【今さら聞けない】エフェクターの基礎知識編 ~フィルター系エフェクター~
記事中に表示価格・販売価格が掲載されている場合、その価格は記事更新時点のものとなります。
フィルター系エフェクター
フィルター・ワウ
フィルターとは
「フィルター」という言葉の意味は、「濾過(ろか)装置」。液体や気体を濾過してゴミを取り除き、綺麗なものにする装置の事です。しかし、音楽的な意味でフィルターという場合は、「濾波装置」と訳すことが出来ます。その音の周波数全体の中で、一定の帯域をカット、ブーストしてサウンドを変化させるのが、フィルターです。
例えばこんな平均的な周波数の音があったとします。
これに、「ローパス・フィルター」(「ロー:低域」を「パス:通過させる」「フィルター)を通すと以下の様な周波数に変化します。
ハイ(高域)部分はフィルターに引っかかって出てこない為、こもったようなサウンドになります。ハイをカットするので、「ハイカット・フィルター」と同義語です。
では逆に、ハイパス・フィルター(「ハイ:高域」を「パス:通過させる」「フィルター」)を通すと...
低域成分がなくなった、古いラジオから流れてくるようなサウンドになります。ローをカットするので、「ローカット・フィルター」と同義語です。
ちなみに、どの周波数帯を通すか可変できる(指定した周波数未満と、それより上をカットする)「バンドパス・フィルター」というものもあります。これとは全く逆のカーブを描く(可変可能な特定の周波数帯のみをカットする)のが「ノッチ・フィルター」です。
ざっと見ただけでもこのようなフィルターの種類があります。レコーディング機器等では一般的ですが、ギター・ベースではあまり聞きなれないかもしれません。
ワウの歴史
一通りフィルターについて理解が出来たところで、ワウの事も知っておきましょう。まず、ワウの効果について、音で聞いてみます。
動画は、CREAMの名曲“White Room”をEric Claptonが後にソロで演奏したもの。イントロや間奏、ギターソロなどいたるところでワウの「ワウワウ」といったサウンドが聞けます。これがワウペダルの効果です。
ワウの歴史は非常に古く、60年代後半にはクラプトンがCREAMで、またジミヘンも使用していたくらいです。
ワウの誕生にはAC30などのアンプで有名なVOXが重要なカギを握っています。以下に簡単な歴史を書きますね。
- 1960年代後半 VOXがAC30等アンプ発売
- VOXを使用していたビートルズが世界的ヒット
- VOXアンプの問い合わせ殺到
- VOXが生産体制強化
(イタリアのJEN社に生産委託、アメリカのオルガンメーカー、Thomas社と代理店契約)
おや? ここまではVOXアンプの単なるサクセスストーリー。ワウとどういった関係が? とお思いでしょう。
VOXアンプには、当時Fenderアンプに搭載されていたMIDコントロールがありませんでした。これはアメリカ市場で戦うにあたって不利だと考えたThomasが、ミッドレンジ・ブースト回路を独自に研究・開発したところから生まれたのが、ワウペダルなのです。
ここからそのワウペダルをめぐって、これまで共闘していた3社間で、バトルが始まります。
こういった経緯を経て、JENがCry Babyの商標登録を取得。(それまでどこも取っていなかった!!) VOX社は、自社の製品であったにもかかわらず、Cry Babyという名は使えなくなりました。
1980年代になると、JENが商標権をJim Dunlopに譲渡したため、今日のJim Dunlop “Cry Baby”が存在する事になりました。
ワウペダルの仕組み
ワウペダルは、あの重い筐体からは想像もつかないほどシンプルな回路です。ワウにとって、ワウにしかない回路こそが「インダクタ」(コイル)です。これによってバンドパスフィルタのような波形を作って、それをペダルで上下に動かすことで効果を生み出しています。
そのためワウはフィルター系のエフェクターとしてカテゴライズされます。
余談ですが、今では裏蓋を開けなくても電池が交換できるよう、電池ボックスがついたワウがほとんどです。しかし十数年前までは上記画像のV846-HWのように、裏蓋を開けないと電池交換できなかったのですよ。
毎回めんどくさかった...
オートワウ/タッチワウ/エンベロープフィルター...
JENが商標登録を取得したのが1972年。MUSITRONICS社が世界初のオートワウ“MU-TRONⅢ”を発表しました。
読んで字のごとく、ワウ効果が自動でかかるエフェクターです。当時は非常に高価でした。オートワウという名で発売されましたが、各社から「タッチワウ」として発売されたり、また同様の効果を狙った「エンベロープフィルター」といったものが発売され、価格も抑えられるようになり、市民権を得たペダルと言えます。
ワウペダル代表機種
フィルターの仕組みから始まった本記事、「フィルター系特集」ですが、やはりスタートはワウから。
VOX V847A
メーカー希望小売価格 (税込) ¥15,400 (税抜 ¥14,000)
販売価格 (税込) ¥12,430 (税抜 ¥11,300)
JAN:4959112051232
先述の通り「最初のワウペダル」として発売されたV846。実際にV846として生産されていた時期はごく短い間だったため、後継機種として発売されたのがV847です。オリジナルの金型を使用し、サウンドの可変範囲を左右するペダルのラック&ピニオン・ギア、サウンドの個性を決定するコイルと、オリジナルを完全に再現しているモデルです。
VOX V846-HW
メーカー希望小売価格 (税込) ¥27,500 (税抜 ¥25,000)
販売価格 (税込) ¥20,790 (税抜 ¥18,900)
JAN:4959112089655
2011年に、オリジナルのV846をトゥルー・バイパス回路、高い技術力を要するタレットボード・ハンド・ワイヤード配線採用など搭載し、復刻されたモデル。単なる復刻版ではなく、現代の技術力を駆使し、ハンドワイヤードで生産されています。
VOX V845
メーカー希望小売価格 (税込) ¥13,200 (税抜 ¥12,000)
販売価格 (税込) ¥8,360 (税抜 ¥7,600)
JAN:4959112071476
V847を踏襲した、VOXワウペダルの低価格版です。銀パネルを黒のちりめん塗装に変更し、重量もかなり軽く仕上げています。最初に購入するワウペダルとしては、定番になっています。
JimDunlop GCB95F Cry Baby
メーカー希望小売価格 (税込) ¥22,000 (税抜 ¥20,000)
販売価格 (税込) ¥16,500 (税抜 ¥15,000)
JAN:0710137023161
エリック・クラプトンの使用により、圧倒的な支持を得た“Cry Baby”。ブランド名は変遷があったものの、現在でも定番中の定番として地位を築いているモデルです。
1966年にThomas社がアメリカで発売したものをそのまま継承して現在も生産されているという点では、最もオリジナルに近いと言えるかもしれません。
JimDunlop CM95 Clyde McCoy Cry Baby Wah Wah
メーカー希望小売価格 (税込) ¥41,800 (税抜 ¥38,000)
販売価格 (税込) ¥31,350 (税抜 ¥28,500)
JAN:0710137077805
VOXのV846が「元祖ワウ」ですが、こちらも同じく「元祖」である事に変わりはありません。史上最初に発売されたワウペダルがV846と名を変える前のモデル名「Clyde McCoy WahWah Pedal」を冠したモデルです。
長年のCryBaby製作のノウハウと改良されたHaloインダクタ(HI01)を採用し、オリジナルに忠実なサウンドを求めて開発されています。