弦楽器買い付けブログ

2024年秋 ヨーロッパ買付ブログ (前編)

皆さんこんにちは。島村楽器の糸山です。

ご報告が大変遅くなってしまいましたが、2024年9月に行いましたヨーロッパ買付出張について書かせて頂きたいと思います。拙い文章で恐縮なのですが、どうか最後までお付き合いください。

毎年秋の買付は、イタリア・クレモナで開催される国際見本市「モンドムジカ」の視察が恒例です。昨年9月の段階では、北イタリアへ行くにはどこかで乗り継ぎをしなくてはなりませんでした。今回は、買付初参加のメンバーが2人いることですし、クレモナへ行く前にシャルルドゴール空港で降りて、パリの工房を数軒回ってみることにしました。

左)シマムラストリングス秋葉原 技術者:浦邉 / 右)コクーンシティさいたま新都心店:千葉

私自身も、ヨーロッパはコロナ禍前の2020年2月以来となり、かなり久しぶりの海外出張です。まずはパリ12区にある工房を訪問します。

ここの工房長は敗血病を患って一時期休養されていました。4年半ぶりの再会でしたが、今は元気になった様子でひと安心です。こちらではチェロをメインに、ヴァイオリンや弓も掘り出し物があれば・・・という感じで試奏と検品を進めて参りました。

各地で行われる展示会のためチェロは複数本を確保したかったのですが、リペアマン浦邉による厳正なる検品の結果、日本へ持ち帰れるのは以下の2挺ということになりました。

それでは、こちらで買い付けた2挺のチェロをご紹介させて頂きます。(詳細はリンクをクリックお願いします)

Marc Laberte, France – Mirecourt, ca1930 – 1940

Atelier Jean-Jacques Pages, France – Mirecourt, ca1980(SOLD OUT)

この工房から巣立って世界的に活躍している製作家もいらっしゃいます。またお互い元気に再会できることを期して、工房の皆さんと記念撮影。

次は、20年近くお付き合いさせて頂いている弓職人:Sandrine Raffin(サンドリーヌ・ラファン)の工房です。写真を撮り損ねてしまったのですが、職人として下積み修業中の長女:Salome、次女:Jadeとも一緒でした。偉大な祖父:Jean-Francois&母:Sandrineのもと、彼女らは弓の修復テクニックをめきめきと向上させていました。

ここでも試奏を繰り返した後に隅々まで検品を行いました。悩みに悩んだ結果、この先のクレモナで良い弓に出会えるかどうかは未知数ですので、ここで複数本を購入することに決めました。以下、ラファンの工房で買い付けた逸品をご紹介させていただきます。

Simon School, France – Mirecourt, ca1900

Atelier Charles Nicolas Bazin, France – Mirecourt, ca1900

Louis Morizot Pere, France – Mirecourt, ca1930, stamped “TOURTE”(SOLD OUT)

Louis Morizot Freres, France – Mirecourt, ca1950, stamped “E.SARTORY A PARIS”(SOLD OUT)

Emile Francois & Emile August Ouchard, France – Mirecourt, ca1930

Nicolas Joseph Harmand & François Jude Gaulard, France – Mirecourt, ca1830(SOLD OUT)

ラファンの工房ではパンやチーズなどお総菜を持ち寄って、ランチをご一緒させて頂きました。日本語もかなり上達されていて、あと少しで日常会話レベルのおしゃべりは日本語だけで成立しそうです。毎朝の通勤時間を使って勉強されているようで、仕事もプライベートも継続して努力されている姿勢には心から尊敬しています。

ラファンの工房の後には別のアポイントメントがありましたが、トリエンナーレで(何かの賞を)受賞したようなのでこれから急遽クレモナへ行きます。というメッセージがあり、残念ながら予定が流れてしまいました。ただ、探している商材もありましたので、Rue de Romeにずらっと居並ぶ工房を何軒か回って、長らくお会いできていなかった職人さんらと久しぶりの交流を楽しみつつ、商材リサーチを行いました。

そして、パリでの最後の行程は、現代名工:Charles Coquet(シャルル・コケ)&Emmanuel Carlier(エマニュエル・カリエール)の工房訪問です。圧倒的な実力で名声を得ている2人は、自身の製作に集中するため人通りの絶えないRue de Romeからは距離を置き、少し離れたモンマルトルの麓の閑静な場所に共同工房を構えています。

工房内を公開することはできないのですが、2人では充分過ぎるぐらい大きな間取りをスペースをシェアされていて、地下階にはコンサートができるスペースもあり、職人の誰もが憧れる理想的な空間です。

普段は演奏家の依頼しか受け付けておらず、しかもウェイティングリストは数年待ち状態という彼らですが、2023年2月のヨーロッパ出張の際に特別にオーダーをさせて頂いていました。エマニュエル・カリエールの作品は、2025年3月-4月頃にヴァイオリン弓×3本(うち1本はお客様オーダー品)、チェロ弓×1本が完成予定です。

今回の渡航では、パリで活躍するミュージシャンの間で話題沸騰中の人気メーカー:シャルル・コケのヴァイオリンを受け取りに参りました。彼は16世紀から18世紀の様々な名器を研究し、彼らの足跡を辿るだけでなく、パーソナリティを自身の楽器に刻み込んでいます。コケが作り出す高い品質と音響特性はパリでたちまち話題となり、2015年にはクレモナ・トリエンナーレにおいてヴィオラ部門「金賞」の快挙に加え、全楽器を合わせた音響テストで最優秀賞を受賞したことで世界的にその名が知られるようになりました。

当社マイスター:茂木からも本作品への推薦コメントを頂いており、この場を借りて紹介させて頂きます。

手に取ると大変丁寧なディテールを積み重ねて、無駄のない、しかもこれしかないと言うラインで仕上げられているのが分かります。そこから生まれる持ちやすさ&弾きやすさ、そしてその底知れない表現力のサウンド。すでに試したソリストから早くも推薦の評価を頂いております。

マイスター 茂木顕

それでは、前置きが大変長くなりましたが、ディーラーとしては日本初入荷となりますシャルル・コケの最新作をご紹介させて頂きます。

Charles Coquet, France – Paris, 2024

新作フレンチメーカーの最新トレンドを当社でご体感頂けます。全国の島村楽器で試奏を承ります。(商談状況によりお待ち頂く場合がございます。尚、売り切れの際はご容赦ください。)

ぜひ、お問い合わせをお待ちしております。

以上で、パリ1日の行程は全て終了です。この日の夜は、初買付の2人を連れてパリの老舗大衆食堂へ。人気店ゆえに1時間以上の行列に並ぶのは体力的にきつかったですが、昔ながらの雰囲気を味わことができて良かったのではないかと思います。

翌朝7時のフライトでミラノへ、そこから電車でクレモナへと向かいます。

それでは皆さま、Au revoir!!