みなさんこんにちは!前回に続いて「ドラムビギナーズ倶楽部 スネアドラムの話」です。今回も「シェルの材質」にスポットを当ててた~っぷりとお話していきます。ぜひ スネア選び の参考にしていただければと思います。
前回のおさらい:材質は主に3種類
ドラムの素材は大きく分けて3種類です。特徴を簡単にまとめますと、
- メタルシェル(金属胴) → 明るい・シャープ・きらびやか
- ウッドシェル(木胴) → あたたかい・ふくよか
- 特殊素材 / 混合シェル → それぞれ個性的
今回はいよいよ最後の特殊シェルについてです。昔からお馴染みの材質から現代ならではの技術を投入したモデルまで、、、個性豊かなスネア達を紹介していきます。それではさっそく!
特殊素材
アクリル:ルックスにだまされてはいけない、そのソリッドなサウンド
アクリルシェルの魅力といえば、まずはそのルックスでしょう。照明に映えるそのフィニッシュはクリア色だけでなく、イエロー、オレンジ、レッド、ブルーなどメーカーによって結構豊富です。肝心の音は案外ウォームではっきり、そしてまとまった音がします。
アクリルシェルの代表的なモデル。
Pearl FCRB1450 "Crystal Beat -- クリスタルビート"
メーカー希望小売価格:(税抜)¥65,000 (税込 ¥71,500)
販売価格:(税抜)¥55,250 (税込 ¥60,775)
サイズ:14×5.0
パールのアクリルスネアはそのお手頃な値段もあり、最近のアクリルブームの火付け役となった存在とも言えます。特徴はつなぎ目がまったくない「シームレス構造」とシェルにあける穴を最低限にした「フリーフローティング構造」。とても豊かなシェル鳴りが期待できます!
Ludwig LS901V "Vistalite -- ヴィスタライト"
メーカー希望小売価格:(税抜)¥85,000 (税込 ¥93,500)
販売価格:(税抜)¥72,300 (税込 ¥79,530)
サイズ:14×5.0
70年代からアクリルドラムを作り続けているラディック。同じくとてもまとまりのいい音がします。ラディックのアクリルといえばやっぱりドラムセットが有名ですね。
Led ZeppelinのJohn Bonhamさんをイメージしたキット。当時の演奏を聴いてみましょう。
なお、ここでプレーしているスネアはメタルスネアで紹介しました、LM402です。
Canopus AC-1465
メーカー希望小売価格:(税抜)¥90,000 (税込 ¥99,000)
販売価格:(税抜)¥90,000 (税込 ¥99,000)
サイズ:14×6.5
アクリルドラムの中でもサウンドクオリティをとことん追求したのが国産メーカーのカノウプス。明確なアタック音はそのままにウッドスネアのようなウォームな響きにこだわった1台です。カノウプスはアクリルのストライプフィニッシュなどもやっています。
アクリルはやっぱりドラムセットがかっこいい
アクリルはやっぱりセットで組んだ時が一番かっこいいです!ドラムセットは最近だと X Japan の Yoshikiさん、train のScott Underwoodさん、そして元Dream TheaterのMike Portnoyさんも一時期ステージで叩いていましたね。
さて、ステージで映えるのがアクリルドラムの魅力。さらに遊んじゃうとこんなことができちゃいます。
HalestormというバンドのArejay Haleさんのパフォーマンスでした。パールのクリスタルビートにドラムパフォーマンス用LEDライト、drumliteをつけたパフォーマンスでした。こんだけ光ると、やっぱりサングラスは必須なのでしょうか。。
(こちらの動画のスネアはアクリルではないのでご注意ください)
カーボン+ウッド:とにかくパワー重視
樹脂といえばカーボン材を連想する人もたくさんいるのではないでしょうか?とにかくパワフルなサウンドが代名詞のカーボン材、これを使ったパワー重視ドラムは90年代からありましたが、最近はカーボンにウッドを組み合わせ、よりあたたかみのあるサウンドを目指していることが多いです。
カーボン素材を使った代表的なモデル。
Pearl CMN1455S/B (Carbon Ply -- カーボンプライ)
メーカー希望小売価格:(税抜)¥93,000 (税込 ¥102,300)
販売価格:(税抜)¥79,100 (税込 ¥87,010)
サイズ:14×5.5
6ply (6枚の合板) メイプルの内側と外側にカーボンを貼り付けた「カーボンプライ」と呼ばれるシェル。ダイキャストフープ搭載ということもあり、とても芯が太くパワー感(音圧) 満載のスネアです。このスネアが生きる場所、大きな音のロックです!
SIAM SHADE Heart of Rock 7 LIVE DVD PV
Siam Shade/Bill Zeichenの淳士さんでした。かっこいいバンドのパフォーマンスに思わず目を奪われてしまいますよね。Siam Shadeのサウンドを根底から支える淳士さんの太いスネアサウンドはこんな強力な素材が支えていたんですね!
なおカーボンプライは他にもDIR EN GREYのShinyaさんも愛用しています。
100%樹脂:近代技術の結晶
Pearl HEP1450 "Hybrid Exotic シリーズ Vectorcast -- ヴェクターキャスト"
メーカー希望小売価格:(税抜)¥84,000 (税込 ¥92,400)
販売価格:(税抜)¥71,400 (税込 ¥78,540)
サイズ:14×5.0
「新しい素材」、「新しいドラムの可能性」を常に追求し続けるパール楽器から2014年に発表された素材がコレ。"フィラメント" という樹脂をXの字を書くように格子状に編み上げて作ったシェルを使用しています。中低域に特徴があるサウンドです。樹脂なので強度もバツグン!
メタルの"きらびやかさ"とウッドの"あたたかみ"の中間といったところでしょうか。6.5インチのありますが、こちらはさらに低域が出ているサウンドです。
最後にもうひとつ、こちらのスネアには「緩まないテンションボルト」として話題をさらった "スピンタイト・テンションロッド" を標準搭載しています。
こんなところにもまた「新しい技術、新しいドラム」を意識させる工夫が。。
(スピンタイト・テンションロッドには専用のチューニングキーを使用します)
混合シェル(ウッド+金属):どっちか決められない人にはコレ
ウッドシェルの温かみ、メタルシェルのエッジ、両方の良さを組み合わせたスネアがあります。
Pearl HEK1450 "Hybrid Exotic シリーズ Kapur -- カブール"
メーカー希望小売価格:(税抜)¥68,000 (税込 ¥74,800)
販売価格:(税抜)¥57,800 (税込 ¥63,580)
サイズ:14×5.0
同じくパールのスネア。 "カプール" というウッドシェルの内側にファイバーグラスという樹脂を巻いたモデルです。先ほどの100%樹脂のVectorcastスネアと比べてみると面白いと思います。
いかがでしょう?同じ14×5インチですが、こっちの方が乾いた、少しあたたかめなサウンドになりますね?ちなみにこちらのスネアも "スピンタイト・テンションロッド" を搭載しています。
しかし樹脂系のスネアってダークな色が多いですね。。少し明るい色のスネアを2台紹介します。
GMS RV1455NSS "Revolution -- レヴォルーション"
27年以上の歴史を持つアメリカのニューヨークの老舗ブランド、GMS。このスネアの特徴はウッドシェルの内側に金属の粉末を吹きかけたシェルです。
右がブラス材、左はスチール材
「ウッドのあたたかさ」と「メタルの音量と明るさ」兼ね備えたハイブリッドスネア。両方とも捨てがたい、という人にピッタリな1台です。またGMSは全般的に音が太く、音圧のあるサウンドが特徴です。
Drum Clinic - Nathaniel Townsley - GMS Drum Co. (Part 1)
ナサニエル・タウンスレー (Nathaniel Townsley) さんでした。実にソリッドな音がするタイコをステキな笑顔と絶妙なテクニックでコントロールしきる、すばらしいパフォーマンスでしたね。
DW Collector's Series EG1405SD "Edge™ Snare -- エッジスネア"
メーカー希望小売価格:(税抜)¥221,000~ (税込 ¥243,100~)
販売価格:(税抜)¥187,900~ (税込 ¥206,690~)
サイズ:14×5.0
最後はメタルシェルの間にウッドシェルを文字通り挟んだサンドイッチシェルです。ウッドスネアでは到底実現できない、トンデモない音量とバツグンの音の抜けが特徴のスネアです。聴いてみましょう。
Chad Szeliga - DW Collector's Series Edge™ Snare Drum
Breaking Benjamin の チャド・スゼリガ (Chad Szeliga) さんでした。極限までシンプルなキットから叩き出すそのパワーとテクニックに開いた口がふさがりませんが、、とにかくこのスネアのタイトさ、ヌケの良さは動画からも伝わってきますね!
チャドさんは5インチよりさらに深いスネアを使っていますね。DWは12インチから14インチまで様々な深さで展開しています。この Edge™スネアは他にも Rush のニール・パートさんなども使っていますが、日本のDWユーザーといえばこの人。音を聴いてみましょう。
Dragon Ashの桜井誠さんでした。生の音を紹介できないのが残念ですが、大きなノリから細やかに刻み込むリズムまで、バンドの実に多彩な曲作りをさらに高めるすばらしい演奏、そしてスネアドラムですね!
さて、スネアのお話はこの記事をもって最後になりますが、ここでひとつ紹介しきれなかった全く違うジャンルのスネアドラムについて紹介します。
マーチング用スネア:別世界のスネアドラム
マーチングバンドの主役となる楽器、それがマーチング・スネアドラムです。これらのスネアは「野外や大きな会場でマイクを使わずに生の音だけではっきり聴こえる」ことを念頭に設計されています。
マーチングスネアの代表的なモデル
YAMAHA MS-9314WH "SFZシリーズ"
メーカー希望小売価格:(税抜)¥111,000 (税込 ¥122,100)
販売価格:(税抜)¥111,000 (税込 ¥122,100)
サイズ:14×12.0
メイプルシェルに対して、樹脂が織り交ぜられているヘッドをとても高いテンション(張力) で張り、残響音をカットします。頑丈な設計、そして音量をかせぐための深いシェルが特徴です。プラスチック製のヘッドでは耐え切れないほどの高いテンションでプレーするため、ドラムビギナーズ倶楽部 第三回で説明した「シェルが深い→反応がゆったりとする」というセオリーはマーチングスネアにはあてはまりません。
ではマーチングスネアの音を聴いてみましょう。
数多くあるマーチングバンド(ドラムコー)の中でも長年トップに君臨する「Blue Devils」の演奏でした。人間業とは思えない、機械のような正確な動きでしたね!音も今まで聴いたスネアものとは随分違うと思います。この動画だけでは分かりにくいですが、実は音量がもの凄いものがあるんです!
最後に
さて4回続いたスネアの特集、ここまで読んでいただきありがとうございました!
ここまで覚えたら、普通の先輩ドラマーには負けないくらいの知識をつけたことになります。あとは、いっぱい叩いて、体で覚えるのみ!
スネアはドラムセットの中では1台のドラムに過ぎないのですが、リズムの中心として、最も耳に残る楽器の一つです。そしてサイズ、形、そして材質の違いで色々な音があることが分かりましたね。ドラムセットの顔となるサウンドなので、ドラマーがこだわるのもよ~く分かりますよね!
それでは次回からはシンバルのお話に入ります。お楽しみに。それでは!
おまけ、、アコースティックドラムはチューニングが面白い
ここまではパーツごとの違いについてお話をしましたが、最後に最も手軽に音を調整する方法、チューニング (調整) についてちょっとだけお話します。
このとても深いサイズ(14×8インチ) のスネアを聴いてみましょう。
前半、中盤、後半で全然音が違いますよね?動画では3通りのチューニングでプレーしています。
- 最初 -- ローピッチ
- 1分目以降 -- メディアムピッチ
- 2分20秒目以降 -- ハイピッチ
ひとつのドラムでも、チューニングの仕方でこれだけ音が変わるのがアコースティックドラムの魅力であり奥深さでもあります。今まで紹介したきたスペックの違いとチューニング。これを組み合わせたら、もう怖いものは何もないですね。
チューニングの仕方については、こちらの記事 で紹介していますので是非チェックしてみてくださいね。
こちらの記事もどうぞ:スネアドラムについて知ろう!
こちらの記事もどうぞ:スネアは素材で音が変わる。あらためてメタルスネアの音をチェック!
こちらの記事もどうぞ:スネアは素材で音が変わる。ウォームなサウンドが持ち味のウッドシェル達。
この記事を書いた人:
開発のイシイ
朝から夜までドラムのことばかり考えている商品担当の人。でも実はかなりのアメフト (NFL) 好き。最近子供とウクレレを始めました。好きなドラマーはニール・パート。