【徹底検証】ギターのスケール(弦長)が変わるとテンション(張力)は本当に変わるのか!?
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エレキギターは様々なメーカーから、様々なモデルが発売されています。それらの違いは見た目の違いだけでなく、ネックの握り心地やピックアップの種類、材料等々、至る所に及びますが、スケールにももちろん違いがあります。
スケールとは、ギターのナットからサドルまでの距離。
音階の事もスケールと言いますが、ここでは別物。(ペンタトニックスケールなど)
「スケールが長いからテンションがキツイ」なんて言葉を聞いた事はありませんか? テンションが上がるとチョーキングも大変になります。クラプトンまでの道のりが遠のきます...
逆にスケールが短いとテンションが緩くなるので、半音下げくらいなら対応できても、近年のラウドミュージックで多用される1音下げやドロップC等々では、弦のハリがなくなって音像がボヤけてしまいがち。
とはいえスケールが長いとどれくらいダウンチューニングに有利に働くのか、体感でしか分からず、曖昧なのも事実。
そこで! 今回Gibson Les PaulやFender Stratocasterといった王道モデルをはじめ、様々なスケールのギターをギタセレ独自の計測方法で比較してみます。ダウンチューニングで演奏する際、いかにロングスケールが優位なのか、逆にレギュラーチューニングの場合は短いスケールがいかに弾きやすいのか、数値で比べてみましょう!!
テンションについて
スケール同様、テンションにも弦の「張力」ともう一つの楽典的な意味があります。詳しくはこちらでも語られていますが、要するに、通常のメジャー、マイナー、7thといったコードに、非和声音を追加したコードをテンションコード、その非和声音をテンションノートと呼びます。今回はそれとは違い、弦の張力という意味でテンションという言葉を使用していきます。
レッツ計測!
ではさっそく計測と行きますが、まず計測するモデル達をそれぞれのスケールと共にご紹介しましょう。
ブランド | モデル | スケール(inch) | スケール(mm) |
Gibson | Les Paul | 24.75 | 628.65 |
Paul Reed Smith | CE 24 | 25 | 635 |
Fender | Stratocaster | 25.5 | 647.7 |
Ibanez | RGIR30BFE | 25.5 | 647.7 |
Ibanez | RGR621 | 26 | 660.4 |
Strictly 7 Guitars | Cobra Standard | 27.5 | 698.5 |
ちなみに、今回のPRSとFenderは工場出荷時の弦ゲージが009-042。他はすべて010-046。公平さをどこに置くかで悩みましたが、今回に関しては出荷時のゲージのままで計測し、そのモデルが工場出荷時に有しているテンションを計測するというスタンスで行きます。
いろいろ計り方を考えました... 張力ってなかなか計るの難しいですよね。
考え抜いた結果、ギターを押弦もしくはチューキングした時の感覚を数値で表すために、この電子重量計を用意。飛行機内持ち込みのためにスーツケースの重量を図るためのこの重量計。
ナットとブリッジの真ん中(12フレット)で、この測りをつかって2cm弦を引き上げます。その時かかっている重さを計測。各モデルで比較していきます。
純粋に「張力を計る」となると絶対数値が必要だとは思いますが、ここではあくまでも相対的に「このモデルよりあのモデルの方が張力が高い」等の判断材料としてください。
計測条件
チューニング | レギュラー:(B)EADGBE/ドロップC:(G)CGCFAD |
トレモロ | 搭載モデルはフローティング状態で計測 ※あくまでも工場出荷時のセッティングにこだわるため ※弾いた時の感覚を数値化するため |
チューニングはレギュラーとドロップCで2回計測。7弦モデルの場合は7弦もドロップしてセットアップします。
テンションは、純粋な弦の張力と、体感の張力という考え方がありますが、今回計測するのは、あまりこれまで数値化されてきていないであろう、体感の張力。そのためトレモロユニットはフローティングのまま計測します。
ちなみに!
弦の老舗、D'addario USAのサイトでは純粋な弦の張力が計算できるようになっていて、それぞれの弦にかかっているテンションが分かります。
※ダダリオの計測方法は今回の方法とはもちろん異なるはずですので、同じkgという単位でも差が出ますので、予めご了承ください。
~レギュラーチューニング~
inch/kg | 24.75 | 25.00 | 25.50 | 26.00 | 26.22 | 27.50 |
1(E) | 6.93 | 7.07 | 7.36 | 7.65 | 7.78 | 8.56 |
2(B) | 6.58 | 6.71 | 6.98 | 7.26 | 7.38 | 8.12 |
3(G) | 7.09 | 7.23 | 7.52 | 7.82 | 7.95 | 8.75 |
4(D) | 7.56 | 7.01 | 8.34 | 8.67 | 8.82 | 9.70 |
5(A) | 8.14 | 8.30 | 8.64 | 8.98 | 9.13 | 10.05 |
6(E) | 7.23 | 7.38 | 7.67 | 7.97 | 8.11 | 8.92 |
6弦計 | 43.53 | 43.70 | 46.51 | 48.35 | 49.17 | 54.10 |
7(B) | 6.78 | 6.92 | 7.20 | 7.48 | 7.61 | 8.37 |
7弦計 | 50.31 | 50.62 | 53.71 | 55.83 | 56.78 | 62.47 |
レギュラーチューニングでの各スケールにおけるテンションがこちら。24.75 inch(レスポール等)と、27.5 inch(S7G Cobra等)では、各弦1.6 kg前後の差があります(!!) だいぶ変わりますね。
~ドロップC~
inch/kg | 24.75 | 25.00 | 25.50 | 26.00 | 26.22 | 27.50 |
1(D) | 5.50 | 5.62 | 5.84 | 6.07 | 6.17 | 6.79 |
2(A) | 5.22 | 5.33 | 5.54 | 5.76 | 5.86 | 6.44 |
3(F) | 5.62 | 5.74 | 5.97 | 6.21 | 6.31 | 6.94 |
4(C) | 6.24 | 6.36 | 6.62 | 6.88 | 7.00 | 7.70 |
5(G) | 6.46 | 6.59 | 6.85 | 7.13 | 7.25 | 7.97 |
6(C) | 4.55 | 4.64 | 4.83 | 5.03 | 5.11 | 5.62 |
6弦計 | 33.59 | 34.28 | 35.65 | 37.08 | 37.70 | 41.46 |
7(G) | 4.27 | 4.36 | 4.54 | 4.71 | 4.79 | 5.28 |
7弦計 | 37.86 | 38.64 | 40.19 | 41.79 | 42.49 | 46.74 |
ドロップCにすると1音下げている弦はそれぞれ2kg弱、6&7弦に至っては2.5kgほど平均で張力が落ちています。しかしこればあくまでも同一の条件でチューニングとスケールを変化させた場合。
実際にはナットから、もしくはブリッジから弦がどれくらいの角度で落ちているのかでまた変わって来ると言われています。
ナットからテンションバー無しでペグポストに弦が巻かれ、ブリッジのエンド部分にボールエンドが来るようなタイプのギターと、
ヘッド側にテンションバーを使用して、エンド部分はボディ裏通しで弦が固定されているタイプでは、ナット&ブリッジよりも外側の弦の角度が鋭角になるため、テンションは上がるのです。
この点を考慮し、検証を行うためにレスポールではテールピースを上下させて計測した結果も載せます。そのあたりは「番外編」でご覧下さい。