レイテンシー と バッファサイズ とは?【今さら聞けない用語シリーズ】

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こんにちはサカウエです。DAWを使って曲を作ろう!という際、DAW側の設定でお目にかかる用語に「レイテンシー」「バッファサイズ」があります。入門者にはなんだか難しそうな用語ですが、知っていると知らないでは大違い。今回はこの2つの用語についてご紹介したいと思います。

DAWを使っているとよくあるトラブル

Cubase、SONAR、LiveといったDAWで作りをする際、最近ではソフトシンセ(プラグイン・インストゥルメント)を使ったり、ギターやボーカルをレコーディングすることは当たり前になっています。ところで皆さんは以下のような経験をされたことがありませんか?

  • MIDI鍵盤を弾くと音が遅れている気がする。
  • 曲を再生するとバリバリという歪む、ノイズが出る。
  • ギターを弾くとモニターからの音がすこし遅れて聴こえる感じがする。
  • 再生が止まってしまう(ドロップアウト)

こうした症状の原因の多くはパソコンのスペック(CPUの処理能力やメモリ搭載量など)不足や、パソコン側の設定の問題で生じることも多いのです。

もし軽乗用車で時速200kmを出そうと思ってアクセルを踏み続けたとしても、いずれエンジンが焼け付いて壊れてしまうでしょう。でもスーパーカーだったら200kmなんて2速でも楽勝ですね(※そのスピードでの公道走行は違法です)

DTMでも同様で「動作が重め」と言われるソフトをDAW上に何十トラックも立ち上げ、エフェクトプラグインをかけまくる・・といった場合、パソコン側の処理能力の限界を超えてしまう場合もあるわけですね。逆に超ハイスペックなパソコンであれば(限界はありますが)さらに高負荷の作業も行うことができます・・ただし当然お高く付きますが・・・

パソコンの能力を100%引き出そう

車のスピードもパソコン処理能力も価格にほぼ比例するわけですが、誰でもスーパーカーを買えるわけではありません。パソコンも同様です。自分のやりたいことができて、かつ予算内で揃えたいと思うのが人情ですね。

たとえばCPUはCore-i7、メモリは16GB、ハードディスクは2TBといったスペックなら、Cubase8.5でTrilianとOmnisphereとBFD3を同時に立ち上げてこれだけのことができる・・・といった大まかな目安はあります。このあたりは店舗スタッフに相談していただきたいところですが、いざ大枚はたいて購入したハイスペックなパソコンであっても、正しい設定を行わないと冒頭のトラブルに直面する可能性があります。

ところで、DAWを使う場合に必須といえるのが、音の出入り口となる重要な機器「オーディオ・インターフェース」ですが、以降の話はこのオーディオ・インターフェースを接続しているという前提ですすめます。オーディオ・インターフェースって何?という方は下記の記事をお読み下さい。

【関連記事】初心者向け【今さら聞けない用語シリーズ】初めてのオーディオ・インターフェース選び

ではトラブルを解決するためにもぜひ知っておきたい「レイテンシー」と「バッファサイズ」について話を進めましょう。

レイテンシーとは?

レイテンシー(Latency)は直訳すると「遅れ」という意味です。本来レイテンシーは、ある命令をパソコンに実行させてからそれが完了するまでの時間のことですが、DAWの場合は、データー処理に伴う発音の「遅延」という意味になります。

実際にはMIDIキーボードを弾いてからソフトシンセが発音するまでのズレ時間(遅延)や、オーディオ・インターフェースにつないだギターを弾いてから、パソコン経由でヘッドホンに帰ってくるまでの音の遅延時間といったことになります。レイテンシーの単位は「msec(ms:ミリセカンド)=1/1000秒」を使います。

DM

上図ではオーディオ・インターフェースに入ったギターの音が「アナログ>デジタル/デジタル>アナログ」というA/D、D/A変換の過程で遅れて聴こえるイメージを表しています。

個人差はありますが、20msec程度から徐々に「遅れてる?」と感じるようです。しかしシビアなプロの演奏の場合は数msecの遅れでも問題となる場合もあります。若干のレイテンシーであれば無意識に調整して演奏することもできますが、さすがに50msec以上の遅れとなると、ソフトシンセの場合であれば打楽器やピアノといったアタックのある音色はまともに演奏できなくなると思います。

ということで、ズレ(遅延)は小さいに越したことはありませんが、小さくなればなるほど今度はパソコンに負荷がかかってきます。そこで「反応(即応性)優先」と「パソコン安定優先」をケースバイケースで使い分けるといった設定も必要になってきます。

ダイレクトモニタリングについて

オーディオ・インターフェースの中には「ダイレクトモニタリング機能」を搭載している製品があります。ダイレクトモニタリングとは入力信号が「アナログ>デジタル/デジタル>アナログ」という変換(A/D、D/A)で生じるレイテンシーを回避する機能です。厳密にはオーディオ・インターフェース内での処理が行われており遅延は生じているのですが、気にならないレベルということですね。

Steinberg UR22mkIIの場合、MIXノブで入力した直接音をモニタリングできる。

ur22mk_DM

ダイレクトモニタリングのイメージ:A/D、D/A変換を介さない信号の流れを作ることができます(黄色矢印)

DM

 

バッファサイズ(バッファーサイズ)とは?

ここでの「バッファ( buffer)」とはデータを一時溜めておくデータ領域を意味します。バッファサイズはその部屋の大きさということですね。連続するデータの流れが途切れないように、バッファーに随時先読みして溜めておくわけです。

イメージ:バッファーが無いと、いざデータ送信が途切れた場合に仕事が止まる

Latency_10

サイズの単位は「サンプル(sample)」となります。ある音を1秒間に44100回に分けてデジタル記憶することを44.1kHzサンプリングといい、その単位をサンプルレートと呼びます。たとえばサンプルレートが44.1kHzの場合でバッファサイズが512であれば「1/44100サンプル×512」というデータをバッファすることになります。

サンプリングのイメージ

sampling_image

Cubase 8.5のサンプリングレイト設定方法

Latency_1

Latency_2

LIVE9のサンプリングレイトとバッファ設定画面

Latency_20

SONARのサンプリングレイトとバッファ設定画面

SONAR

他のDAWも「環境設定」「オーディオ設定」あたりのキーワードで探せば設定画面が見つかると思います。

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