【徹底検証】エフェクター徹底検証その2 ~ブティック系歪みエフェクター①~
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今回は近年台頭しているブティック系(歪み)をレビュー形式で取り上げてみたいと思います。
「ブティック(boutique)」という言葉は、フランス語で「(小さな)専門店・業者」という意味らしいですね。
本来は「店」のことを指したのですが、現在は業者や機関も含まれ、楽器業界ではこだわりの少量生産エフェクターなどを指して「ブティック系」と呼んでます。
第二弾「ブティック系歪み4機種」
今回は島村楽器で人気のあるブティック系エフェクター4機種(「Made In Japan」3機種と「from U.S.A.」1機種)を鳴らし比べてみましょ~!
サイズはすべてMXRサイズ。それぞれにこだわりを詰め込んだつわもの揃いです(ワクワク)
今回も使用するギターはHistory GH-SV/C。
アンプはMarshall JCM2000 TSL100を使用、ハンディレコーダーで録音しています。
ギター→アンプ直のサウンドは前回同様こちらです。基準の音として参考にして下さい。
https://soundcloud.com/shimamuramusic/ghsvc-nml-bip?in=shimamuramusic/sets/wnuou6ij0tiv
HEAT BLASTER HBL3(Providence)
1個目はProvidenceのHEAT BLASTER。
~Providenceの歴史~
Providence(プロヴィデンス)は、ブランド第一主義を貫く(株)パシフィクス(1996年設立)のブランドで、ミュージシャン、エンジニアなど「現場」の要望を形にしています。同ブランドは2000年ごろからオリジナルのエフェクターを製作し始め、A/B BOXやPECシリーズなど、オーディオ・ルーティングで確固たる地位を確立します。今回取り上げるHEAT BLASTERはそんなパシフィクスが厳しいテストを繰り返しながら生み出したDISTORTIONペダルです。
トゥルー・バイパス仕様のディストーションですね。コントロール類は「DRIVE」「TONE」「LEVEL」に加え「BASS BOOST」が装備されています。さらにこのLEDは、エフェクトのON/OFFだけでなく、バッテリーの電圧が7V以下になると消灯し始める「マルチ機能」を搭載しているとの事。
GAINレンジ(BASS BOOST OFF)
ではさっそくいってみましょう。まずはDRIVEの効きをチェックしてみます。
https://soundcloud.com/shimamuramusic/heatb-g10-t5-bboff-bip
生々しい歪みです。潰れすぎない、心地よいディストーションですね。
チューブアンプをドライブさせた時のような、ピッキングニュアンスも表現してくれる感じです。
BASS BOOST ON
では同じセッティングでBASS BOOSTをONにしてみるとどうでしょうか。
https://soundcloud.com/shimamuramusic/heatb-g10-t5-bbon-bip
低域がブーストされただけでなく、中低域まで一緒に持ち上げられた感じです。
太さをキープしながらバンドアンサンブルに埋もれないサウンドですね。
TONEレンジ
次にTONEのレンジをチェックします。まずはTONEを「0」に絞って鳴らしてみます。
https://soundcloud.com/shimamuramusic/heatb-t0-bip
TONEを絞りきっても音の輪郭が崩れません! しっかり立ち上がってくれるサウンドですね。
TONEを全開にしてみましょう。
https://soundcloud.com/shimamuramusic/heatb-t10-bip
TONEを全開にしても耳障りな感じは受けません。 「プレゼンス音域に混じる不要な成分をカットしながらも必要な倍音成分をキープ」とメーカーサイトにありますが、確かにそういった印象です。
ディストーションとオーバードライブの中間に位置するような歪みだと思います。
歪みの質が非常に高いので、これ単体でももちろん良いですが、違った歪みと一緒に使い、ブースター的に使用しても面白いのではないでしょうか。
TONEに関しては製品のコンセプトが優先されているので、効きは狭めです。
この製品のトゥルー・バイパス回路はかなり考えられており、「シングル・コンタクト・トゥルーバイパス・サーキット」と呼ばれる、OFF時に1回路しか通らないサーキットになっています。
そのため、ケーブルを多少長めに引き回してもノイズがのりにくくなっているのも注目すべき点ですね。
Providence
HEAT BLASTER HBL-3
メーカー希望小売価格 (税込) ¥26,180 (税抜 ¥23,800)
販売価格 (税込) ¥22,330 (税抜 ¥20,300)
RUBY STONE(SHIGEMORI)
ピンク色でかわいい見た目のSHIGEMORI製オーバードライブ・ペダルですね。
~SHIGEMORIの歴史~
「凛として時雨」のTK氏を始め、そうそうたるミュージシャンがSHIGEMORI(シゲモリ)製品を愛用していますが、そんなSHIHEMORIエフェクターを製作するのが名古屋にあるエムテック(有)。 少人数で高いクオリティーのペダルを生み出しています。 SHIGEMORI製品は、サイトにも詳細が載っておらず、やきもきしている方もいるかもしれません。 是非近いうちに当サイトで「SHIGEMORI特集」を組んで、その秘密を覗いてみたいと思います!
SHIGEMORIの代表機種といえば「STONE DRIVE CUSTOM」でしょう。数々のミュージシャンに愛されている製品ですが、こちらは10万円を超えてくる代物。さらに筐体も大きい! そこでSHIGEMORIから発売されたのがこのRUBY STONEです。
コントロールはシンプルに「gain」「tone」「vol」。しかしその筐体が国産高純度アルミモノブロックからの削り出し、トゥルーバイパス方式などSTONE DRIVE CUSTOMにひけを取らないスペック。ぜひその実力をチェックして下さい!
GAINレンジ
まずはGAINの効きをチェックします。
https://soundcloud.com/shimamuramusic/rubys-g10-bip?in=shimamuramusic/sets/wnuou6ij0tiv
GAINを上げてもそこまで歪みすぎず、しっかりピッキングニュアンスが出てくれます。ピックを当てた角度さえも感じられるような生々しい感じです。
TONEレンジ
次に、TONEの幅をチェックします。GAINはフルのままでTONEを思いっきり絞ると...
https://soundcloud.com/shimamuramusic/rubys-t0-bip?in=shimamuramusic/sets/wnuou6ij0tiv
丸いながらも、しっかり芯が残って音が後ろに行き過ぎない感じです。
クリアさを保ちつつクリーミーにできますね。
ではTONEを全開にしてみましょう。
https://soundcloud.com/shimamuramusic/rubys-t10-bip?in=shimamuramusic/sets/wnuou6ij0tiv
TONE全開でも耳に痛すぎない感じで、それでいてしっかり音が明るくなってくれるような、でもマイルドさも残しているような... 表現が難しいですが、非常に気持ちイイサウンドですね。
とにかく、「自然」というワードがしっくりくるペダルです。
歪み、トーン、つまみをいろいろ変化させても、ピッキングニュアンスがしっかり出てくれて、ギタリストが出したい音色、表現を邪魔しないで色付けしてくれますね。
トゥルー・バイパスなので、エフェクターをRUBY STONEの後ろに何個かつなぐのであればバッファーを置きたいところですが、RUBY STONEの音色を邪魔しないバッファー選びが必要になります。
SHIGEMORI
RUBY STONE
メーカー希望小売価格 オープンプライス
販売価格 (税込) ¥41,800 (税抜 ¥38,000)
刻 KIZAM/KZM-1(Shin's Music)
続いてまいりましょう、Shin's Musicの「刻 KIZAM」です~
あまり広告も強化されていないのに、圧倒的な知名度を誇るShin's Music。
葛飾区にある工房でミュージシャンの要望に応える機材を手作業で作っている鈴木伸一氏が手がけるブランドですね。
鈴木氏がエフェクターの製作を本格的に行い始めたのは平成に入ってからだそうです。
数々のミュージシャンの機材を手がける鈴木氏のコンセプトは「アンサンブルの中で本領を発揮するものを作る」。 「Shin'sのペダル単体では面白みがない」とまで言い切るShin'sペダルの実力やいかに?
MarshallやOrangeに代表される大型ブリティッシュアンプのトーンを再現すべく生まれたペダルです。
小さな筐体の中に入れられた回路も、徹底的にシンプルな回路になっているようです。
それにより原音に忠実なトーンが生まれるとの事。
コントロール類も「GAIN」「PRESENCE」「VOL」とシンプルですね。
日本製というこだわりからか、ペダル側面には日の丸が...
では試していきましょう!
GAINレンジ
まずはGAINレンジですね。GAINを思い切り上げてみましょう。
https://soundcloud.com/shimamuramusic/kizamu-g10-s-bip?in=shimamuramusic/sets/wnuou6ij0tiv
この歪み感はすごいですね。「ブリティッシュ」というワードからは想像でいないくらい、ガッツリ歪んでくれます。
それでもピッキングニュアンスを損なわないのがうれしいです。
少しだけ香るファズっぽさが、ブリティッシュの「あの時代」を髣髴させてくれて、たまりません。
ではGAINをすこし落として、ピッキングのニュアンスがさらに出るか、チェックしたいと思います。
ツマミは「7」程度です。
https://soundcloud.com/shimamuramusic/kizamu-g7-bip?in=shimamuramusic/sets/wnuou6ij0tiv
続けていってみましょう。 GAIN「4」程度。
https://soundcloud.com/shimamuramusic/kizamu-g4-bip?in=shimamuramusic/sets/wnuou6ij0tiv
どうですか? かなりGAINの幅を感じることが出来ます。
特に「4」あたりにGAINを持ってくると、ナチュラルな歪みが心地よく響いてくれますね。
実はワタクシ、その見た目から、かなりハードな印象を持っていました。
鳴らしてみると確かにハード! でもハードさの中に繊細さも併せ持つような、不思議な魅力のあるペダルでした。
「KIZAM」の名のとおり、ザックザク刻むようなリフにも合いそうですね。
ニュアンスもしっかりでるので本当に幅広く使えるのではないでしょうか。
Shin's Music
刻 -KIZAM- KZM-1
メーカー希望小売価格 (税込) ¥31,900 (税抜 ¥29,000)
販売価格 (税込) ¥27,610 (税抜 ¥25,100)
Riot(Suhr)
最後は紫の筐体がとても高級感のあるRiotですよ~
70年代にミュージシャンとして活動していたJohn Suhr。彼自身が最高のトーンを得るためにギターを自作したのが今日のSuhrのスタートともいえます。
彼はそのギター製作の腕を武器にエリック・クラプトンやマーク・ノップラー、ピーター・フランプトンといったミュージシャンをクライアントとしてさらに実力をつけ、エレクトロニクスの知識も活用しながらCAEの名機『OD-100』をプロデュースします。 そしてFender Custom Shopのクラフトマンを経て97年に工房を開いたJohn Suhrはギターと共にアンプ、エフェクト・ペダルの製作を精力的に行っています。
Suhr 『Riot』はツマミはシンプルな「Dist」「Tone」「Level」の3つですが、「Voice」スイッチを搭載。
3段階のボイシングで幅広い音作りを可能にしていますね。
また、「Fx-Link」端子を装備してエフェクトのON/OFF切替を外部から行えます。
これはスイッチング・システムの構築時に便利ですよ~
3つのボイシング・スイッチが非常に気になるRiot、音を聞いてみましょう!
Distレンジ(Voice 1)
まずはDistのレンジをチェックです。Distツマミを目いっぱい上げてみましょう。
Voiceスイッチは一番左の「1」に設定します。
https://soundcloud.com/shimamuramusic/riot-d10-v1-bip?in=shimamuramusic/sets/wnuou6ij0tiv
う~ん。イイ感じ。
アンプを歪ませたような、自然なドライブ感です。
Distレンジ(Voice 2)
次にVoiceスイッチを「2」(真ん中)にしてみましょう。
https://soundcloud.com/shimamuramusic/riot-d10-v2-bip?in=shimamuramusic/sets/wnuou6ij0tiv
少し中域が目立ってきました。音像が前に出てくる感じです。
Distレンジ(Voice 3)
次にVoiceスイッチ「3」(右側)です。
https://soundcloud.com/shimamuramusic/riot-d10-v3-bip?in=shimamuramusic/sets/wnuou6ij0tiv
中域をバッサイ削ったかのようなドンシャリ・サウンドですね。
全体的な歪みの質感もCAEのOD-100に近い、モダンな印象の歪み。
歪んでいるにもかかわらず、程よい音の分離が感じられます。
TONEレンジ
ではTONEを絞ってみるとどうなるでしょうか?
https://soundcloud.com/shimamuramusic/riot-d10-t0-bip?in=shimamuramusic/sets/wnuou6ij0tiv
イイ感じのクリ-ミートーンですね。甘くなりすぎないというか。
やはりブティック系の歪みはTONEの効きがいいだけでなく、全体的に「コモリすぎない」という印象です。
次にTONEを全開にしてみます。(ゴメンナサイ、画像撮り忘れです...)
https://soundcloud.com/shimamuramusic/riot-d10-t10-bip?in=shimamuramusic/sets/wnuou6ij0tiv
ガッツリ明るい感じです。これもOD-100を彷彿とさせますね。
見た目と音がマッチしていると感じたのはワタクシだけでしょうか?
今回の4機種の中では1番モダンな印象です。
「優等生な音」と言われたりしていますが、荒々しさもしっかりありましたね。
しっかり歪ませて、コード感も出したい、ってことならRiotが良いと思います。
Suhr
Riot Distortion
メーカー希望小売価格 (税込) ¥41,800 (税抜 ¥38,000)
販売価格 (税込) ¥37,620 (税抜 ¥34,200)
検証後記
と、ここまで5種類の定番オーバードライブを検証してきました。いかがでしたか?
定番ゆえに皆様の知っている情報も多かったかもしれません。「原点回帰」の意味も含めて参考にしていただければと思います。
エフェクターは、プレイヤーが使用するものではあるのですが、こうして様々なキャラクターのペダルを試すと、ペダル側からインスピレーションをもらえることもあります。
「あ。この音、こんなフレーズでも気持ちいい」なんてことも起こるかも。
好みのペダルを探しているうちに、自分のプレイスタイルが変わってくることもあるかもしれませんね!
スペック比較
※「-」はメーカー表記ナシ スペック表はクリックすると拡大します。ペダル選びの参考にしてみてください。
今回のブティック系4機種のご注文は、島村楽器オンラインストア、および島村楽器各店までお気軽にどうぞ。