モジュレーション系 :コーラス、フランジャー、フェイザー【今さら聞けない用語シリーズ】エフェクターってなに?<その1>

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こんにちはサカウエです。今さら聞けないエフェクター。モジュレーション系エフェクトは「揺らぎ感、厚みなどを付加する」エフェクターです。主なものは、

  • コーラス
  • フランジャー
  • フェイザー
  • ロータリー
  • トレモロ
  • パン

といったところでしょうか。メーカーや機種ごとにネーミングはさまざまですが、ギタリストにとっては非常に馴染みの深いエフェクターですね。

さて、まず最初に

  • コーラス
  • フランジャー

ですが、これらは遅延音すなわち「ディレイ」の仲間といえます。ただしディレイが「やまびこ(こだま)のように比較的時間が長く原音と区別できる音」であるのに対し、これらのモジュレーション系エフェクトは、超短時間の遅延音に「変調(モジュレーション)」を組み合わせたものと言えます。モジュレーションというのはここでは「音をくすぐって揺れを生じさせる」ものとイメージしてください。

【関連記事】リバーブ&ディレイについてはこちらを御覧ください。

【今さら聞けない用語シリーズ】リバーブとディレイ、エコー

では各エフェクトの特徴をご紹介してきましょう。

コーラス

BOSS CE-5

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合唱もコーラスと言いますが、エフェクターの「コーラス」は、ダブリング(演奏・歌など、同じフレーズを2回以上重ねて録音すると厚みが出る効果)のような効果を得ることができるものです。一人で何度もユニゾンパートを演奏したり歌うわけですね。

ダブリングについて

演奏(歌)をマルチトラック・レコーダー等に複数回録音する場合(同じフレーズでも)毎回タイミングや音程は微妙に異なります。その結果、温かみのあるリッチなサウンドが生まれるのはご存知かと思います。

ダブリングの極端な例:これは相当重ねてますね~ Enya - "Orinoco Flow"

イントロのピチカート風シンセ音はRoland D-50というのは有名です(D-50の復刻版!「D-05」で弾いてみました~鍵盤数の関係でボイシング異なってます)

こうしたボーカルやコーラス(注:歌のコーラスです)をダブリング&多重録音し、リッチなサウンドを生み出す方法は現在では完全に一般化しています。元祖といえば古くは、ヘンリー・マンシーニ、ジャッキー&ロイ、カーペンターズ、ビーチボーイズ・・・・あたりのサウンドでしょうか。是非一度は聴いてみていただきたいと思います。

マンハッタン・トランスファー:まるでベルベットのようなコーラス!

Extensions(US ORIGINAL ATLANTIC,SD19258)[The Manhattan Transfer][LP盤]
The Manhattan Transfer ザ・マンハッタン・トランスファー
ATLANTIC

コーラスのしくみ

コーラス・エフェクターは原音にディレイ(10~30msec程度)をかけ、そのディレイ音を「くすぐって」音程を上下させるものです。これにより擬似的にダブリングのような「コーラス効果」を生み出すものです。バケツリレーのような仕組みで遅延音を生み出すことのできるBBD(Bucket Brigade Device)素子が開発されたのがコーラスの誕生にきっかけになっています。

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コーラスにはディレイを複数の層にしてうねり感を生み出すもの、等々、さまざまな機種があります。

Cubaseの(ソフトウエア)コーラスプラグイン

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Rate:くすぐる周期の速さ、Feedback(出力を入力に戻しループさせる深さ)等々のパラメータを設定して、さまざまなタイプのコーラス効果を生み出します。

ギター+コーラス使用例は、下記のRolandさんの動画がわかりやすいです(英語だけどノープロブレム)

シンセサイザーのパッド音色などでもこのコーラスは大活躍しますが、ジャズ・ギタリストのジョン・スコフィールドは、深めのコーラスにモジュレーションをかけた「ウネウネ」サウンドを好んで使用しています。

コーラスの元祖ギターアンプ「JC-120」

たとえばDAWでオーディオトラックに録音したフレーズを別トラックにコピーし、片方だけコーラスをかけます。そしてミキサーでダイレクト音とコーラスのかかったトラックをパンポットでステレオに振るという処理をすると、単純にコーラスをかける場合とまた違ったニュアンスの広がり効果を出すことができます。

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ローランドの「JC-120」は、まさにこの方法を活用したギターアンプです。この「JC-120」は、なんと1975年の発売以来(若干の仕様変更はありますが)今も変わらず製造・発売されているという超ロングセラー・アンプ。そもそもコーラス・エフェクトの発祥はこのアンプだったと言っても良いでしょう。

「JC-120」

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さて、最初に「ダブリングのような効果を出すのがコーラス」・・と説明したにもかかわらず最後にこんなことを書くのは大変恐縮ですが・・・コーラスだけでEnyaのような「ダブリング効果」を再現するのは、まず現実的でないと考えてよいでしょう。それができるなら誰もダブリングなんて時間と労力のかかることはやらないわけです。コーラスは、あくまでゆらぎと厚みが付加された「コーラスサウンド」を再現するエフェクターと考えてよいでしょう。

補足:打ち込みの場合におけるダブリング効果の再現について

MIDIデータでシンセを鳴らしてダブリングのような厚みを出したいうという場合は、少々工夫が必要です。なぜならMIDIデータは何度再生しても、毎回「同じ演奏を行う」し、そのデータで演奏するMIDI音源(またはソフトシンセ等)も基本的には同じ音色で演奏するからです。

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その結果、演奏ごとに微妙な音の厚みは生まれないので、ダビングを繰り返しても「音量が増す」だけで「厚みは出ない」事になります。

中にはシンセ側の設定で、発音ごとに微妙な音程・音色変化を再現する機能(ヒューマン、アナログ・フィール、ランダム、ナチュラル○☓・・など)を持つ機種もありますが、やはりダブリング効果の雰囲気を再現するのは困難でしょう(上図のシンセはアナログなので若干雰囲気は出るかも・・・)

解決策

要はオーディオ・レコーディング同様打ち込みの場合も、タイミング、ベロシティー、ゲートタイム等々が微妙に「異なった演奏データ」を用意してそれぞれのテイクでシンセを鳴らしてやればよいのです。

そのためにはもう2テイク目をリアルタイム・レコーディングするのが一番簡単ですが、記録済のMIDIデータ(テイク1)の演奏を「ヒューマナイズ」してくれるDAWの機能を使用するという方法もあります。ただし、なかなか自分の求める「テイク2演奏」になってくれない場合も多く、2テイク目をリアルタイム・レコーディング後「手作業」で各トラックを修正する方法がベストだと思います。

なおシンセ等の音源側ですが、前述のランダムフィール等の機能を使用するのも大事ですが、チューニングを少々変えるとか、フィルター等で音色も若干変更してやると良いと思います。とにかく「演奏と音色」の両方で違いを出すということが大事ですね。

お手本:冨田先生のMOOGシンセ・サウンド

モノフォニック・アナログシンセの気の遠くなるようなダビングによって生まれた唯一無二のサウンドですね。


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