リペアマン遠藤の仙台リペアブログ~その72~バインディング剥がれ接着・隙間埋めの巻!

みなさまこんにちは!

リペアマン遠藤です!

仙台もようやく春めいて暖かくなってきて冷え性の私は歓喜でございます。

ただ"花粉症"、貴方だけは決して許さない…本当つらいですよね~


では本題に入ります。

まずはこちらをご覧下さい。

Martin D-42です。

よく見るとナットのあたりでバインディングと隙間が空いてますね。

これはヘッドと指板バインディングが縮んで剥がれ、隙間が空いたのです。

指板エンドです。同じくここもバインディングが縮んで剥がれ隙間が空いています。



ここで解説を入れましょう。

まずMartinあるあると言っても過言ではないですが、とにかくバインディングが剥がれます。一番多いのはボディのくびれのところから剥がれるのですが、今回のように指板やヘッド部もよく剥がれます。

そもそも何でバインディングが剥がれるのかというと、素材自体が経年変化で縮んで剥がれるのです。

Martinが使用するバインディングが特に縮みやすいのか分かりませんがとにかく頻発します。ヴィンテージだけでなく近年ものでも関係無く剥がれます。

修理で接着したとしても将来的には縮んでまた剥がれる可能性が高いです。それは素材の性質上仕方ないところはあります。



絶対に剥がれない接着材で接着したら?という声が聞こえてきそうですが、現状で存在しませんし、仮にそうした場合今度は木部が耐えきれなくなりギター自体が破損する恐れがあります。絶対やめましょう。

バインディングを新しく交換したら?という声も聞こえそうですが、それはそれでギターがもう1本買えるくらいのコストがかかるので現実的ではありませんし、結局また縮んで剥がれるのであまり意味が無いよう思います。

ちなみにリペアとして持ち込まれるのは冬が一番多いです。空気が乾燥したり寒暖差の刺激も要因になるようですね。



バインディングが剥がれた箇所をそのままにしておくとどんどん広がっていくので、剥がれたらまずはリペアとして接着してもらうのが良いでしょう。

しかし、接着しても最初の写真のような隙間はそのままになります。将来的にはまた縮むことが分かっているので基本的には埋めないのです。

以前気になって埋める埋めないでMartinの代理店にも聞いた事があったのですが、リペアの考え方としてはやはり一緒でした。



このような前提がありまして、今回のリペアでは接着だけでなくさらにその隙間も綺麗に埋めてほしいという要望です。

作業難度としては高めです。絶対的な手先の器用さが要求される作業が待っているからです。

埋めてほしいという方が今まであまりいなかった事もありますが、今回やってみましょう!



では作業に入っていきます!

まずは隙間を埋めるバインディングですが、メーカーからは残念ながら取り寄せられなかったので自力でバインディング作製する事にしました。

今回のリペアではバインディング3種と接着剤2種を使用しました。

一見ただの黄色いバインディングかと思いきや…象牙調のバインディングです!

元々のD-42のバインディングを見ると分かるのですが、外側が縞模様が入った象牙バインディング、中間が黒、内側が白の3プライのバインディングになっています。

今回はこれを再現していきますので象牙→黒→白の順でバインディングを接着します。当然厚さが違うので各々を削って細かく調整してから接着です。

バインディング同士の接着はセルボンという溶剤系の接着材を使用します。

上の写真に真ん中に小っちゃ~いのが見えますでしょうか…

まだまだ途中ですがバインディング張り合わせてある程度整形した隙間パーツです。

これを更に隙間に合うように整形していくのですが、厚さ1mmあるかないかを削る作業はかなり大変でした。バインディングを削りたいのに小さすぎて自分の爪や指が削れるっていう…


ここの工程で予想以上に時間がかかりました。

四苦八苦しながらも極小パーツを計6個作りましたので次は接着です。

接着のセオリーとして剥がせるところは剥がしてからの方が綺麗に接着しやすいので、指板エンド部は一旦剥がしました。

元々バインディングが接着されていた部分はタイトボンド、作製した隙間パーツが付く部分はセルボンと接着材を分けて使用します。

セルボンは溶剤系でラッカー塗装を侵すので絶対にはみ出ないように注意しながらの接着です。

そしてヘッド・指板バインディングですが、だいたい同じ作業でしたので割愛します。



そして完成です!

正面から見るとバインディングのラインがちゃんと繋がりましたね!

横から見ると塗装の有無・黄変等もあって全く同じにはなりませんが隙間は綺麗に埋まっています。

今回はなかなか大変なリペアでしたがうまく出来ました!



いかがでしたでしょうか?

バインディング剥がれはMartinギターでよく頻発します。仙台ロフト店では剥がれの接着だけでなく細やかな隙間埋め作業も可能です。

しかしバインディングの種類によっては埋め作業出来ないものもありますので、まずはお気軽にご相談下さい!


以上、リペアマン遠藤でした!

またお会いしましょう~

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この記事を書いたスタッフ

仙台ロフト店遠藤

宮城県出身。長野県でギター製造に携わった後2017年から島村楽器仙台イービーンズ店の店頭リペアマンとなり、現在の仙台ロフト店に至ります。仙台のリペアは遠藤にお任せ下さい!

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