【今さら聞けない用語シリーズ】倍音(ばいおん)とは?

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音はサイン波の合成で作り出せる

さて、すべての音は複数のサイン波の組み合わせでできている・・・ということは、逆に考えると

「どんな複雑な音でもサイン波の組み合わせで作り出すことができる」

ということになりますね・・理論的には・・・

分解とは逆に、正弦波を合成すれば新たに音を作ることができる?↓

倍音(ばいおん)とは?

これを応用したのが(ハーモニック・)ドローバー式のオルガン。有名なのはハモンド・オルガンですが、NATIVE INSTRUMENTSのプラグイン「KOMPLETE9」に収録されているKONTAKTのライブラリー「Vintage Organ」で試してみましょう。

Vintage Organ

倍音(ばいおん)とは? KONPLETE_VintageOrgans

ドローバー式のオルガンはもともとはパイプオルガンの代用として考案されました。各ドローバーは16,8,4,etc.というフィート(' )という長さの単位が名称となっています(1フィートは約30cm)この製品では上鍵盤と下鍵盤それぞれに9本のドローバーが用意されています。

ハモンドオルガンの発音の仕組みですが、ピックアップの近くでトーンホイール(金属製の歯車)をモーターで回し、そこで生じる磁界変化の波を音源として出力するという方式を採用しています。そしてたとえば鍵盤を弾いた際、8' が引っ張りだされていれば 2.4m のパイプが鳴る・・というパイプオルガンの構造をシミュレートしています。8' の半分の長さの 4' を引っ張りだせば、1オクターブ上の音が加わるわけですね。なおドローバーがすべて引っ込んでいる状態では音は出ません(厳密には少し出てるかも)。

倍音(ばいおん)とは?wikipedia

倍音(ばいおん)とは?wikipedia

左にあるのはレズリースピーカーという専用ロータリースピーカー。

【ポイント】ある音の1オクターブ上の音は、倍の周波数となる。440Hz(A3)のオクターブ上の音は880Hz(A4)

それではドローバーの組み合わせでできる音色をスペアナで見てみましょう。すべて「ラ(A3)」の音を弾いています。

8'のみ

A=440Hz以外の倍音が含まれているのがわかります。「Vintage Organ」はおそらく実機の音をサンプリングしているのだと思いますが、このようにオルガンのトーンホイールから生じる音というのはすでに純粋なサイン波ではないのですね。(他にもいろいろなノイズも混ざっているのだと思われます)

倍音(ばいおん)とは?

16' を足す。

440Hzのオクターブ下=220Hzが頭角を現してきましたね。

倍音(ばいおん)とは?

16'+8'+4'+2'+1'の組み合わせ。

220Hz、440Hz、880Hz、1760Hz、3520Hz という5つのピークが生まれました。

倍音(ばいおん)とは?

フルドローバー(全部引っ張りだした状態)

倍音(ばいおん)とは?

2 2/3' というのはオクターブ上のさらに5度上(12度)の音程となります。

ドローバー式のオルガンでリアルなピアノの音は作れるのか?

「どんな複雑な音でもサイン波の組み合わせで作り出すことができる」ということは、理論的にはドローバーの数を増やしていけばどんな音でも作れそうな気がします。しかし主に以下の理由によってこれは現実には不可能と思われます(※)。

  1. 膨大な数(無限?)のドローバーが必要になると思われる(128本あればけっこういいとこまで出るらしいです・・)
  2. 倍音構成は時間によっても変化するので、それを再現するためのドローバーの出し入れが人力では不可能だと思われる。

例えば先ほどのピアノの音の倍音構成を思い出して下さい。音の鳴り始めはハンマーで弦を叩く「ゴンッ」という音も含まれています(これらはおもに非整数次倍音)。そして弦の振動する音が減衰するにしたがい、徐々におとなしい倍音構成に変わっていきました。このように音の始まりから終わりまで同じ波形(=倍音の含まれ方が均一)ということはアコースティック楽器ではありえないことなのです。

9本のドローバーで音を作るオルガンは、パーカッション(アタックをつける効果)、ロータリースピーカー、ビブラート、その他のエフェクトを使ってもやっぱりオルガンの音しか出ません・・・ただ、そこが非常に奥の深いところでもあるのですが・・・

(※)パソコンの力を借りればある程度可能。wikipedia アディティブ・シンセシス

【関連記事】

オルガンについて紹介しています:

【今さら聞けない用語シリーズ】モジュレーション系エフェクト<その2> ロータリー、トレモロ、パン

ラヴェルの「ボレロ」のアレンジ

近年ベートーベンの第九と同様、大晦日のカウントダウンで演奏されることもあるラヴェルの「ボレロ」。この曲は同じメロディーが楽器構成を変えて延々繰り返され、徐々に盛り上がっていき感動のエンディング・・といったドラマチックなアレンジが有名ですが、ラヴェルの驚くべきアイデアに注目してみましょう。

中盤、ホルン+グロッケンによるハ長調の主旋律に、ラヴェルは2本のピッコロで同じメロディーを「オクターブ+5度上」と「2オクターブ+3度上」に移調したラインを重ねているのですね(ハ長調のメロディーに、ト長調とホ長調に平行移調された音が加わるということです)。

つまりこれはあたかもパイプオルガンのパイプ(=ハモンドオルガンのドローバー)を使い分けるように、ピッコロを「倍音」として扱っているのだと思われます。

7:03あたりから

SampleTank3で再現してみました。ホルン、グロッケン、ピッコロ1,ピッコロ2、以上の4パートの受信チャンネルをすべて同一にします。

倍音(ばいおん)とは?

するとMIDI鍵盤を弾くと4パートが全部一緒に鳴るわけですね(実際にはホルンの音域だとPiccoloには低すぎて発音域外)

まずグロッケン・パートはオクターブ上げ(半音で+12)

倍音(ばいおん)とは?

ピッコロ1はオクターブ+5度(半音で+19)

倍音(ばいおん)とは?

ピッコロ2は2オクターブ+3度(半音で+28)

screenshot_517

バランスを調整します(これ非常に大事、グロッケンはなんとか聞こえるレベルがちょうど良いかも)

screenshot_519

・・これでボレロと同じ音が出ます。お暇な時にぜひどうぞ。

いずれにせよこの曲のアレンジはまさに「管弦楽の魔術師」という形容がふさわしいと思います。


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