【徹底検証】「アンプの王道」Marshallを改めて知る! Part1 ~Marshallを知る~
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MarshallのMarshallたる所以を探る!
これまでMarshallの歴史をざっと見てきました。これだけでもいかにMarshallが音楽の歴史に多大な影響を及ぼしたのかが分かります。またMarshall自身もその時代の影響を受けて進化して来たとも言えます。しかしMarshallサウンドとはいったいどんなものなのでしょう? 「Marshallの音」と言えばギタリストのほとんどが想像出来ますし、そのニュアンスや鳴らした時のイメージまで浮かんでくる方も多いのではないでしょうか? でも定義するとなると難しい。一言で表せるならそれに越した事は無いのですが...
Marshall日本輸入代理店、ヤマハミュージックジャパンに聞いてみる
というわけでやって来ました、ヤマハミュージックジャパン。
地下スタジオに入って行って目にしたのは...
おぉぉ... スゴイ。これならMarshallサウンドを一言で表してくれる人が出てきそうだ。
こちらがMarshallの国内担当、渡辺氏。アーティストサポートから何から、Marshallの事ならドンと来いという方です。
宜しくお願いします。
Marshall 国内担当 渡辺氏にぶつける10の質問
1.今では全国のスタジオやライブハウスで定番となったMarshallアンプ。最初に日本に入ってきたのは何年頃なんでしょう?
1973年、ヤマハの前身である「日本楽器製造株式会社」が輸入代理店になりました。ちょうどRose-Morris社がイギリス海外に出荷していた時代、「UNIT 3」などのセットを入荷したのが最初だと思います。
じゃあ最初から今まで、ず~っとヤマハさんが代理店なんですね!
そうです。Marshallとのお付き合いはもう約40年になるわけです。
2.なぜMarshallアンプはそれほどまでに定番になったのだと思いますか?
「ロックというジャンルと一緒に育ったから」でしょう。
Marshallが生まれるときは「大きな音」が求められてたんです。VOX、Fender、Suproなど良いアンプはあったけど音量は出ないって事でFender Bassmanを基にジムが作ったわけですよね。その時に生まれたのがJTM45であり、ヘッドとキャビネットのセパレートです。音の大きさはスピーカーの数と口径に比例するので、同じ100wでも1発より4発の方が大きくなります。そういったキャビネットを使用したMarshallの音を利用してロックが育って行ったわけです。
↑JTM45の初号機。シリアルナンバーは000001-Aで#1と呼ばれている
時代背景もMarshallサウンドを求めていたわけですね?
Marshall社の設立が1962年なので、いわゆる「ロックンロール」がまだ無い時代。そこからThe Who、Eric Clapton、Jimi Hendrix...と彼らがMarshallを使用し始めてロックが育っていったんですよね。
ジミヘンがMarshallを使用し始めた話も面白くて、彼の本名がJames Marshall Hendrix、一方ジム・マーシャルの本名がJames Charles Marshall。ジミは「同姓同名のアンプを使ってみよう」って事で使い始めて、1959を中心にロックが回り始めて行った時代です。そこからブースターが出て、ファズが出て...、歪まない1959をどうやって歪ませるかをみんな四苦八苦してサウンドが構築されて行ったんです。そういった輪の中心にMarshallアンプがあったのが事実ですよね。
3.Marshallはこれまでのシリーズの中でモデル名もいろいろありました。Marshallのモデル名の付け方に法則性はありますか?
最初のモデルはJTM45。これはモデル名です。それから1959然り、4桁の数字でモデル名の製品が発売されて、その後JCM800が生まれました。これはシリーズ名で、モデル名は2203等4桁の数字です。JCM900を経てJCM2000が出ますが、そこでは更にDSLやTSLシリーズに分かれて、4桁のモデル名が付きます。こういった名付け方に法則性はあるのでしょうか?
1962なんかがありますが、これは62年発売じゃないんですよね。他のモデルもそうです。他でも1959があって、それに合わせたキャビネットの名前を1足した数字、1960にしてみたり。そういったように非常に機械的に付けられていた様です。詳細は今となっては定かでは無いんですが... これらは販売代理店のRose-Morris社が付けたんだと言われています。
Rose-Morris社から離れた後に発売されたJCM800からはMarshall独自で名づけ始めたので、ジムの車のナンバーからなど、分かりやすくなりましたね。2203からは名前に意味を持ちました。「マスターボリューム搭載の100wモデル」という意味です。
あ、ちなみに2203というモデルはJCM800シリーズが発売される前からMVのシリーズで発売されていたんですよ。JCM800シリーズの中に1959というモデルもありましたし。(この時1959は100wでマスターボリューム無し、4インプットという定義を持ちました)
※このあたりの名付け方は、記事内でも書きましたが真相は今では藪の中です... Marshall創世記メンバーはいまやMarshall社の中でもほとんどいない時代なので。
4.いろんなモデルが50w、100wそれぞれの仕様で発売されてきました。その違いは音にどう影響を与えるのでしょう?
一言で言うと「音」です。
同じ筐体で50wと100wを発売してくるんですよね、Marshallは。(他社もそうかもしれませんが) なぜかと言うと、そういった音を求められるから。50wを愛好しているミュージシャンの代表格がJeff BeckとYngwie Malmsteenです。彼らは50wしか使わない。それは50wでしか出せないサウンドがあるから。
50wのサウンドというのは、ワット数が低いので歪み始めるポイントが早いんです。あとは音がタイトで、まとまっていて、速いパッセージが付いて来やすいという印象です。
逆に100wですが、実効出力は50wの2倍ですが、音量は2倍にはならないんです。だいたい50wは100wの2/3くらい、もしかしたら3/4くらいの音量かもしれません。音量的にはそのくらい変わらないわけですが、ニュアンスが変わる。100wは派手で、音が広がっていく印象ですね。悪く言えば暴れる感じ。
そういった音質的な違いが明確にあって、Marshallはいつも100w、50wそれぞれをラインナップしてきます。
5.Marshallアンプはイギリスと日本では電圧を変えていますか? (イギリスの電圧は、220-230V。日本は100Vです。)
はい、トランスが違います。Vintageシリーズに関しては当時のサウンドをリイシューしているので、120Vのトランスが載っています(アメリカと同仕様)。それ以外はすべて100Vで日本向けのトランスが載っています。
たとえばイギリスで230V電圧の状態でMarshallを聞くのと、日本で100V電圧Marshallサウンドを聞くのとでは音が変わるんでしょうか?
本当の本当に突き詰めて厳密に言うと、変わります。しかし、ブラインドテストで分かる人は少ないでしょうね(笑)
(笑)どうなんでしょう? パブロフの犬的に、「今は電圧が高い状況だ」と分かっているからそう聞こえるという事はないんでしょうかね?
そうかもしれないですね。Eddie Van Halenのブラウンサウンドだって長年ボルテージを上げてるって言ってきたから、みんなちょっとずつ昇圧してトランス壊して...ってやってきたのに、ここに来ていきなり「下げてた」ですからね(笑)
6.アンプやエフェクターなど、Marshallにインスパイアされた製品がたくさん発売されています。Marshall社はそれらをどう見ているのでしょう?
いやぁ、なんとも思っていないでしょう(笑)
そういった質問をした事はないですが、「だったらMarshall使いなよ」って思ってると思います(笑)
じゃあGuv'nerの復刻とかお願いしたいところですよね!
ぜひそうして欲しいですね(笑)
7.ということで今後、新たなMarshallエフェクターの可能性は?
無いと思いますけど、Marshallっていきなり発表したりする事もあるんで何とも言えません(笑)
でも今年はあっと驚くような新製品も出る予定があるので楽しみにして頂いて良いと思いますよ!
...発売が遅れなければ(笑)
8.ズバリ、Marshall サウンドを定義してください。
「音の抜け」「音の混ざり」「どれを使ってもMarshallサウンドがする」の3点ですね。
音楽をやっている人たちって、自己表現をしたいんだと思うんですけど、そういった時にアンサンブルの中で音が抜けるって、大切ですよね? 他のベースやドラム、キーボードなんかが鳴っていて埋もれちゃうと表現できないですよね? それが無いんですよ。
それとは相反するんですが、バンドの中に入った時に、良い具合に溶け込んでくれる。まとまってくれる、馴染むというか。
良く言われるのは「Marshallって大きい音を出してもうるさくない」って事ですよね。
もちろんフラッグシップのJVMはMarshallらしい音がするのが当然ですが、MGシリーズのミニアンプもしっかりMarshallサウンドが出ますよね。歪んだ時のあのザラっとした感じの音、するんですよね。MS-2のようなトイアンプでもMarshallサウンドですからね。
9.Marshallアンプの性能を最大限引き出すには?
いやぁ、難しい質問ですね。
少なくともメンテナンスはしっかりして欲しいですよね。
たとえば真空管。寿命があるのはもちろん皆さんご存知かと思いますが、ヘタって来ると歪みが弱くなったり、音が細くなったり...。これだけ真空管アンプが溢れてると、真空管アンプの脆弱性について忘れられている場合もあります。真空管の中の接点同士の距離ってミリ単位なんですよ。そこがプチっといったら即ダメになるので、振動には気を付けて欲しいですね。
やはり持ち運びには気を付けるべきですね?
とにかく振動を与えるのは良くないことですが、Marshallが出荷されて来る箱は上下正しい向きにされていますよね? それを考えるとやはり上下も正しくした方が良いと思います。逆さにして発送するのはあり得ないと思いますし。
あとは運搬の際は出来ればショックマウントのハードケースに入れて欲しいです。その上でキャリーカートなんかで運ぶなら振動もほとんど影響しないと思います。そこまでケアして欲しいですね。
他には何かありますか?
アンプの修理で多いのは真空管6~7割、インプットやコントロール類のガリも含めると8~9割になりますから、プラグを拭いてから挿す、ノブは0か10かにして保管しておくなどの基本的な事も重要です。
10.最近「ブラウン・サウンド」ももてはやされています。現行Marshallでブラウンサウンドを得るには?
ズバリ、1959SLPを使いましょう!
やっぱりブラウン・サウンドの根幹は1959にあると思います。エディーはゲインを上げるように改造していたようですから、ブースターを何かしら使う事でゲインをブースとして非常に近づくと思います。
いざMarshallサウンドを徹底比較!
ここまででMarshallについてけっこう詳しくなったんじゃないでしょうか? そこで気になるのはやっぱりサウンド。いろんなシリーズがある中でMarshallサウンドを貫きながらどんな個性を発揮してくれるのか、実際に音をチェックして行きましょう!
今回試奏にご協力頂くのはこの方。
...さあ誰でしょう!? 女性であるのは間違い無いです。赤いメッシュが印象的な女性ギタリストです。
と、今回はここまで。Part2で気になるアーティストの正体も含めてサウンドを公開しますので、お楽しみに!!