弦楽器リペア便りVol.3 ~楽器の健康診断をはじめよう! My楽器点検~

弦楽器リペア便りVol.3 ~リペアスタッフによる弦楽器豆知識ブログ~

こんにちは! 弦楽器リペア担当の吉村と申します。
弦楽器の豆知識や、お役立ち情報、お得なリペア情報などを定期的に更新いたします♪

弦楽器リペアマンのご紹介

吉村 梓(よしむら あずさ)

弦楽器リペアマン 吉村梓

■プロフィール
イタリア国立クレモナバイオリン製作学校卒業。学校では製作をWanna Zambelliに師事。
その後、島村楽器に入社し、ドイツバイオリンマイスター茂木顕の指導のもと、工房で修理を担当。

Vol.3 ~楽器の健康診断をはじめよう! 【My楽器点検】 ~

こんにちは! 最近過ごしやすい気温が続いていますね。春から心新たに楽器をはじめられた方も多いと思いますが、弦楽器も他のいろいろな楽器と同じで定期的なメンテナンスが必要だとご存知でしょうか?
特に弦楽器は、動くパーツ(ペグ・弦・駒・テールピース等)が多く、本体も木材でできているため、振動や環境によって楽器の状態が変わりやすいのです!ご自身では全く問題を感じていらっしゃらなくても、楽器は不調を訴えているかもしれません。

全体点検の方法については弦楽器リペア便りVol.1~弦楽器の点検って何を見ているの?~で簡単にご紹介していますので、今回はその先・・・全体点検後にお客様からご依頼いただくことの多いリペア内容をご紹介したいと思います!

実はお問い合わせのお電話でよくあるのが、「全体点検に出したいのですが、料金と納期はどれくらいかかりますか?」 という内容です。言い訳のように聞こえてしまうかもしれませんが、こちらからの回答は「見てみないと何とも言えません」 です。
というのも、弦楽器は技術者が実際に見てからでないと状態把握が難しく、もしお客様にとって何の問題もないように感じられても、技術者の視点からは問題点が見つかることが多いからです。そのため、全体点検の際はまずご予約いただき、楽器をお持ち込みいただくことをお勧めします。(全体点検は無料です。その後お見積りを出し、お客様とご相談の上、修理を行います。また、納期・価格は目安です。楽器の状態・リペア予約状況によっては変更することもございます)

とはいえ、大体の目安がないと予約の電話もかけにくい・・・
そんなお客様のために、今回は全体点検後によくあるリペア内容をセットにしてご紹介いたします!

MY楽器状態向上コース(納期: 3~4日) Vn・Va 税込¥8,640,Vc 税込¥10,044 

ペグスムーサー

ペグはスムーズに動いて細かい音程の調整ができ、かつ止まってほしいところで止まるのが理想です。ペグコンポジション・ペグソープ・チョーク等を使ってペグの回り具合を改善します。ペグとペグ穴の角度が合っていることが大前提になりますが、この処置をこまめに行うことで調弦がよりスムーズに行え、ペグも長持ちします。

ペグスムーサーセット

ペグコンポジションとペグソープは当店で販売もしております!
使用方法がよくわからない方は、お気軽にお問合せください。

駒足合わせ

駒の位置・角度を合わせたとき、駒足が表板に隙間なくぴったり合っているのが理想です。駒足がぴったり合っていないと、調弦や演奏の際に駒が倒れやすくなり危険です。
駒足と表板の接地面を注意深く見てみましょう。隙間はあいていませんか? 欠け・割れはありませんか?下の写真の駒を例に見てみましょう。左側の駒足の下に隙間があるため、駒が不安定な状態になっています。

浮いた駒足

欠け・割れがある場合は基本的に駒交換をお勧めしますが、ほんの少し隙間が開いているだけなら、駒足を(許容範囲までですが)削って合わせることができます!

細かく言えば駒にも様々な仕様がありますが、横から見たときに表板に対してほぼ垂直になるように立っているのが基本です。バイオリン・ビオラはテールピース側の面がより垂直になることが多く(下の写真左)、チェロは表板に対してアルファベットの『A』のように丁度駒の厚みの真ん中あたりが垂直になるように立っていることが多い(下の写真右)です。ただ、駒は倒れにくいように立てることが最優先なので、駒足がぴったりつかないようなら無理に角度の調整は行わないでください。駒足が浮いていると摩擦が減って駒が倒れやすくなってしまいます。

バイオリン駒立て方 チェロ駒立て方

調弦前・調弦後に駒の角度を直していただくことで、駒足の変形を最小限にとどめることができます。ご自身で行う自信のない方は、楽器を習っている先生等、駒の扱いに慣れている方に調整してもらう事をオススメします。

駒高さ(アーチ)調整

どの弦楽器でも、経年変化でネックの角度が落ちてくるという現象が起こります。非常にゆっくり起こることがほとんどなので気づかない方も多いのですが、ネックの角度が落ちると何が起こるのか・・・ 端的に言えば指板から弦までの間隔(下の写真、黄色い矢印部分)が開いていきます。間隔が広がると弦を押さえる力がさらに必要になるので、指や手の筋肉が疲れやすくなります。つまり、演奏しづらくなるということなのですが、これを回避するために行う処置が、駒高さ(アーチ)調整です。

弦高

駒の高さを下げることで、指板から弦までの間隔が縮まり、以前の弾きやすさが戻ってくるかもしれません。指板表面の形にもよりますが、1stポジションより3rdポジション以上のほうが違いを実感しやすいです。

オプション (別途料金が発生します)

・弦交換1セット  税込 ¥648 ・・・ 弦交換が不安な方に。お好みの弦をご用意ください。当店でもご購入いただけます。
・上ナット高さ調整  税込み ¥1,620 ・・・ 上ナットが高すぎて1stポジションから弦が押さえにくい方に。許容範囲で上ナットの高さを削って落とします。

いかがでしたか? 普段は気にされていなくても、注意して見てみると意外に違いをおわかりいただけるかもしれません。

1~2年点検に出していないくらいの方なら上記の範囲のリペアで収まる可能性が高いですので、気になることがあればお気軽に点検にいらしてくださいね。
また、2年以上点検・メンテナンスをされていない場合や年代物の楽器の場合等、上記に該当しない場合は別途お見積もりをお出しすることもございます。

次回のリペア便りもお楽しみに♪

大阪・梅田で弦楽器をお探しの方は島村楽器グランフロント大阪店にご相談ください!

バイオリン・チェロが初めての方も、ご経験のある方も、楽器選びからアフターケア、音のご相談、アクセサリー選び、はては演奏やレッスンのお悩みにいたるまでお困りの方はどなたでも、是非当店に足をお運び下さい。弦楽器に関わり続けて20年の弦楽器担当をはじめ、当店講師が皆様の音楽ライフをサポートさせて頂きます。試奏もお気軽にできます!ご来店お待ちしております!

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店頭での価格表記・税表記・在庫状況と異なる場合がございますので、ご注意下さい。

この記事を書いたスタッフ

グランフロント大阪店吉村

クレモナ国際バイオリン制作学校卒業後、島村楽器に入社し修理を担当。弦楽器を楽しむ皆様を技術面からサポートいたします!何でもお気軽にご相談ください!

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