札幌パルコ店のドラム担当、タムタム・トリヅカこと鳥塚です。
ギタリストやベーシストは、演奏前、演奏中にチューニングをしていますね。ペグを手早く回し、曲中でも気づいたら直したりしています。手早く行っている様子は演奏前の精神統一のようでカッコ良く見えます。ドラムも同様に、ヘッドの張りの強さを調整しドラムの音をつくる、チューニングが必要です。
ドラムのチューニングとは
ドラムはギター等と違う点として、音の基準が厳密でない事と、メーターを使ってチューニングをする事が難しいことがあげられます。(一部、ドラムのチューニングメーターも市販されていますが、ギター等とは少々使い方が違います)
そのため、ドラムのチューニングは、「勘」や「経験」で行うとされてきた面があります。
ドラムも音程でチューニング
しかし、人間の感覚はあいまいなものです。体調、気候、部屋鳴り等で、同じ音のはずが違って聞こえる事もあるでしょう。
そこで、ドラムにおいても音程をもとにチューニングすれば、いつでも同じチューニングを再現できます。基準となる音を作ることが出来たら、あとは場所や共演者、そして曲に合せて微調整すれば良いわけです。
基準の音
さてここで重要なのが、そのドラムの「基準の音」です。「固有の音」と言っても良いかもしれません。
ドラムを見回して見ても…
どこにも書いていません。説明にも…書いてないですねぇ。
そうです、これはどこにも書いていません。
でも、見つける方法は簡単です。
基準の音を探る
スネアドラムをを横倒しにして、シェルを叩いてみます。
スティックで叩くと「スティックの音程」が聞こえてしまうので、マレットや、ひとさし指の関節の骨のあたりで軽く叩いてみます。
表裏のヘッドができるだけ鳴らないようにして、ラグ、空気穴や、ストレイナースイッチ等のパーツが付いていないあたりを、
「コツ、コツ、コツ」
と叩きます。強く叩く必要はありません。はじくように、よく響かせるような感覚です。最初は難しいですが、ずっと聞いていると、音程が聞こえてきます。
音程を覚えておこう
音程が聞こえてきたら、
キーボードや、スマートフォンのキーボードのアプリ等で音程を探して、メモしておきます。
一度緩めてから
部分的に緩んでいる状態から直すのは、どこが緩んでいるかを判別するのが難しい場合もあります。
そこで、いったんある程度まで緩めてからやり直す方法をご説明します。この方法に慣れてくれば、途中から直すことも簡単に出来ます。
緩める際には、速く回せるチューニングキーも便利です。
フープからボルトとワッシャーが離れて、カチャカチャ音がするくらいまで緩めます。(チューニングを直すだけの場合は、テンションボルトを抜かなても良いです。)
まずは指で締めます
(フープに力がかかり始めるところが目安です。)
この時、ヘッドがシェルに対して片寄らないよう、十分注意しながら、
対角線上で対になった2本を同時に締めていきます。
指で締めるのはここまで
テンションボルトがフープに密着し、ワッシャーがぎりぎり動かなくなるような状態です。全てのボルトがこの状態になるまで指で締めていきます。
(わずかな誤差でテンションボルトがフープにの穴に干渉している場合や、一部のメーカーで採用されているラグ内にテンションボルトのゆるみ止めがある等、指で締めることが難しいケースは珍しいことではありません。)
チューニングキーで締めていきます
チューニングキーは二つ使います。
偏りが出ないようにすることと、時間短縮のためでもあります。対角線上の対になった二つのボルトを、初めは180度づつ締めていきます。テンションボルトの数にもよりますが、以下の図の例のように十字を切るような感じの順番が良いでしょう。
テンションボルトにより、手応えが違う場合がありますが、とりあえずは気にせずに180度づつ締めていきます。ドラムやヘッドの種類によって違いますが、数回繰り返す必要があります。
ある程度張りの強さが出てきて、ヘッド中央を指で押しても沈むか沈まないか位の強さまで締めていきます。この位の張りの強さまで締めると、チューニングキーを回すときにはかなり手応えもでてきます。
何事も裏が大切
打面をある程度まで締めたら、スネアサイド(裏側)も同様に締めていきます。スネアサイドヘッドは大変薄いので、つめや、とがった物などがぶつかると、簡単にへこんでしまいます。十分気をつけて作業します。
下の写真のように、スナッピーが装着してあるあたりのエッジ(胴の端)は、スナッピーの反応を良くする為にえぐってあります。この部分をスネアベッドと呼びます。
スネアサイドヘッドのスネアベッド周辺はシワが寄りやすいこともあります。締めていけばシワはなくなるので、気にせずに締めていきます。
打面ヘッドとは種類が違うので感触は違いますが、スネアサイドヘッドも押してみたときに沈むか沈まないか位まで締めていきます。
各テンションボルト毎の音程を確認
上下ともある程度まで締まったら、ヘッドの周辺部、テンションボルトから2~3センチ位の所を軽く叩いて音程を聴きます。その際に、ヘッドの中心部に軽く指を置いて余分な響きを抑え、音程を聞き取りやすくします。
音程を聞き取りやすくするため指で叩くのも良いでしょう。
最初に締める際にそろえて締めているので、この時点ではほぼ同じ音程になっているはずですが、ばらつきがある場合は微調整します。
テンションボルトごとの音程を調整する場合は45度かそれ以下位、少しずつ回します。
他の箇所に比べて高く聞こえる場合は緩めて、低く聞こえる場合は締めて、音を聴きながら注意深く作業します。この作業はスネアサイドヘッドも同様に行います。
指でスナッピーを持ち上げて、スネアサイドヘッドを指で軽く叩いて音程を聴きます。裏面(スネアサイドヘッド)では、前述のスネアベッド周辺の4本のボルト周辺は音程が低く聞こえます。その部分の音程はこの時点では低いままで構いません。
それ以外のテンションボルト周辺の音は、打面同様に揃えていきます。
音程を調整
各テンションボルトの音が揃ったら、ヘッドそのものの音程を調整します。先ほど記録した先ほど記録した「このドラムの基準の音程」に合せてみます。ヘッドの中央を指で軽く叩き、音程を聴いてみます。
その際に、反対側のヘッドの音が鳴ってしまわないように、ひざの上に抱えたり、手のひらでおさえたりします。
音程を調整する場合も、対角線上の対になったボルトを二本同時に締めていきます。この際も、少しずつ(45度以下位)で、必ず音の変化を聴きながらチューニングキーを回します。
スネアサイドヘッドも同様に、指で軽く叩き、音程を聞き取ります。スナッピーを指で持ち上げて、音程を聞き取りやすくします。
打面ヘッドとはヘッドの種類が違うので、聞こえ方が違いますが、音程は聞こえます。スネアサイドヘッドも打面と同様に基準の音程に調整します。
ここまで行うと、上下ヘッドが同じ音程に揃います。余韻の音程がぶれず、素直に伸びるような状態で、余韻も長すぎず短すぎない状態になっていると思います。
動画は、シェルと、上下ヘッドの音程をだいたい揃えた状態です。
上下ヘッドの関係
上下の音程をそろえた時点で求める音になっている場合もありますが、多くの場合はここから調整が必要です。
打面ヘッドとスネアサイドヘッドのバランスにより、音色を作ることができます。下図に打面とスネアサイドヘッドの関係を記しました。
この関係を考えながら、先ほどの基準の音から調節していきます。いずれも、調整する際はテンションボルトを少しずつ動かし、音を聴きながら作業を進めることが重要です。
スナッピーの張り具合
スナッピーをオンオフする、ストレイナースイッチの調節ノブを回すことで、スナッピーの調節ができます。
基準としては、スナッピーをOFFにしたとき、スネアドラムを叩いた音の長さ(ポーン、という感じでしょうか)と、スナッピーをONにした時の音の長さが同じくらいがひとつの目安です。
スナッピー調節のコツ
スナッピーを強めに締めて、余韻の極端に短い音にしてしまっているケースを見かけます。
余韻が短い(無い)ので演奏しやすく感じるかもしれませんが、この状態は、スネアドラムの鳴りを「止めて」しまっている状態です。バンドサウンドに混じると、音の長さが短い「点」のように聞こえ、存在感や迫力の無い音になってしまいます。
上記の、スナッピーONとOFFの音の長さが変わらない目安の音を作ってから、細かいゴーストノートを多用するような音楽の場合は締め気味にして反応を良くすることもありますし、逆にバックビートをフルショットでキメるような曲の場合は緩めにすることもあります。曲調やバンドに合せて調整していきましょう。
おしまいに
さて、駆け足でご紹介しましたが、今回ご紹介したチューニング方法で行っている事は2つだけです。
(1)ヘッドを均等に張る
(2)打面とスネアサイド(裏面)のバランスをとる。
これだけで音を作ることができます。
応用編として、一本、または何本かのボルトだけを緩め、均等な状態を崩して音を作ることもありますが、まずは均等に張ることをマスターしましょう。音程をもとに客観的に自分の基準となる音を作ることが出来たら、演奏する場所や共演者の音に合せて微調整するのも自由自在です。
スネアドラムの音作りは自分の表現をする上で大切な第一歩です。ぜひトライしてみてください。
次回の今さら聞けないシリーズは「ドラムヘッド交換」についてです。お楽しみに!
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この記事を書いた人
札幌パルコ店 ドラム担当 鳥塚
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ドラム情報アカウント、@tomtom_toriduka の中の人です。
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