こんにちは!開発のイシイです。
ドラムビギナーズ倶楽部第一回、第二回ではドラムセットとは何か?について簡単に紹介をしていきました。今回はドラムセットの主役、みんながあこがれるスネアドラムスネアドラム(以下スネア)についてドラムを始めたばかりの初心者の方にとって分かりやすく、3回に分けて説明します。ぜひ スネア選び の参考にしていただければと思います。
スネアとは
スネアはドラムセットの主役。一番目立つ音で、バスドラと並んでリズムの中心となる楽器です。「ドッ、タッ、ドッ、タッ」というリズムよく聞きますよね?その中の「タッ」という音がスネアなんです。ドラムを知らなくても誰でも聴こえる音、みんなが手拍子を合わせる音、それがスネアです。
スネアの歴史
スネアの歴史は中世の時代(17世紀あたり)にさかのぼります。当時は「テイバー(Tabor)」と呼ばれており、片手で演奏する太鼓でした。笛と合わせて軍隊で使われ始めたのが最初と言われています。当時ヘッド(叩くところ)は皮製で、紐を使って胴に固定していました。昔の戦争の映画とかで見る鼓笛隊で叩いているやつですね。20世紀に入ってからは金属パーツやプラスチック製のヘッドが発明され、現在の形に行き着きました。
パーツ紹介
音を聴く前にスネアのパーツについて知っておきましょう。
表
裏
"タッ" という音はスナッピーのおかげ
スネアは他のドラムと違って裏に「スナッピー」が付いています。「スナッピー」とはコイル状に細かく巻いた鉄製の「響き線」のことで通常20本ついています。
このスナッピーがついていることで叩くと裏のスナッピーも反応し、少し歪んだ "タッ" という音がします。(スナッピーがないとちょっと間の抜けた"ポン"という音になってしまいます)
スナッピーは「ストレーナー」というスイッチを使って裏のヘッドにつけたり(オン)、離したり(オフ) することができます。
- 左 スナッピーオン → ヘッドについている状態("タッ")
- 右 スナッピーオフ → ヘッドから離れている状態("ポン")
スネアってそれぞれ何が違うの?
「スネアってたくさんあるみたいだけど、いったい何か違うの?」
それはズバリ、音!ここからは音が変わるいくつかのポイントを紹介します。大きく分けて3つでーす。
- シェル(胴の形・材質)
- ヘッド(叩く場所)
- ヘッドを固定するアイテム(フープ・テンション数)
なんだかピンとこないぞ、、、と思う人、大丈夫!ここから一つづつ分かりやすく説明していきます!
その1:シェル(形・材質)
シェルの深さ(音の幅・反応の速さ)
まずこのスネアの音を聴いてみてください。
とても歯切れがいい音ですねー。スナッピーのザラっとした残響音もほどよく出ててとても気持ちいい音です。これは標準的な14×5インチ(口径×深さ)(約36×13cm)のスネアです。14×5インチと14×5.5インチはとてもよく使われるサイズです。ドラムはアメリカで発展したためサイズはインチ表記なんです。
次にこのスネアを聴いてみましょう。
"タッ" ではなく "タウン~" 、とちょっと余韻が聴こえるのが分かりますか? こっちの方が少し深い14×6.5インチというサイズです。シェルが1.5インチ(4cm弱) 深いだけで、低音がもっと聴こえて、音に深みがでるんです。これ、案外知られてないんですよねー
こうした6.5以上深いスネアは「深胴」と呼ばれます。実際に生で聴くと全然違いますよー。今度は逆にシェルが薄いスネアです。
音の減衰が早く、とても歯切れがいい音でしたね。表ヘッドと裏ヘッドの距離がとても短いので、叩いてから返ってくる音の反応がとても早いです。これは14×3.5インチのスネア。4インチよりシェルが浅いスネアを「ピッコロスネア」と呼びます。
最初の2台(5.0~6.5インチ)はどんなジャンルでも使えるスネアですが、ピッコロスネアは早い曲とか、この独特の歯切れの良さが求められる曲で使われます。シェルの深さによって音の深み(低域の鳴り)や反応の速さが変わってくるのが、何となく分かってきました?
「ん~、少しは違うけど、そんなに違うかー?」と思ったあなた!そうなんです!ドラムはやっぱり「生の音」を聴かないと分からないんです。お店で実際に叩いてみてくださいね。生で聴くと全然違いますよ~。
シェルの口径(音程)
次は口径の違いについて。通常スネアは14インチなんですが最近、少し小さいサイズのスネアが使われることも増えてきました。ドラムが小さくなると音がどう変わるんでしょう?この3台のスネアを聴き比べてみましょう。
14インチ(レギュラーサイズ)
13インチ(-1インチ)
12インチ(-2インチ)
ね?、音がどんどん高くなっていくのが分かりますか? こうして口径が小さくなると音がどんどん高くなるんです。
13インチ以下のスネアは「小口径スネア」と呼ばれており、2番目のスネアとしてドラムセットの横の方にセットされることが多いです。(2台目のスネアのことを「サイドスネア」とも言います)曲によって使い分けたり、1曲の中でも2台の音の違うスネアを使ったりします。サイズは13インチ、または12インチが人気ですが、中には8インチのもあります。
最近だとUVERworldの真太郎さんや9mm Parabellum Bulletのかみじょうちひろさんもサイドスネアを使っていますね。
では小口径スネアの演奏を2つ聴いてみましょう。
UVERworld 『KINJITO/BABY BORN & GO』
UVERworldの真太郎さんでした。最初に叩いているの左側のスネアが小口径スネアですね。独特の "スコッ" という音がしてますね。そのあと、コーラスに入って1:05くらいからたたき始める真ん中のスネアが普通サイズのスネアで、もう少し "スタン!" って音がしますね。
ギタリスト、ジェフ・ベックさんのバンドでプレーしている、ヴィニー・カリウタさんでした。48秒くらいから左手で叩き始めるのがサイドスネアの12インチスネアです。この演奏も音程が高いだけでなく、音が出てはすぐに消える音でスピード感溢れるこの曲に合ってて気持ちいいですね。
まとめ! シェルサイズと音の関係
今までのお話をまとめてみるとこうなります。
「エッジ」は音の反応を決める接点
シェルの端は少しとがっています。
ここは「ベアリングエッジ」といってヘッドが接触する部分。角度によって音の反応が変わります。
- エッジが鋭い -- 反応がよく、サスティーンは短め
- エッジが緩やか -- 反応はゆるやか、音が太く、まろやか
実はここの角度はとても繊細で、均等に削れているか、とかシェルの材質との相性はどうか、といったことが音に影響するんです。
あと、シェルの材質もとても大切。これについては次回以降詳しく紹介していくので、お楽しみに。
その2:ヘッド
ヘッドは自分で交換をすることができるので、一番簡単に音を変えることができるアイテムです。各メーカーから色々な種類のヘッドが出ています。アタックが効いた音、まとまった音、シェルの自然な鳴りを生かした音、などなどたくさんあります。
「スネア持っているけど、なんだか出したい音じゃない、、」と思っているキミ!一度、厚さが違うヘッドに変えてみるといいかも?
ドラムヘッドの交換方法については別の記事で紹介しているので、チェックしてみてくださいね。
その3:ヘッドを固定しているアイテム(フープ・テンション数)
ヘッドを固定するのが「フープ」
「フープ」とはヘッドをシェルに固定するための輪の形をしたアイテムです。実はこれも音に影響します。
プレスフープ
この写真、指輪じゃないですよ。フープです、ドラムフープでーす。
これは最も一般的なフープで金属を曲げて成型します。
特徴:
- ドラムとヘッドの自然な鳴りを生かした、心地よい開放的なサウンド
- 高域から低域まで幅広く鳴るので、音が明るく聴こえる
ダイキャストフープ
溶かした金属を鋳型(いがた)に流し込んで作ります。
特徴
- プレスフープ比べると硬く重いことが多い
- 音が引き締まり、塊となって出てくる
- 音量や音圧("パワー感"と言ったりもします)が増す傾向にある
ウッドフープ
こちらはちょっと面白い、木製(主にメイプル材)のフープです。
特徴:
- 温かみがあるサウンド
- 丸みを帯びた太いサウンド
- 金属ほど耐久性がないため、ハードヒットには向かない
それではウッドフープスネアの演奏を聴いてみましょう。
ドラム界のレジェンド、スティーブ・ガッドさんでした。とても心地よい、やわらかい音ですね。
「テンション数」とは?
「テンション数」とは「1枚のヘッドを何本のネジで締めるのか」を表します。ヘッドは「テンションボルト」という専用のネジと「チューニングキー」というアイテムを使って調整します。
テンションボルト(左)・チューニングキー(右)
一般的な14インチのスネアは10本または8本のテンションボルトで固定します。これを「10テンション」または「8テンション」と呼びます。(13、12インチは8本以下です)
10テンション
8テンション
「ネジの2本多いくらいでそんなに音変わるの?」と思う人もいると思います。はい、変わるんです!簡単に言うとこういうことです。
- 10テンション -- 引き締まった音(音が引き締まる)
- 8テンション -- 開放的な音(ドラム全体の鳴りを生かす)
ただこれはあくまでも大まかな傾向で、シェルの形や材質も影響するので一概には言えません。実際には生の音を聴いて確かめてみてくださいね!
おまけ:チューニング
最後にテンションボルトを締めたり、緩めたりしてヘッドをシェルに固定し、音の調整をすることを「チューニング」と言います。締めると音は高くなり、ゆるく締めると音は低くなります。
チューニングの仕方については別の記事で紹介しているので、チェックしてみてくださいね。
おしまい
さーて、こんだけ細かい話をしましたが、実は「フープ」や「テンション数」の話って、ドラムを長い間やっている人でも案外知らなかったりするんです。でもスネアドラムって大きく分けると結局2つに分かれるんですね。
- 引き締まった音 → "タシッ"、"ズバッ" 、 "スコッ"
- よく鳴り響く音 → "ターン" 、 "カーン" 、"スパーン"
最後はここに行き着きます。
"タシッ!"と引き締まった音はいいのか、"カーン!"と広がりがある音がいいのか、これはみんなそれぞれ好みが分かれるところで、演奏している曲にもよるんです。正解はないので、色々なアコースティックドラムの音を生で聴いて、叩いて、自分が気に入ったコレ!と思う楽器を選んでくださいね。
さて、次の第4回、第5回はスネアのシェルの材質についてです。実際の演奏をたくさん聴きながらお話をするので、楽しみにしててください!
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この記事を書いた人:
開発のイシイ
朝から夜までドラムのことばかり考えている商品担当の人。でも実はかなりのアメフト (NFL) 好き。最近子供とウクレレを始めました。好きなドラマーはニール・パート。