こんにちはサカウエです。今回はウォームでナチュラルなパット・メセニー・サウンドを彩るライル・メイズの笛系シンセ・リードを取り上げることにします。
ECM (2008-10-24)
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CDタイトル:ファースト・サークル / First Circle
アーチスト:パット・メセニー・グループ(以降PMG)
発表:1984
アルバムで使用されたシンセサイザー:オーバーハイム 8 ヴォイス、シンクラビア、など
アルバムについて
へたくそハイスクール・ブラスバンドをシンクラビア・ギター(※)で再現するという一曲目の「Forward March」(これは半分冗談だったのでしょうか?)。この曲だけ聴いてCD買うのをためらい後悔した人を沢山知っています・・・それほど名曲ぞろいの歴史的アルバムです。
シンクラビアによるシーケンス・フレーズ、ギターシンセ(Roland GR-300)等々、当時最先端のテクノロジーが作曲のアプローチに及ぼした影響も大きいと思います。アルゼンチンのスーパースター、ペドロ・アズナールがこのアルバムから参加し、メロディーラインを歌詞無しで歌う「ヴォイス」を多用するスタイルは以後PMGサウンドの定番ともなりました(それ以前もナナ・ヴァスコンセロスが歌ってたりもしておりましたが)。
参考動画
10分あたりからパットの打ち込みも見れます
Roland GR-300
さて今回はこのパット・メセニー・グループのシグニチャー・サウンド、アルバムのタイトル曲の主旋を奏でるライル・メイズの笛系音色に挑戦してみます。
First Circleの楽曲構造については下記記事をご参照ください。
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音色について
さてこの音色は元々オーバーハイム8(あるいは4)ヴォイスと思われますが(さすがに重たいしメンテも大変でしょうから)90年代あたりはローランドのSuperJX(JX-10)に差し替わり、その後も色々なシンセに変遷はあったようです。とてもナチュラルで温かい音色ですね。
その名前の通り4ボイスだと4音まで同時に和音を鳴らすことができるわけです。上の写真では4つのモジュールで構成されているのがお分かりいただけるとおもいます。
ところでワタクシ1992年頃の大昔ライル・メイズご本人様にお会する・・という貴重な経験をさせていただいたのですが、その際、このシグニチャーサウンドについついて尋ねると
「小学校の音楽の時間、子供たち全員がリコーダーで同じメロディーを吹くときって、必ず何人かは音程が合わない子がいて面白い感じになるでしょ?この音色はそれをイメージしたんだよ」とのこと。
(口調はあくまでそんな感じだったということで・・)
1995年のライブ2'22〜あたりから
ちなみにライル大先生はワタクシが勝手に思いこんでいたイメージとは違って、すごく陽気な方でして、
「"Are You Going with Me?"のシーケンスフレーズなんて、あんなの退屈で弾いてられないだろう?だから機械(シンクラビア)に任せときゃいいんだよ〜わっはっは」・・・みたいなノリでした・・・
Camel(煙草の銘柄)吸いながら「コレは悪い癖ってのはわかってるんだけど・・ついつい・・でもやめたいんだけどね〜」とおっしゃっておりましたが、はたしてその後、禁煙は成功したのでしょうか?
この曲でもオーバーハイムは大活躍。良い曲だなあ〜 It's For You live
ローランドのINTEGRA-7で再現
というわけでシンセで再現する場合は「ヘタクソな子」をかならず入れるというのがポイントになります。必ず2つ以上のオシレーター(INTEGRA-7はPCM音源のためパーシャルという名称)を使用し、一方のオシレーターにピッチEGをかけて音痴にする。基本はこれだけなのですが、非常にナチュラルなサウンドとなるから不思議。
今回はGR-300とかSuperJX等が話に出てきたこともあるので、ローランドのフラッグシップ音源「INTEGRA-7」を使用してみました。最近Mac版のエディターがリリースされましたがコレ非常に重宝しております。
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「NTEGRA-7 Editor for Mac」がリリースされました。さっそくチェック。
実はプリセットには「OB Lead」というまさにクリソツ音色が内蔵されているのですが、これはPCM波形(Oberheimのサンプリング)を使用しているので、似ているのは当たり前・・というわけであえてイニシャライズ(初期化)してSuperNATURALのシンセオシレーターで作成してみました。
セッティングはシンプル。パーシャル(オシレーター)1、2はともに矩形波、ピッチEGで音程をしゃくりあげるセッティングです。少々デチューンをかけ、ローパスフィルターでハイをカットし丸みを帯びたサウンドにし。最後にモジュレーションディレイと浅いリバーブで完成。
コレはINTEGRA-7 Editor for Macで見たパーシャル1のセッティング
こちらはパーシャル2
サウンド
演奏するときは装飾音を多用してアコーディオン、ピアニカ風に弾くと雰囲気出ると思います。
というわけでまた次回
TEDxCaltech - Lyle Mays and Friends 13:20〜のBefore You go カコイイですね。
※ ライル・メイズ氏は、2020年2月10日に闘病の末残念ながら逝去されました。本当に素晴らしい沢山の音楽をありがとうございました。心よりお悔やみ申し上げます。
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New England Digital社が1970年台後半から販売したデジタル・ワークステーション。FM合成、最大100KHzのサンプルレイト、(当時としては)巨大なストレージデバイス等々、まさに究極のシステムだったが価格も(数千万)と究極のマシン。