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「50年の時空を超えた修理」1970年代のLudwigスネアに最新パーツは装着できるのか?検証結果と互換性まとめ

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「50年の時空を超えた修理」1970年代のLudwigスネアに最新パーツは装着できるのか?検証結果と互換性まとめ

記事中に掲載されている価格・税表記および仕様等は予告なく変更することがあります。

スネアドラムの定番中の定番であり永遠のスタンダードであるLudwig(ラディック)のスネアドラム。
現行品はもちろん、ドラムショー2025にてお取り扱い開始しましたヴィンテージも、多くのドラマーさんにお買い上げ頂いています。皆様ありがとうございます。

さて、古い年代のドラムで心配な点は、もしもの破損や不具合があった際に修理できるかという点があります。これはドラマーとしても、そして我々販売する立場としても気がかりなところです。

そこで、もしもの時も安心 新旧パーツの互換性まとめとして、比較的多いご相談の例をもとに修理や、使い勝手向上のためのアイデアなどをご紹介していきます。

なにぶん数十年~場合によっては100年近く前の古い年代の楽器ですので、私が経験上知りえた事以外にも様々なケースがあり、首をひねってしまうことも多々あります。
もしここに記したこと以外の事象などがありましたらぜひご教示頂けると幸いでございます。

スネアドラム ストレイナー

スネアドラムの最も重要な、かつ残念ながら最もトラブルが多発するのがこのスナッピーストレイナー。
ストレイナーは、スナッピーをON、OFFとスナッピーの張りの強さを調節するスイッチ(画像左)と、固定するバット部(画像右)から構成されます。

現行タイプの、LM400やLM402をはじめとする多くのラディックのスネアドラムには、下の画像の「P-88AC」というスイッチ&バットの組み合わせが装着されています。


スイッチ側は丸っこくなったデザインで、クラシックっぽい雰囲気も、現代的な雰囲気も併せ持ち、私などは思わず、カッコいいなぁ、と眺めてしまいます。

デザインが現代的なだけでなく、スナッピーヒモ(テープ)を固定する部分に角頭ボルトを採用しチューニングキーで締め・緩めが出来るようになった事と、スナッピーの張りを調整するノブにノッチ(回すとカチ、カチ、カチ、と段階的に止まる機構)があり、演奏中でもスナッピーが緩みにくくなりました(「Wave-Lock」機構と名付けられているそうです)

参考ですがP-85とP88ACの間に、短期間ですがP-85ACという型もありました。

いつのまにかP-88ACに切り替わってしまいましたが、スイッチの外側の刻印が違うくらいで、現行のP-88ACとほぼ同じと思われます。

そして下写真↓はP-88ACおよびP-85ACより以前のタイプで、スイッチは「P-85」、バット部は「P-32」です。
こちらのほうがなじみがある方も多いのではないでしょうか…?

私はこちらも「やはりラディックはこれだよなぁ…カッコいいなぁ…」などと思わず眺めてしまいます。

スナッピーのヒモ・テープ固定部はプラスドライバー使用で、調整やスナッピー交換の際に少々面倒な面もありましたが、この無骨な見た目やシンプルな構造で、やはりラディックといえばこれ、という方も多いと思います。(スイッチ側の固定ネジは角頭ボルトもオプションで用意されていました)

軽量なため、シェルの鳴りにもなにかしらの良い影響があるかもしれません。

そして古い年代のP-85には、スナッピーをヒモで固定するタイプもありました。2穴タイプと12穴タイプが存在します。

さてこのP-85。
シンプルないっぽうで、経年でスイッチレバーの関節部が摩耗し、演奏中に突然OFFになってしまったり、スイッチのON・OFFがスムーズでなくなってしまうというトラブルが避けられませんでした。

さらには演奏中にスナッピーの張りの強さを調節するノブが緩むことも多く、こまめに手直ししながら演奏したり、状況が許せばガムテープや輪ゴムなどで固定して使用していた方も多いと思います。

そしてこちらが1960年代のラディックのスネアドラムのストレイナー。スイッチはP-83とよばれるタイプ。スナッピーはヒモを結んで固定します。

さらに雰囲気のある見た目でこれも「カッコイイなぁ…」と思わず見入ってしまいますが、スイッチ部がスナッピーのヒモを結ぶしかない点は、ハードな演奏ですと緩んでしまうおそれもあり、カッコいいばかり言ってられないのもまた事実です。

そして1960年代製ということは製造からすでに60年前後経っているので、なにかと調子が良くないということもあるかもしれません。

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P-88へ交換

さてこのP-83とP-85、そして最新のP-88ストレイナーは、シェルへの取り付けネジの間隔がほぼ同一です。そのため、もし旧型のストレイナーが不調となってしまっても、最新のタイプに交換する事ができるのです。

画像左:P-88AC、右P-85(1970年代)です。

1970年代のスネアドラムに、2025年時点で現行品のストレイナーが問題なく装着できました。約50年の時空を超えた修理(!?)です。
スナッピーの緩みも防止でき、使い勝手が向上しました。
なお、シェルに開けられたストレイナーの取り付け穴が、古い年代のもののほうが僅かに小さく、現行のストレイナー取り付けネジを通す際にわずかにきつい、というケースもあるようです。
今回は無加工で交換出来ましたが、そのようなケースの際は無理せずご相談ください。

(今回P-83とP-88の互換性は実機で試すことが出来ませんでしたが、過去にP-83とP-85を交換した経験がありますので、互換性があると考えられます)

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バット部はどうでしょう

1970年代のストレイナーバット部、こちらはP-32とよばれるタイプです。金属プレートを折り曲げたようなシンプルな構造です。

残念ながらこの画像のP-32バット部と、新しいP-88ACのバット部は、取り付けネジの間隔が違うため互換性がありません。

P-88ACのバット部は、上画像のP-32より新しい年代に採用された「P-33」というバット部と互換性があります。

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ラグも交換できる!?

スネアドラムのテンショボルトを受け止めるラグも、シェル内側から固定しているネジが折れるなどのトラブルが時折見られます。

左はLM400等に使用されているインペリアルラグ。ラディックを象徴する形状です。1950年代のスーパーラディックのデビュー時に採用されました。
右はアクロライトに使用されているラグ。クラシックラグと呼ばれますが、こちらも1950年代から採用されています。

このラグも、過去の製品でも取り付けネジの間隔は同じため、互換性があります。
こちらも1970年代製のスネアドラムに、現行のラグを取り付けた様子です。見た目では判別しづらいほどです。

(金属胴用と、木胴用では外観は似ていますが異なります。ビードと呼ばれるシェル中央の突起に合わせるため、別品番になります)

画像左が現行品、右は1970年代のラグです。

古い年代と現在ではラグ内部の構造は違います。
金属の肉厚も異なると言われているので、厳密にはサウンド面での変化もあると考えられます。
実際に持ってみると、古い年代のラグのほうがわずかに重く感じます。

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おしまいに

数十年前のドラムの不具合でも、現在のパーツに交換することで使い続けることが出来るのは、なんとすばらしいことでしょう。

Ludwig社は創業1909年、今年(2025年)で116周年を迎えました。
ドラム機材の革新的な製品を作ってきたいっぽう、守りつづけるものは守る、このような考え方にのっとって作られている楽器は、我々としても安心してみなさんにおすすめすることができ、大変心強く思います。

今回使用したパーツ

メーカーLudwig
型名P-88AC
品名交換用ストレイナー・バットセット
販売価格¥11,704(税込)
JAN0641064936746
メーカーLudwig
型名P2230B
品名インペリアルラグ
販売価格¥2,409(税込)
JAN0641064141058

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ドラムエイドのご案内

今回のようなケースをはじめとしたドラム機材のお困りごとは、島村楽器のドラム応急処置サービス「ドラムエイド」実施店舗へご相談ください。

スナッピー交換、ヘッドチューニング、キックペダル調整など、カンタンな修理を島村楽器各店の店頭で行います。詳細は以下リンクをご覧ください。

この記事を書いた人

札幌パルコ店 鳥塚

テレビで見たドラムに心を奪われてドラムを始め、バンド活動に明け暮れていたある日、何気なく訪れた楽器店で目にしたプロドラマーのドラムイベント(ドラムクリニック)に感銘を受け、楽器店員を志す。現在は札幌パルコ店勤務の傍ら、演奏活動も行う。

これまでに、米国のZildjianや大阪の旧SAKAEといった国内外のドラム/シンバル工場を訪問。長い演奏歴とスタッフ歴で培ったマニアックな知識は、島村楽器随一。

そして今では、世界中のドラマーの定番となったPROTECTIONracketのスネア&ダブルフットペダルケース「TZ3016」「TZ3015」の発案者。

偉大なドラマーを輩出し続ける北海道・札幌で、ドラムコーナーの灯を絶やさぬよう奮闘中。
MyDRUMS内で「トリヅカのマニアックドラム」を連載中!

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