ピアノにとって『NGな事10選』

はじめに
今回はピアノにとって『NGな事10選』をご紹介します。
普段、無意識にやっていることがピアノにとっては危険なこともあります。
実際にお客様がやられているケースも多くあり、意外に思われることもあるかもしれません。
確実にお伝えしたいNGを10個選びました。
NG.1 湿気
お風呂やキッチンの近くなど水回りの近くに設置すると湿気がこもりやすく、木材やフェルトが膨張して部品の動きが悪くなります。
また、弦が錆びる、木材にカビが生えるなどのトラブルも起こしやすくなるため要注意です。
梅雨時期は常に湿度が高く、湿度を気にしていただくことが重要です。
ピアノに最適な湿度は50%前後とされています。
・対策
ピアノの中に専用の除湿剤を入れたり、除湿器を使用しましょう。
また、キッチンの近くは料理の油が少しずつピアノに付着し、外装がベタついたりくすんでいきます。
油対策にはピアノカバーをかけておくのをおすすめします。
NG.2 乾燥
湿度が低すぎるのもピアノにとって良くありません。
空気が乾燥しすぎると、木が収縮しネジが緩んで部品がぐらついたり、雑音の原因になります。
また木材にひびが入る可能性もあり、修復が難しくなってしまうこともあります。
冬はエアコンや床暖房を使用することも増えるため乾燥しやすくなります。
・対策
ピアノから少し離した場所で加湿器を使用しましょう。
特に床暖房はピアノ全体へ顕著に影響が出てしまうので、ピアノの下に専用の断熱ボードを設置すれば床の熱からピアノを守ってくれるので必須アイテムになります。
NG.3 日差し
日が当たるとピアノの温度が上がってしまい、ピアノが乾燥し傷んでしまう原因になってしまいます。
また、外装の塗料の劣化を早め、特に木目調のピアノは特に日焼けして色褪せてしまいます。
・対策
配置の都合で日が当たるところに置かざるを得ない場合には、遮光カーテンをつけるなど直射日光の対策をすると良いでしょう。
NG.4 エアコンの風が直接当たる
ピアノに直接エアコンの風が当たってしまうと急激な温度変化により、弦が伸び縮みを行い音が崩れやすくなります。
さらに、ピアノの内部の金属の部分が結露し錆が発生したりカビの原因にもなります。
・対策
ピアノに風が当たっていないか確認し、直撃しないように風向きを調節しましょう。
NG.5 鍵盤の除菌(アルコールの使用)
鍵盤の素材はアルコールに弱く、ヒビが入ったり割れてしまうことがあります。
弾く前にアルコールで手を消毒した時も、しっかり乾かしてから鍵盤を触りましょう。
除光液も鍵盤の表面を溶かしてしまうので使わないでください。
・対策
鍵盤のお掃除には鍵盤専用のクリーナーを使いましょう。
NG.6 近くにクレベリンを置く
空間除菌ができるクレベリンの成分(二酸化塩素)は金属を錆びさせてしまいます。
大幸薬品のサイトでも「製品の特性上、貴金属、精密機器の間近では使用しないでください。
金属を腐食する可能性があります」と注意を促しています。
・対策
ピアノと同じ部屋・空間にも置かないことをおすすめします。
NG.7 近くに水を置く
ピアノの上に花瓶や水槽を置くことも危険です。
万が一、水がこぼれてしまったらピアノの内部にまで水が染み込み、大きな修理をしないといけなくなる可能性が高くなり危険です。
鍵盤の周辺にも注意が必要で、飲み物などをこぼしてしまうと鍵盤が動きにくくなり錆の原因にもなりますので部品交換が必要になることもあります。
もし水をこぼしてしまったら早めに調律師に見てもらいましょう。
NG.8 鍵盤蓋に力を加えて閉じる
最近のピアノにはスローダウン(ゆっくり鍵盤蓋が閉まる装置)が搭載されており、指挟みの事故防止となっています。
早く蓋を閉めようと無理やり押さえつけてしまうと装置が破損してしまうことがあります。
・対策
手をそえる程度で、ゆっくり蓋が閉まるのを待ちましょう。
NG.9 グランドピアノ大屋根の間違えた開け方
時々グランドピアノの大屋根が危険な状態で開いていることを目にすることがあります。
写真のように2箇所の受け皿があり、全開にする時は奥側に付いている受け皿に突き上げ棒を固定します。


半開にする時は外側の受け皿に突き上げ棒を固定します。
よく見かける間違いは全開にする時に外側の半開用の受け皿に固定してしまっていることです。
正しい受け皿に固定しないと突き上げ棒が折れてしまったり、突き上げ棒が滑り大屋根が落下する可能性もあるのでとっても危険です。
NG.10 調律をしなくなる
定期調律は人間でいう定期検診のようなもので、音を合わせるだけではなく内部の部品が正常に動いているか点検し、コンディションを整えることが目的です。
長年調律されなくなると音は大きく狂い、狂った状態で固まってしまった期間が長くなるため調律してもしばらくは音が狂いやすい状態になります。
また、部品の調整も不揃いになって鍵盤が重かったり軽かったりとバラバラな状態になります。
内部は埃がたまって害虫が発生していたり、弦が錆びて断線したりなどのトラブルも起りやすくなってしまいます。
「また弾く時が来たら調律すればいい」と考える方もいらっしゃいますが、ピアノは放置期間が長くなればなるほど傷みが激しくなります。
その結果、修理箇所が増え修理費用もかさんでしまう場合があります。長い目で見れば、定期的に調律を行うことが大切です。

まとめ
ピアノにとって『NGなこと10選』について書いてきました。
ピアノは木・フェルト・金属などの素材が使われているため、とにかく温度・湿度の変化に弱い楽器です。最適な環境を意識するだけで数十年後のピアノの状態は大きく変わり、寿命にも影響します。
一般家庭で完璧なピアノの置き場所や環境を確保するのは、なかなか難しいかもしれませんが、基本的には対策できることがおわかりいただけたかと思います。
ピアノを長く快適に楽しむためにも設置環境や扱い方を見直して、調律師による定期的なメンテナンスも忘れずにしましょう。
わからない時は直接調律師へご相談ください。
ピアノの調律や修理に関するお問い合わせはこちら!