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【今さら聞けない】エフェクターの基礎知識編 ~モジュレーション(揺らし)系エフェクター~

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モジュレーション(揺らし)系エフェクター

前回の歪み編に続いて、モジュレーション系エフェクターを掘り下げて行きます!

s-yurasi-1

「モジュレーション」(Modulation)...
この言葉の意味は「高周波持続電流の振幅・周波数・位相などを信号で変化させること。」(goo辞書より)とあります。
さらにWeblio英和辞典で調べると、

  • 調整,調音
  • (音声・リズムの)抑揚(法)
  • 【音楽】 転調
  • 【電子工学】 変調

と出てきます。
楽曲の中で調が変わる事もModulationなんですね。

しかし、エフェクターの世界ではgoo辞書でいうところの意味で使用されています。
モジュレーション系のエフェクターは、位相をずらして音に揺らぎを与えるもの、音の遅れを生み出して揺らぎを与えるものの2種類に大きく分けられます。
さっそくモジュレーション系エフェクターを細かく見て行きます。

位相について

モジュレーション系のエフェクトを語る上で知っておきたいものとして「位相」があります。
位相というのは一言でカンタンに表すならば「音の波」。
音は空気中を波として伝わり、私たちの耳に届きます。

たとえば、バンドの中にギタリストが2人、全く同じフレーズを全く同じ環境で弾いているとします。
その時、タイミングがピッタリ合った状態がこちら。
s-正位相
この状態では、AとBの波が合わさって音量も増大します。
バンドにギターが2人いることで音に厚みが出るわけです。
この状態が正位相。

逆にこんな時はどうでしょう?
s-逆位相
Bの波が少しズレていることで、Aの波と打ち消しあってしまいます。(逆位相状態)
ピッタリ逆位相になってしまったという最悪の場合は、ギターの音が聞こえなくなります。
※この例えは分かりやすく、あえて強引な設定にしています。

電気も波として伝わりますので、エフェクター内部でも位相が関係してくるのです。
このことを踏まえた上で、各エフェクターの種類を見て行きましょう。

コーラス

コーラスの歴史

みなさん、こちらのアンプはご存知でしょうか?

s-JC120
Roland Jazz Chorus JC-120B
メーカー希望小売価格オープンプライス
販売価格 (税込) ¥119,680 (税抜 ¥108,800)
JAN:4957054089528

 


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有名ですよね? スタジオやライブハウスにある、超ド定番ギターアンプ“Roland Jazz Chorus JC-120B”。
1975年に発売してからほとんどモデルチェンジを行っていない事実は、それほど優秀なアンプだという証明ですね。
このJazz Chorusに搭載されているコーラスエフェクト、これこそが世界初のコーラスエフェクトになります。

その後Rolandはコーラスエフェクトだけを取り出した、BOSS “CE-1 chorus Ensmble”を発売します(1976年)。
s-boss_ce1_hq

世界で最初のペダルタイプのコーラス・エフェクターです。
※画像はCE-1をRolandの許諾の下モデリングしているUNIVERSAL AUDIO社の画像。UNIVERSAL AUDIOほどのハイクオリティなサウンドを提供する会社までもがモデリングするCE-1、おそるべし。

これは今で言うLINE6 のDL4やDM4くらいの大きさで、AC電源、さらにインピーダンス低めとかなり使い勝手の悪いものでした。
それでもギターのアウトプットインピーダンスとのミスマッチが生み出す独特なサウンドは当時のミュージシャンを魅了。
Lee Ritenourなどフュージョンギタリストがこぞって使用し、生産完了となってから久しい現在でもビンテージエフェクター市場で高値で取引される、名機といえます。

http://youtu.be/um414V9ySbc?t=4m50s
4分50秒あたりからのソロ・フレーズがコーラス感満載です。
これもCE-1使用でしょうか?

1979年、CE-1を生み出したRolandはさらにラック式ステレオコーラス “Demension D”を発売。
s-roland_dimd_hq

※このDimension DもUNIVERSAL AUDIOでプラグイン化されています。画像はUA社サイトより。

このステレオコーラスはバケツ・リレー方式の、すなわちBBD素子を使ったコーラスとしてそのアナログサウンドの温かみが珍重されています。

以降、他社からも様々なコーラスが発売され、現在ではEventideやstrymonなど、ハイエンドなコーラスエフェクターも人気です。

コーラスの仕組み

コーラスを語る上で欠かせないのが、さきほどもチョロッと登場した「BBD素子」(Bucket Brigade Device)。
これは1970年代に松下電器(現パナソニック)が開発した半導体で、読んで字のごとく電気の「バケツ・リレー」を行う素子です。
電気がこの素子を通ることで、一段、また一段、と遅れが生じるのです。
ようはバケツリレーに参加する人が多いほど、遅れが生じるのと同じ原理ですね。

当時のBBD素子は大幅に遅れを生じさせることは出来ず、ディレイのような効果は得られませんでした。
しかし少量の遅れで何か出来ないかな...? という発想から生まれたのがコーラスなんです(JC-120ですね)。
(コーラスはBBD素子誕生の賜物!)
遅らせた音の音程をLFO(Low Frequency Oscillator:低周波発振器。よくアナログシンセなんかにこのツマミがついてます。)で周期的に変化させます。
それを原音とミックスすることでコーラス・エフェクトが完成します。

現在ではデジタル・プロセッサー(DSP)を使用して複数のコーラス回路にスピード、位相などの変化を与える、「多層コーラス」も生み出されています。
BBD素子はアナログ回路であったために、どうしても音の劣化が否めませんでした。
しかしデジタル処理を行うことでそういった劣化がほぼ無くなったことで、音質が格段に向上したモデルも多数出ています。
※DSPを用いて、あえてBBD素子を使用したビンテージ・コーラスの音質を再現するモデルも多数出ていますね。

コーラス代表機種

s-CE5
BOSS “Chorus Ensemble CE-5”
メーカー希望小売価格オープンプライス
販売価格 (税込) ¥12,100 (税抜 ¥11,000)
JAN:4957054022815

 


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コーラスの元祖と言えばRoland/BOSSという事が分かったところで、CEシリーズの最新モデルをフィーチャー。
低域にコーラスを深くかけすぎてしまうと、音程の揺れによってサウンド全体が音痴に聞こえてしまうので、このモデルは低域と高域をコントロールする2バンド・フィルターを搭載して、それぞれのかかり具合を調整できます。
CE-1のような温かみを出したい場合はあえて低音にもかかりを多めにしてあげると良いでしょう。

BBD素子使用のアナログ・コーラスです。

s-smallclone
electro harmonix “SMALL CLONE EH4600”
メーカー希望小売価格 (税込) ¥27,280 (税抜 ¥24,800)
販売価格 (税込) ¥23,210 (税抜 ¥21,100)
JAN:4519581006142

 


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なんてったって、NIRVANAのKurt Cobainが使用したことで一躍有名になったペダルです。
BOSS同様アナログ・コーラスなんですが、かかり方が激しくて、自己主張の強いコーラスと言えますね。
筐体も大きいのでボード内での視覚的な自己主張も強い(笑)
コントロールがDEPTHスイッチとRATEノブの2つのみで、シンプルなだけに使いやすいのも人気の理由。

エレハモ本国サイトにはこんな貴重な画像もありました。
s-kurt-cobain
SMALL CLONEを使用するKurtです。

s-detail-tch-1
G-LAB “TIDY CHORUS TCH-1”
メーカー希望小売価格オープンプライス
販売価格 (税込) ¥31,240 (税抜 ¥28,400)
JAN:4514812082131

 


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DSP搭載のデジタルコーラス。
G-LABはポーランドのメーカーで、ラックマウント・エフェクターのクオリティをそのままペダルに移植する、というのがコンセプト。
このTIDY CHORUSもしかりで、音を通しただけで違いが分かるほどのクリアさ。
2機のコーラス回路を搭載しているので、異なる2つのサウンドを作っておいてバッキングとソロで使い分ける、なんてこともOK。
ディレイタイムを変化させることも出来るので、音の厚みをいろいろ変えられます。
(ここでの「ディレイ」がBBD素子によるものなのは、もう分かりますね!)

s-olachorus_01
strymon “Ola Chorus”
メーカー希望小売価格オープンプライス
販売価格 (税込) ¥31,240 (税抜 ¥28,400)
JAN:4514812082131

 

ここ数年、もっとも飛躍したブランドの一つ、strymon。
DAMAGE CONTROLというブランドが2004年に立ち上がり、真空管内蔵の歪みペダルとして一世を風靡。
空間系、モジュレーション系もラインナップしていた創設メンバーは、新たにDSPを用いたデジタルエフェクターを開発し、よりクリアなサウンドを生み出すべくブランドを新たに発足させます。
それがstrymon。
strymonではDAMAGE CONTROLとは逆に空間系、モジュレーション系をメインに、というか歪みペダルナシのラインナップ(2014年3月現在)。
なんといっても、strymonの利点は圧倒的な音の良さとノイズの少なさ。
ミュージシャンの足元で見る機会が増えているのもうなずけます。

このOla Chorusはヴィンテージサウンドも再現可能。
BBD素子で生み出していたコーラス効果をDSPで再現する能力の高さは、さすがstrymonというクオリティーです。

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