【コラム】 おしゃれコードの押さえ方(ボイシング)#1

記事中に掲載されている価格・税表記および仕様等は記事更新時点のものとなります。

© Shimamura Music. All Rights Reserved. 掲載されているコンテンツの商用目的での使用・転載を禁じます。

G0011652

こんにちはサカウエです。「おしゃれなコードの押さえ方(ボイシング)」ということで、もしかしたら初心者の方には少々難しいかとは思いますが「世の中にはそういうハーモニーもあるのだな」程度に思っていただければ幸いです。

注)本記事の内容は和声法の見地からは正しくない部分もありますがご了承ください。

【デジランド】のキーボード入門特集記事では両手のリズムの組み合わせで8ビートや16ビートのバッキング・パターンをご紹介していたわけですが、ここで使うのは

白玉(しろたま)

になります。「白玉」というのは文字通り全音符や2分音符といった白い「おたまじゃくし」のことです。こういった感じの音符ですね。

screenshot_352

白玉は比較的簡単に演奏することが出来ますが、リズムの要素がないので地味になりがち。でも工夫次第で非常にスバラシイ効果を生み出すことができるのですね。

ところで、身近なポピュラー音楽の楽曲は主に

  • メロディー
  • コード進行
  • リズム

といった要素によって構成されています。

曲を作る方法としては、

  • メロディーが最初にあって、それにコードを付けてリズムパターンを考える
  • ドラムのパターンに合わせリズミックなコードバッキングを加え、コード進行を作り、最後にメロディーを足す

といったように色々な作曲スタイルがあってこれは千差万別ですが、コード進行というのは(あくまで身近なポピュラー音楽の場合)曲の雰囲気を決定する重要な要素だと思います。同じメロディーでもコード進行が変わればまったく違った曲のイメージになりますよね?(逆もまた然りですが)

試してみましょう。同じメロディに対し3種類のコードを付けてみました。

いかがでしょうそれぞれの曲の雰囲気はずいぶんと異なって聞こえたのではないでしょうか?

コードについて詳しく知りたい方はぜひコチラをお読みください

【初心者セミナー】バンドキーボード第一回 超簡単!コードを理解しよう

このようにコード進行は非常に重要なわけですが、ではたとえば仮に「おしゃれなコード進行」であれば「お洒落」な曲ができるのでしょうか?人によってお洒落に感じるかどうかの基準が大きく異なるので、実のところこれはなかなか難しい質問です。が、ここではあえて

「コード進行」だけではおしゃれにならない

と申してみたいと思います。これには理由が主に3つあります。

  1. 押さえ方(ボイシング)⇒同じコードでも無数の鳴らし方があるので、オシャレに聞こえる押さえ方が必要
  2. コードを滑らかにつなぐ⇒コード間の音のオシャレなつなぎ方が大切
  3. (エフェクトを含む)音色選びのコツ⇒音色選びとエフェクトのオシャレなバランスが大切

ではここで1の「同じコードでも無数の鳴らし方がある」についてお馴染みのCメジャーコードを例にとって考えてみましょう。

Cメジャーコード・・略してC(シー)というコードは「ド」「ミ」「ソ」という3つの音で構成されています。

逆に考えると「ド」「ミ」「ソ」を同時に鳴らしたコードはCということですが、ではCメジャーコードには何種類の押さえ方が考えられるか考えてみましょう。

それではまず88鍵盤のピアノに「ド・ミ・ソ」は全部でいくつあるか 「YAMAHA CP4 STAGE」を例に数えてみることにします。

「○」が付いているのがド・ミ・ソの音

hCP4_over_v

カウントお疲れ様です。全部で22コありましたね。内訳は

  • ド・・8コ
  • レ・・7コ
  • ミ・・7コ

となりますが、これを全部鳴らした場合を五線譜であらわすと

screenshot_344

と、とんでもないことになりますが、一人で同時に弾くことは無理ですね。

そういえばビートルズの「A Day in the Life」のエンディングの「バーン」というコードは、数台のピアノをメンバーやスタッフが「せーの」で一斉に弾いた音が加わっているそうです・・ちょうどこんな感じに似ていたのかもしれません(「ローインターバルリミット」という掟があり、通常は低域では音が濁るので近接した音程では演奏されません)

ボイシングの組み合わせの数

次に「ド・ミ・ソ」で構成されるコード「C」の押さえ方は何種類考えられるでしょう?

仮に「ド・ミ・ソ」、「ミ・ソ・ド」、「ソ・ド・ミ」のように「3種類の音が1コずつ使われており、かつ隣り合っている場合」は全部で21種類です。

screenshot_346

screenshot_348

screenshot_349

どの高さでも構わないので、とにかくド・ミ・ソの組み合わせであればOKとすると、いきなり種類が増えます。8×7×7=392種類(であってますか?)

組み合わせ例

screenshot_350

さて、「ド・ミ・ソ・ド」のように音が重複する場合をOKとすると、今度はたちまち膨大な数(数百万?)に膨れ上がってしまいます・・スミマセン計算方法がよくわかりませんのでお分かりの方はこっそりツイッターで教えていただければ幸いです・・・とにかく膨大な数になるでしょうね。

6/6追記:早速ツイッターで教えていただきました。255×127×127=4,112,895通りになるらしいです(確率統計、nCr、皆高校で習っているらしいですよ~)

音が重複する場合の例

screenshot_351

幸い、一人で一度に押さえることのできる音の数は限られていますし、あまりに低い(または高い)位置での和音は不自然に聞こえてしまう場合があるので、実質上使えるポジションは限られます・・・とはいえかなりの数になることは間違いありません。

というわけで少々ややこしい話になってしまいましたが、何が言いたいのかというと「構成音がたった3つでも無数のコードの押さえ方ができる」ということです。ということはコードの響きの種類も無数にあるということですから、どうやって押さえるか(ボイシング)は非常に重要であるということなのですね。

コードの構成音が増えると更に・・

さてたった3種類の音で構成されるコードでも無数の押さえ方が考えられる・・ということは、構成音が多くなるとさらに組み合わせの種類が増えることになりますね。

たとえばEm7(9,11)というコード・・・いきなりスゴイのが出てきて驚いたかもしれませんが、「9」とか「11」はこの時点で理解する必要はありませんのでご安心を・・・「世の中にはこういうコードを使う音楽もある」くらいの認識でけっこうです。

度数についてはまた改めてお話しますが、とりあえず1度-3度-5度-7度-9度-11度という順番に音を重ねたコードがあるとします。全部で6種類の音で構成されたコードということになります。

これが団子状態で重ねた「基本型」

Em11b

次にこれをバラバラにして、音の重なり方の順番を変えてみます・・これお気に入りの5度の積み重ねです。

screenshot_334

鍵盤で弾くとこんな感じです(手が大きくないと押さえられないかもしれませんが・・)シンセは懐かしいローランドJP-8000

G0011652

Em11

シンセ・ストリングスの音(Spectrasonics社のOmnisphereを使用)で聴き比べてみましょう。前半(だんご基本形)と後半(5度堆積)で雰囲気変わっているのがお分かりいただけると思います

いかがでしょう?後半は奥行きが断然と広がった感じに聞こえたのではないでしょうか。ちなみにこの和音は一応ギターでも弾けます(開放弦を使うのがミゾ)

IMG_8768

gtchords

OmnisphereのStickBass音色(パッドサウンドを重ねています)で鳴らすとこんなかんじです・・これもおしゃれな感じですね。

ライル・メイズもこういう響きを多用しますね。

ネオ・ソウルバンド「Moonchild」ローズのボイシングが素敵ですね。密集した和音で弾いているようです。

こんな感じですね

使っているソフト音源はこちら


この商品をオンラインストアで購入するこの商品を展示している店舗

この商品をオンラインストアで購入するこの商品を展示している店舗

この商品をオンラインストアで購入するこの商品を展示している店舗


実際の演奏では重ね方を変えるだけでなく「音を省略」するということも行われるので、更に奥のふか〜いお話になるのですが、いずれにせよ同じコードネームであっても、特定の押さえ方でしか表現できない「響き」というものがあるのですね。

こうした「響きの妙」のクラシック音楽での実例を挙げておきましょう。

ドビュッシーの「選ばれた乙女」

冒頭部分、1:15、3:00辺りは鳥肌たちますね〜

さて冒頭はEm - Dm - Cというコード進行ですが、Em、Dm、Cというコードは、それぞれ3つの音だけで構成されているコード(トライアドといいます)です。

これを基本形でベタに弾くと(左手がベース、右手がコード)・・・なんだかオシャレとは程遠いコード進行のような気もしますね・・

Em

Em

Dm

Dm

C

C

となりますが、これだと全然原曲の荘厳な響きが出ませんね~

さて、原曲では実はこのような音の重ね方がされているのです(第一、第二バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバス、弱音器付き)

Em

Em_w

Dm

Dm_w

C

C_w

それではビフォーアフターをお聞きください。

同じコード進行とは思えないくらい、全然違いますよね?念のため譜例も挙げておきましょう。低音部の五度の響きが特徴です。

screenshot_353

というわけで、

オシャレなボイシングがあってこそオシャレなコード進行が生きてくる

という気がいたします。ハーモニーは奥が深いですね・・・この話は続くかもしれません・・サカウエ

【関連記事】【作曲に役立つ「耳コピ」】 vol.2 コードとコード進行 基本編

なおコードについては、はてなブログの下記エントリーを合わせてお読みいただければ幸いです。

音楽力をアップする「耳コピのすゝめ 」第六回 コード

音楽力をアップする「耳コピのすゝめ 」第7回 コードのお話その2

音楽力をアップする「耳コピのすゝめ 」第8回 ダイアトニック・コード

音楽力をアップする「耳コピのすゝめ 」第9回 テンション

音楽力をアップする「耳コピのすゝめ 」第10回 マイナーでもメジャーでもないコード

おまけ

Tears For Fearsの「Woman In Chains」という曲では「F - Dm - Bb -F」という単純なコード進行の中、バックでずーっと「ソ・ラ・レ・ファ」というアルペジオが使われています。この4音はそれぞれのコードにとっては6th(13th)、9th、11th、maj7th(△7th)・・といった「オイシイ音」にあたります。そしてそれが結果的にオシャレな響きを生んでいます。

なおこのケースでは「ド、ミ」を使用してもOKです(後半ギターフレーズが使っています)

各コードで「ドレミファソラ」が何に相当するかをまとめました(青色が特にオイシイ音=テンションなど)

ファ
F 5th 6th △7th Root 9th 3rd
Dm 7th Root 9th 3rd 11th 5th
Bb 9th 3rd #11th 5th 6th △7th

こちらもチェック!!⇒ 【関連記事】【コラム】 おしゃれなコードの押さえ方(ボイシング)~分数コード

これもオシャレですね~メジャー7th、9th後半はドミナント13thなどバンバン出てきます。自然な転調も素敵です。

ハイドンの名によるメヌエット - ラヴェル

冒頭の4小節にコードネームを付けてみました。参考までにどぞ

screenshot_426

今回使用したソフトウエア:

DAWを使っているならゼッタイに必携のアイテムですね。ソフトシンセの定番!オムニスフェア


この商品をオンラインストアで購入するこの商品を展示している店舗

この商品をオンラインストアで購入するこの商品を展示している店舗

.

ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲、イベリア、選ばれた乙女

ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲、イベリア、選ばれた乙女

posted with amazlet at 14.06.05
アバド(クラウディオ) ユーイング(マリア) ベイリーズ(ブリギッテ) ロンドン交響合唱団

ユニバーサル ミュージック クラシック (2013-06-26)

売り上げランキング: 20,374

サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド

サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド

posted with amazlet at 14.06.05
ザ・ビートルズ

EMIミュージックジャパン (2009-09-09)

売り上げランキング: 87,716

Street Dreams

Street Dreams

posted with amazlet at 14.07.10
Warner Jazz (2010-03-02)

売り上げランキング: 8,116

【関連記事】

「キーボード入門」タグの関連記事

The NAMM Show 2020

↑ページトップ