21世紀によみがえった伝説の名器
2020年の発表以来、話題騒然となっていましたラディックのドラムペダル、スピードキングの復刻版「L203」。
折からの国内外の情勢で入荷数がたいへん少ない状況が続いておりましたが、ようやく札幌パルコ店に入荷いたしました。
詳細をチェックしたいと思います。
スピードキングとは
ラディック社のドラムペダル「スピードキング」は、1950年代にはすでに現在の形に近いものが生産されていたといわれており、年代ごとに少しづつ改良を加えながら2014年頃まで生産されていました。
レッドツェッペリンのジョンボーナムはじめ多くのレジェンドに愛用され、もちろん現在でも多くのドラマーに愛用され続けている、ドラム機材の歴史における象徴的なアイテムです。
構造もたいへん特徴的です。
まず、本体の2本の支柱の中にスプリングが収められています。
そのため現代の多くのペダルのように外部からスプリングが見えず、すっきりとした美しい外観を誇ります。
また、そのスプリングはフットボードを踏むことで縮み、スプリングが伸びる反発力でビーターをヒットします。
これは現代のペダルとは逆の作用となっているため、独特なアクションが得られます。
(スプリング調整は↑ここで)
さらに、ビーターがフットボードの中心からビーターの中心まで一直線になっているのも特徴。
一般的なペダルは、その構造上ビーターがフットボードの中心からわずかにオフセットされています。
スピードキングは、バスドラムのより中心に近い箇所をヒットすることが可能となっており、このためよりファットでソフトなサウンドが得られることが考えられます。
復刻スピードキング
メーカー | 型名 | 定価(税込) | 販売価格(税込) | ご注文 |
---|---|---|---|---|
Ludwig | L203 | ¥34,100 | ¥29,040 | デジマート |
約6年ぶりの復刻となったスピードキング「L203」を、1970年代のものと比較しながら見ていきましょう。
外観
(左=1970年代、右=復刻版)
復刻版のクローム(銀色)仕上げが美しいですが、全体的に大きな違いは感じられません。
スピードキングの特徴的な美しいシェイプはそのままに甦ったと言っても過言ではないでしょう。
分解
このペダルの魅力のひとつでもある、簡単に3分割できる構造もそのまま。
(左=1970年代、右=復刻版)
駆動部
(左=復刻版、右=1970年代)
特徴的な金属プレート(コネクティングリンク)での駆動方式。
リンク部を支える部分の形状が微妙に違います。
この部分の形状は旧タイプでも何パターンかあるようです。
また、復刻版はコネクティグリンクの強度がアップされたそうです。
たしかに、当時はコネクティングリンクの破損に悩まされた、という先輩ドラマーさん達の話を耳にしたことがありますので、これは朗報ですね。
フットボード
(左=1970年代、右=復刻版)
全体的な形状に大きな変化はありません。
フットボード表面の刻印と、裏面のリブの形状は年代により変化しており、スピードキングの年代を見分けるポイントにもなっています。
前方より
(左=復刻版、右=1970年代)
一瞬、どちらがどちらか見間違う程です。
復刻版はビーターを固定するボルトが角頭ボルトになりました。
本体側面
(左=1970年代、右=復刻版)
「シーリングキャップ」と言われる、ベアリングを収納している部分の蓋の刻印に変化が見られます。
内部の構造がどう変化ているのか、分解して確かめてみたいところですが今回はやめておきます。
カカト部
(左=1970年代、右=復刻版)
外観からもその構造が変わっているのがわかりますが、復刻版のカカト部にはベアリングが内蔵されているそうで、スムーズさと耐久性アップが期待できます。
旧型はこの部分が摩耗してガタツキが発生すると修理が困難でした。
なお、スピードキングの特徴のひとつである、回転するカカト部の構造もそのまま。
ただしカカト部の固定ネジは角頭タイプに変更されています。
フープ固定部
復刻版のバスドラムフープに接触する部分にはラバーが貼られています。
フープクランプもキャスト構造になり、肉厚でしっかりクランプします。
各種固定ネジ
スピードキングユーザーの大きな悩み、それは各部のネジの互換性でした。
復刻版はミリサイズの規格に変更され、紛失時等には補充がしやすくなりました。
しかし、大変残念ながら旧タイプとは互換性はありませんでした。
旧タイプのネジ類は、現在入手が難しい状況となっています。
旧タイプをご愛用の方はご注意ください!
付属品
復刻版にはチューニングキーホルダーが付きました。
分解組み立てにチューニングキーが必要になったので、これは嬉しい変化です!
長方形のものはバスドラムフープをガードするゴムシート。
ではこの小さいゴム部品は…
スピードキング使用上の問題
スピードキングを現代のバスドラムに装着すると、バスドラムフープへの噛みこみが深いため、駆動部がバスドラムヘッドに接触してしまいます。
そのため、バスドラムへの噛みこみの幅を得るために、スピードキングを使用するためには、「ワリバシ」が欠かせないともいわれていました。(あまり格好のよいものではありませんね)
さきほどの小さいゴム部品を装着することで、このバスドラムフープの噛みこみ部分の幅をとることができ、現代のバスドラムでもそのまま使用可能になりました。
なおこれまた残念ながらこの部品は、凸凹の位置が合わず、旧型のスピードキングには正しく装着が出来ませんでした。
互換性は…
復刻版と70年代製のフットボードを入れ替えてみました。
70年代のリンクプレートは復刻版のフットボードに嵌まらず、現状では使用はできませんでした。(その逆は可)
さまざまな年式のものがあるので一概には言えませんが、復刻版と旧タイプの互換性は基本的に厳しいのかもしれません。
踏んでみました
復刻版を踏んでみました。
1970年のものと比較して、また2010年代のものと比較しても、「元気がよい」と表現したくなるような、レスポンスが良い印象に驚きました。
よく、スピードキングのアクションを評して「吸いつくような」と表現されることがありますが、まさにその感覚を味わうことができます。
ボンゾや、リンゴが当時使っていた新品のスピードキングもこんな感触だったのでしょうか。
そう考えると感慨深いものがあります。
もちろん、太く柔らかいサウンドはそのまま。
そしてここは好みが分かれるかもしれませんが、駆動部のノイズも感じられませんでした。(当時のあるアルバムには、駆動部のキュッ、キュッというノイズが収録されてしまっているのは有名な逸話です)
フットボードの刻印は深く刻まれているように感じられ、少し引っかかるような感覚ですが、これは靴のチョイスや使い込むことで対応可能でしょう。
カカト部や各部のガタツキ感も少なく、精度の高さも感じられます。
旧タイプのユーザーさんにはもちろんおすすめですが、スピードキングを知らない若い世代のドラマーさんにもぜひトライしていただき、表現力にあふれたバスドラムサウンドをモノにしていただきたいと思わずにはいられない、特別なペダルの登場です。
※記事中の旧型のスピードキングの年代は推測です。
また、一部加工がされており完全にオリジナルではありません。
またこの旧型は販売しておりません。
メーカー | 型名 | 定価(税込) | 販売価格(税込) | ご注文 |
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Ludwig | L203 | ¥34,100 | ¥29,040 | デジマート |
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