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【徹底検証】ギターのスケール(弦長)が変わるとテンション(張力)は本当に変わるのか!?

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番外編①

先ほどまでは一般的な(一部違うけど)スケールのエレキギターを計測しました。ここで「あれはどうなんだろう?」と思ったモデル達もあったので、計測してみました。

24.015 inch(610 mm)-Pignose PGG-200-


かなり気になった「ミニギター」。ミニギターを弾くと簡単にチョーキングできてしまいます。果たしてミニギターのテンションはどうなんでしょうか?

ブランド Pignose
モデル PGG-200
スケール 24.01
弦ゲージ 009-042
チューニング レギュラー ドロップC
6弦 1.00 0.97
5弦 1.14 1.05
4弦 1.09 1.11
3弦 1.04 1.04
2弦 0.79 0.76
1弦 0.83 0.68

おやおや! 意外とテンションかかってるんですね! 009ゲージを張っていながらも、これだけテンションを保っているんですね。(でも考えてみればPRSと0.99 inchしか変わらないので、納得と言えば納得です)

また、スケール以外のところでテンションに影響している点も大きいのかもしれません。あのチョーキングのし易さは固定観念から来るものなのでしょうか...

26.5 - 25.5 inch(673.1 - 647.7 mm)-strandberg Boden OS-


そして今回気になったもう一点。ヘッドレスはどうなんでしょう? さらにマルチスケール。けっこう複雑な要因が絡みあうこのBoden OS7のテンションやいかに?

ブランド strandberg
モデル Boden7/RMRN
スケール 26.25-25.5
弦ゲージ 010-046
チューニング レギュラー ドロップC
7弦 1.29 0.94
6弦 1.15 0.84
5弦 1.15 1.05
4弦 1.02 0.92
3弦 1.02 0.92
2弦 1.09 0.86
1弦 0.82 0.71

思っていたよりはテンション緩めですね。演奏性がかなり高そうです。ダウンチューニングで多用されるイメージのあるBoden。あまりチューニングを下げすぎると音像がボヤけてしまうかもしれませんので、適度なダウンチューニングをどうぞ。

27.5 - 25.5 inch(698.5 - 647.7 mm)-Strictly 7 Guitars Cobra Standard Plus-


Bodenよりもかなり長いマルチスケールという事で計測してみました、こちら。7弦側は27.5、1弦側は25.5というロングスケールだけに、テンション感に期待が持てます。

ブランド Strictly 7 Gutars
モデル Cobra Spl7 HT/B F WD
スケール 27.5-25.5
弦ゲージ 010-046
チューニング レギュラー ドロップC
7弦 1.19 0.98
6弦 1.12 0.88
5弦 1.24 1.13
4弦 1.18 1.05
3弦 1.16 1.02
2弦 1.03 0.90
1弦 0.91 0.83

7弦側はやはりというか、かなりきつめのテンション。それが故にドロップしてもしっかり張力が保たれています。逆に25.5 inchの1弦はかなり緩め。このテンションの一定感を求めてマルチスケールを導入するギタリストも多いです。

番外編②

ナット&ブリッジ外側の弦角度でのテンションの違い

これは冒頭でも記載した通り、明確にテンションに違いが出ると言われています。なので、テールピースの高さを変化させられるレスポールで比較して計測を試みました。


まずは通常のテンション。テールピースがボディトップから5mmの高さで計測です。(先ほど掲載した数値と同様です。)

ブランド Gibson
モデル Les Paul
テールピース高 5 mm
チューニング レギュラー ドロップC
6弦 1.15 1.12
5弦 1.25 1.15
4弦 1.25 1.11
3弦 1.12 1.11
2弦 0.99 1.03
1弦 1.02 0.96

続いて、テールピースを持ち上げてみます。


ボディトップから10mmの高さに設定してみます。


左が5mm高、右が10mm高。明らかに弦がブリッジから落ちる角度に違いが出ています。理論上は左の方がテンションがかかるはずです。

ブランド Gibson
モデル Les Paul
テールピース高 10 mm
チューニング レギュラー ドロップC
6弦 1.10 0.97
5弦 1.19 1.06
4弦 1.14 1.07
3弦 1.08 0.97
2弦 1.05 0.82
1弦 0.90 0.73

こ、これは!! 明確な違いが。(違いが出なければテールピースを上下できる理由がなくなってしまいますが)

ブランド Gibson
モデル Les Paul
テールピース高 5 mm 10 mm 5 mm 10 mm
チューニング レギュラー ドロップC
6弦 1.15 1.10 1.12 0.97
5弦 1.25 1.19 1.15 1.06
4弦 1.25 1.14 1.11 1.07
3弦 1.12 1.08 1.11 0.97
2弦 0.99 1.05 1.03 0.82
1弦 1.02 0.90 0.96 0.73

分かりやすく横に並べてみました。各弦、各チューニングで角度が緩くなるとだいぶテンションが落ちますね。弾きやすさを優先するならテールピースを上げ、テンションを優先するなら下げましょう。

※今回の検証を元に、島村楽器ギターリペア工房の技術者、阿部にも聞いてみました。

「テンションを稼ぐためにナットや駒からの落ちる角度を調整はしますが、それは逆にサスティンにも影響が出るので、一概に角度をきつくすればいい、という事も言い切れません」

との事です。チューニングを落としながらもサスティンを考慮したいのであれば、当社リペアマンに相談してみて下さい。

ナット~ペグポスト間距離によるテンションの違い

よく言われます。「リバースヘッドで低音弦の全長が長いからテンションが稼げる」
本当でしょうか? 計って審議を確かめちゃいましょう。


分かりやすい実験を。S7GのCobra Std7、7弦と1弦に同じ010を張ってみます。これによって同じゲージでナット~ペグポストの距離が明確に変わりますので、それぞれのテンションの変化が確認できます。


ちなみにテンションバーでナットから弦が落ちてくる角度が変わる事は先ほど判明しているので、テンションバーの高さは左右均一にしておきます。


まあ図るまでもないんですが、一応。テンションバーからペグポストまでの距離は、約151mmありました。

ではさっそく。

ブランド S7G
モデル Cobra Std7
弦ゲージ 010
7弦側 1弦側
数値 1.21 1.02

!! これは!!
こんなにも明確な差が生まれるんですね。約200 gの差ですよ。ちなみに指で弦を押しただけでも違いがハッキリ分かりました。(ここの長さはテンションには影響しないと思っていたのに...)

ペグポスト~ナットの距離と、ナットから落ちる弦の角度はテンションに影響します!

 まとめ

それでは最後に、今回計測したすべてのモデルを一覧で比較してみましょう。


これは分かりやすいです。それぞれ各弦のテンションを合計した値(7弦モデルはもちろん弦が7本あるので、1~6弦のみを合計)を各チューニングの一番下に記載してあります。


レスポール、PRS、ストラトが面白い結果になりましたね。もちろん出荷時の弦および今回の使用弦が009-042だから、とも言えますが、レスポールよりもテンション合計値は低くなっています。ここから考えられるのは、各モデルともスケールから生まれるテンションの強さ、弱さを補うためにナット~ペグポスト、ブリッジ~ボールエンドの角度や距離で調整されるよう計算して設計されているのでしょう。もちろん出荷時の弦でバランスもとっているのだと思います。

ストラトに010-046を張ったらかなりのテンションになりそうです。


ダウンチューニングでもてはやされているモデルも特徴的。意外とBodenはテンションが緩め。やはりダウンチューニング時でも威力を発揮しそうなのはCobra Standard7でしょう。27.5inchスケールはある意味ズルいです。


Ibanez RGR621も6弦モデルの中で異彩を放つ、かなりのテンション。ダウンチューニング専用機と謳っているだけあってさすがに「有効」ですね。

というわけで、あくまでも「相対的に」各モデルのテンションを比べてみました。それぞれテンションバーやテールピース、弦のゲージ等々をイジればまたテンションは変わりますので、あくまでも工場出荷時の比較だという前提で、今回の数値を参考にしてみて下さい。また機会があれば他のモデルも検証してみたいと思います。

ご注意

今回の検証はあくまでも押弦、チョーキング時に指にかかる力を数値化するために試みたテンション測定方法です。よってあくまでも今回測定したモデル同士、相対的なものであり、比較を行うためのものです。番外編でお伝えしたように、ナットやサドルから落ちる弦の角度、ナット~サドル以外の弦長、その他様々な要因でもテンションは変化しますので、あくまでも基準としてご覧ください。

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