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【徹底検証】せめぎ合う漆黒ボディ! アンプ・ブランドが放つオーバードライブ「Bad Cat / Siamese Drive Black」「MXR / EVH 5150 Overdrive」「Dr.Z / Z-Drive」

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1977年に世界で初めてのオーバードライブ・ペダル「BOSS OD-1」が発売されて以来、その後、さまざまなブランドから名機が誕生し、音楽シーンを彩ってきたオーバードライブ。

エフェクター専門のブランドもあれば、マーシャル/フェンダー/ヴォックスなどのように、アンプの個性を筐体に詰め込んだエフェクターを製造するブランドも多く存在します。
僕のように自前アンプを所有できる財力と地位と名誉もないギタリストにとっては非常にありがたいです。

というわけで今回は、アンプ・ブランドが製造するオーバードライブに注目し、2015年に発売されたオーバードライブ界のダーク・ホース3機種を徹底比較してみました。

同サーキットの2 in 1で多彩な音色を演出「Bad Cat / Siamese Drive Black」

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販売価格: (税込) ¥27,280 (税抜 ¥24,800)
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発売日:2015年11月15日


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2014年7月、ブティック・アンプ・ブランドのBad Catが手がける初のエフェクターとして脚光を浴びた「Siamese Drive」。
当時はゴールドがかったカラーで高級感がありましたが、「Siamese Drive Black」は歪み系ペダルらしいワイルドな漆黒ボディを採用。
同時にキズや汚れにも強い耐久性と、内部回路にもアップデートがなされています。

「Siamese Drive Black」は、真空管アンプ特有のウォームかつ重厚な歪みを出力するデュアル・スタック・オーバードライブ。
最大の特徴は、2つのサーキットをひとつの筐体に詰め込んだ2イン1仕様。
つまり左チャンネル/右チャンネル/両チャンネルをオンにした計3種類のサウンドを生み出すことが可能で、まったく異なるセッティングを使い分けたり、片方をメインの歪みにしてもう片方をブースター的に踏んだりと、シンプルでありながら多彩なサウンド・メイキングを実現します。

しかも、オンにすると対応チャンネルの“悪猫ちゃん”の両目がピカッと光るイカした仕様。
スイッチを踏むだけで、はっきり言ってかなり快感です。

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ツマミはGAIN、TONE、OUTPUTのみ。
GAINでサーキットのクリップと歪みの量をコントロールし、TONEで高音域の量をコントロール。OUTPUTで20dBのブーストが可能です。
さらに、筐体背面にはお馴染みのBad Catロゴが施されています。
こういうさりげないデザインも好印象です。

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検証音源では、バッキング・サウンドを歪みを抑えたセッティングで作り(左チャンネルのみ)、リード・サウンドでは右チャンネルのOUTPUTを上げてブースター的に同時使用。

ツマミは、左チャンネルがGAIN 10時方向、TONE 2時方向、OUTPUT 8〜9時方向に設定。
右チャンネルがGAIN 9〜10時方向、TONE 2時方向、OUTPUT 2時方向に設定。
中音域がとてもスムースで、ピッキング・ニュアンスの“忠実性”も本機の魅力と言えるでしょう。

思わずエディ・スマイル!な至高の歪み「MXR / EVH5150 Overdrive」

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メーカー希望小売価格: (税込) ¥41,800 (税抜 ¥38,000)
販売価格: (税込) ¥31,350 (税抜 ¥28,500)
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1972年、アメリカにて創業されたMXRはギター/ベース用のエフェクター・ブランドですが、ヴァン・ヘイレンのエドワード・ヴァン・ヘイレン(以下:エディ)とフェンダーの共同開発によって設立されたブランドEVHはアンプも製造しているので、やや強引にピックアップ。

これまで、エディとのコラボレーションによって誕生したペダルには「EVH90 Phase 90」「EVH117 Flanger」「EVH-95」などがありますが、いずれもただ名前を冠しただけではない非常に“実戦的”なペダルとして高評価を得てきました。
エディと言えば、あの無邪気な笑顔から放たれる心地良い歪みサウンドが印象的ですよね。

彼自身そのサウンドを“ブラウン・サウンド”と形容しており、図太く抜けのある歪みを追求した人も多いはず。
エディ監修による「EVH5150 Overdrive」の登場は、エディ・サウンドの探求者はもちろん、ケンタウルスやビッグマフ系のサウンドを好むプレイヤーにとっては最高に“ハマる”ペダルであることは間違いなさそうです。

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「EVH5150 Overdrive」は多段のMOSFETを使用しており、エディ・サウンドを彷彿とさせるチューブ・アンプ・ライクなサウンドを出力。

BASS、MID、TREBLEの3バンドEQは、劇的に音質が変わるというよりも、欲しい音域、削りたい音域を絶妙にコントロールできるという印象。
GAINツマミはそこまで上げなくてもかなり歪みます。

イメージ的にはディストーションに近いですが、あくまで“オーバードライブ”と謳っているところにこだわりを感じさせます。

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本機の大きな特徴が、BOOSTスイッチとGATEコントロール。
BOOSTスイッチは極力音質を変えずにゲインを持ち上げる感じで、GATEコントロールは彼も愛用するMXRのノイズ・ゲート「Smartgate」の構造を採用しています。

無音時のノイズはしっかりとカットされ、タイトなバッキング・プレイはより鮮明に聴かせることができます。
ゲインを上げるほど、その効果を実感することができるでしょう。

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さらに各ツマミには蓄光のラインが入っているため、暗いステージでも目盛りの視認性を高めてくれます。

検証音源では、ノイズ・ゲートをオンにしつつ、MIDを若干カットしたバッキング・サウンドと、MIDを上げつつさらにBOOSTスイッチをオンにしたリード・サウンドを作りました。
ツマミは、バッキング・サウンドがOUTPUT 2時方向、BASS 2時方向、MID 10時方向、TREBLE 12時方向、GAIN 12時方向に設定。
リード・サウンドは、OUTPUT 2時方向、BASS 2時方向、MID 3時方向、TREBLE 12時方向、GAIN 11時方向に設定。

クリッピングの切替が可能な「Dr.Z / Z-Drive」

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メーカー希望小売価格: (税込) ¥62,700 (税抜 ¥57,000)
販売価格: (税込) ¥53,350 (税抜 ¥48,500)
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1988年、アメリカはオハイオ州クリーブランドにて産声を上げたアンプ・ブランドの「Dr.Z」。
創立者であるドクターZことMike Zaite氏は、ギタリストではなくドラマーで、さらに医療電気器具業界出身という異色の経歴の持ち主です。

マーシャル、フェンダー、ヴォックスというアンプ界の重鎮をリスペクトしつつ、そのどれとも違うキャラクターを持つ製品群は、正真正銘の“ハンドメイド・アンプ”を具現化したような素直かつストレートなサウンドを生み出します。
同じくクリーブランド出身のギタリスト、ジョー・ウォルシュ(イーグルス)からのオーダーを契機に、その名は徐々に広まっていくことになります。

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そんなDr.Zが満を持して放つエフェクター、それがEarthquaker Devicesとの共同開発によって誕生した「Z-Drive」です。
最大の特徴は、ゲルマニウム・クリッピングによるGreenチャンネルと、MOSFETクリッピングによるRedチャンネルをスイッチで切り替えられる点。

ゲルマニウム・クリッピングはロー・ゲイン、MOSFETクリッピングはハイ・ゲインという仕様で、Greenチャンネルは明るくクラシカルなニュアンスの歪み、Redチャンネルは身の詰まったタイトなキャラクターが身上。
両チャンネルともに、クリーンに近い段階から心地良いコンプレッション感があります。

クリーンからクランチまでの調整幅が広いので、基本は踏みっぱなしでベーシックな歪みとして重宝できそうですが、Driveを上げるとやや音の粒は荒くなるものの図太いリード・トーンを得ることができます。
特にツマミ1時方向から歪みがグッと上がる印象です。

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ちなみに、両チャンネルの同時使用は不可で、チャンネルの切り替えは左下のChannelで行います(Greenチャンネル時は緑、Redチャンネル時は赤に点灯)。
右下のスイッチはBypassとなっています。
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さらに、各チャンネルには低音域をカットすることでブライトなトーンを得るCutスイッチを装備。
3バンドEQはアクティブなので効きも抜群で、ブースト方向(12時以降)にすると歪みも増していきます。
レベルは大きめなので、ブースターとしても有用できそうです。
EQも歪み量を左右するため、音作りの難易度はやや高めですが、裏を返せばフレキシブルな音作りが可能とも言えます。

検証音源は、GreenチャンネルとRedチャンネルの2パターンを用意。
バッキングは、コードを弾いたときだけ歪むような微妙なクランチ・サウンドに設定(Cutスイッチはオン)。
リード・サウンドでは、DriveとMiddleを上げて適度なコンプレッション感とサステインを演出しています。
バッキングはアルペジオでも音が潰れない明瞭な音像、リード・サウンドはザラっとした質感の印象があります。

バッキング/リード・サウンドでセッティングを変えており、Green/RedチャンネルごとのEQは固定しています。
バッキングのEQは、Treble 11時方向、Middle 10〜11時方向、Bass 12時方向。
リード・サウンドのEQは、Treble 11時方向、Middle 1時方向、Bass 12時方向。

GreenチャンネルのバッキングはDrive 12時方向、Level 9時方向で、リード・サウンドはDrive 3時方向、Level 9時方向に設定。
RedチャンネルのバッキングはDrive 9時方向、Level 9時方向で、リード・サウンドはDrive 10時方向、Level 11時方向に設定。


3モデルの試奏を終えて

三者三様の輝きを放つオーバードライブの比較、いかがでしたか?
価格帯的にはミドル〜ハイ・クラスのモデルですが、筐体ひとつでサウンドやプレイのニュアンスを激変させる“オーバードライブ”という存在価値の大きさを改めて認識させられました。
個人的にはEVHのギターを所有しているだけに「EVH 5150 Overdrive」には無条件で惹かれましたが、いずれも素晴らしいモデルであることは間違いありません。

多様化する音楽ジャンルとともに、日進月歩の成長を遂げてきたオーバードライブ。
2016年も、アンプ・ブランドによる最新ペダルが市場を賑わせてくれそうですね!

文/溝口元海

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