バンドで使うシンセベース ~ 音色・奏法研究

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こんにちはサカウエです。シンセベースとはその名の通り、ベースの音域、役割をシンセサイザーが担うものですね。ヒップホップやダンス系の音楽では当たり前に使われていますが、ここではバンドアンサンブルの中で活用されるシンセベースについて紹介していきたいと思います。ところで「シンベ」ってもう死語でしょうか?・・・

シンセベースを使うケースは様々かと思いますが、ベースレスの編成で同期オケ(バックトラック)無しのライブではキーボーディストがベースパートも担当するケースがあります。たとえば最近注目のネオソウルバンド " Moonchild " のライブ。シンセ音源はSpectrasonics社のソフトシンセ率高いです。

Moonchild

上手(客席からみて右側)のKorg KRONOSを弾いているキーボーディストは、スプリット機能を使用して右手はエレピ系、左手でベースを弾いています。こうしたバンド編成はレアと言って良いと思いますが、そういえば昔 " Doors(ドアーズ) " のレイ・マンザレク(kb)は左手でFenderのローズベース(鍵盤ベース)を弾くので有名でした。少々趣旨は異なりますがオルガン・トリオなんかもそうですね(オルガニストがベースペダルでベースパートを担当)

つづいてこの手のジャンルでは珍しいですが、ベースが打ち込みのライブ!

当時世界のひゅーじょん界に多大な影響をあたえたGino Vannelliですが、ステージアクションが時代を感じさせます、応援団か!・・・ところで 2:44 からの Mike Miller のギターソロめちゃくちゃカッコいいですなー・・でもなぜにこのバンド編成であえてベースレスなのかな・・

Gino Vannelli - Brother to Brother ( Live Montreal 1991 )

・・さて以上は、色々な事情もあってシンセベース使っていると推測しますが、ベーシストが弾いてもサウンドの方向性にはそれほど変化は無いと思います。では次に紹介するのは、単にベースの「代替品」ではなくバンドアンサンブルの中であえてシンセベースを使用している例。

Chaka Khan / Night in Tunisia

有名なディジー・ガレスピーによるスタンダードナンバーをAOR風にアレンジしたチャカ・カーンのリメイク(1981年)。イントロのMini Moogによるシンセベースは デイビッド・フォスター。曲中の超絶シンセソロはハービー・ハンコック。

これぞシンセベース!といった感じのポルタメントのかかったサウンド。Mini Moogの特徴でもあるモノラル&シングルトリガーによる、まるでピッチベンドを使っているように聞こえるファンキーなフレージングです。ベースのフレーズは音の跳躍もあり、キーボードでは両手で弾く場合も多いのですが、ここでは1~3拍目の頭は左手、その他は右手で弾いていると思われます。オシレーターはオクターブ重ねで「ブチッ」というアタック感のあるフィルターエンベロープ設定。ノコギリ波の3オシレーターで、32,16,16feetのようなセッティングでデチューンをかけ、フィルターエンベロープのDecayで「ブチッ」の長さを調節すると良いでしょう。

Mini Moogの場合、レガートで弾くと次の音のアタック音が発音しませんので、譜例の黄色「◯」の音はノンレガートで演奏します(原曲は手弾きなので、ばらつきが少々あります)。これがもしマルチトリガーですべての音にアタックがついてしまうと、全くニュアンスの異なるフレージングになってしまいますね(注※)。

実際に弾いてみました(Synth:Arturia Mini V, Loop : Spectrasonics STYLUS

なお原曲ではエレベのスラップが加わってからは(音域の重なりを回避するため)シンセはオクターブ上げて演奏されているところも要チェック。

Check Point

  • モノモード&シングルトリガー
  • ポルタメント
  • リアルベースとのバランス配慮

ところでこの曲、後半キーが1度上がってからの 3:46~のブレイクですが、オリジナルテイク(1946年)で聞くことのできるチャーリー・パーカーの有名な超高速サックスソロのサンプリング(?)に、シンセをダビングしてユニゾンさせるというアイデアは斬新でした。(オリジナルは倍テンポなので4小節)

運指練習にぜひどうぞ・・私は遠慮しときます・・

注)※リイシューのMini Moog Model Dでは、電源ON時のスイッチコマンドによって、発音モードを「High / Low /last」から選択でき、マルチ/シングルトリガーの選択も可能です(下記マニュアル参照)。

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なおこの曲や「スリラー」のMoogベースも同系列のプレイかと思います。

Michael Jackson - P.Y.T. (Pretty Young Thing)

「スリラー」のMini Moog音色とトリガーモード実演動画

続いてはシンセならではのベースライン。

ギターライクなシンセプレイで有名な Jan Hammer(ヤン・ハマー)の旧約聖書の創世記をテーマしたソロアルバム「The First Seven Days(これ名盤ですよ)」のオープニング曲。

Jan Hammer - The First Seven Days ~ Darkness

Moog、メロトロン、フリーマン・ストリングシンセサイザー(これレアですね)、オーバーハイム等々のキーボード群を駆使したサウンド、本人によるドラムも堪能できる本アルバムですが、この曲での3:12~からのギターっぽい音色はなんと MiniMoog によるもの。MiniMoogの入力端子に出力を突っ込んでセルフフィードバックさせる等々、いろいろと工夫したみたいですが、非常にギターライクなソロとなっています。長三度のチョーキング(ベンド)の箇所なんて弦が切れそうな感じで良いですね。ビブラートもベンダーでやってるようですが、途中のフィードバックどうやってるんでしょうかね、アンプ出力とかもやってるのかな?

Mini Moog Model D(復刻モデル)

で、肝心のベースラインはこれもおそらくMini Moogによるもので、約2オクターブ半に渡る非常にレンジの広いベースラインになっています。これエレベで演奏したら全然おもしろくないでしょうね。ポルタメントのかかったレガートフレーズを片手で弾くのは少々大変なので両手で弾いていると思われますが、まさにシンセならではのベースラインと言えるでしょう。

こんな感じですね。全部レガートで弾くのが大事。

蛇足ながら、昔あの Queen がアルバムに「NO SYNTHESIZERS」とクレジットしていたのは有名な話ですが(当時シンセなんか使うのは卑怯だ!みたいな風潮もあったらしいです・・)このJan Hammerのアルバムには「There is no guitar on this album」というクレジットがされておりました・・・いま聞くとさすがにという感じですが、当時は本当にギターに聞こえました。今の若い人が聞いたらどう思うのかなあ・・・

First Seven Days

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続いてハンコック先生。

Herbie Hancock - Chameleon

1973年にリリースされた後のファンクやフュージョンに大きな影響を与えた記念碑的なアルバム「ヘッドハンターズ」より。冒頭のARP Odysseyによるシンセベースラインは特に有名です。ARPらしいフィルターのサウンドが特徴ですが、ひたすらBbm7 - Eb7 の繰り返しも決して飽きさせない展開。フレーズですが「ブチッ」というアタック音が全てについている感じなので、ノンレガートで弾いているか、もしくはマルチトリガーのためと思われます。

Arturiaの" ARP 2600 V "を使用して弾いてみました、これは片手だけでも弾けますね。フィルターの特徴が若干異なりますがご容赦ください。

ところで中盤のアナログシンセのパラメーターを駆使したソロは必聴です!後半のローズのソロも素晴らしいです。

ARP Odysseyリイシューモデルについてハンコック本人による解説:字幕付き

当時のOdysseyはピッチダイヤル式で、シンセソロの最初で音程が半音上がってるのに気づいたけど、ダイヤル回しながら弾き倒してごまかした(?)という話が笑えます。

ヘッド・ハンターズ

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お次はマルチプレーヤーでもあるスティービー・ワンダーの名曲「レイトリー」・・「腰より下は中くらい」という空耳でも有名ですね(自分だけかも)

この曲のバックはピアノとシンセベースのみ。当時スティーヴィーには専属のシンセプログラマー(この曲ではビル・ウルファー)が参加していましたが、ポルタメントを効果的に使用した有機的なサウンドは素晴らしいですね。それを弾きこなすスティーヴィーは言わずもがなですが、LFOを使った単純なビブラートはではなく、リボンコントローラー等を使用したベンドコントロールでビブラートを掛けているのではないかと思います。

このシンセは何かといろいろ調べたのですがよくわかりませんでした。ポール・マッカトニーとの共演「Ebony And Ivory」のシンセソロ音色と若干ニュアンスが似ている気がしますが、下記の動画だとYAMAHAのCS-80でリボンコントローラー使ってます。真相は果たして・・・

続いては最近再び注目されているYAMAHAのFM音源(代表機種はDX7)

DXのエレピやベースサウンドも昔流行りましたね。この曲に限らず、DX7の発売当時はプリセット音色をそのまま使用した楽曲が巷に溢れた記憶があります。

a-ha - Take On Me

これはプリセット#15「BASS 1」あたりかな? 打ち込みっぽいですね。

DX7

ラリー・ウィリアムス(sax, Key)のDX-7によるシンセベースソロ

DX-7の2台載せとE-mu Emulator II(?)が時代を感じさせます。ちなみにEmulator IIのサンプリング周波数/ビットレートは「27kHz/8bit」、メモリー容量は512KB(1MBまで増設可能)というスペックで、当時(1985年)のお値段は¥2,980,000! えーっと単位はキロバイトですからね・・現代のUSBメモリの一万分の一くらいかも・・

ベースラインですが、ラリー・ウィリアムスはこんな感じで両手で弾いていますね。

再生速度を0.5とかにして見ていただくと、左手で捨て音(ゴーストノート)を入れているのがわかると思います(譜例だと✖の箇所)。ゴーストがあると無いとでは全くノリが変わりますね。

ちなみにアル・ジャロウの「Spain」のシンセソロもラリー・ウィリアムスですが、あのソロはホント名演だと思います。

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ベーシストによるシンセベースプレイ

昔から、Genesis,Rush,Yes,U2、Police等のバンドではMoog Taurus等のペダルシンセをベーシストやギタリストが使っていましたが、それは主に重低音のサスティンが可能なペダルシンセでベースパートを補完・補強するためだったと思います。

以下は最近ちらほら見かける、ベーシストがシンセベースを手弾きしている例。

現代最高のジャズ・ファンク・フュージョンユニット「Snarky Puppy」のメンバー Bill Laurance(kb) のライブより、Snarky Puppyのリーダー Michael League(bs)によるシンセベース。ライブではシンセでホルンパートを演奏しているようです。

Bill Laurance - Swag Times

Aメロで使用しているのはMoog「Little Phatty Stage II」と思われますが、音色はMoogらしいノコギリ波のオクターブレイヤー系の音色。少しポルタメントがかかってますね。中盤からはエレベを弾いてますがシンセのベースラインは以下の通り。

Michael Leagueは青の印部分を左手で弾いているようですが、さすがバッチリのタイム感!

なんだかベーシストが弾くシンセというのはインスタ映えもする気がするなあ。

他にもSnarky Puppyのライブではシンセベースが大活躍

Snarky Puppy - What About Me? (We Like It Here)

採譜してみましたが、これドラムソロ中のタイムキープ激ムズです(同期ものではありません)

コーリー・ヘンリー(Kb)が弾いてるのはKorgのMS-20ですね。なお同ライブの「Lingus (We Like It Here)」の彼のシンセソロ(4:18~)は本当に神がかっていますね。特に前半の自由自在に漂うエレピのハーモニーセンスには脱帽・・6:20~のメロとハーモニーの美しさに思わずメンバーも感極まって泣いて(?)ますな!こんなすごいソロはなかなか聴けるものではありません。必聴!

シンセベース奏法のコツ

FUNK FIGHT - DOMi vs Louis Cole

今売り出し中の若手キーボーディスト「DOMi」と鬼才 Louis Coleのセッション。二人の使っているMIDIキーボードはそれぞれRoland A-88とNovation Launchkeyです。

曲は「Ebm7-Fm7-Bb7」といった感じの2小節パターン。Ableton LiveのリズムループをバックにDOMiちゃんはSpectrasonics「Keyscape」のピアノ(YAMAHA C7)と「Omnisphere」のシンセ、Louis ColeはOmnisphereでシンセベースを弾いております。

Louis Coleはドラムをはじめ様々な楽器やヴォーカルまで担当するマルチプレーヤーですが、このセッションでのシンセベースは非常にグルーヴィーでかっこいいですね。

やはり両手で演奏しておりますが、左手のゴーストノートがキモ。

左右に分けて記譜してみました。ドラマーらしい両手のコンビネーション。左手の黄色の部分は超スタッカートで弾くとノリが出ます。

キーボード名人は皆こうしたゴーストノートの使い方が上手ですね。

ベースとユニゾン

最後に紹介するのは、エレベとシンセベースがユニゾンで演奏されているレアケース。SteelyDanでお馴染みのドナルド・フェイゲンの名盤「ナイトフライ」から軽快なシャッフルナンバー。エレベはウィル・リー、シンセベースはグレッグ・フィリンゲインズが弾いています。

Donald Fagen / Walk Between Raindrops

ウィル・リーのインタビューによると、レコーディングではダビングに呼ばれて一音一音書かれた譜面どおりに演奏したとのこと(!) この手の曲ではコードとキメくらいしか書き込まれてなくて、あとはベーシストにお任せ~というケースも多いのではないかと思いますが、なんだかドナルド・フェイゲンらしいですね。最初からシンセを重ねるつもりだったのか、他のベーシストにも演奏させる予定だったのかは不明ですが、最終的にはエレベ色の希薄なサウンドになってる気がします。

余談ですが、ウィル・リーはその後、本アルバム収録曲の「Ruby Baby」のレコーディングに呼ばれ、ひたすら三日間弾き続けたそうですが、結局採用はされなかったとのこと(Steely Dan あるある※)

※実際は最後までフィーリングが合わずに本人がギブアップしたらしいです。

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というわけで趣味丸出しのシンセベース特集となってしまいましたが、手頃なおすすめのアナログシンセも紹介しておきますのでみなさんもバンドでもシンセベースを活用してみてはいかがでしょうか?

アナログシンセサイザーについては下記の記事も参考にどうぞ。

【参考記事】

アナログシンセ超入門
アナログシンセ超入門~その2:EG(ADSR)編
アナログシンセ超入門~その3: LFO
Moog Subsequent 37


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