こんにちはサカウエです。楽器の話をしていると「倍音(ばいおん):オーバートーン、ハーモニクスなどとも」という言葉をよく耳にしませんか?
世の中にはさまざまな音が存在しますが、楽器をはじめ、人の話し声、風や雨、カミナリ、騒音・・・等々、すべての音には「倍音」というものが含まれているのです。Wikipediaでは「楽音の音高とされる周波数に対し、2以上の整数倍の周波数を持つ音の成分」と定義していますが、ちょっとざっくり過ぎてわかりにくいですね。
シンセで音作りする際もこの「倍音」は避けて通ることができません。では「倍音」とはいったいなんでしょうか?
※「倍音列」に関しては後述します。
音の三大要素
倍音を説明する前に、まずはおさらいしておきましょう。
音には「大きさ」「高さ」そして「音色」という3つの要素があります。私たちは、楽器などの「音色」を表現するのに「柔らかい」、「硬い」、「尖った」・・等々、さまざまな言い回しを使いますが、ではそれぞれの違いを実際に目で見ることにしましょう。音の大きさ(音の強さ:単位:dB)と、高さ(周波数:単位:Hz)についての詳細は下記記事をご覧ください。
「波形」音を目で見る
波形は音波だけでなく、電磁波などさまざまな「波動」の伝わり方を表すものです。音の波を表す波形の場合は、横軸が時間的な変化を、縦軸が量(大きさ)を表します。下記の図はIK Multimediaのプラグイン「SampleTank3」収録の音色を波形編集ソフトで表示したものです。
SampleTank3のフルート「A(ラ)」
SampleTank3のバイオリン「A(ラ)」
バイオリンはフルートより複雑な波形に見えます。フルートは比較的おとなし目で、丸い音のような印象です。この見た目の違いは実際に音色の違いを表していますが、この両者の音色の違いは、今回のテーマである「倍音」と深く関わりがあるのです。
波形の違いは「倍音」の含まれ方で決まる
突然ですが、実はこの世の中のすべての音は、正弦波(サイン波)の組み合わせに分解できます(衝撃の事実!)。それどころか純粋なサイン波の音は(厳密には)自然界にははぼ存在しないのです(これホント)。
これがサイン波(ポーという音、聴力検査で聞くこともありますね)
1000Hz(1秒間に1000回振幅するサイン波)
どんな音でも複数のサイン波に分解できるという例(下図は単純化してあります)※元になるのは「フーリエ級数」という数学分野の考え方。
そして基本となる音の周波数の「整数倍のサイン波(これらはほぼ無限に存在します)」等を「倍音」とよんでいるのです(※)。そしてこの倍音の含まれ方の違いが音色の違いとなるわけですね。
倍音の構成を目で見てみよう
ある音の倍音の含まれ方を目で見えるようにしてくれるのが「スペクトルアナライザー」という便利な機器です(略してスペアナ)。このスペアナを使えば、どの周波数帯域にどれだけのエネルギーが含まれているかが目で「見える」わけです。
高周波用スペクトラム・アナライザの一例(ローデシュワルツ製携帯型スペクトラム・アナライザ)
DAWで使用可能なソフトウエア・プラグインの「スペアナ」も、数多くの製品が発売されていますが、ではスペアナ・プラグインを使って色々なサウンドの倍音構成を目で確認してみましょう。※今回使用したのはiZotope社のOzone5。
Arturiaのソフトシンセ「Mini V」内蔵のチューナーの音(A=440Hz)です。たしかに440Hzあたりにピーク(山頂)がありますね。
「SampleTank3」のフルート(ラの音)です。440Hz以外にも無数のピークが生まれています。これらの多くが倍音。
「SampleTank3」のピアノ(ラの音)。これも同様
同じピアノで5秒後のスペクトル分布:倍音構成が変化していますね。徐々に丸い音になっていくことがよくわかります。
「SampleTank3」のバイオリン
どれも中心となるのは大体440Hzですが、この様に同じ「A音」であっても楽器ごとにスペクトル分布が異なることがわかりますね。また倍音が増えるほど複雑な音になるということも覚えておきましょう。
この様に純粋なサイン波を除けば、音には必ず無数の「倍音」が含まれているということがわかります。また倍音の構成は「時間の経過によっても複雑に変化する」ということも忘れてはいけません。
これなどは極端な例ですが、シンセ音色をスペアナでみた動画です・・ウネウネと倍音構成が変化しているのがよくわかると思います。
音はサイン波の合成で作り出せる
さて、すべての音は複数のサイン波の組み合わせでできている・・・ということは、逆に考えると
「どんな複雑な音でもサイン波の組み合わせで作り出すことができる」
ということになりますね・・理論的には・・・
分解とは逆に、正弦波を合成すれば新たに音を作ることができる?↓
これを応用したのが(ハーモニック・)ドローバー式のオルガン。有名なのはハモンド・オルガンですが、NATIVE INSTRUMENTSのプラグイン「KOMPLETE9」に収録されているKONTAKTのライブラリー「Vintage Organ」で試してみましょう。
Vintage Organ
ドローバー式のオルガンはもともとはパイプオルガンの代用として考案されました。各ドローバーは16,8,4,etc.というフィート(' )という長さの単位が名称となっています(1フィートは約30cm)この製品では上鍵盤と下鍵盤それぞれに9本のドローバーが用意されています。
ハモンドオルガンの発音の仕組みですが、ピックアップの近くでトーンホイール(金属製の歯車)をモーターで回し、そこで生じる磁界変化の波を音源として出力するという方式を採用しています。そしてたとえば鍵盤を弾いた際、8' が引っ張りだされていれば 2.4m のパイプが鳴る・・というパイプオルガンの構造をシミュレートしています。8' の半分の長さの 4' を引っ張りだせば、1オクターブ上の音が加わるわけですね。なおドローバーがすべて引っ込んでいる状態では音は出ません(厳密には少し出てます)。
左にあるのはレズリースピーカーという専用ロータリースピーカー。
それではドローバーの組み合わせでできる音色をスペアナで見てみましょう。すべて「ラ(A3)」の音を弾いています。
8'のみ
A=440Hz以外の倍音が含まれているのがわかります。「Vintage Organ」はおそらく実機の音をサンプリングしているのだと思いますが、このようにオルガンのトーンホイールから生じる音というのはすでに純粋なサイン波ではないのですね。(他にもいろいろなノイズも混ざっているのだと思われます)
16' を足す。
440Hzのオクターブ下=220Hzが頭角を現してきましたね。
16'+8'+4'+2'+1'の組み合わせ。
220Hz、440Hz、880Hz、1760Hz、3520Hz という5つのピークが生まれました。
フルドローバー(全部引っ張りだした状態)
2 2/3' というのはオクターブ上のさらに5度上(12度)の音程となります。
ドローバー式のオルガンでリアルなピアノの音は作れるのか?
「どんな複雑な音でもサイン波の組み合わせで作り出すことができる」ということは、理論的にはドローバーの数を増やしていけばどんな音でも作れそうな気がします。しかし主に以下の理由によってこれは現実には不可能と思われます(※)。
- 膨大な数(無限?)のドローバーが必要になると思われる(128本あればけっこういいとこまで出るらしいです・・)
- 倍音構成は時間によっても変化するので、それを再現するためのドローバーの出し入れが人力では不可能だと思われる。
例えば先ほどのピアノの音の倍音構成を思い出して下さい。音の鳴り始めはハンマーで弦を叩く「ゴンッ」という音も含まれています(これらはおもに非整数次倍音)。そして弦の振動する音が減衰するにしたがい、徐々におとなしい倍音構成に変わっていきました。このように音の始まりから終わりまで同じ波形(=倍音の含まれ方が均一)ということはアコースティック楽器ではありえないことなのです。
9本のドローバーで音を作るオルガンは、パーカッション(アタックをつける効果)、ロータリースピーカー、ビブラート、その他のエフェクトを使ってもやっぱりオルガンの音しか出ません・・・ただ、そこが非常に奥の深いところでもあるのですが・・・
(※)パソコンの力を借りればある程度可能。wikipedia アディティブ・シンセシス
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ラヴェルの「ボレロ」のアレンジ
近年ベートーベンの第九と同様、大晦日のカウントダウンで演奏されることもあるラヴェルの「ボレロ」。この曲は同じメロディーが楽器構成を変えて延々繰り返され、徐々に盛り上がっていき感動のエンディング・・といったドラマチックなアレンジが有名ですが、ラヴェルの驚くべきアイデアに注目してみましょう。
中盤、ホルン+グロッケンによるハ長調の主旋律に、ラヴェルは2本のピッコロで同じメロディーを「オクターブ+5度上」と「2オクターブ+3度上」に移調したラインを重ねているのですね(ハ長調のメロディーに、ト長調とホ長調に平行移調された音が加わるということです)。
つまりこれはあたかもパイプオルガンのパイプ(=ハモンドオルガンのドローバー)を使い分けるように、ピッコロを「倍音」として扱っているのだと思われます。
7:15あたりから
SampleTank3で再現してみました。ホルン、グロッケン、ピッコロ1,ピッコロ2、以上の4パートの受信チャンネルをすべて同一にします。
するとMIDI鍵盤を弾くと4パートが全部一緒に鳴るわけですね(実際にはホルンの音域だとPiccoloには低すぎて発音域外)
まずグロッケン・パートはオクターブ上げ(半音で+12)
ピッコロ1はオクターブ+5度(半音で+19)
ピッコロ2は2オクターブ+3度(半音で+28)
バランスを調整します(これ非常に大事、グロッケンはなんとか聞こえるレベルがちょうど良いかも)
・・これでボレロと同じ音が出ます。お暇な時にぜひどうぞ。
いずれにせよこの曲のアレンジはまさに「管弦楽の魔術師」という形容がふさわしいと思います。
倍音列
さて倍音についてはなんとなく理解できたと思います。それでは今度は倍音の種類について考えてみましょう。本来ならばこの章を最初に説明すべきなのかもしれませんね。
倍音には、基本となる周波数の何倍になっているか?つまり倍数によって「第○倍音」と呼ばれます。もし基音の倍だったら第2倍音、3倍だったら第3倍音・・という具合です。
周波数で表した場合、基本周波数が100Hzの場合は
- 第2倍音=200Hz
- 第3倍音=300Hz
- 第4倍音=400Hz
- 第5倍音=500Hz
- 以下略
となるわけですね。なお偶数倍の倍音は「偶数倍音」、奇数倍は「奇数倍音」といってそれぞれの倍音の含まれかたによって音色に差が生まれます。
※いくつかの倍音が基音より大きい場合もありえます。
では次に音楽的な視点から倍音を見てみましょう。
基本となる音を「ド(C)」として考えた場合の、倍音列はどのようなものになるでしょうか?これが下図です。
倍音 | 音程 | 音高差 | 音名 | 平均律よりの差 |
---|---|---|---|---|
第1倍音 | ユニゾン | 0 | C3 | ±0 |
第2倍音 | 1オクターヴ | 12半音 | C4 | ±0 |
第3倍音 | 1オクターヴと完全5度 | 19.019550半音 | G4 | +1.955セント |
第4倍音 | 2オクターヴ | 24半音 | C5 | ±0 |
第5倍音 | 2オクターヴと長3度 | 27.863014半音 | E5 | -13.686セント |
第6倍音 | 2オクターヴと完全5度 | 31.019550半音 | G5 | +1.955セント |
第7倍音 | 2オクターヴと短7度 | 33.688259半音 | B♭5 | -31.174セント |
第8倍音 | 3オクターヴ | 36半音 | C6 | ±0 |
第9倍音 | 3オクターヴと長2度 | 38.039100半音 | D6 | +3.910セント |
第10倍音 | 3オクターヴと長3度 | 39.863014半音 | E6 | -13.686セント |
第11倍音 | 3オクターヴと増4度 | 41.513179半音 | F♯6 | -48.682セント |
第12倍音 | 3オクターヴと完全5度 | 43.019550半音 | G6 | +1.955セント |
第13倍音 | 3オクターヴと長6度 | 44.405277半音 | A6 | -59.472セント |
第14倍音 | 3オクターヴと短7度 | 45.688259半音 | B♭6 | -31.174セント |
第15倍音 | 3オクターヴと長7度 | 46.882687半音 | B6 | -11.731セント |
第16倍音 | 4オクターヴ | 48半音 | C7 | ±0 |
音高差、平均律との差という項目で 2、4、8、16倍音(青文字)以外はすべて半端な数になっていますが、ここではあまり気にしないで結構です。
※平均律というのは1オクターブを12に均等に分ける、現代では一般的な音律です。倍音は基音に対して整数を掛けた周波数となりますから(その音列で作られたのが純正律)平均律とはずれが生じてしまいます。
音律にはほかにもピタゴラスやミーントーン等様々な種類があり、それぞれに長所短所があります。平均律は「様々な調で演奏できる」などのメリットが、オクターブ以外では純粋なハーモニーを得ることができないというデメリットより効用が大きいと思われるため現在では一般的に使われるようになっています。
ハモンドオルガンのドローバーはそれぞれが第○倍音という役目を果たしているということが理解できると思います。またラヴェル「ボレロ」のアレンジの場合、ホルン(基音)にたいして2つのピッコロはそれぞれが
- ホルン(C3)=基音
- ピッコロ1(G4)=第3倍音
- ピッコロ2(E5)=第5倍音
というような関係になっていたわけですね。
シンセサイザーの登場
さて倍音構成をコントロールして音色を生み出すことのできる装置、それが「シンセサイザー」ですね。シンセサイザーには機種によってさまざまな合成方式があるのですが、先ほどのサイン波を加算して行く方式は「加算合成方式」といいます。ドローバーでは現実的ではありませんが、コンピューターを使って加算合成を行い音色を作りだす機種に フェアライトCMI というモデルがありました(近年復刻版が登場しました・・あいかわらずお高いです)。
フェアライトCMI
ただアコースティック楽器をシミュレーションできる合成方式にはやはり限界があり、現在は本物の音をサンプリングし、デジタルデータとしてメモリーに取り込んで演奏できるサンプラーや、PCM音源方式のシンセが主流となっています。このフェアライトCMIもサンプラーとして使われたサウンドのほうが有名ですね(代表音色は「ジャン!」というオケヒット:ストラビンスキーの「火の鳥」という説あり)
The Art Of Noise
減算合成方式のシンセ
ここでは多くの(アナログ)シンセに採用されている「減算合成方式」という音作りを例に「倍音」について考えてみましょう。シンセの仕組みの詳細は別記事をご覧いただくとして、今回は非常に簡単に説明させていただきます。
シンセ(中でも原型となるアナログシンセ)は、音の元となるオシレーター(VCO=発振器)から出てくる「ピー」「ポー」「プー」という音を「フィルター(Filter)」と呼ばれるもので削って音色を変えるという仕組みです(いくらなんでも端折りすぎ?)またこれを「減算合成方式」と呼びます。音を削るから減算(引き算)というわけです。
MOOG「SUB PHATTY」のフィルターつまみ(一番大きいツマミを回して音色を変えます)
フィルターには、高い周波数成分を削るもの、通すもの・・等々・・色々と種類があります。開発費の関係でこのシンセにはフィルターは1種類しか搭載できない・・という場合は、大抵LPF(ローパスフィルター)というフィルターが選ばれることになるでしょう。このフィルターは文字通り、低い成分(ロー)を通す(パス)フィルターで、逆に言えば「高い成分を削る」というフィルターになります。
こんな感じでグリグリとツマミを回すとシンセらしいエグい音が出るわけですね(生楽器の音はまず出せませんが・・・)
VCOには、ノコギリ波、矩形波、三角波・・といった基本波形が用意されていますが、それぞれの波形とスペクトルを見てみましょう。使用したソフトはsony creative softwareのSound Forgeです。
ノコギリ波(SAW WAVE)
波形
ノコギリ波には基本周波数の偶数倍音と奇数倍音の両方が含まれています。つまり全ての整数倍音を含んでいるザラつきのある音です。シンセの基本波形といってもよく、バイオリン系の音色を作成する際によく使用されます。
矩形波(SQUARE WAVE)
波形
矩形波には奇数倍音が含まれ、偶数倍音がありません。ノコギリ波に比べると「丸い」感じがします。クラリネット等の木管楽器的な音色といえるでしょう。
三角波(TRIANGLE WAVE)
矩形波と同様、奇数倍音が含まれます。倍音の含有量も少ないので「丸い」感じがします。エレピ系の音色が作れそうですね。
では3つの波形をそれぞれローパスフィルターで徐々に高域をカットしていきました。その連続したスペクトルの変化を見てみましょう。(ソフトシンセのMini Vを使用)
ローパスフィルターで高帯域を削っていくとどの波形も最後は正弦波に近い感じになるのがお分かりいただけると思います。シンセにはこの他にもフィルターで削る帯域付近を強調する「レゾナンス(ピーク)」というパラメーターを持っています。同時にこれらを時間的に変化させることでさまざまな音色のバリエーションを作ることができるのがシンセというわけです。
こうしたシンセの波形を効果的に使っているのがこの曲。
The Manhattan Transfer - Wacky Dust (Official Audio)
もろアナログシンセ系の音色ですが、手弾&ダビングにより、非常に有機的な「ビッグバンド・サウンド」を生み出しています。矩形波がサックスセクション、ノコギリ波でトランペット&トロンボーンセクション。今聞いても非常にセンスが良いですね~シンセプログラミングはMichael Boddicker、シンセ演奏はGreg Mathieson。クレジットは" PERFORMED BY LITTLE GREG MATHIESON & HIS TUXEDO OSCILLATORS " と洒落てます。
★
というわけでシンセの基本となる「減算合成方式」ですが、残念なことにノコギリ波、矩形波といった波形を元にして作ることのできる音色には限界があり、リアルなアコースティック楽器はまず無理と言ってよいでしょう(例外あり)。リアル系音色は前述のとおり、PCM系や物理モデルといったシンセが主流となっています。
補足:奏法としての倍音コントロール
ハーモニクス、フラジオレット
金管楽器の場合、唇や舌の位置、息の吹き込み方等で音程を変えているのですが(リップスラーという奏法がありますね)、昔の管楽器は現在のようにバルブやスライドが無く、管の長さを自由に変えることができませんでした。したがって半音階だらけの高度な演奏は困難だったわけです。しかし16世紀あたりはバルブ無しでも倍音を自由にコントロールする名手が数多くいたのだとか・・(アサガオに手を入れることで音程コントロールもできます)
こうした管楽器の特性を応用して音域外の高い音などを出す特殊奏法がフラジオレット(オーバーブローとも)呼ばれます。木管楽器でも息の吹き込み方や音孔の押さえ方でオーバーブローを出すことができます。音楽の時間でリコーダーを吹いている途中、突然「ピー」と高い音が出てしまった経験は誰しもあると思いますが、あれもその一種かと・・
ギタリストの方にはお馴染みのハーモニクスですが、弦楽器の場合、弦に軽く触れて弦を弾く(擦る)と、場所によって基音とある倍音が制御され、高次の倍音を生み出すことが出来ます。
これはジャコ・パストリアスのフレットレス・ベースによるハーモニクス(右手の親指で弦を触っていると思われます)
ホーミー
正確には倍音の集合体である「フォルマント」を生じさせるモンゴル地方の唱法。
これもスゴイ
「天使の声」
大昔4人編成のブラスセクションのハーモニーを耳コピしていた時のことですが、なぜか5番めの音が聴こえて不思議に思ったことがあります。あとで知ったことですがこれは「天使の声」とも呼ばれる現象で、ハーモニーが形成されることで新たに倍音が生じ、それが音程として認識される現象です。
ブルガリアンボイス・・倍音出まくり?音がぶつかりまくってますね・・鳥肌モノです
★
というわけでシンセの音作りにも必須の「倍音」についてでした。前述のとおり世の中には「非整数次倍音」というのもあって、金属的な音やノイズなどに含まれています。アナログ・シンセサイザーの時代には「リングモジュレーター」という回路を使って「鐘の音」などの音をだすことができました。1980年台に登場したYAMAHAのDX-7に代表されるFM合成方式のシンセのおかげで「非整数次倍音」はたやすく作り出せるようになったのですが、この話はまた別の記事でご紹介したいと思います。
それではお疲れ様でした~
ビンテージシンセやキーボードをソフト音源で復刻したArturiaのArturia V COLLECTION X
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補足:
※実際は基本となる「基音」より上の周波数で含まれる成分を「上音」とよび、その一部が「倍音」です。
※倍音以外の上音が多い音色(打楽器やピアノのハンマーなどの打撃音等)を「噪音(そうおん)」と呼びます。
(注)整数倍ではない「非整数次倍音」というものもありますが今回はややこしくなるのでまた別の記事でご紹介いたします。