かな深みのあるサウンド)
ザ・パイステ・シグネチャー・シリーズ Combo Crisp ハイハット 12インチ
- シートシンバル (明るくてストレート)
パイステ代名詞ともいえるクリスタルサウンドを持ったハイハット。イギリスのロックバンド The Police のドラマーである、Stewart Copeland 氏とのコラボレーションで完成したハイハットです。歯切れよく、コントロールしやすいのは言うまでもありませんが、程よい温かみもあります。こちらのハイハットはパイステ愛用者であり、 MIYAVI のプレーが印象的な BOBO さんが使っています。
タンバリンの音とかぶっており、聴こえずらいかもしれませんが、キレのいい曲、キレのいいビートの中で生きるハイハットであることは分かるかと思います。(Boboさんはパイステの12インチハイハットはいくつか使っていますので、レコーディングの時は別の小型ハイハットをプレーしていた可能性もあります)
ジルジャン S シリーズ 10インチ
通常のハイハットと比べて直径 10cm 小さいモデル。ここまで来るとリズムを終始刻む、メインのハイハット、というよりは曲の中のアクセント、または雰囲気を変えるために使うセカンドハイハットの役割が多いかと思います。
- シートシンバル (明るくてストレート)
とてもピッチが高く、かわいらしい音がしますよね。
豊かな鳴り、表現力の幅UP:大型ハイハット
案外と愛用者が多いのが、15~17インチのハイハット。より大きなシンバルを使うことにより、14インチよりも豊かな鳴り、そしてより多彩な表現ができることが魅力ですね。厚みにもよりますが、ピッチは低めのことが多いです。
ジルジャン Aシリーズ New Beat HiHat 15 インチ
ハイハットのザ・スタンダード、New Beat HiHatの15インチバージョン。大抵の音楽で対応できる「絶妙な音ヌケ、キレ、ハーフオープン(少し開けて上下シンバルが当たってシャーンと鳴るような状態) の気持ちよい響き、音量感」を少しだけスケールの大きなサウンドで実現したモデルです。
- メーカー希望小売価格 (税抜) ¥48,000 (税込) ¥52,800 (ペア)
- 販売価格 (税抜) ¥40,800 (税込) ¥44,880 (ペア)
- キャストシンバル (倍音豊かな深みのあるサウンド)
androp の 伊藤彬彦 さんのセンス光る、ハイハットプレーでした。大きな、やわらかい響きですが、何より伊藤さんの54秒目あたりからのひとつひとつの音に対するこだわりがひしひしと伝わってくる、「歌うハイハット」が印象的です!
パイステ 2002 Big Beat シリーズ 16 インチ
パイステの人気の2002シリーズの中でも大きく、シンバルが伸び伸びと鳴ってくれるBig Beatのラインアップ。しっかりと打ち込んだハンマリングで程よくコントロールした、わずかにダークなサウンドが特徴です。1967年に発表された”Giant Beat シリーズ” を意識したかのような黒い渋いロゴもポイントですね。
- メーカー希望小売価格 (税抜) ¥66,000 (税込) ¥72,600 (ペア)
- 販売価格 (税抜) ¥52,800 (税込) ¥58,080 (ペア)
左にセットされているのが16インチのハイハット。ハーフオープンの鳴りっぷりが気持ちいいですね。「オープン」と「クローズ」の間の絶妙な開き具合を調整できるようになるとどんどん楽しくなる、そんなハイハットですね。ちなみに右側にセットされているハイハットは15インチです。
意外と多い大型ハイハット・プレーヤー
大き目のハイハットは実はプロの愛用者が多く、ジルジャンでは先ほどの androp の伊藤彬彦 さん、 Soil & “PIMP” Sessions の みどりん さん、 T-Squre の 坂東慧 さん、が セイビアン では 沼澤尚 さん、パイステでは toe 、 HIATUS の 柏倉隆史 さん、 河村”カースケ”智康 さん、 Deep Purple の Ian Paice さん、 Steve Jordan さんなどが15インチまたはそれ以上のサイズのものを愛用しています。
通常ハイハットとはクラッシュシンバルよりも厚みのあるシンバルを使いますが、沼澤尚さんなどは16インチのクラッシュを組み合わせてハイハットとして使っていますね。
もうひとつ紹介します。
中村達也さんの男気溢れるプレー。セイビアンのハイハットでした。タイコ、シンバルともに太く存在感溢れてますね。ロックやるんだったらこんなかっこいい演奏を目指したいです!
このへんでひとつ注意。。
プロのドラマーは本人の好みはもちろんのこと、曲の雰囲気、スタジオ/会場の響き方、スピーカーを通した音などを聴いて色々なシンバルを使い分けます。今回紹介したシンバルをいつも使っているとは限らないので、次に見た時に別のシンバル使っていてもビックリしないでくださいね。
もう少し遊んでみよう:特殊加工
最後に面白いシンバルをいくつか紹介します。
パイステ pstx シリーズ Swiss Hats 16インチ
パイステのエフェクトシンバル、 pstx シリーズ。サスティーンが短めでひずんだ音。「トラッシーな音」と言いますね。表面のマット仕上げも新鮮です。お手頃な価格も pstx シリーズのうれしい点です。
- Swiss Hats 14インチ
- メーカー希望小売価格 (税抜) ¥25,000 (税込) ¥27,500 (ペア)
- 販売価格 (税抜) ¥20,000 (税込) ¥22,000 (ペア)
- Swiss Hats 16インチ
- メーカー希望小売価格 (税抜) ¥34,000 (税込) ¥37,400 (ペア)
- 販売価格 (税抜) ¥27,200 (税込) ¥29,920 (ペア)
パイステ・アーティスト、 Jordi Geuens の演奏です。左側が16インチ、右側に14インチをセットしています。打ち込みビートと合わせて叩く時など合いそうですね。Swiss Hatsは10・14・16インチの3種類があります。
穴空きシンバル特集:パイステ pstx シリーズのレビュー
セイビアン Big & Ugly シリーズ 18インチ AA Sick Hats
こちらはまだ国内に流通していないスペシャルモデル。同じくトラッシーサウンドが持ち味の穴あきハイハット。セイビアンはこれを「EQ処理前のホワイトノイズ・エフェクト」と呼んでいます。
- メーカー希望小売価格:未定
- 販売価格:未定
- キャストシンバル (倍音豊かな深みのあるサウンド)
- 国内入荷なし
いかがでしたでしょうか?同じく、デジタルサウンドに合わせた叩くとしたら、あえてここまで遊んじゃった音を出してもいいかもしれないですね?こちらのハイハット、ボトムシンバルには穴が開いていません。ここまでつぶれた音にしたくない、もっとコシのある音が好みの人は裏返してプレーする選択肢もあります。穴が多すぎてプレーしずらい、という方にもありがたい仕様ですね。
AA Sick Hats を気に入った方、お取り寄せについては、お近くの店までお問合せください。
最後に:いいハイハットとの出会い
前回、「ハイハットは一番多く叩く楽器」といったお話しをさせていただきました。あともう一つ、ドラムにはない特徴があります。
それは、「音の長さを調整できる」という、点です。
シンバルはどれも押さえたらコントロールできます。が、ハイハットはペダルがあるおかげで両手を使わなくても調節できます。今まで当たり前のように思えたこの機能、じつはドラムセットを忙しく叩くドラマーにとってはとっても大事にしたい特徴なんですね。
それだけ自由度がある ハイハット という楽器。これを使いこなすドラマーになると、「お、分かっているね!」 な~んてバンドメンバーに喜んでもらえるプレー(!?) ができるようになるはず!是非ともマイ・シンバルサウンドの近道、ハイハットの音を注意して聴いてみてくださいね。
次回のビギナーズ倶楽部では、ライドシンバルを紹介していきます。それでは!
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この記事を書いた人:
開発のイシイ
朝から夜までドラムのことばかり考えている商品担当の人。でも実はかなりのアメフト (NFL) 好き。最近子供とウクレレを始めました。好きなドラマーはニール・パート。