DTX上位モデル新製品「DTX8シリーズ」の実力は?2種類のヘッドタイプをドラム担当者が試してみました!
『ドラムが上手くなる電子ドラム』として人気のヤマハDTXシリーズより、上位機種として「DTX10シリーズ」と「DTX8シリーズ」が新たにラインナップされました。
ヤマハアコースティックドラムと同じ工場で製造された木製シェルの採用や、最新フラグシップ音源「DTX-PROX」の採用(※DTX10シリーズのみ)等の特徴がありますが、中でも最も注目すべきポイントは「ドラマーの好みに合わせて2種類のヘッド素材を選べる」という事です!
2種類のヘッド素材の演奏感については後半にレビューいたしますが、まずは「DTX8シリーズ」の魅力を紹介したいと思います。
アコースティックドラムのシェルをパッドに採用
バーチ材を採用した木胴シェルは、ヤマハを代表するモデル「レコーディングカスタム」を製造しているヤマハドラム工場で成型・塗装しています。カラーは上画像の「REAL WOOD」と、下画像の「BLACK FOREST」の全2色となります。どちらもシンプルで飽きが来なさそうなので、いざ購入時はどちらにするか迷いますね!
ドラム担当 イシバシのコメント
現在世界的なトレンドとなっている、電子ドラムへのアコースティックデザインシェルの採用ですが、ヤマハはかなり後発と言えます。しかしながら「アコースティックドラムを知り尽くしたメーカー」からリリースされたそのパッドは、つくりの良さ・見た目の風格・リアルな演奏感、まさに真打ち登場!といった印象です。
見た目のカッコ良さも人気の理由の1つですが、構造自体もよりリアルな打感に貢献しています。
スティックが触れる事が無いシェルが打感にどう影響しているか?と思われるでしょうが、「金属やプラスチック主体で出来たシェル(筐体)」と「実際のアコースティックドラムと同じ素材・パーツを使用して形成されたシェル」では、同じヘッドを装着した場合でも打感は大きく異なってきます。
電子ドラムの演奏感については、ズバリ「打感と発音とのマッチング」が肝になると考えていますが、ここのバランスもDTX8シリーズは非常によく考えられています。マッチングについては、次の音源モジュールに関する項目でも触れていきたいと思います。
フラグシップモデルと同音質の「DTX-PRO」を音源に採用
DTX8シリーズに搭載の音源モジュール「DTX-PRO」は、フラッグシップモデル「DTX-PROX」と全く同じサウンドエンジンを搭載しています。著名なスタジオで丁寧にサンプリングされた内蔵ドラム音色は、音の立ち上がりから消え際までがフル尺なだけでなく、そのスタジオのみで生まれる本物のアンビエンス成分も収録されています。
是非良質なヘッドホンで聴いてみてください!
また電子ドラムならではサウンドメイク機能「KIT MODIFIER」は、ヤマハが長年の経験で培ったノウハウをAMBIENCE、COMP、EFFECTの3つのノブに凝縮しています。
デジタル機器に不慣れのドラマーさんでも、直感的な操作でナチュラルなアコースティックサウンドから、エンジニアが作り込むライブサウンドまで幅広い表現が可能です。
ドラム担当 イシバシのコメント
試奏した際の第一印象は、月並みな表現となってしまい恐縮ですが「とにかく音が良い!」です。
実際のアコースティックドラム特有の鳴り方がそのまま収録されており、シンバルの「ヒットした瞬間→ピークに達する→徐々に減衰していく」音の様子や、タムを叩いた時にスネアドラムのスナッピーも少し反応する等、各楽器同士の共鳴もリアルに感じられます。
また、スネアドラムとライドシンバルに関しては打点検知機能に対応しており、若干の叩く場所の違いが音に反映される事でより表現力が高まっています。
つまり、スネアドラム打面の中心から少し外れた場所を叩くと、アタックが弱めで「ほわんっ」のような音が強調されるようになり、ライドシンバルのカップ部分に近づく程、高音成分のMIX度合いが増してくる・・・等です。
そして私が考える「電子ドラムにおけるリアルな演奏感」を決める最重要ポイントは、『打感と発音との相性』です。そこには音源の発音方式が深く関係してきます。
どちらの発音方式が優れているかではなく、プレーヤーの好みによる部分が大きいですが、サンプリング方式の電子ドラムは比較的イメージした音への「追従性」が甘いと感じていました。
DTX-PROの発音方式はサンプリングですが、パッドを叩いた時にどう反応するかを突き詰め、楽器の振る舞いがかなり忠実に再現されています。更にそこから、世界各国のプロドラマーによる演奏評価を通してブラッシュアップしていくという手法も、長年アーティストとの連携を大切にしてきたヤマハならではだと思います。
これらの徹底的なモジュールとパッドの合わせ込みが、高い「追従性」を生んでいる理由と感じます。
ドラマーの好みに合わせて2種類のヘッド素材が選べる!
「遂にDTXでもメッシュヘッドが採用になった!」と、今年9月の製品発表当時にはとても話題になりました。
ヤマハ独自の「TCSヘッド(DTXパッド)」も更なる進化を遂げていますが、現在の電子ドラムで最もポピュラーな「メッシュヘッド」。DTXとの相性や如何に・・・!?
TCSヘッドの特徴
従来のDTX上位機種には「TCS(テクスチャード・セルラー・シリコン)ヘッド」を採用していましたが、今回の新シリーズ用として改良されています。
しっかりと叩き込むことができる適度な硬さとリバウンドを生む独自の内部構造、そして横滑りを防ぐ表面加工により、ずっと叩き続けたくなる自然で気持ちの良い打感を生み出します。
スネアとタムはそれぞれ適した打感になるよう設計。叩き込んでも打面が緩むことは無く、いつでも、いつまでも最高の打感で演奏が可能です。さらに、スネアパッドには打点検知機能を搭載。表現力の幅が広がりました。
ドラム担当 イシバシのコメント
多くのプロドラマーからも評価の高いTCSヘッドですが、打面のタッチ感は「跳ねすぎず・跳ねなさすぎず」と非常に良い塩梅で設定されています。
また、表面の細かい凹凸がコーテッドヘッドのような適度な摩擦を生みだし、スティックの横滑りも少なく、吸い付くような叩き心地が気持ち良いです!
それに加えて、今回の進化ポイントは「アコースティックドラムシェルを採用し、金属製リムが付いた」事です。
木胴シェルの採用メリットについては先述いたしましたが、ポイントは「金属リム採用」と考えます。
従来のDTXに採用されているパッドでオープンリムショットをする時は、「パッドのへり」を叩いている感覚が強いのですが、金属リムを採用する事で演奏時の違和感が解消されています。
打感と発音のマッチングについては、(決して遅れている訳ではなく)良い意味で「もっちり」とした感覚が得られ、特にタム類を叩いた時の深く沈み込むような手ごたえは非常にリアルで、「楽には叩かせてくれない感」がかえって好印象です。
メッシュヘッドの特徴
メッシュヘッドにはREMO社製2Plyメッシュを採用。静音性、耐久性、そして打感に優れ、高い反発力による心地よい演奏感を生みます。ヘッドはチューニングが可能で、ドラマー自身が好みに合わせてそれぞれのパッドのテンションをカスタマイズすることができます。スネアパッドは3つのセンサーを搭載し、繊細なスティックワークにも精確に反応します。
ドラム担当 イシバシのコメント
V-Drums採用のメッシュヘッドとほぼ同スペックという事で、ある程度のイメージはついていましたが、打感と発音のマッチングにより「しっかり叩かないとイメージどおりの音にならない」所にリアルさを感じます。それが影響しているからか、TCSヘッド程では無いにせよ良い意味での「もっちり感」もあります。
ただし、メッシュヘッド自体のタッチは(TCSと比べて)若干軽めになりますので例えるならば「鳴らしやすいように良く整備された環境でアコースティックドラムを叩いている」ような印象です。
それぞれの印象を一言でまとめますと、TCSヘッドは『重厚なリアルさ』で、メッシュヘッドは『軽快なリアルさ』といった所でしょうか。どちらにしましても、プレーヤーが選択できる事はとてもありがたい事ですね!
今回レビューした商品の販売価格
TCSヘッド搭載モデル”DTX8K-X"
ブランド | YAMAHA |
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型名 | DTX8K-X |
カラー | BF |
販売価格 | ¥341,000(税込) |
メッシュヘッド搭載モデル”DTX8K-M"
ブランド | YAMAHA |
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型名 | DTX8K-M |
カラー | RW |
販売価格 | ¥286,000(税込) |